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第三十六話 「空間魔術vs宙魔術」

「パナメーラァァアアアアア!!!!」


 前世を含めても生まれて初めてキレた。


「ふん、さあ見せてみろ貴様の力を!」


 不敵な笑みを浮かべ構えるパナメーラ。

 畏怖の加護は解除してんだろうけど怖さも何も無い。怒りが恐怖を凌駕しているのか。


 今の俺にあるのは怒りだけだ。


「うぉらぁぁあああ!!」


 俺は両手から火弾と言うより火球を出し奴にぶん投げる様に射出する。

 もちろん無詠唱に決まってる。

 わざわざ親切に術名を言う必要もない。


 パナメーラは俺が射出した火球に手のひらを向ける。

 すると吸い込まれる様に火球は消滅した。


「はっ!!」


 火球が消滅したと同時にパナメーラが手に力を入れたかと思うと俺が射出したのと全く同じ大きさ、スピードの火球が俺に送り返される!!


 あれが空間魔術か…。

 どうやら他の魔術同様に手のひらが魔術の発動口の様だな。

 手のひらで別空間へ収納し、手のひらから出現させるって言う仕組みらしい。


 どう言う仕組みで属性は何になるのか分からないがどうでもいい。


 俺は送り返された火球に更なる火球をぶつける!

 すると激しい衝撃音とともに目の前が爆発の衝撃と閃光で真っ白になる。


 俺はパナメーラの反撃を警戒するのと攻撃する為に上空へ飛ぶ。


 案の定、俺がいた場所に数十本の雷矢(サンダーアロー)が通り過ぎたのを確認する。


 今度は冷静に叫び声など上げずに完全無詠唱で火、水、氷、雷と違う属性魔術をランダムに射出し続ける。


「無駄だ」


 パナメーラは両手で各魔術を吸い込む。


「今度はこっちの番だ」


 そう言うとパナメーラも上空へと飛んで来た。


「そらっ!!」


 パナメーラが右手のひらを俺に向けながら左から右へと水平に動かすとその軌道上に剣が5本出現し俺へと向かって飛んで来た!!


 俺は瞬時に雷矢(サンダーアロー)を射出し金属の剣へと落雷させ回避する!


「ほう、人族のくせに飛翔術も使えるのか?」


 そう言うパナメーラも浮き続けている。

 俺と同じく風魔術を使ってるんだろう。


「ふんっ!!」


 俺は両手を使って生成した巨大化させた火の玉をパナメーラに向かって落とす!


「無駄だと言っただろう」


 パナメーラも両手を突き出し受け止め吸収する。


 ……今の吸収速度。

 初めのノーマルサイズに比べ若干だが時間がかかっていたな。

 つまり大きさや威力によって吸収するスピードが変わるって事か?


「そうら…!!」


 再びパナメーラは今吸収した巨大火の玉を両手で出現させ俺へと送り返す。


 俺は横っ飛びに移動しその軌道から外れる。


 すると俺の動きを予測していたかの様にパナメーラが急接近していた!!

 マズい!!


 気付いた時には目の前だ!!


「接近戦はどうだ?はぁ!!」


 いつの間にか出現させた剣で一突きに俺を殺そうとしてくる。


 何とか躱すも頬をその剣がかすめた。


 毒は??

 治癒魔術か??

 回避か??


 考えながら間を取る!!


「逃がすと思うか?」

「くっ…!!」


 俺は追ってくるパナメーラの軌道上に雷弾(スパークボール)を無数落とす。

 前世で言うフレアだ。


 フレアのおかげで若干だが間を取れた!


 体勢を立て直す。


「おい、いつまでこの調子で続ける気だ?」


 俺を追うのを止め上空に逃げた俺を見上げながらパナメーラが聞いてくる。


「……………」

「貴様の隠し手がまさか飛翔術という訳ではあるまい」


「……………」

「俺様は手の内を見せたぞ?貴様は仲間を俺様に殺られてるのにも関わらず何を出し惜しみしている?」


 確かに奴の言う通りだ。

 俺は馬鹿か??

