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第三十八話 「竜人族」

 2匹の翼竜が唸り声をあげながら俺を見ていて、その翼竜にはそれぞれ人が乗っている。


 人って言うか人型の竜?竜型の人?どっちかっていうと爬虫類みたいな感じがしないでもないが。


 あれってぇ…竜に乗ってるとこ見るともしかして竜人族か??


 俺が警戒しながらもあれこれ考えているとあっちから声かけてきた。


「おい、お前」

「あ、は、はい」


 言葉はしゃべるんだな、とある意味安心した。


「こんなトコで何している?」

「え?あ、えーっと、僕はサンクルーズ魔法学校の受験生で、入学を認めてもらう為の課題をクリアする為にこの森に入ってきました」


 上から目線に少しイラっともしたがこの世界では年上っぽいし、もしかしたら彼らのテリトリーかも知れないので正直に答えた。


「ほう、魔法学校の受験生か?入試があるって事は特待生希望者か」

「え、ええ、まあ…」


 随分と詳しいなと感心しつつも警戒心が更に高まる。


「つまり魔術が得意って事だな?」

「い、いえ、そんな事も無いんですけど……」


 この流れで、”はい僕魔術得意なんです”って言うと思ってんのかな?


「何だ?お前、我らに嘘をつくつもりか?」

「いえ、嘘をつくとかじゃなく自分では魔術得意だと言えるほどでは無いと思ってますんで嘘ではありません」


 何だかだんだんイラつき度も上昇してくるな。


「得意か得意じゃないか我らが判断してやろうか?」

「いえ、結構です…」


 ムカつくがここで喧嘩しても得は無いだろうな。


「さっきから随分生意気だな、小僧」

「そうですか?僕は質問に丁寧に答えているつもりですが……」

「その態度が生意気だって言ってんだよ」


 一人?一匹?どっちでも良いが片割れが突っかかる様なセルフを吐きながら翼竜から飛び降りた。


 完全に喧嘩を売られてるな……。

 どうする??


 向こうは完全に俺をなめている。

 構えも警戒もせず俺に近づいてくる。


 完全に俺の間合いに入った。

 つまり向こうの間合いでもあるんだろうけど何だか恐怖心はない、パナメーラと闘って少しは自信がついたのかな?


 背は2m近くあるだろうか。


 俺は完全に見上げる形で対峙する。


「ケッケッケ、身の程を知らせてやる」

「…………」


 やるしかないか?

 こっちとしては面倒は起こしたくないんだけどな……。


 どっちにしても前世と違ってビビッて膝が笑わう事はない。

 あんなに臆病だった俺が変われば変わるもんだ。

 魔術って人を変えるな、なんて呑気な事を考えている自分がいる。

 よっぽどじゃない限り治癒魔術で何とかなるし、(そら)魔術もあるし、魔量にも絶対の自信がるからなんだろうけどな。


「死なせちまっても謝らねーぞ?」

「…………」


 何だろ?竜人族じゃないのかな?すっげー小者感漂ってるけど……。


 よくよく見れば竜と言うよりトカゲの様な面構えで肌は細かい鱗に覆われている、

 そのトカゲ面がトカゲと違うのは表情を作れる事だ。

 トカゲの面でニヤァと口角を上げる。


 やれやれ、やるしかなさそうだ…。


 竜人族の強さってどうなんだろ?

 あまりって言うか俺的には全然脅威に感じないが、この自信満々な感じからして本人は当然腕に自信があるのだろうな。


 相手は2人。

 こっちは一人だけど試験官はどこいったんだろう?


 いずれにしてもあのパナメーラより強いって事は無いだろう。


「やめろ、ゼキラード」


 翼竜の背に乗ったままのもう一方の竜人族がイキッてる竜人族を止めた。


「……ルキラード」

「…………」


 ゼキラードにルキラードか、竜人族にも名前ってあるんだな。


 イキったゼキラードとやらを制止したルキラードとやらも翼竜から飛び降り俺の前に立つ。

 こっちも2m位のタッパがある。


「何で止めたルキラード?」

「少し黙ってろゼキラード」

「………けっ」


 不満そうなゼキラード、対するルキラードは冷静だな、こっちの方が上か?


