第三十二話 「学園都市サンクルーズ」
チコレットを出立して3ヶ月ちょい、4ヶ月位は掛かるかもと見積もって日程を組んだから予定より1ヶ月程早くサンクルーズの街に着けそうだ。
左手には白い岩肌のスロブ山脈を、右手には鬱蒼と樹々が茂る森を見ながら石と岩ばかりのクレイルバレリーをひたすら遡ってきたが、ようやく前方にサンクルーズの街影がうっすらと見えてきた。
「やっとサンクルーズの街並みが見えてきましたわね」
「ああ、ここまで来れば半日もあれば着くだろう」
ずっと代わり映えしない景色に3人の口数もすっかり減っていたが目的地が見えて来た事で自然とテンションも上がる。
その後も特別な魔物に遭遇する事もなく順調に進み、日が暮れる前にサンクルーズの市門まで辿り着く事が出来た。
市門には当然、検問所があり入国検査みたいなものがある訳だが俺達は冒険者登録カードがあるから身分証明書代わりに提出する。
「デューク・スレーターって、あのイーグルクローのデューク?、い、いえ、デュークさんっスか?!」
若い門兵の1人がデュークさんの冒険者カードを見て驚いた様子でデュークさんの顔を見る。
「ん?あ、ああ、そうだな」
デュークさんはメンドくさそうと言うか照れ臭そうに返事をする。
「自分、昔っからお噂は伺っており憧れてたんス!」
若い門兵は目を輝かせながら訴えている。
「そ、そうか…」
「はいっ!!」
どうリアクションしていいか分からないデュークさんに対して門兵は真っ直ぐだ。
こっちはそんなデュークさんを見て楽しませてもらっているし、検査もさっさと終わりそうで助かる。
「ヴィンス・ギャレットにカーラ・オズバンド?!」
「え!?あの魔王ヴィンスに竜狩りカーラ?!」
「おい、マジかよ!?」
「え?どこどこ?!」
別の門兵が俺とカーラちゃんの冒険者カードを見てちょっとよく分からない呼び名を口にすれば他の門兵達が集まり出してきた。
「巷で噂のデザートフォックスの斬り込み隊長と遊撃隊の2人じゃねーか」
「え?えぇ??な、何スか?遊撃隊って??」
そんな暴◯族みたいな部隊作った覚えは無い。
「やっぱ雰囲気が違うな…」
「子供ながらに目に宿す殺気…ぱネェな…」
「デュークさんも丸くなったなんて誰が言ったんだ?ありゃ抜き身の刀そのものだぜ…」
何だか勝手に話が膨らんでいる気がする…。
「あ、あのよ…」
流石のデュークさんも戸惑っている。
さっきまではそんなデュークさんを見て笑っていたが俺達も巻き込まれた今、笑えない…。
「は、はいぃ!!」
門兵達の背筋が伸び敬礼する。
「いや…そんな固くならないでいいんだけどよ…この感じだともう行っても良い感じかな…?」
「もちろんです!!」
門兵の中でも1番屈強でマントの色が違う隊長らしき兵士が胸を張り顎を引き敬礼したまま答える。
「じゃ、じゃあ、行くか?ヴィンス、カーラちゃん」
「は、はい…」
カーラちゃんも早くこの場を離れたそうだ。
「デュークさん!!」
「な、何だぁ??」
隊長の馬鹿でかい声にデュークさんもたじろぐ。
「このサンクルーズにはいつまでご滞在の予定でしょうか?」
「いや、いつまでだろうな…ヴィンスとカーラちゃんが魔法学校卒業するまで、かな…?」
「「「「「うぉおぉぉぉおぉ!!!」」」」
厳つい門兵達が歓喜の声を上げる。
「じゃあしばらくはこの街に滞在なさるって事っスね!?」
「あ、ああ、そうなる…かな……?」
「「「「うぉおぉぉぉおぉ!!!」」」」
「お時間出来た時でいいんで色々お話し伺いたいのですが、宜しいでしょうか?もちろん食事やお酒はご用意させて頂きますので!!」
「あ、ああ…機会があったらな…」
「「「「うぉおぉぉぉおぉ!!!」」」」