 さっきキレたのは何だったんだ?

 こいつを殺るんじゃないのか?

 ソフィーとカーラちゃんの仇を取るんじゃないのか??


「まさか俺様の見当違いで貴様の力などこの程度だったか?だとしたらあの女共はただの犬死だったな、くっくっく…あーっはっははっはははっは!!あー笑えるぜ」


 っ!?


「うぉおおおぉぉぉお!!!!」


 俺は無防備にも両手を上に掲げ全力で巨大火の玉を作る。

 魔力を惜しげもなく注ぎ込むと見る見ると火の玉は肥大化していく。


「くっくっくっく、学習しない奴だな、そんなものいくら大きくしても魔力の無駄使いだぞ?いいだろう好きなだけ大きくしろ、飲み込んでやる」


 余裕ぶっこいてくれて助かる。


 その火の玉は直径30mにはなっただろうか。


「くらえっ!!」


 巨大火の玉に風魔術を加え加速させパナメーラ目掛け落下させる!!


「ふっ…!!」


 パナメーラが両手でその巨大化した火の玉を受け止める!


 流石に圧倒的質量を持つ物体に押し込まれパナメーラは地上に着地せざるを得ない。


「くっ!!」

 パナメーラは小さな体で踏ん張り両手に力を集中している。


 っ!?


 巨大な火の玉がパナメーラの両手に吸い込まれ始める。


 パナメーラの口角がニヤリと上がり”したり顔”になる。


「ぐっ…!?」


 ニヤついた表情から一変!パナメーラの顔が苦痛に歪む。


 巨大な火の玉を両手で受け止める事で無防備になった背中に別の火の玉が打ち込まれたからだ!!


「なん…だ…?」


 不意を突かれダメージがあるにも関わらず倒れずに両手を掲げたまま巨大な火の玉を吸い込みきり後ろを振り向き状況を確認するパナメーラ。


 背後を確認し俺に背を向ける隙を当然見過ごさない。


「くっ…!!」


 殺気に気づき再び俺の方に手をかざし俺が放った魔術を吸い込み回避する。


 俺は全力を出す。


 俺の両手からあらゆる魔術を四方八方へ放つ!!


「何だ?!何の真似だ!?」


 デタラメに魔術を放つ俺にパナメーラは意図が読めずにいる。


 上空へ放たれた複数の魔術の行方を確認しながらも俺にも警戒し続けるパナメーラ。


 俺は更に魔術を追加で射出する、今度は真っすぐパナメーラに向けての射出だ!


 俺の攻撃の意図が読めず戸惑いながらもとりあえず最短で自分に向かってくる魔術に対し手をかざすパナメーラ!!


 っ!?


「上か!?」


 右手は俺に向けたまま上空を見上げる!!


 っ!?


「何だ?!」


 上空に放たれた魔術が弧を描きそれぞれがパナメーラ目掛け急降下を始めた!!


 一つは真上から、一つは右斜め上から、一つは背後へまわり、一つは左旋回してとあらゆる方向から上空へ放たれた魔術が意思を持ったかの様にパナメーラを狙う!!


 更に真っ直ぐに放たれた魔術はパナメーラに着弾寸前だ!!


「ちっ…!!」


 とりあえず真っ直ぐに来た魔術を右手で受け止めるが受け止められたのは1発だけだ。


 真っ直ぐ来たものも手前で曲がったからだ!!


「ぐおぉぉ!!!」


 数十発の魔術が飢えた獣の様に角度は様々だが終着点はパナメーラに定め次々と襲い掛かる!!


「まだだぞ、お前の罪はこんなもんじゃ消せない」


 俺は更に魔術を打ち込み続ける!!