「おい人族の子供よ、お前はなかなか度胸があるし魔術、と言うか腕もなかなか立ちそうだ」

「…………」


 何だ?何が言いたいんだ?


「人族は成長が早い、故に我らより死も早いがなクックック」

「何が言いたいのでしょう?」


 結局のところ、このルキラードとやら竜人族も同じ穴のムジナだな。


「死が早い人族が使い物になる頃には死が近い事が常だ、だがお前の様な子供であればまだ先はある」

「だからそれがどうしました?」


「おい!ガキが調子に乗るなよ?」


 まわりくどいルキラードに短気なゼキラード、どっちもどっちだな。


「つまりだな、私が言いたいのはお前を我ら竜人族が更に強くしてやろうと言う事だ」

「はあ?」


 何を言い出すかと思えば竜人族が俺を強くする?どういう事だ?


「我々竜人族は竜の加護を持つ気高き種族、その我々の仲間、とまでは言わなくとも部下にしてやろうかと言う誘いだ」


 自意識高いな竜人族って。自分で気高いとか言うかフツー。


「ケッケッケ、おいガキ、身に余る栄誉に声も出ないか?まあ無理もないがな」


 ゼキラードがちょっとよく分からない事を言っている。


「魔法学校に入りたいって事は魔術をもっと学んで強くなりたいって事だろう?なら学校なんかより我らといた方がよっぽど強くなれるぞ?」

「えっとぉ……何でぇ、その気高き?竜人族の方?がわざわざ僕を強くしてくれようとするんです?」


 何だか腑に落ちない誘いだ、だいたいにして話の展開が早すぎるだろ?

 まるで俺が喜んでホイホイとついて行くのが前提の様な喋り方だ。


「何故とは妙な事を聞くな人族、お前には幼くして才能がありそうだからその才能を伸ばしてやろうと言ってやってるんだ」

「言ってやってる、ね……う~ん…だとすれば僕の答えは間に合ってますです」


 よく分からない展開だし、竜人族はどうも俺と合わない。


「な、何だと!?」

「…………」


 ゼキラードは目を白黒させ信じられないと言った表情でルキラードは不満そうなイラついた表情に変わる。


「だっておかしいでしょう、あなた達は人族の子供で態度が気に入らない僕を仲間にしたがる、何か裏があると思って然るべきじゃないですか?」


「クックック…なるほどなぁ…ガキだからと言ってそう単純じゃあなかったって訳かぁ…」


 ルキラードが上目遣いになり爬虫類面に輪をかけて悪そうな顔になる。


「だから攫っちまえば良かったんだよ」

「攫う…??」


 セキラードは今たしかに攫うと言った。つまり俺を拉致する事が目的だったのか、だとすればこいつらが何だかんだ理屈をつけて俺を勧誘したのも辻褄が合う。


「余計な事言うなセキラード!」

「うっ…す、すまねー…ルキラード」

「だから黙ってろと言ったんだ、この役立たずが」

「くっ…!!」


 仲間割れを始めるのは勝手だが、さてどうこの場を切り抜けるか…?


 ここはこっそりこの場を後にするか…。


 俺はゆっくり踵を返し忍び足で退散を図る。


「おい!!どこへ行こうって言うんだ?」


 っ!?


 背中越しに呼び止められる。

 そりゃそうだよね……俺だってこんな古典的な退散方法で切り抜けられるとは思ってなかったさ。


「いやぁ、何か意見が分かれて話が長引きそうだったんでお邪魔かな?と思って……」

「……ふざけてるのか?」


 だいぶ怒ってらっしゃる感じだな…いや、まあ、ふざけてるっちゃあ、ふざけてたけど…。


「なぁ、ルキラード、もう実力行使で良いだろう?」


 叱られたのがこたえたのか、逆に言えばルキラードはセキラードがビビる程の実力者なのか。


「……仕方ない、穏便に事を進めたかったのだがやむを得ないか」


 何なんだ?穏便に事を進めるとか…。

 いわゆるアレか?計画的誘拐か?

 何で?俺が子供だから?

 それなら俺じゃなくても良いだろう、ウチは裕福じゃないし家族は冒険者だぞ?

 リスクこそあれどハイリターンは無いぞ?


