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 閑話 「友達」

 ~~ソフィア視点~~ 


 もうすぐヴィンス達と離れ2年になろうとしている。


 あっという間だった様な気もすれば、とても長かった様な気もする。


 この2年近くの間に私は色んな事を学んだ。


 魔術、剣術は勿論だけれどモノの見方や考え方も私の家庭教師でダークエルフのアステリアさん、そして大好きなお父様からも色々と学び少しは成長したつもり。


 早くヴィンスに会って話したい事、聞きたい事が山の様にある。


 何しろヴィンスは魔族王子が打ち立てた7歳と言う冒険者登録記録を2歳下回る5歳で受かった事は今や世間で知らない人はいないだろうし、それだけじゃない、5歳で冒険者登録したのは竜を狩りに行く為で冒険者登録してすぐに地竜1匹、翼竜2匹を狩ったって言う話は世界を駆け巡る話題になって一躍有名人になった。


 ただ気になるのはヴィンスと一緒に冒険者登録をしたっていう子。

 噂だと魔族王子と同じ年の7歳で冒険者試験に受かりその足でヴィンスたちのパーティに参加しヴィンスたちと一緒に竜を狩ったとか。

 なんでもチコレット領主の一人娘で見た目も育ちもお嬢様だけど、その剣は剛剣で相当な使い手らしい。


 そんな噂を聞いていたら私としては色んな意味でライバルになりそうで気が気じゃない……。


「ねぇ、ソフィー?ソフィー?!」


「え??あ、ああ、アステリア、どうかしました?」

「どうかしましたじゃないわよ、さっきっから何回呼んでいると思ってるの?」


「ごめんなさい、ちょっと考え事していて…」

「考え事って?どうせまたヴィンスって子の事でしょう?」


「え?ええ、ま、まぁ……」


 私のサンクルーズ魔法学校へ入学にあたり保護者兼家庭教師を引き受けてくれたアステリアと一緒に故郷であるシュミットを後にして早3ヶ月、もうすぐサンクルーズ領に入るところまで来た。


「楽しみな気持ちは分かるし、私もそのヴィンスって子に会うのは楽しみよ?(そら)魔術って言うのも見た事ないから見てみたいし。だけど今は前を良く見てごらんなさい」


「え?前…?あ!!」


 私はボーっと考え事をしていて気付かなかったが私達の30m位先に魔物が3匹いる!


「だから、さっきから声掛けてたのにソフィーったら全然反応しないんだから」

「あ、その、すみません」


 出会った時からそうだけどアステリアは慌てる事なく優雅にしている。

 今でこそ慣れたけど、もしそうやって優雅にしている時に魔物が襲ってきたらどうするの?って思う。

 まあ、来たら来たで問題なく対応するのだけどね…。


「さ、ソフィー、それじゃあ今晩の食材を確保してきて」

「はい!それじゃ行って来ます」


 アステリアは優雅な表情で腕を組んだまま右掌をあげ答える。


 で、あいつ等はなんて言う魔物なんだろ?いつもアステリアは片付けてからしか教えてくれないしな。


 先ず特徴を見る、見た目は猪のデカイのって感じね。

 体の大きさは?3mちょいってとこかしら。

 体毛は黒って言うことは大丈夫かしら?魔物は見た目にそぐわない色や奇抜な色の時は特に注意が必要だって言ってたけど。

 目立つ角や牙、爪は?特に無い、特に無いけどあのおでこについた黄色い石は何かしら?魔石?

 当然、あの魔石を使っての攻撃でしょうね。


 って、ちょっと!まだ分析中なのに!!


 アステリアの教え通り先ずは相手を分析して最も効率の良い攻撃手段を考えていた私の都合なんかお構いなしに突進してきた、そりゃそうか。


 ってまぁ、それも想定内だけど。


 3匹が縦1列に並び直したけど、やっぱりおでこの魔石を利用して攻撃してくるのね。


 魔物は鼻先が地面につきそうな位低くし、おでこに付いた魔石を突き出す感じで突進してくる。

 そこそこ早い、そこそこって言うのは経験上、気をつけた方が良いスピードね。

 単純に早いだけなら頭突き攻撃って線が濃いけど、あのスピードじゃあ当たっても致命傷にはならないでしょうから。何かしらの手を隠してると思った方が良いわね。


 さぁ、どう来る?