「じゃ、じゃあ行くな…」
「「「「はい!!また宜しくお願いします!!」」」」
「い、行くぞ…!ヴィンス、カーラちゃん!」
「はい!!」
カーラちゃんもデュークさん同様にとりあえずこの場は去りたいらしい。
「あの、すみません…」
「は!何でしょう?ヴィンス殿」
俺は立ち去る前に確認したい事があるから隊長に声をかける。
「い、いや、ヴィンス殿は止めて欲しいんでヴィンスで良いです。そんな事よりさっきの呼び名なんですけど…」
「呼び名……ですか?」
隊長は何の事?と言った表情だ。
「ええ、いや竜狩りカーラは分かるんです、実際竜狩りしてるし。それより僕の事なんて呼ばれてましたっけ?」
「ああ、魔王ヴィンス!です」
ああ、その事!と疑問が晴れた様なすっきりした表情で答える隊長。
「そ、その、魔、魔王なんですけど……何でそんなちょっとよく分からない呼び名が付いてるんです?」
「はっはっはっは!その事ですか!いや、その呼び名は誰がつけたか分かりませんがヴィンス殿、いやヴィンス君は魔族王子パナメーラの持つ最年少冒険者登録記録を抜かれた事から魔族王子の上、つまり魔王だといつからか普通に呼ばれています」
何と!そこからか…!そんな事からそんな呼び名が世間様に広まっているとは……。
「とりあえずその呼び名、やめて欲しいです…」
「何故です?良い呼び名じゃないですか!?強そうだし、いや失礼、実際ヴィンス君は途轍もない強さですな」
「いえ、そんな事ないんで……本当に……」
「ははははは、またまたぁご謙遜を」
ダメだ……これ以上言っても水掛け論になるだけだな…。
「お~い、ヴィンス行くぞぉ」
デュークさんが呼んでる。
「あ、は、はい……すみません、それじゃあ行きます」
「ええ、また近い内に遊びに来て下さい、ヴィンス君なら我々いつでも歓迎いたしますので」
「そ、そうですね……それじゃ……失礼します……」
こうしてある意味激しい歓迎を受けた俺達は足早に市門を後にして街中へ進んだ。
街へ入ると他の街同様に市門近くに宿屋が多く建ち並んでいて、宿屋には食事処も併設されているからお酒を飲む人や食事を楽しむ人、地元の人や冒険者などで賑わっている。
「いや、しかし参りましたね」
「私も驚きました」
「バリバリの冒険者やってた頃はああ言った事もたまにはあったが最近は無かったから焦ったな」
そんな雑踏の中、当面の根城にする宿を物色しながら歩く。
「だけど皆、いい人そうでしたね」
「私も驚いたけど嫌な感じじゃなかったですわ」
「そうだな、ああ言った奴らは暑苦しいけど分かりやすくていい奴が多いな」
「でもデュークさんはともかく、僕とカーラちゃんまで名前が知られてましたね……しかもちょっとよく分からない呼び名までついて」
「私は結構気に入りましたけど?竜狩りカーラ……なかなか響きが良くないですか?」
「ははは、まあ2人とも最年少で冒険者になったしデビュー戦でいきなり竜狩ったからな」
「でももう2年も前の話ですよ?」
「だが、未だにその記録は破られていないし今後も破られないだろうから噂は更に広まるだろうな」
「ええ?!そんなぁ……」
あの変な通り名が世間様に広がるのはヤだな…。
「いいじゃありませんかヴィンス様、名前が売れていれば先程みたいに煩わしい事を楽にスルーできますし、余計な火の粉も降りかからず済みますわよ」
「いや、僕が懸念してるのはその逆ですよ、出る杭になって余計なトラブルに巻き込まれやしないか……」
「ふふふ、ヴィンス様は相変わらず心配性ですわね」
「いやぁ、心配で済めば良いんですけどね……」
カーラちゃんって意外と楽観的と言うか、男っぽいと言うか勇ましいよな。
って言うか俺が臆病なだけか…?