「ちょっと待って下さい!」

「何だ?今更しおらしくしても無駄だぞ?」


 セキラードは鼻息荒いな、交渉するなら冷静なルキラードよりセキラードの方が良いか?


「セキラードさん、そもそも何で僕を連れ去りたいんですか?事情を説明してくれて納得出来れば黙ってついて行きますよ」

「俺は別に大人しくしてくれなくて構わないぜ?むしろお前に痛い目に合わせてやりたいからなぁ」


 ダメだこりゃ。テメーの失敗を腕力で返す事しか考えてない。


「ルキラードさんなら分かって下さると思います。僕は痛い目に遭いたくはないんです。気高き竜人族のあなたなら腕力でなく言葉で説得して下さると僕も助かるのですが……」

「我等に実力行使させるのはお前自身のせいだろう?お前を説得させるのは力づくで身の程を知らせて上下関係をハッキリさせてからでも遅くない」


 ダメか……面倒だけどやるしかないのか…。

 つーか試験官どこ行ったんだ?受験生を守るのも役目じゃなかったっけ?


「ルキラード、やっていいな?」

「ああ、動けなくしてやれ、但し殺すなよ?」


 何だろ?

 パナメーラが言ってた、相手の実力が読めるのは強さだって言ってたけどハッキリ言ってこの2人と言うか2匹に負ける気はしない。

 逆に向かうは俺の力が読めないのか?その程度なのか?

 う〜ん…仕方ない…やるか。


「ケッケッケ、覚悟はいいか?今から死なせはしないが死ぬほど痛いに合うぞ?」


 さっさとかかってくれば良いものを、グダグタとさっきから。


「おい、ヴィンス、何絡まれてんだ?」


 ん?その声は…。


「誰だ!?」


 ルキラードが上空に向かって叫ぶ。


「助けてやろうか?それともお前がこれからやるのか?」


 黒色飛竜(ブラックワイバーン)の背中から顔を出しまるで警戒心もなく、竜人族など眼中にない様子で俺に話し掛けてくるのはパナメーラだ!

 竜人族が引き連れていた翼竜は完全に黒色飛竜(ブラックワイバーン)にビビって尻尾を巻いている。



「いやぁ…メンドくさいのに絡まれて困ってたんですよ」

「だったらさっさとやっちまえば良いだろう?」


 完全に竜人族の事は無視して俺と会話をしながらいつもの様に回転しながら黒色飛竜(ブラックワイバーン)から飛び降りてくるパナメーラ。


「そうなんですけど…僕の信条は目立たず騒がず出る杭にならずなんで極力争い事とかって避けたいんスよねぇ」

「俺様と戦う時も貴様はそんな感じだったな」


 っ!?


 完全に竜人族に背を向け俺との会話と楽しんでいるパナメーラにセキラードが不意打ちでパナメーラの背中に蹴りを入れてきた。


「ちょちょちょ、セキラードさん?!何しちゃってんの?」


 あまりにも唐突な行動に俺は唖然とした。


「ケッケッケ、油断してる奴が悪いんだぜ?」


 してやったりのセキラードだがコイツ……本物の馬鹿だな……。


「そんな悠長なこと言ってるからこうやってつまらん事に巻き込まれる事に気付かないのか?」


 背中に蹴りを入れられてもまったく無視のパナメーラ。

 まあ、ダメージはゼロだろうからな。

 とりあえず俺も放っておいていいか。


「そうなんですよね、僕としては争い事起こしたくないのに巻き込まれちゃうんスよね…って言うかそんな事より何でパナメーラがここにいるんですか?」

「貴様にツダをくれてやったにも関わらずいつまで経ってもサンクルーズへ戻ってこないから何してるのか森に戻ってきたら翼竜が2匹見えたからな、で、こっちへ来てみた…」


 話の途中にまたしてもセキラードがパナメーラの背中に蹴りやら後頭部にパンチやらを入れてきた。


「…あ~何だったかな…?」

「翼竜が2匹見えたからここに来たってとこでしたね」


「ああ、そうそう、翼竜を追っかけてきたら貴様が竜人族に絡まれてるじゃないか」

「絡まれてはいましたがパナメーラが僕を心配して森まで戻ってきてくれるとは、そっちの方がうれしくて気になりますね」

「バ、バカ言うな、だ、誰が貴様の心配など……」


「おい!いつまで無視してやがんだ!!」


 蹴りやパンチをいくら見舞っても無視し続けるパナメーラに怒り心頭のセキラード。

 懲りずに駄々をこねる子供みたいにパナメーラの背中を殴り続けている。


「うるさいぞ貴様!さっきから黙っていればコツコツと!!」


 いい加減しつこいセキラードにパナメーラがキレて振り向きざまに裏拳をくらわした!


