第二十九話 「魔族王子」
「パナメーラ!!」
ランスさんが言ったその名前に俺は聞き覚えがあった。
聞いた事あったけど……誰だっけ?えーっと、ここまで出掛かってるんだけど……。
「あれがパナメーラ……」
カーラちゃんも知っている様でそいつから目を離さずにいる。
『……カーラちゃん、パナメーラって誰でしたっけ……?』
「え??ヴィンス様、ご存じないんですか??」
カーラちゃんがビックリした表情で俺を見る、そんなに有名人だっけ?
『いえ、聞いた事ある気はするんですけど、出てこなくて……』
「魔族の王子ですよ、冒険者登録最年少の」
『あ!ああ、あのパナメーラね、はいはい』
思い出した、そうだ!かつての冒険者最年少記録保持者の魔族王子ね!
「おいそこ、なにをさっきからヒソヒソと言っている?」
パナメーラは黒色飛竜の背中に立ち俺を指差している。
うん、やっぱりお子様の俺と身長は変わらない。
だが何だろ?俺と違うのは……悔しいがヤツの方が気品あると言うか…何だろ?やっぱ王子だけあって育ちが良いんだろうな。
身長は俺と変わらなさそうだが態度は向こうの方がデカイ、俺はどちらかと言うと出る杭にならない様にするタイプだからな。
見た目で先ず特徴的なのが銀色の髪だ。
確か銀色は珍しく前の俺もそれがコンプレックスでいじめられていたらしいが、その銀髪を隠すどころか逆立った髪型でより目立つ。
魔族だけあってラファエラさん同様に薄い紫色の肌とおでこに2本角が生えている。
それと目が三白眼なのが特徴か。
服装も何だか高そうな服に見える。
「おい貴様聞いてるのか?そうだ、そこのチビ、お前だ、俺様の質問に答えろ」
俺?俺に言ってるのか?それにチビって、お前も俺と変わんねーじゃねーか!
「あ、いえ、かの有名なパナメーラさんのお目にかかれて光栄だなと……」
「ふん、ごまかそうとしても騙されんぞ、それに俺様はそう言うおべんちゃらに乗せられるタイプでは無い」
とか言ってる割には口元がニヤニヤするのを必死に堪えている様に見えるが……。
「ところで魔族の王子がこんなところに何の用が?」
「お前たち人族が地竜ごときに頭抱えていると聞いたからな、この俺様が軽く地竜を倒してやるかと思ったのだが………もう……必要ない……みたいだな……」
きっと意気揚々と来たのだろうけど、亡骸になっている地竜、翼竜を見てるその姿は平然を装っているが結構ショックっぽい。
「あ、あの……何か、すいません…」
「何故謝る!!謝られると俺様ががっかりしている様じゃないか!」
「え?違うんですか?」
「違うに決まっているだろ!!何故俺様ががっかりする必要がある?!」
完全にムキになっているところ見ると図星だな……。
「えっと……それは……パナメーラさんがきっと華麗に竜狩りをする姿を見せてくれる予定だったのかな?と思いまして、もしそうだとしたらそれを見れなかった僕らも残念だったなと思いますし」
「ふ、ふん、ま、まぁ確かに俺様だったら華麗に素早く地竜ごとき倒せるがな、むふ」
「今、むふって言いました?」
「い、言うか!!ゴホッとむせただけだ!!」
なかなか面白いな、魔族の王子は。イメージとだいぶ違ったけど。
いや、もちろん良い意味で。
「ところでパナメーラよ、一つ聞いていいか?」
「何だ、大人の人族よ」
デュークさんが挙手して質問する。
それに対しパナメーラは腕を組み上から目線で応える。
「その黒色飛竜はお前さんのペットなのか?」
「ふふん、良い質問だな、大人の人族よ」
あ、また口がモゴモゴしている!きっとうれしい時はああやって口元が緩むのを堪えモゴモゴするんだな。
「とうっ!」
魔族王子のパナメーラは華麗にジャンプしクルクルと回転しながら黒色飛竜の右側の角の先につま先で立ち腕を組む、って言うか回転する意味は?