 っ!?


 おでこの魔石が光り目が眩む!

 その魔石はそう使うの?


 私は霞む目で何となく気配を察しジャンプする。

 あの姿勢からして突撃してくるのは分かってる。


 1匹目をジャンプしてかわすと1匹目の後ろから2匹目が口を開けて襲いかかってきた!

 口の中は小さい牙が無数に生え揃っている、それは喉までも。


 私は1匹目の頭を踏み台にして更にジャンプする!

 気のせいか、1匹目が『な?俺を踏み台にしやがった?!』とか言ってそうな気がした。


 2匹目の頭上からガラ空きの急所、延髄目がけ雷矢(サンダーアロー)を放つ!


 3匹目は私がこれ以上飛ぶのを阻止しようとしたのか私より高く飛び上がった!


「やっぱりバカなのかしら?」


 動物の最大の弱点であるお腹を私の前に晒したものだから私は遠慮なく3匹目のどてっぱらに雷矢(サンダーアロー)をぶっ放した。


 2匹目、3匹目ともに急所に雷矢が突き刺さり絶命した。


 う〜ん、まだまだ分析不足なのかしら?敵の一度の攻撃につき1匹取り逃しちゃった。


 悔やんでいる私を尻目に生き残った1匹は撤退を始めるみたい、つまり奴らの攻撃は三位一体で成り立っていると言う事ね。


 だけど撤退するにしてもそっちはマズイんじゃない?

 1匹は私の追撃を警戒し私の方ばかり見ているけど、それよりもよっぽど前に注意した方が良いと思うけど。


 撤退を図った1匹の進路上にはアステリアがいる。


 アステリアは腕を組んだまま気だるそうに私に言う。


「ソフィー、一度で仕留められなかったのはあなたの判断ミスね」

「だって一度の攻撃が失敗したら撤退するなんて読めないですよ」

「一度の攻撃で仕留め損なったら逃げるかもって読めなかったって事でしょう?それってぇ」


 アステリアが口角を少し上げ得意げに言う。

 悔しいがその通りだ。


「そ、そうです…」

「仕方ないわね、こっちの向かってくる以上私が仕留めるけど貸しよ」

「はい……」


 そんなやりとりをしていると流石に魔物も退路上にアステリアがいることに気づき例の魔石を発動させた。


 アステリアが白光に包まれ一瞬見えなくなる。


 一瞬光に包まれ見えなくなったアステリアが再び見えた時には魔物は首と胴体が別れ絶命していた。


「ふふふ、どう?」

「何ですか?どう?って」

「そのままよ?どう私の腕は?って事」


 アステリアは腕を組んだままだ。つまり一歩も動かずにあれ位の魔物なら狩れるって事ね。


「それは私との戦い見てあの魔石が光るの分かってた上で対処してたんだから当然の結果じゃないですか」

「本気でそんなこと言ってる?」


 腕を組み斜に構えたアステリアが見透かした様に私に問う。


「くっ……い、いいえ、私のミスでした……」

「ふふふ、素直でよろしい、それじゃあソイツらの額に付いている魔石を取って2匹は焼却処理、1匹は食材にしましょう」

「はい」


 私は相棒である緋色の雷光(スカーレットブリッツ)で魔物の額から魔石を剥ぎ取る。

 緋色の雷光(スカーレットブリッツ)はアステリアさんが私にくれた先端に雷属性の魔石が乗り、柄が銀で出来た王笏でとても気に入っている。


「で?この魔物とこの魔石は何て言うんです?」


「この魔物は黒色星猪(ブラックスターボア)、常に3匹で行動する形態から黒い三○星とも呼ばれてるわ、特徴はやはり額にある魔石拡散光石(フラッシュストーン)を使った奇襲攻撃ね、その剥ぎ取った拡散光石(フラッシュストーン)に魔力に少しだけ注いで見て」