 っ!?


 身長差からパナメーラの裏拳がセキラードの太ももにヒットしたと思ったらセキラードの右足の膝から下がすっ飛びセキラードはその場に倒れる。


「ぎぃやぁあぁあぁぁっぁぁ!!」


 その直後、セキラードは絶叫し自身の右モモを抑えのた打ち回る。


「でだ、俺様は貴様が心配で森に戻った訳ではないと言う事をだな、言っている訳で……っるさいぞ!!貴様!!」

「っ!?」


 楽にしてやったのか単純にうるさかったのか、パナメーラはのた打ち回るセキラードの腹を踏みつぶすとセキラードは断末魔を上げる間もなく紫色の血を口から吐き絶命した。


「と言う訳だからな、決して俺様が心配してだな……」


 まるで蚊かハエでも払ったかのように何事もなかったように話を続けるパナメーラ。

 って言うか竜人族、防御力低すぎじゃないか?


「き、きさまぁ…!!」


 今度はルキラードが怒り心頭だ。

 って言うか今の見て力量の差が分からないのか??


 っ!?


 今気づいたが翼竜2匹がただの肉塊になっている。

 その肉塊の横には飼い主に似て涼しい顔をした黒色飛竜(ブラックワイバーン)がいる。

 断絶魔すら上げさせず瞬殺したのか?恐ろしいな黒色飛竜(ブラックワイバーン)…。


「ル、ルキラードさん……あれあれ」


 俺はルキラードに翼竜の死を知らせてやる。


「っ!?ゆ、許さんぞぉ…」


 目の色を変えて怒るルキラード。

 いや、そうじゃないだろ!?逃げるとこだぞ?フツー。


「えっと…パナメーラ?竜人族ってバカなんでしょうか?」

「そうだな、奴らプライドだけは高いが知能は比例していないな、特に下位種になればなる程にな」


「で、ですよねぇ?相手の力量も分からないだけならまだしも、これだけ実力の差をまざまざと見せられても分からないとは……」

「アレらは竜人族と言っても下位種のドラゴメイドって言うリザードマンにドラゴンの加護を与えたに過ぎない(まが)い物だから尚更だな」


 だから知能が低いし、防御力も低いのか、基本爬虫類って事だもんな。


「我らを愚弄するか!」


 ルキラードってば怒りがMAXみたいで突っ込んでくる。


「どうする?ヴィンス?」

「どうするも僕は遠慮しておきますよ」

「ふん、貸しだぞ?」

「ええ?!」


 向かってくるルキラードにパナメーラは左手をかざすと火魔術を射出した!


「クェエェェ……!!」


 怒り狂っていたルキラードは何とも弱々しい断末魔をあげ一瞬で消し炭となった。


 何だったんだ?竜人族って…。


「パナメーラ、竜人族ってあんな感じなんですか?」

「いや、上位種、それも純血種になればああも簡単ではない、今のは喋れる魔物に過ぎないが本物の竜人族はなかなか手強いぞ」


 何だかそれを聞いて逆にホッとした。いや不謹慎ながら竜人族ってなんかこう強い種族のイメージだったからああも弱いと何だかガッカリしちゃったからな。


「だが、プライドが高く鼻につくのは今のと変わらんがな」

「そうなんですね」


 それもイメージ通りっちゃあイメージ通りだな。





「はぁ、はぁ、ヴィ、ヴィンス!?」


 息を切らせ試験官が森から帰ってきた。


「試験官…」


 俺は返事をしたが試験官はパナメーラの存在に気付きパナメーラを見る。


「パ、パナメーラ?今の騒ぎはお前か?」

「騒ぎなどあったか?」


 確かに竜人族が騒いだが騒ぎという程の騒ぎだったかな?


