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第二十話 「少女との約束」

 ~~ブルーノ視線~~


「ニコラウス様、ブルーノ戻りました」


 ランスと共に領主ニコラウスのもとへ戻り謁見する。


「おう、ブルーノ。早速で悪いんだがちょっと良いか?」

「は!」


「ランス、お前も同席しろ」

「は!」


 何やら真面目顔のニコラウスは謁見の間から奥の応接室みたいな部屋へと場所を移し着座しての話となった。


「実はなブルーノ、今ここチコレットでは問題を抱えていてな…」

「問題、ですか…?」

「ああ、実はこの街の北部地域の森に1ヶ月程前から竜が棲みついてしまってな、実に困ってる」


 ニコラウスは肘掛付きの椅子に胡座をかく様にして座り顎髭をいじりながら話す。


「それはどの様な種の竜ですか?」

猛角地竜(マッドブルドラゴン)だ」


 ニコラウスは目を瞑りながら深々と背もたれに身を預ける。


「地竜とは言え猛角地竜(マッドブルドラゴン)です、地竜の中じゃ上位種にあたります…ってブルーノさんの方が良くご存じですね」


「まあ竜の存在自体もいつ街を襲うか悩みのタネなんだが、それ以上に物流が滞ってしまいこれまた街に影響がデカい」


 ニコラウスが目を瞑り背もたれに身を任せたままユラユラと椅子を揺らしながら言う。


「ブルーノさん、この街へ来る森の中で変に感じた事は無かったですか?」

「ああ、やたら魔物が多かったな」


 ランスが神妙な面持ちで頷く。


「そうなんです、北部に竜が現れた事によって北部にいた魔物達が竜を恐れ街よりも南下してしまい、逆に言うと街より南部に魔物が集中しシュミレットをはじめとする南、西方面からの物流も魔物被害が多発し滞っている状態でして徐々に街への影響が大きくなってしまっているのです」


「ブルーノ、お前もこれから住んで見りゃあ分かるがここチコレットは陸の孤島と呼んでもよい環境だ、一度物流が止まりゃその影響はデカい」


 ニコラウスは椅子に寄り掛かったまま目を開きその鋭い目線で俺を見る、別に威嚇しているつもりは無く真剣なだけなんだろうが迫力はある。


「してニコラウス様、このブルーノに竜退治を命じられるのですか?」


「ああ、流石に話が早ぇな、聞く所によるとクラリスは母親だから別としてもお前とデュークはそっち方面じゃ名が知れた実力者らしいじゃねーか」


 ニコラウスは鋭い目線のままニヤリと口角を上げる。もちろん悪巧みをしている訳ではないが悪い顔にみえる。


「ブルーノさん、着任早々大変な任務と言う事は私も理解していますが頼みます。私も及ばずながらご同行させて頂きます故、どうかお願い致します」


「ブルーノよ、どうだ?引き受けちゃくれねーか?もちろん冒険者ギルドに出してある1,000金貨褒賞を臨時ボーナスとして出すぜ」


 椅子に座ったままだがニコラウスが身を乗り出して聞いてくる。


 俺はスーッと息を吸い姿勢を正し言葉を発する。


「ニコラウス様、私は本日よりここチコレットの騎士つまりはニコラウス様の部下、そんな回りくどく言われなくとも一言“竜を狩って来い”と命じられればその任務引き受けましょうぞ」