「ここなんてどうだ?」
デュークさんが一軒の宿屋を見上げながら言ってきた。
基本的に石造りで窓や扉といった枠関係が木で出来た2階建ての宿屋だ。
普通、建物の真ん中が入り口で左右均等と言った造りが多いのだがこの宿屋は建物の左側から中央付近まで解放されていていわゆるオープンテラスみたいになっていて、ちょっと変わったと言うか洒落た造りになっている。
日も暮れはじめちょうど夕食時でもあるからオープンテラスになっている食事処は満席に近く賑わっている。
「良い感じですね」
「そうでしょうか?この調子だと夜遅くまで賑わっていて眠りにくそうな感じがしますけど」
「なるほど、そう言われればそうですね」
カーラちゃんの言う事に一理ある。
「確かにそうなんだが逆に賑やかな方が防犯面では安心だぜ、何しろ冒険者達が屯っている場所にわざわざ騒ぎを起こしに来ないだろ?」
「確かにそうかも知れませんわね」
「まぁ長居する訳じゃねーし、この街での家が決まるまでの仮住まいだからここでどうだ?」
「そうですね、ここにしますか」
「僕もここで良いですよ」
「じゃあ決まりで良いな」
「はい」
そう言ってデュークさんはオープンテラスの奥にある受付に行った。
とりあえず1週間部屋を押さて、後は状況見て延長するか出るか決める事にしておいたみたいだ。
部屋に案内されると俺達の部屋は2階一番奥の角部屋だった。
ちょうどオープンテラスの反対側になるから若干ではあるけど喧騒から離れられそうだ。
その後、俺達も下のオープンテラスで夕食をとり、久々のベッドと言う事もあり早めに就寝した。
~翌朝~
久しぶりに屋根のある部屋、しかも布団で寝たから質の良い睡眠がとれたみたいで朝も自然に目が覚めすっきりとして良い目覚めだ。
新しい街での第1日目にしては良いスタートだが、予定より早く到着したからサンクルーズ魔法学校の入学式まで後1ヶ月ちょいある。
入学式までの間に出来れば一軒家が借りられれば良いな、なんて考えながら窓から外を見ていたらカーラちゃんも起きた様で布団からモゾモゾと出てきた。
「おはようございますヴィンス様……」
寝ぐせで乱れた髪型のまま左手の甲で寝ぼけ眼を擦りながら起きて来た。
「おはようございますカーラちゃん、気持ちの良い朝ですね」
「ええ…そうですね…」
生返事のカーラちゃんはまだ眠そうだ。
「んん……早ぇなぁ…お前達……」
デュークさんも起きた様で腕を伸ばし伸びをしながら言ってくるがまだ布団の中にいる。
「おはようございますデューク様」
「おはようございますデュークさん」
「んあぁ、おはようカーラちゃん、ヴィンス」
挨拶しながらデュークも起き上がり布団から出てきた。
それから俺達は顔を洗い下のオープンテラスでとりあえず朝食にする事にした。
街の朝は早く俺達がテラスに行った時には既に結構なお客さんがいて賑わっていた。
俺達はスクランブルエッグの様な卵料理を食べながら今後について話し合う。
「とりあえす入学式までまだ1ヶ月ちょいありますけどどうします?」
「そうだな…当面の資金はチコレットの冒険者ギルドで稼いだ褒賞金があるから心配ないにしても、出来れば入学までに一軒家を借りちまいたいな」
「それは良いですわね、宿屋もキャンプに比べれば大分良いですけどやっぱり自分たちだけのお家の方が落ち着きますものね」
デュークさんにしてもカーラちゃんにしてもやっぱり自分たちの家が欲しい様だ。
「まぁ入学式までは家を探しながら、サンクルーズの冒険者ギルドにも顔を出して良い案件があれば訓練兼資金稼ぎって感じだな」
「そうですわね、まだまだ鍛えておかないと。どんな同級生がいるか分かりませんものね、ヴィンス様?」
「え?あ、ええ、そうですね…」
前みたいに冷たい氷の様な視線は無くなったが今のカーラちゃんの聞き方は何だか意味深な感じだったな…。
同級生か…。
同級生と言えばソフィーだよな。
元気かな?
って言うか魔法学校に入るんだろうな?
やっぱりヤメたわ、とか言いそうだな…。
ついでに言えばあなたとの婚約も何かの気の迷いだったわとか言われそう。
いや、そりゃ俺だって100%信じてる訳じゃないよ?
まだ5歳と7歳の時の話だもん。
ノリと勢いの意味合いが強いとは思ってるけどさ。
でも、はぁ?とか言われたら間違いなく凹むな。
うん、間違いない。
「…ス様?」
会いたいけどいざ会ったらソフィーの顔、まともに見れないだろうな。
「…ィンス様!」
ソフィーはケロッとした感じで来そうだな。
「ヴィンス様ったら!!」
「え?あ、は、はい?」
いかんいかん、完全に1人の世界に浸ってたわ。
「どうかしました?何だか随分考え込んでいましたけど?」
「あ、い、いえ、そんな事無いですよ」
つーか何焦ってんだ、俺?
「くくくくく…」
「な、何ですか?デュークさん、そのヤラシイ笑い方は…!?」
デュークさんが目を細め口角を上げニヤついた面を張り付かせている。
「いんや?別にぃ…」
ニヤついた意味は分かるだろ?と言わんばかりだ。
「……………」
ほら見ろ、その表情の意味が分かるのは俺だけじゃないつーの、カーラちゃんも何やら不満げな表情になってるじゃないか。
「と、とりあえず、朝ごはん食べたら街に繰り出しましょうか?ね、ね!カーラちゃん?」
「……そうですわね」
何だ?今の若干の間は…?