 次々と打ち込まれる魔術でパナメーラがいるであろう場所は激しい土煙で詳細は確認出来ない。

 出来ないがパナメーラが逃れた様な影も気配も感じられないからそこにいるのだろう。


 いや、ラファエラさんみたく一瞬のうちに土魔術で穴を開け回避してるかもしれない。

 そう思い地面に穴が開く位に次々と惜しみなく魔術攻撃を強める。

 1分は続けた魔術攻撃だ、そろそろいいか……。


「…………」


 魔量はまだ問題無いが、殺ったか殺ってないか確認したい気持ちと十分過ぎる程に打ち込んだからもう大丈夫だろうと言う気持ちから連射を止める。


 ボンッ!!と音を立て濛々と立ち込める土煙から上空へと飛び出す影!!


「ちっ…!!」


 甘かった!あれ位で殺れる相手じゃないだろう。

 冷静に考えればそうだが今それを言っても仕方がない。


 パナメーラはと言うと服はボロボロだが顔や体に目立つ傷は無い。


 自分の体の回りを魔術でレジストしたか治癒魔術を掛け続けていたかなんだろうけど流石と言ったとこだな。


 馬鹿か俺は!?感心してる場合じゃない!!


 上空に逃れたパナメーラが怒りと言うよりは冷静に、例えるなら冷たい炎と言う面持ちで俺を見下ろしながら両手をあげる。


 ヤバい!!

 そう思った時には遅く、お返しとばかりにパナメーラの両手から今俺が射出した魔術がそっくりそのまま連射された!!


「くっ…!!」


 俺も両手を前に突き出し迫り来る数種類の魔術攻撃に構える!!


「はぁあ!!!」


 ギリギリまで溜め両手を左右に開く!!


 俺に迫って来た魔術は俺が開いた手に導かれる様に導かれる様にして別れ、俺を避ける形で左右に軌道を変えると同時に上空へ逃れる!


(そら)魔術か!?」


 パナメーラが聞いてくる。


「関係ねー…だろっ!!」


 俺は氷槍(アイスランサー)を3連射する。


「…………」


 パナメーラも慌てず騒がずギリギリまで氷槍の軌道を確認している。


「はぁあっ!!」


 俺もパナメーラの間合いに入る寸前で3本の軌道をランダムに変え別々の角度から奴を狙う!!


「ふんっ…!!」


 パナメーラは1本を火魔術でレジストして残り2本は左右の手で吸収した。

 吸収したと同時に手のひらを俺に向け氷槍(アイスランサー)を返してくる!!


 その軌道は当然ながら真っ直ぐの軌道なので俺は(そら)魔術を使わずとも回避できる。


「ふむ。(そら)魔術を使った魔術を吸収して返しても(そら)魔術にはならないのか」


 パナメーラはその場で冷静に解析している。

 恐怖とか焦りとかは無いんだな…くそっ。

 それに比べ俺ときたら頭に血が上って氷槍(アイスランサー)なんか(そら)魔術向きじゃない魔術を発動する当たり間抜けだ。


「これはどうだ…!!?」


 俺は属性の違う魔術を数十発放つ!!


 それぞれが速度、角度を変えパナメーラに迫る!!


「タネが分かれば対処はできる」


 そう言うとパナメーラは自分の体を覆う様に両手を動かす。

 両手を動かし空間魔術で各属性魔術を低速で出して自分の周りに漂わせている。


 パナメーラの周りで俺の射出した魔術が着弾し派手に煙を巻き上げるが奴にダメージは与えていない。

 なるほど、どこから来てもいい様にバリアを張ったようなものか。


 (そら)魔術が効かないなら接近戦で剣と魔術を混ぜて殺ってやる!!

 俺は剣を抜き肩に担ぎ一足飛びに間合いを詰める!!


「………」


 冷静に俺を確認するパナメーラ。


 右手を俺に向ける。何か来る!!

 つか、来るなら来い!!


 っ!?

 火複数弾(ファイヤボールズ)かっ!!


 俺は速度を緩めず突っ込む!!

 左手でヤツの放った火複数弾(ファイヤボールズ)(そら)魔術で回避し間合いに飛び込む!!


 と同時に俺も左手から火複数弾(ファイアボールズ)を奴の顔面目掛け射出する!


 っ!?


 火複数弾(ファイアボールズ)を吸収しようと右手を突き出した!!