 右手に一つだけ魔石を持ち言われた通り少しだけ魔力を注いでみる、すると淡く光を放った。


「そうやるとしばらくは光り続けるから迷宮(ダンジョン)や暗闇で魔術を使わずとも先を照らしてくれるから持っていると便利よ、ちなみに一気に大量の魔力を注入すればさっきの目眩しの様にも使えるわ」


「へぇ〜これは便利ですね」


「さ、そんな事より今夜の食材分だけ処理して残りは処分しちゃって」

「あ、はい」


 アスエリアは宵越しの食材は持たない主義、毎日新鮮な食材しか口にしない。

 勿体無い気もするがそうやって経験値を積み色んな事を覚えていくんだとか。



 その後、私達は夕食をとり、アステリア直伝の魔法陣を描き結界を張り就寝した。





 ~



 まだ薄暗い中、私は肩を揺すられ目が覚めた。

 まだ夜明け前じゃない…。

 何事?まだ寝てたいんだけど……と寝ぼけ眼でアステリアを見る。


 アステリアは寝ている。


 え!?じゃあ誰が私を起こしたの??

 私は慌てて身構える!!


「久しぶりだな、ソフィア」

「っ!?ベ、ベルリネッタ!?」


 私がビックリしながらもベルリネッタと認識したのと同時にベルリネッタの背後から氷の矢が放たれた!!


 ベルリネッタは埃でも掃うかの様に氷の矢を左手で弾き軌道を逸らす。


「どいてなさい!ソフィー!!」


 氷の矢を放ったのはアステリアさんだ。


「いきなりの挨拶だなダークエルフ……」

「どうやってこの結界内に?!」


 アステリアさんは完全に戦闘モードだ。

 いつもの優雅な姿勢は無く、って言うかこんな焦っているアステリアさんを見るのは初めてだ。


「ちょ、ちょっと待って!アステリアさん!!」

「そうだ、先ずは落ち着け、ダークエルフよ」


 アステリアさんもいつもは落ち着いているが今は額に汗をかき緊張が伝わる、それに対しベルリネッタは何て言うか警戒心がまるで感じられない。


「ソフィー、知り合い!?」


 アステリアさんの頬に冷や汗が伝わっているのが目に見て分かる。


「友達よ!!ベルリネッタっていうの!アステリアさんもその杖を下げて!」

「…と、友達…って?」


 アステリアさんは焦りの表情で目を見開き私とベルリネッタを見る。


「そうだ、ソフィアは私の友達第1号なのだぞ」

「ほ、本当……?」


 ベルリネッタは腕を組み得意げに言い、アステリアさんは警戒しつつも杖を下げる。


「本当よ、前にベルリネッタに助けてもらって、命の恩人なんだけど友達になってもらったの」

「命の恩人って、その黒い髪に真っ青な瞳って…貴女は死神じゃ…?」


 アステリアさんは私とベルリネッタを交互に見て恐る恐ると言った感じで問う。


「そうだ、私は死神だが死神に友達がいちゃ変か?いや、変だよな?未だかつて友達なんていなかったし実際800年から生きていて初めて友達って言うのが出来た訳だしな」


 ベルリネッタは腕を組んだまま片手を顎にやりうんうん頷き1人で納得している様だ。


「その死神である貴女が何故ソフィーと友達に?」

「ソフィアを気に入ったからだ」


「……気に入ったとはどう理解すれば良いのでしょうか?」

「ふふふ、さすが私の友達ソフィアの友達だな、私の立場が分かった上で私に殺気を向けるとはな」


 緊張が手に取る様に分かるアステリアさんとは対照的にどこか楽しげなベルリネッタ、って言ってる場合じゃないアステリアさんを止めないと!