「知りたいか?人族よ」
パナメーラは腕を組んだまま片目を閉じ片目は上から見下ろしながら尋ねる。
口はと言えばモゴモゴとしている。
よっぽど喋りたいんだろうな。
「え?あ、ああ、まぁ…」
質問したデュークさんも何だか面倒くさくなってきたのか気の無い返事だ。
「何だその気の無い返事は!!知りたくないのか?!」
パナメーラは組んでいた腕を解き両目を見開き声を荒げる。
ダメだよデュークさん、相手は子供なんだから。
「パナメーラさん!僕は是非ともお聞かせ願いたいです!」
「あ、私も聞きたいです!」
お、カーラちゃんナイスフォロー!
「ふふん、そうかそうか是非とも聞きたいか、大人の人族に比べ子供の人族はなかなか素直じゃないか、ようし良いだろう教えてやる」
ふぅ……やれやれだぜ。
「この黒色飛竜はそう、俺様のペットだ。何?どうやって黒色飛竜をペットにしたのかって?ふふん、どうしても知りたいいって言うのなら教えてやらんでもないが…」
パナメーラはチラッと俺を見た、って言うかもはやアイコンタクトだ。
いや、ペットかどうか聞いただけなんだが……でもいいか、確かに興味はある。
どうやって竜を手懐けたんだ?
うん、知りたい!
「ええ、是非とも聞きたいです!ね、皆さん?もし宜しければご教授願えませんか?パナメーラさん!」
俺は皆に意見を求める、いいか?皆、空気読めよ…。
「おお、確かに聞きたいな」
「竜人族以外が竜を操れるなんて聞いた事無いし!」
「しかも飛竜の上位種、黒色飛竜なんて竜人族でも一部のヤツしか乗れないんじゃねーか?」
「うむ、パナメーラよ是非ともお教え願えるか?」
輩冒険者たちがざわめく。
よっし!百点満点の答えだぞ、お前達!!
「パナメーラ様、お願いします!」
「ふ、ふふふ、はーっはっはっはぁ!良いだろう!そこまで頼むのなら教えてやる、教えてやるが実践出来るかどうかは分からんがな!」
う~ん、パナメーラの満足度は満たされたようだ。
「お願いします!」
俺はダメ押し的にお願いの声を掛ける。
「ようし!良いか?よく聞け人族よ!竜と言うのは非常に知能とプライドが高い生き物だ、だからこそそこを逆手に取るのだ」
「と言うと?」
「相手に圧倒的な力の差を見せ付ければ良いと言う事。知能が高い分、勝てないと判断したら下につくし、絶対的な権力者の下で力になれる事に誇りを見出すのだ」
「なるほどぉ~勉強になりやす!」
俺は下手に出て魔族の王子を気持ちよくしてやる。
「ふふふ、お前、なかなか見る目があるな、名は何と申す?」
作戦通りと言うと響きが悪いが思った通りの反応で口元がもごもごしている。
「へぇ、ヴィンスでやんす!」
「ヴィンスか、してそっちの女子は?」
「わ、私?わ、私はカーラと申します」
「ヴィンスとカーラか、覚えておこう、とうっ!!」
う~ん、だいぶ気持ちよくなってるなパナメーラよ。
パナメーラは満足げに竜の背中の御者席に戻り手綱を持つ。
その姿はどことなく暴れん坊の将軍っぽい。
「それでは皆のもの、俺様は帰る!達者でな、はあっ!!」
パナメーラが手綱を強く引くと黒色飛竜はその大きな翼を広げゆっくりと力強く羽ばたかせ優雅に大空へと上がっていく。
上空まで行くと大きく旋回しばっさばっさと翼を大きく羽ばたかせると一気に加速しあっと言う間に見えなくなった。
「……何か嵐の様な人でしたね」
「ああ、魔族の王子には初めて会ったが想像してたのと何か……違ったな」
「で、でも嫌な人では無さそうでしたね」
俺とカーラちゃんをはじめ皆、何だかグッタリしている。
きっと竜を2匹も狩ったからだよね!うん、そうに違いない!