「騒ぎがあったか?って…な、何やら言い争うような声が聞こえたが…」

「ああ、そうか、確かにトカゲが騒いでいたな」

「ト、トカゲ?トカゲとは何だ?それにそこに横たわっているのは翼竜とりゅ、竜人族じゃないのか?」


 黒色飛竜(ブラックワイバーン)がやった翼竜の死骸とパナメーラがやった右足がなく血反吐を吐いたドラゴメイドの死体と消し炭になったドラゴメイドの死体に試験官は気付いた。


「あれは翼竜だったが、これは竜人族では無くドラゴメイド()()()奴だ」

「ド、ドラゴメイドって…りゅ、竜人族じゃないか?!」


 試験官は何やら慌てている。


「ドラゴメイドは竜人族にドラゴンの加護を与えられたリザードマンでただの傀儡だ」

「い、いや、ドラゴンの加護を与えられた時点で竜人族だろう?!」

「だとしても絡んできたのは奴等だ、降りかかる火の粉を振り払って何か問題でもあるか?」


 慌てると言うか焦っている試験官に涼しい顔のパナメーラ、対照的な2人だ。


「な、何か問題あるかって…だ、大問題だろ?!あ、相手は竜人族だぞ?あの竜人族を敵に回すかも知れないのだぞ?!」

「あの竜人族かどの竜人族か知らんが竜人族なら何をしても良いと言う理屈は無い」

「そ、それはそうかも知れないが…」

「いずれにしても俺様の友達であるヴィンスが絡まれているとあれば俺様は相手が誰であろうとやってやるぞ」


 パナメーラさん…!!カッコ良すぎですぅ!!俺が女だったら抱かせてあげるわ!!


「そ、そうやって、後先考えないから……」

「後先考えないから?何だ、言ってみろ」

「……………」


 試験官は何かを言いたげだが呑み込んだようだ。


「ふん、まあいい、そんな事より本来なら受験生を守るべきは試験官である貴様の仕事では無いのか?その試験官様はどこで何していたんだ?」


「お、俺は……ひ、1人で森に……」

「1人で森に?何だ?」


「ひ、1人で森に散策を……」

「ふん、いい身分だな」


「くっ……!!」


 パナメーラの正論に言い返す事が出来ない試験官は苦虫を噛み潰したような表情だ。


「い、いや、パナメーラ、試験官はですね、本来受験生とは口をきかない立場ですから、俺と少し距離を置いていたんじゃないかと……」


 とりあえずやり込まれている試験官をフォローしてみる。


「ふん、だとして受験生を守ると言う任務を放棄して良いと言う理由にはならない、違うか?」

「ぐっ…!!」

「ま、まあ、パナメーラ、あのレベルの竜人族って言うかヤツなら僕でも対処できましたし、僕も試験官と二人になって気まずいなぁって思ってましたので試験官は空気を読んでくれたのかなって、け、結果オーライって事で…どうでしょう?」


 追い込まれる試験官が可哀そうになり俺も何とかフォローする。


「まあ、実際ヴィンスならあれ位敵じゃないしな」

「え、ええ、そうっスよぉ」


 何とか纏まったかな?


「それじゃあヴィンスよ、あんまり寄り道してないでさっさと街に戻れよ」

「ええ、明日には戻ると思います」


「なぜ今から戻らない?」

「いやぁ…ツダをちゃんと自分で採りに行っていたにしては街に戻るのは早すぎて不自然かなと思いまして……明日位に戻った方が自然かな?と思って」

「ふ~ん、そう言うものか?」

「ええ、そう言うもんッス」


 その後、パナメーラは納得したのか飽きたのか街に戻っていった。

 いずれにしてもパナメーラが助けてくれた事には感謝だし、納得してくれたのもありがたいがさっきまでより試験官との距離感が微妙になって気まずさがマシマシだ…。


 しかもパナメーラに説教されちゃって試験官の機嫌も悪そうって言うかしょぼくれちゃってるし益々気まずいよなぁ………。


 そんな重た~~~い空気の中、2日かけて森を抜けサンクルーズの街へと戻ったのだった。

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