 ここだ!!

 俺は突き出された右手を切り落とそうと剣を振り下ろす!!


「がぁあぁぁあああぁ!!!」


 悲鳴をあげたのは俺だった!!

 振りかざした剣に雷が落ちた!!

 ヤツが右手で空間魔術を使うと同時に左手で雷矢(サンダーアロー)でも射出して避雷させたのだろう…!!


 堪らず剣を手放してしまった!!


 俺は空中から落下する中、無詠唱で治癒魔術を自分にかけ傷を治す、同時に飛翔術を発動し体勢を立て直し魔術を発動する。


 宙魔術の得意とする魔術だ!


 ピュンピュンと小さくも鋭い音を立て俺の手のひらから弾丸が射出される!!


 俺は両手から射出された極小の弾丸それぞれ3発出した、今までは2発ずつした制御できなかったがそれじゃ足りないだろう。


 っ!?


 奴もその特性を察知したのか真顔になり集中している様だ。


「はぁあぁあ!!」


 左右3発ずつ、計6発の弾丸が制御出来た!!

 前から2発、左右2発、残り2発は上下から弧を描きパナメーラに迫る!!


「くっ!!」


 パナメーラは堪らず後ろへ逃げる!!


「逃がすか!!」


 土弾丸は勢い落とす事なく急カーブしパナメーラを追走する。


「はぁあぁぁぁあぁ!!」


 土弾丸は再び散開して様々な角度からパナメーラを追撃する!!


「ふっ!!!」


 パナメーラに着弾寸前でヤツは土魔術で防御壁を空間からだし防ぐ!!


 が、激しい音と共にヤツの防御壁が砕け散る!!


 俺の土魔術の小ささと回転が錐揉み状態で突っ込み砕いたのだ。


 流石のパナメーラも次の魔術を発動する時間はなくヤツは手をクロスし身を屈めダメージを少なくするしかない!!

 ようやく俺の宙魔術がヤツを捉えた!!


「ぐっ!!」


 土壁をいとも簡単に打ち破る程の土弾丸6発がヤツの体に着弾しそれぞれ被弾したところから血が噴き出す。


「ぐおぉおぉおお!!」


 ヤツは痛みがあるであろう体に力を入れ土弾丸を体から吐き出す。

 と、すぐに出血は止まった。

 瞬間的に治癒魔術をかけたのだろう。


「流石と言ったところだなヴィンス!!」


 ヤツのそんな言葉はどうでもいい。

 俺は続けざまにもう6発土弾丸を射出する!!


 俺もこの魔術は慣れてきたからか今となっては目に見える速度でなく目に見えなくともコントロールできるんじゃなかいかと更に弾の速度を上げる!


 見えなくとも分かる!!コントロール出来る!!

 これならさっきのよりもダメージでかいはず!!


「死ねぇぇえぇ!!」


 必ず殺す!!ソフィーとカーラちゃんの命はテメーのより重いぞ!!


 パナメーラは最大限の加速をしているのだろう飛翔術で逃げる!!

 あんなに早く飛べるのか?と言うくらいの速さだ!


 だが、弾丸が相手じゃ分が悪いだろう。

 逃れられるわけがない!


 っ!?


 パナメーラは地上に落下した!!

 何の真似だ?!


 落下し仰向けになったパナメーラ目掛け土弾丸が容赦なく迫る!!


 バシューン!!っと音を立て弾丸が消えた!!


 そうか!!背中からの死角をなくし前面に集中させたのか!!

 くそっ!!


「俺様とした事が無様な格好を晒した」


 パナメーラは苦虫を噛み潰したような表情で飛び上がり、同時に両手から数えきれないくらいの剣を出現させ俺に向け射出する!!


「うおっ!?」


 捌ききれるか?!これだけの数!!

 いや!!無理だろう!!

 っどうする!?


「はぁあ!!!」


 俺はイチかバチか以前失敗した魔術を発動させる!!


 次の瞬間、激しい破裂音と閃光が周囲に響く!!!