決して竜を相手にするより魔族王子の方が疲れるなんて事は無い……はず…。
さ、そうとなればさっさと帰るとしますかね。
「だが、その力は本物だぞ」
急にデュークさんが真面目な顔をする。
「ああ、まったく隙が無かったしな」
シンプソンさんまでも、え?そうなの?俺なんか隙もクソも分からんかったけど。
「あの黒色飛竜は完全にパナメーラの配下でしたしね、実際、完全に下したのでしょうね」
「黒色飛竜をあんな子供が1人で叩きのめしたとは信じられないが本当だろうな、あのイラっとした時の殺気ときたら半端なかったしな」
ええ?そうなの?確かに俺とカーラちゃん以外は冷や汗かいてるし!
「まあ、それはそれとして、今はこっちに取り掛からねーとな、とりあえず竜の残骸は地中深く埋めてから一旦街に戻って人手を集めてまた戻ってこよう」
デュークさんが仕切りなおす。
「街に戻ったら防衛隊を使って竜の運びましょう」
「助かるぜ、ランス」
「じゃあヴィンス、土魔術で深い穴、頼んで良いか?」
「ええ、お安い御用です」
俺はすぐさま土魔術で竜の残骸脇に深い穴開けた。
そこにカーラちゃんが竜の残骸3匹を落とす。
そうしてまた俺が土魔術で埋め戻して皆で一旦街まで戻った。
~
その後、俺達は街で防衛隊の人たち数人を集って再び現場まで戻り、竜の残骸を運搬する事2往復で何とか日が暮れるまでに回収し終えた。
回収した3体の竜はチコレット冒険者ギルドの裏手にある闘技場へと持ち込んだのだが、当然街の人たちもそれを見ていて自然と闘技場へ人が集まった。
その数で言えば領民のほとんどだ。
それだけの人が竜を見に集まってきたものだから、自然と屋台やら出店が出て文字通りお祭り騒ぎとなった。
おかげで竜狩りの立役者である俺達デザートフォックスの面々は一躍、時の人として有名になってしまったが、まぁ英雄扱いされて嫌な気分では無いけど。
ちなみに竜の残骸のうちギルド依頼であった地竜は冒険者ギルドが厳重に管理しその素材は街の公益費として有効活用される事となったが、竜の肉は領主ニコラウスの計らいで領民全員に振舞われた。
何しろ竜の肉なんて滅多に口にする機会なんて無いからそりゃもう領民は大喜びし大いに盛り上がった!
翼竜はギルド依頼でも無かった事もあり俺達デザートフォックスで山分けとなったからデュークさんにシンプソンさんといった定職に就いていない2人はこれでしばらくは金を工面する必要が無いと言って喜んでいた、まぁ無駄遣いしなければ良いんだが……。
~~翌朝~~
俺達は改めて任務の顛末を竜狩り依頼主であるチコレット領主ニコラウス・オズバンドに報告しにニコラウス邸にやって来ている。
通された部屋は応接間で上座にニコラウス、左側にブルーノ、ランスさんといった街に従事している者と身内であるカーラちゃんが、右側にはデュークさん、シンプソンさん、俺が座っている。
一通り、親方であるブルーノから竜狩り顛末を聞いたニコラウスは俺達に労をねぎらう言葉を掛けてくれた。
「さて、それから依頼の報酬とは別にデュークとシンプソンに頼みがあるんだが聞いてくれるか?」
ニコラウスさんから2人に頼みとは何だろう?