「アステリアさ…!?」


 アステリアさんが左手で私を制す。


「ソフィー、悪いけど黙ってて」


 アステリアさんの杖が再びベルリネッタに向けられる。


「もう一度聞く死神、ソフィーを気に入ったとはどういう意味?返答の内容次第では私は貴女に挑まなくてはならない」

「ちょっと待って下さいアステリアさん!」


 アステリアさんも到底敵う相手で無い事は百の承知だろう、決死の覚悟の表情だ、止めないと。


「ふふふ、幸せ者だなソフィアは。

 アステリアと言ったなダークエルフ、其方も気に入った。

 私に敵う訳が無いと理解しつつもソフィーを守る為に玉砕の覚悟が持てるなんて普通なかなか出来る事じゃない、ふふ、心配しなくて良い、気に入ったと言うのは言葉のままでソフィーを死に追いやるとか不幸をもたらすとかの他意は無いし、むしろその逆で其方と一緒でソフィアの味方だ」


 ベルリネッタは組んだ腕を解きその腕を腰にやりアステリアさんに諭す様に言う。


「そういう事なの!アステリアさん、だから安心して大丈夫よ」


 半信半疑と言った目で私の方も見ながらベルリネッタも見るアステリアさん。


「そ、そうだ!!ね、ねぇベルリネッタ、アステリアさんの事気に入ったならアステリアさんもベルリネッタの友達にって言うのはどう?」

「な、わ、私が死神の友達…!?」


「私は良いぞ?実際さっき言った様に私は其方を気に入ったしな」


 驚きを隠せないアステリアさんにベルリネッタが言う。


「そ、それが本当なら非常に光栄だけど、貴女ならダークエルフがどういう存在か知っていると思いますけど?」

「もちろんダークエルフの事は知っている、普通のエルフとは対照的に邪悪な存在として古くから扱われ忌み嫌われている存在だろ?」


「ふ、本人を目の前にしてはっきりと言ってくれるけど、まぁそういう事ね、その邪悪な存在が神の友達になんてなれると?」


 道徳上種族差別はやめましょうなんて世間では言われてるけど現実はまだまだ差別がありダークエルフなんかは邪悪な存在として世間からは恐れられ、白い目で見られ事実無根の罪を着せられる事も間々あるって言うのが現実にある。


「もちろん、と言うより不幸の象徴である私と邪悪な存在とされる其方、むしろ相性ぴったりなんじゃないか?」

「ふ、ふふふ、確かに言われてみればそうかも知れないわね」


 アステリアさんは自嘲気味に言うがどこか清々しい笑顔だ。


「不幸とか邪悪とかって私には関係ないわ、2人とも尊敬できる素晴らしい自慢の友達よ!」


 これは紛れもなく本音、ええ、胸を張って堂々と言えるわ。


「ソフィー…。それじゃあベルリネッタ様、改めてお友達になって頂けるのかしら?」

「良いけど、一つ条件がある」

「え?条件って…?」


 アステリアさんの顔が若干曇る、けど心配しなくて良いはず。


「友達は私の名前に様とかさんとかつけない事、良い?私の事はベルリネッタって呼んで言葉も人族同士が話す言葉使いで話す事、これが条件だ」


 やっぱりね、これって意外と戸惑う注文なのよね。


「ベ、ベルリネッタ…っていくらなんでも神様に向かって…」


 思った通りの反応ね、私もまったく同じ事言ったっけ。


「良いのよ、アステリアさん、私も最初は戸惑ったけどそれがベルリネッタの望みなんだから」

「た、確かに、ソフィーはさっきからベルリネッタって呼び捨てね」


「そういう事だ」


 相変わらずクールな表情のベルリネッタだけど機嫌良さそうに見える。


「分かったわ、ベルリネッタ、宜しくね」


 どことなくぎこちないけどアステリアさんもベルリネッタの意向を汲んだみたい。


「あ、ベルリネッタ!私、大事な事を言いそびれてたけど、私の事はソフィアじゃなくってソフィーって呼んで、私が気を許した人にはそう呼んでもらってるの」


「分かった、これからからはソフィーと呼ぼう」


「それじゃあ改めてベルリネッタ、よろしく!」

「私もよろしくね、ベルリネッタ」


「ああ、よろしくなソフィー、アステリア、それにしてもソフィーのおかげでこの私に2人も友達が出来たな、そうだ!何か2人にお礼をしよう!」


「ベルリネッタ、友達になるのにいちいちお礼なんて要らないわよ、何だったら神様と友達に慣れた私達こそ何か御礼をしなきゃいけない立場なんだし」


 確かにアステリアさんの言う通りだ、厚かましくも神様と友達になれたんだから。普通じゃありえないわよね。


「お礼なんて言っても大した事する訳じゃない、いつでも其方たちと一緒にいられる様に私からの贈り物(ギフト)だから受け取ってくれ、何しろ800年生きていて今まで友達なんていなかったし捧げ物を貰っても私から贈り物を送った事なんて無かったんだからな」