 ヤツの数えきれない剣すべてを飲み込むほどの稲妻を発動させショートさせた!


 俺は爆風で吹き飛ばされ地面に叩きつけられる!!


 ヤツは?!


 っ!?


 音と光も吸収できるのか??

 何事もなかったかの様に俺に向かってきている!!


 マズい!!早く立たなければ!!


雷神鉄槌(ディバインハンマー)とは驚いたぞ、宙魔術に頼らず神級魔術まで会得しているとはな」

「くっ!!」


 俺は螺旋突風(スパイラルガスト)を地面に向け射出し飛翔術でヤツから逃れる。

 今度はこっちが逃げる番とは……畜生…!!


 っ!?


 俺が逃げた場所は最悪だった。


 足元にソフィーとカーラちゃんの頭が転がっている。


「っ!?」


 何だ?何かがおかしい…。


 違和感を感じその生首をよく見てみる。


 気持ちの良い言い方ではないが初見の時に比べ何だか…パサついてる?

 初めの生々しさみたいのが無い…。


 肌の色も青ざめていると言うより茶色くなっている?


「ちょっと待った!!パナメーラ!!」


「ちっ、気づいたか…」


 ソフィーとカーラちゃんの頭部に異変を感じパナメーラを止めると奴も立ち止まった。


「こ、これは……??」


「ああ、そうだ、俺様が土魔術で作った偽物だ」


 っ!?


 よく見てみると確かに土だ。


 髪の毛は茶色の砂状になっていて頬のあたりの肌に似せた土が剥がれてる。

 しかもその剥がれた肌の下からは土で作っているにしてもリアルな形状の骨も見えている。


「さすがに空間から出したままにしているとすぐに風化して本物に近い質感は保てないな」


「……偽物?」


 つーかリアル過ぎるだろ?!


「ふん、いいところだったがここまでか……」

「何でまた、こんな込んだ事を……?」


「こうして騙してでもしなきゃあ貴様は力を出さないだろう?そんな貴様をその気にさせる為に俺様が作った偽物だ」

「じゃ、じゃあ、本物の2人は…?」

「ふん、今頃貴様同様に課題クリアに励んでいるだろうな」

「な、なん、だ……」


 俺はホッと安心して気が緩む、と言うより気が抜けた……。


 そんな俺を見て殺気も無くし畏怖の加護も元に戻したパナメーラ。


 つーか冗談にしても悪い冗談だ…でも、冗談で良かった……。


「しかし貴様には隠している力があるとは思ったがまさか(そら)魔術だったとはな」

「え?あ、ああ、そうなんですけど……まだまだでしたね……」


 2人が無事だと分かりホッとはしたが、それとは別に(そら)魔術は俺の切り札であり、俺自身もチート能力だと思っていた分、こうもあっさりやられると凹む…。


「いや、俺様がここまで驚き焦ったのは生まれて初めてだったぞ」

「え?そうなんですか?全然そんな風には見えませんけど…」


 パナメーラの服こそボロボロだが本人は至って冷静で涼しい顔してるじゃないか。


「まあそこは天才エリートの俺様だからな、焦ったとは言えすぐに対応出来てしまうのが俺様の凄い所なんだがな」

「そうですね、確かにパナメーラさんの判断力、対応力、さらにあの空間魔術と言い桁外れの凄さでした」


 これは本音だ、俺はキレたと思いきや中途半端だったり、焦ったり考えすぎたりで冷静な判断が出来なかったしな。

 無敵のチートじゃないかとすら思ってた(そら)魔術もまだまだ使い方を考えないとな………。


「むっふっふ……」


 あれ!?パナメーラ気持ち良くなっている?

 ああ、そうか、今の俺の言葉で気持ちよくなったのか。


「ホントあの空間魔術って何なんですか?僕の(そら)魔術よりスゴイですよ!」

「そうか?確かに空間魔術は俺様だけが使える魔術だな!」


 いつもパナメーラだ。気持ち良くなって腕を組んだままのけ反っている。


「僕の(そら)魔術は幻の第7属性とか言われてますけどパナメーラさんの空間魔術は何に属する魔術なんですか?」

「む!?貴様の(そら)魔術は幻の属性だと…?」


 パナメーラの表情が曇る。

 何?何か悪いこと言った?