「俺とシンプソンに?領主の旦那から?」
「何でしょう?俺達に出来る事なら引き受けますが」
2人とも皆目見当がつかないと言った様子だ、俺やカーラちゃん、ブルーノさん、ランスさんも顔を見合わせるが皆、分からないと言った顔だ。
「実はな、前から考えていたんだがデューク、お前には領主付き扱いで魔術講師を頼みたい、そしてシンプソン、お前には領土防衛隊の中隊長を任命したいと考えているんだがどうだ?2人とも」
デュークさんとシンプソンさんは顔を見合わせる。
「冒険者のお前達だ、自由気ままにやっていたい気持ちもあるだろうがどうだ?この辺で定職に就いてみても悪くねーと思うが。もちろん社宅としてぞれぞれに住居も提供するつもりだ」
「あーっと………」
デュークさんは頭ん中を整理している様だ。
「俺が防衛隊中隊長?っスか?」
シンプソンさんも整理がついていない様子だ。
「いい話じゃねーかデューク、俺もいつまでもお前みてーのに家にいられちゃ敵わねーと思ってたしな」
「シンプソン、お前も良い話じゃないか、一気に私と対等の立場じゃないか」
ブルーノとランスさんも後押しする。
「それからブルーノ、お前には頼みじゃなく任命するが、今回の働きを鑑みて冒険者ギルドチコレット支部長だ、冒険者の事なら詳しいだろうし冒険者の奴らからも一目置かれてんだろ?なら適役だろ?」
「え?は?お、俺がギルドの支部長??」
ブルーノも目を白黒させ驚きを隠せない。
「それからランス、テメーもシンプソンとは別に以前からの功労も鑑みてテメーは防衛隊中隊長から騎士団長に昇格だ」
「わ、私が騎士団の団長??」
「今回のテメー達の働きからすりゃ当然の待遇だろう?ま、デュークはちっとばかし物足りねーかも知んねーけどな」
ニコラウスは顎鬚を擦りながら言う。
「と言う事はデューク様に引き続き稽古つけて頂けると言う事ですか?」
「そうしてーと思ってるが、デュークどうだ?カーラも願っているみてーだし、引き受けてくれやしねーか?」
オズバンド親子にせがまれデュークさんは考え込む、つーか考え込む事か?
「……旦那よ、引き受けても良いが一つだけ条件がある」
デュークさんは自分の顔の前に人差し指を立てニコラウスに条件を突きつける。
「何だ?条件ってのは?」
ニコラウスも顎鬚を擦るのを止め、身を乗り出す。
「カーラちゃんと一緒にヴィンスも、って条件だ」
「ふはははは!!当然だ!!よしデュークは決まりだな!!」
「ああ、よろしく頼むぜ旦那!」
「やったぁ!!やりましたねヴィンス様!」
「ええ、一緒に頑張りましょう!」
デュークはニコラウスと、カーラちゃんは俺と握手する。
「ブルーノ、ランス、シンプソン、テメーらはどうだ?」
「お、俺は、いや、私は謹んでお受けします」
ブルーノは慌てて身を正して冒険者ギルド支部長を引き受けた。
「俺が防衛隊中隊長なんて信じられねーけど、この街を守るのが仕事ってんなら悪くねーな」
シンプソンさんも喜んで引き受ける。
「私もこの街が好きです、その街の治安を守るのが仕事なら喜んでお受け致します」
3人とも右手を左胸に当て頭を下げる。
「ふん、もともと断らせねーつもりだったがな」
ニコラウスさんは椅子に深く座り直し顎髭に手をやって満足げだ。
竜狩りは成功した上に新たな脅威になったであろう翼竜2匹も狩ってきたのだから当然と言えば当然なのかも知れないが4人とも大抜擢と言っていいだろう。
デュークさんとシンプソンさんは定職に就いたどころか住居まで手に入れた。
ちなみにデュークさんの家は俺達が現在住んでいる家だ。
デュークさん自身も引越ししなくて済むから助かるって言ってた。
ブルーノはと言えば支部長になり住居もグレードアップされる事となった、今後のブルーノの家、つまり俺ん家はニコラウス邸と冒険者ギルドのちょうど中間地点に位置するいわゆる高級住宅地にある石造りの三階建て一軒家で庭も広い、ちょっとした訓練なら庭で出来る位だ。
シンプソンさん家は街の中心部から市門に向かう途中にある二階建て一軒家を充てがってもらい、ランスさんはもともと中隊長の時に充てがわれた家をそのまま使う、ランスさん家とシンプソンさん家はご近所で間取りで言うとどちらも5LDKと2人とも1人で住むには広すぎると言っていたから、まぁ良いのだろう。
その後、ニコラウスさんの見る目が確かだったのか皆、仕事で結果を出し、ますます街での存在感が際立ち今じゃ皆、街で知らない人はいない。
そしてデュークさんに稽古をつけてもらっているカーラちゃんと俺もメキメキと力を付けてきたし、カーラちゃんに至っては好きではないと言っていた魔術も雷と火属性を除いた他の属性全てで上級まで達したから俺もデュークさんも立場が危うい。
俺も俺なりに魔術が上達しているが剣術が今一つって感じだ。俺としては剣術も平行して上達してデュークさんじゃないが魔法剣士になりたいのだが。
デュークさんもそうだけど魔術と剣術を同レベルで上達する事は稀らしい、デュークさんも自称魔法剣士だが実際は剣術より魔術の方が得意だし、ブルーノは逆、ランスさんも剣術に長けているが魔術は剣のスキルと比べれば今ひとつ劣る。
カーラちゃんは剣術も魔術もいわゆる使い手だが、剣術が飛びぬけている分魔術を同レベルかと言われればバランスは剣術に偏る、って言っても本人が魔法剣士になるつもりなら立派に魔法剣士だ。
ただ本人は剣術のブラッシュアップに励みがちだし剣でトップに立ちたいらしい。
でもやっぱ俺としては目指すは魔法剣士、だよな。
なんつっても響きがかっこいーじゃん?