「んじゃ、先ずはこの街の冒険者ギルド覗いてみっか?」
「そ、そうですね」
「ええ、そうしましょう」
ふぅ…何とか乗り切ったな…何だかそれぞれが思うとこありって空気だったけど……。
そんなこんなの空気の中、俺達はサンクルーズの街へ繰り出した。
サンクルーズの街並みはキレイに整備された街、と言った感じだ。
前世で言うならいわゆる区画整理された街並みと言うか、アメリカの郊外にある住宅街と言えばよいだろうか。
道幅は広く真っすぐな道が多い。
建物も木造が多く家の軒先は屋根がついている家が多くこの辺もアメリカっぽい、いわゆるカバードポーチってやつだ。
街の規模もシュミットやチコレットとは比べ物にならない位大きく、バンズ大陸一の街の名は伊達じゃないな。
道行く人も多種多様で色んな種族に色んな職業の人が行きかって賑やかだ。
そんな街並みを見ながら冒険者ギルドに立ち寄り、ついでに魔法学校も見に行ってみた。
この世界の街は基本的に外壁が街の周りをぐるりと囲んでいるのだが、そんな外壁に囲まれた街の中で更に外壁に囲まれた施設がある。
それがサンクルーズ魔法学校だ。
赤いレンガがキレイに積み重ねられた外壁は高さ3m程ある。
俺達は校門から中を見ているが、校門から真っすぐ続く道の先にある校舎は大分離れていてハッキリと窺い知る事は出来ない。
「基本的に学校ってのは部外者が入る事は出来ねーんだ、まぁ何かの催しとかある時は別だがな」
「それは何でです?」
まさかスパルタな軍隊式なところで脱走者が多いから警備がキツイとかじゃないだろうな…塀も刑務所みたいに高いし…。
「何でって、そりゃ学校に通う奴らは魔術のエリートだからな、外敵から守るのと、後はアレだ…」
「アレって?」
アレって言ったデュークの表情は苦い顔だ。
「基本的に貴族様のお坊ちゃんお嬢ちゃんが多いからよ、誘拐やら襲撃やらから守る意味合いが強ぇって事だ」
「なるほど」
そう言う事か、貴族の親達が心配するから安心安全のパフォーマンスって事か。
「昔言ったかも知れねーが貴族の奴らが多いからな、差別的な事やいじめ、贔屓なんかもあると思っといた方が良いぞ」
「ええ、だけどホントそう言うのってホントめんどくさいですね」
何処の世界にもそう言うのってあるんだな…。
「ふん、ご心配いりませんわヴィンス様」
「え?そうなの?カーラちゃん?」
腕を組み目を閉じたままカーラちゃんが言う。
「ヴィンス様と私の力なら大抵の奴らは捻じ伏せられるでしょうから問題ありませんわ」
「い、いや、カーラちゃん……僕のモットーは目立たず騒がず人知れずですので……穏やかなキャンパスライフでお願いします」
「分かってますわ、身に振る火の粉だけ払えば良いのでしょう?」
「う、うん…まぁ……そうっちゃあ、そうなんだけど……」
大丈夫かな?カーラちゃん、いきなり学校をシメるとか言い出さないだろうな…。
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サンクルーズに来て早1ヶ月が過ぎ、気付けば明日がサンクルーズ魔法学校の入学試験日で受かればそのまま入学だ。
サンクルーズ魔法学校に入るには試験がある。
当然試験であるから、その成績如何では不合格となり入学出来ない事もある、と言うより受かる人より落ちる人の方が多いとの事だ。
そして合格となってもそのほとんどが普通クラスであり多額の入学金と月謝が必要になる、故に貴族や富裕層の家の子供が大半を占める事になっている。
但し例外がある、特待生制度だ。
それは受験者の1割にも満たない、いや、毎年選出されるのは1人か2人がいいとこで該当者無しの年も珍しくは無いらしい。
俺達が狙うのはその特待生クラスだ。
何故ならお金なら無い!からだ。
いや正確に言えば冒険者ギルドの仕事を定期的にこなしていけば月謝くらいは賄えるだろうけど学校生活がどうなるか分からない以上、定期的に冒険者ギルド依頼をこなしていけるか分からないし何よりお金が掛からないならそれに越した事は無い。
それに故郷であるシュミットを出立する際にソフィーとソフィーの父親である領主ケリーと交わしたサンクルーズ魔法学校に入学すると言う約束の中で学校でかかるお金の工面をしてもらうと言う話、非常にありがたい話だけどやっぱり辞退したいからな。