「え、えーっと、ま、幻って言うか……」

「た、確かに貴様の(そら)魔術はま、幻と言うか、初めて見、見たな…」


 ああ、そうか幻とかって言い方がプレミアム感あって悔しいのか。


「い、いやでもあれってぇ、何て言うかぁ、気合と根性でぇ、何とかなりそうな感じじゃないッスかぁ?」

「じゃあ俺様は貴様より根性無しだと言う事か…?」


 あわわわわ、逆効果か…?


「じゃ、じゃなくってぇ…(そら)魔術なんかより空間魔術の方がぁ、不思議で仕組みがまったく分からないしぃ、えーっとぉ、スマートでぇ、ミステリアスでぇ、クールでぇ、プレミアム魔術の名に相応しいです」

「プ、プレミアム魔術だと…?」

「え、ええ、プレミアムでレアでイリュージョンなミラクルファンタジック魔術ッス!!」

「むふっ…むふふ…そ、そうかぁ…?やっぱそう思うか…?」


 ふぅ…あぶねー…何とか誤魔化せそうだな。


「いやホントに一体全体どういう仕組み何ですか?って言うか大体にして属性は何になるんですか?」

「それは俺様にも分からん!考えた事はあるが考えても分からん」


 はっきりきっぱり堂々と分からない事を分からないと言うパナメーラの姿勢は見習うべきなんだろうか?


「で、でも出し入れはパナメーラさんの思い通りに出来るんですよね?」

「ああ、俺様の思い通りに出来る」

「それって頭で思い浮かべる事で出せて、収納しようと思って手をかざすと収納出来るって感じなんですか?」

「そうだ」

「ちなみに空間魔術の空間とはどこにあるんですか?」

「知らん!だが、収納したものは収納した時のままの状態を保っているからどこか別の次元なのか時間と言う概念が無い空間なのかも知れんな」


 聞いた事以上の事を惜しげもなく教えてくれるパナメーラは意外と、いや意外じゃないな、良い奴なんだろうな。

 もし俺が逆にパナメーラの実力を知りたいと言ったらケチらずその実力を教えてくれるんだろうな、出し惜しみする俺と違って。


「そもそも空間魔術って訓練したり研究したりして習得出来るものなんですか?」

「俺様は生まれつき持っていた能力だから知らんが、そうやって習得できるとは思えないな」

「……ですよね」


 生まれ持った能力でパナメーラだけが使える空間と魔術…。


 匿名希望ちゃん、って言うか死神ベルリネッタちゃんが俺を転生させる時に会った真っ白な空間もベルリネッタちゃんだけが来れる能力って言ってたよな?

 同じ異次元空間を使えるベルリネッタちゃんとパナメーラ……同一人物?いやでも収納出来るのとその空間に出入り出来るのは違うか…。


「……フリーディ」


 独り言っぽく言ってみる。


「ん?何だ?フリーディとは」

「あ、いえいえ、何でもないです……」


 すっとぼけてる感じはしなかったな……。


 どちらかが仮の姿って可能性も無きにしも非ずだがソフィーの賦与とアステリアさんの加護を見た時の反応からして別人物だろう。


「さて、お互いの手の内も分かったし休憩も出来ただろうから第2ラウンドといくか」

「は??いやいや冗談じゃないですよ!!もう十分です!!」

「む?そうなのか?」

「いや、そりゃそうでしょう!?もう十分でしょう?!それに騙されて頭に血が上って全力で戦ってもうヘロヘロですよ…!!」


「ヘロヘロなのは治癒魔術で回復すれば良いが、まあ、今回は騙した負い目もあるから大人しく諦めるか……」

「いえ、今回はじゃなくもうホント勘弁してください」


 入試課題なんかよりよっぽど肉体的にも精神的にも疲れた……。

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