魔法剣士!完全に厨二臭漂うがそれが良いじゃん?
そんなこんなで日々是修行也と頑張っている訳であります。
~~~1年半経過~~~
月日が経つって言うのは夢中になれる何かがあれば早く感じる訳で、気が付けば俺も6歳半ばになった。
この1年半は特に目立ったイベントも無く、魔物も狩ったが竜ほどの魔物に遭遇することは無く、たまに冒険者ギルドの依頼をこなし訓練兼小遣い稼ぎをした位で特筆するような事は無い。
いや、あった!
なんと冒険者ギルドのデカメロンことラファエラさんが結婚したのだ。
お相手はと言うと、何とシンプソンさんだ!
何でもシンプソンさんが冒険者の時から仲は良かったみたいだ。まぁシンプソンさんはいつも冒険者ギルドに入り浸っていたしな。
と言ってもラファエラさんもシンプソンさんも結婚後も仕事をそのまま続けているし特に変わった事は無いが、あのラファエラさんと一つ屋根の下に暮らして、あのデカメロンを好き放題出来るのかと思うと裏山。
まぁ良い、俺だっていつか見てろよ、色んな意味で必ず大きくなって大きなのをこの手に入れてやるぜ!!
……話が若干逸れたが俺が6歳半になったと言う話を続けよう。
6歳半と言う事は後、半年で7歳だ。
つまりサンクルーズ魔法学校へ入学する歳になる。
ソフィーとの約束と言うのもあるけどやっぱ魔術をもっとスキルアップしたいし、何よりソフィーと2年ぶりに会うのも楽しみだ。
俺がサンクルーズ魔法学校へ入学すると言う事はブルーノから領主であるニコラウスさんへは説明してあるから良いのだけれど、問題が発生した。
いや、まぁ問題って程でも無いんだよ?無いんだけど何だろ?変に気が重くなるのは。
ニコラウスさんから当然、カーラちゃんにも話が筒抜けるよね?
そしたらカーラちゃんが私も入学するとか言い出しちゃってぇ、ま、当然疚しい事は無いから何の問題も無いんだけれど……何だろね?
だってカーラちゃんが冒険者になった日、俺の許婚の座を奪うとか何とかって言ってたしな。
どこまで本気なのかは分からないけど。
俺もカーラちゃんは可愛いし好きか嫌いかで聞かれれば当然好きだし、それが恋愛感情かと言われればよく分かんないけど、分かんないって否定はしないって事は……いや、やめよう、カーラちゃんだって一時の気も迷いで今は俺の事なんざアウトオブ眼中の可能性の方が高いよな。
そうだよ、きっとそうだ、アブねーアブねー危うく勘違いするとこだったぜ。ふぅ……。
……じゃあ何でわざわざサンクルーズ魔法学校へ一緒に来る?
そ、そりゃあ剣術が突出している分、魔術も剣に追い付く位腕を上げたいんだよ!そ、そうだ!そうに決まっている!
剣術だけをブラッシュアップしたいんじゃなかったっけ…?
いや、だから、止めよう!勘違いして恥かくだけだって!
さっきからそう言ってんだろ?俺!!
こういう時こそ前世での苦い経験活かさないでどうするよ?
さ、さあ、サンクルーズへ行く支度をしなきゃな……。