「え、ま、まぁ…ベルリネッタと一緒にいられる証って言うならありがたく貰うけど…良いの?」

「ああ、もちろん」


 私とアステリアさんは何だか悪い気がしながらも顔を見合わせありがたく贈り物(ギフト)を頂戴する事にした。


「それじゃあ行くぞ?アステリアには加護を、ソフィーには賦与を与える」


 ベルリネッタは特に呪文やら儀式めいた事もせずさらりと言ってアステリアさんと私に手をかざす。

 次の瞬間かざしたベルリネッタの手が光り右手の光はアステリアさんに、左手の光は私に向かってゆっくりと移動し体に入ってくる。

 体に光が入って瞬間、痺れる様な感覚がし全身から光が溢れた。


「うん、上手くいったみたいだな」


 ベルリネッタは腕を組み満足げだ。


「ね、ねえベルリネッタ、加護と賦与って一体何をくれたの?」


 私は特に力がみなぎるでもなく、特に何の変化も感じられなかったので聞いてみる。


「ソフィーには私と同じ氷属性の力を賦与したから私が使える氷魔術と水魔術は使えるようになったし得意属性に氷属性が加わった、ちなみに今までのソフィーの得意属性は雷だったがこれで最得意属性は氷になっってしまったがな」


 そう言われても実感が無い。

 試しに前に見たベルリネッタの氷の剣を出現させてみる。


 っ!?


 すると手にいきなり大きく鋭い刃を持つ氷の剣が出現した!

 あの時見たヤツとまったく同じだ。


「ふふふ、言ったとおりだろ?まぁ氷魔術に関してはどんな神級魔術でも使えない魔術は無いから安心しろ」


「あ、ありが…とう…って…ビックリしすぎちゃった……」


 自分で出した氷の剣は何故か冷たくなくずっと持っていられた。


「そんな剣ならいくらでも出せるからさっさと捨ててしまえ」

「え?あ、ああ、うん」


 私は地面に突き刺す様に捨ててみるとベルリネッタの時と同じ様に音も無く地面にスッと突き刺さる。


「で、アステリアだが、其方には畏怖免除の加護を授けたからこれから行く先々での面倒は減るぞ」

「そ、そうなの…?」


「ああ、それも私と同じ能力で、その能力があればいちいち会う者会う者に恐れられないで済むから安心しろ」


 確かにダークエルフって言うだけで稀少種族って言う事もあるけどひそひそと話す人や何もしていないのに逃げだす人もいていい迷惑だったしアステリアさんは慣れたとは言っていたけど一緒にいても傷つくんだからアステリアさんにとってもそれはありがたい能力のはず。


「確かにベルリネッタに会った時、死神だって思ったけど恐怖心はあまり無かった」

「え、ええ、そうね、私も力の差は嫌って言うほど感じたけど死神って言う事での恐怖は無かったわ」


 言われてみれば私もアステリアさんも死神にいきなり会ってもその存在に恐れる事は無かった。


「もし私が畏怖免除を纏っていなかったら通常の者は恐怖のあまり身動きも出来ず、弱い者なら下手すれば死んでしまう事もあるからな」

「確かに!あの臆病者のガスラン達でさえ死にはしなかった!戦いでビビッてたけど」


「ああ、あの時の人族の子供達だな、ヤツらには一瞬だけ畏怖免除効果を解除して忠告がな」

「そしたらあいつ等おしっこ漏らしちゃって!」

「ふふふ、そんな事もあったな」


「そう、そんな事が?それなら効果の程に疑いようは無いわね」


 三人で笑う、これが友情なのね!