自分で何とか出来るなら何とかしたいし。
まあカーラちゃんの場合は実家がお金持ちだからお金の心配はないけど、それより自分の実力を試したいって言う気持ちの方が強い。
つーか、それより何よりカーラちゃんとの関係性だよな?問題は……。
いや関係性も何も後ろめたい事は無いんだけど誤解されないかなソフィーに。
シュミット発つ時に言ってたもんな、他の女の人とどうにかなってみなさい総力を挙げて潰すからヨロシク、みたいな事。
ま、まあ、ソフィーもあれで育ちが良いし、あの時より大人になってるだろうから話せばすぐ分かってくれるよ!うん、そうに決まってる!……決まってるよな……決まっていると良いな……。
出来れば入学試験の前にソフィーとは会っておきたかったが会えなかった。
ソフィーも遅くとも今日までにはサンクルーズ入りしているだろうけど俺達も冒険者ギルド依頼やら家探しやらでなかなか忙しく過ごしちゃったからな。
まあお陰で良い家が見つかったけどね。
サンクルーズでの家は魔法学校から徒歩で15分程の場所にあって石造で一部木造の2階建て4LDKの一軒家でちょっとした庭も付いていてなかなかの物件だ。
この物件も門兵の皆さんと懇親を深めて得られた恩恵でやっぱ持つべきは友、縁だと思い知った。
ホント門兵に人たちは良い人ばかりで親身になってツテも使いで掘り出し物件を見つけてくれたから感謝だ。
今ではすっかり仲良くなってデュークさんとはしょっちゅう飲みに行っているし俺達とも稽古をつけてくれたりつけてあげたりする仲になっている。
さて、そろそろ明日に備えて寝るとするか。
カーラちゃんは一足先に寝てるし、デュークさんは門兵に人たちと飲みに行っているしな。
~翌朝~
俺とカーラちゃん、そしてデュークさんの3人でサンクルーズ魔法学校に向かっている。
俺もカーラちゃんも変に緊張はしていないし体調もバッチリだ。
「なぁに普段の調子でやりゃ合格は間違いないし、万が一特待クラスじゃなくても金なら心配すんな、俺一人でもお前らの学費くらい何とかしてやっから」
「いえ、学費なら僕が何とかしますよ稽古がてらにギルド依頼こなしますから」
「ヴィンス様に限っては万が一も無いでしょうけど、私も必ず特待生クラスになれる様、全力を尽くしますわ」
そんな会話をしながら歩くこと10分、もうすぐ魔法学校に着く。
「伏せろ!!」
っ!?
デュークさんの声に俺とカーラちゃんも反応し屈む!
屈んだ俺たち、いや正確にはデュークさんの上を電気の矢が火花を散らしながらかすめた!
「うおっ!!」
雷の矢を避けたデュークさんの足元めがけ又、雷の矢が飛んで来た!
デュークさんはバク転を繰り返しその場を離れるが次々をデュークさんめがけ雷の矢が追撃してくる!
どうやら狙いはデュークさんの様だけど敵は!?
俺は魔術の発動者を探す。
……いた!!
ダークエルフ!?
ダークエルフが無表情で、いや冷めた瞳でデュークさんに向かって黙々と雷矢を連射している。
何だろ?冷めた瞳で敵意は感じられるけど殺意は感じないな。
まあいいか、とりあえずデュークさんに援護射撃してやるとしよう。
俺もとりあえず雷矢をダークエルフに向けて射出してみる。
っ!?
バーン!!ともガーン!!ともとれる落雷というかショートしたかの様な激しい音と共に辺り一面を真っ白にする閃光と煙に包まれた。
煙は水蒸気だ。
という事は氷魔術でガードしたな。
とりあえず警戒しつつも追撃はせずに様子を伺う。
光が消え水蒸気が蒸発すると当然ながら無傷のダークエルフがノーガードって言うか長い髪の毛をクルクルと指を絡めながら俺を見ている。
どうやら氷魔術でガードしたのはダークエルフ自身では無さそうだな。
そんな事を考えながらダークエルフを見ているとあっちも品定めする様に俺を見ている。
ダークエルフはスラリとした長身でナイスバディに目を奪われがちだが、ダークエルフの後ろには小さい女の子が2人いるのが確認出来る。
つまりあっちは女子3人のパーティらしい。
ん??
まさか……あれって……
「ソフィー……?」
「え?ヴィンス…?」
ダークエルフの前に出てきた女の子は少し大人びた感じがするが、やっぱりソフィーだ。