「ええ、その効果は私が保証する!」


「何言ってるソフィー、保証するのは私、だろ?」

「あ、そっか!えへへへへへ」


 死神のベルリネッタが突っ込んでくるとは。


「ふ、ソフィーらしいな」

「ええ、ソフィーらしいわ」


「え、どう言う意味?」

「そう言う意味よ」

「もう、アステリアさん!」


「ふふふふふふ」

「ふふふふふふ」

「えへへへへへ」


 朝日が差込む森に私達3人の笑い声が木霊する。


「で?其方たちは何処に向かってるのだ?」

「サンクルーズ!サンクルーズの魔法学校に入学するの」


「ほう、魔法学校か、だが既に私と同じ魔術が使えれば特に学ぶ事も無いんじゃないか?」


 まぁ確かにそうだけど……。


「違うのよベルリネッタ、ソフィーは魔術を学びに行く目的もあるのだけど本当の目的はそこじゃないの」

「本当の目的?」


「言って良い?ソフィー」


 アステリアさんが私に確認するが別に隠す事じゃないしベルリネッタも友達だから全然構わない。


「ちょっと恥ずかしいけど友達だしね、もちろん良いわ」


「実はねベルリネッタ、ソフィーには許婚がいてね、その許婚と2年ぶりに会うのが楽しみで仕方ないらしいの」


「ほう、ソフィーに許婚がいたとはな」


 ベルリネッタは意外そうな顔をしているが、そりゃそうよね。


「幼馴染で小さい時はそんなでも無かったんだけどある日を境に人が変わったみたいに魅力的になったらしいわ」

「魅力的って、アステリアさん……」


「違うの?」

「いや、ま、まぁ、魅力的って言うか……」


 人から言われると何だか照れる。


「人が変わったとは、どう言う事だ……?」

「私も詳しくは聞いていなったけどそんなに小さい時と今が違うの?」


 ベルリネッタとアステリアさんが揃って聞いてくる。


「え、ええ、まぁ。何て言うのかな?ヴィンスは生まれた時から髪の毛が銀色で本人もそれがコンプレックスだったし、まぁそれが原因かもともと引込み思案って言うのあってか、ガスラン達によくいじめられていたの」


「……人族で銀髪は確かに珍しいな」


 ベルリネッタは腕を組み何やら真剣に聞いているがそんな真剣に聞く程の話でも無いんだけどな。


「で、ある日、ガスラン達にいじめられて橋から転落する事故があったんだけど、その時に何故だか分からないんだけどコンプレックスだった髪の毛が金色になって文字通り覚醒したみたいに前向きになったの」


「…………」


 ベルリネッタが神妙な面持ちで聞いているのは何でだろ?そんなに興味持つ話かな?


「で、剣術も魔術もあっという間に上達してソフィーと許婚になり2年後に魔法学校に入学して再会する事を約束したのよねぇ?」

「え、ええ、まぁちょっとざっくりし過ぎですけどそ、そう言う事ですかね…」


 私が幾度となく話したからアステリアさんも耳タコで私に代わって補足説明してくれる。


「……銀の髪が金になり、人が変わった……」


 ベルリネッタは確認する様につぶやき何やら考え込んでいる様だ。


「ベルリネッタ…?どうかした……?」


 私も何だか不安な気持ちになりベルリネッタに聞いてみる。


「…い、いや、何でもない……何かヒントになればと思って過去にそう言う例があったか考えていただけだ………」

「そ、そう…」


 そう言われればもっともらしいけど、何か引っ掛かるのは気のせいかしら。


「で?過去にそう言った事ってあった?」


「いや、無かったな…」


 アステリアさんも特に不思議に思っていないみたいだし私の考えすぎかしら?


「なぁソフィー、アステリア、私もサンクルーズまで一緒して良いか?」

「ええ、もちろん良いわよ、ね、ソフィー?」


「え、ええ…ベルリネッタ」


 何だろ?何かすっきりしないこの感じは。


 こうしてベルリネッタと言う特別な存在が加わりサンクルーズまでのあと少しだがここからは女3人での旅路となった。

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