 俺の言葉にニコラウスが先程より口角を上げる、悪い顔にしか見えない、ああ言う厳つい顔に生まれなくて本当に良かったと思うぜ。


「ふん、流石と言った所だなブルーノ、助かるぜ」

「ですから礼など無用ですニコラウス様」


「私からも礼を言いますブルーノさん」

「お前まで何言ってる、俺は引き受けただけでまだ竜を狩った訳でも何でもねーんだぞ?引き受けるだけなら誰でも出来る」


「何、ブルーノよお前が引き受けてくれただけで半分は成功した様なものだ、早速だがこの竜討伐チームの親方にお前を任命する」


「親方って…ニコラウス様」


 せめて責任者とかリーダーとか言わねーか?まあ親方の方がニコラウスの仲間っぽくて良いか。


「作戦や人、物、金、全ての権限はお前に任せる」

「は!かしこまりました、ん?」


 奥の扉から視線を感じると思えばあれはカーラちゃんじゃないか。


「どうした、ブルーノ?」


 俺の目線に誘導されニコラウス、ランスも振り向きそちらを見る。


「おおカーラじゃないか、どうした?珍しいな俺の仕事場に来るなんて」

「いえ、お父様、竜がどうしたと言う話が聞こえたものですから気になって」


「そうかそうか、お前も竜の存在は気になるか」

「はい。お父様」


 カーラちゃんが俺を見る、何か言いたげだな。


「カーラ、ブルーノの所は元冒険者一家だったらしくその道じゃ名の売れた実力者でな、そのブルーノが竜を退治する事、引き受けてくれたからもう安心だぞ」

「竜の事は今、お父様から正式に任命されましたからな、このブルーノにお任せあれ」


 あまり大きな事を言うのは好きじゃないが子供を安心させる為、俺は胸を叩き自信を見せた。


「あの、ブルーノ様……一つ伺って宜しいでしょうか?」

「ん?何でしょう?」


 カーラちゃんは真っすぐな眼差しで俺を見ている。


「その竜退治にはヴィンス様はご同行されるのでしょうか?」


「は?ヴィンス?…ですか?」

「はい。ヴィンス様です」


 予想外の質問に一瞬戸惑う。


「いえ、ヴィンスはまだ子供ゆえ竜退治には連れて参りません」

「そうですか、それを聞いて安心しました」


 カーラちゃんの張りつめた表情から力が抜けるのが分かる。


「カーラよ、何故その様なことをブルーノに聞く?」


 ニコラウスがカーラちゃんに問うが俺もそう思った、ランスを見てもそう思っているっぽい。


「私はヴィンス様をお慕い申しておりますのでヴィンス様の身を案じてお聞き致しました」


 カーラちゃんは真っ直ぐに告白?宣言?をした。

 ランスは何だか“ああ…やっぱり…”みたいな顔をしている。

 ニコラウスはと言うと…やっぱ怒りだすだろうな…


「何?カーラお前、ヴィンスの事が好きなのか?」


 ニコラウスが真顔になる。


「はい、お父様」


 カーラちゃんも真顔だ。


 ん?どう言う意味だ?子供が子供をお友達と好きって意味か?

 まさか異性として?

 いや、それならそれでニコラウスみたいな父親だったら頭ごなしに雷落とすだろ?

 好きなお友達が出来たって事だよな?

 いやだけど待てよ、昨夜デュークが冷やかしてんの聞いてニコラウスもデュークの言ってる事が的外れじゃなきゃ良いが……みたいな事言ってた様な…。


 そうだ!ランス!!ランスの反応は?!


 っ!?


 何だ?その表情は?どう言う感情だ?

 苦いのか?腹痛いのか?そんな表情だぞ。


 って言うか何だこの沈黙は!?


「え、えーっと……あの、そのニコラウス様…?ぼちぼち……早速……わ、私はランスと竜への対処方法を早速協議したいのですが…どこか会議室みたいな部屋をお借り出来ますでしょうか…?」


 耐えられん!!この重々しい空気は!!


「そ、それではブルーノ殿…!!わ、私が会議室へとご案内致しましょう…!!」


 ランスのヤツも慌ててる……渡りに船とばかりに積極的だ…!!


 っ!?ニコラウス?!


 ニコラウスも同感なのか!?

 逃げる様にしている俺とランスを射抜くような、いや違うな、裏切るのか?と言った切望の眼差しだ…!!


「お父様…」

「な、何だ…?カーラよ…」


 ニコラウスが冷や汗をかいている。


「ヴィンス様を万が一でも竜退治などに駆り出してみて下さい、その時は私も…」


「「「わ、私も……??」」」


 大の大人三人が息を飲む…。


「私もそのチームに同行致しますから」


 息を飲んだ大人3人が言葉に詰まる。


「んな、何を言っている?!」


 ニコラウスが慌てて口を開いた。


「カ、カーラ様はどうかその様な真似は…」


 続いてランスがカーラちゃんを抑制しようとしている。


「ランス様…!!そうおっしゃるならランス様もそうならぬ様ご尽力賜ります様お願い申し上げますわ」


 ランスの言葉にかぶせるようにカーラちゃんが言いランスが怯む。


「カーラ様…!このブルーノがヴィンスは連れて行かないと約束致しましょう」


 何故二人が慌てているか分からないが、俺の直感も何故かヤバイと警鐘を鳴らしている。


「ブルーノ様…?」


「は、はい……?」


 何だ?この威圧感…この俺が冷や汗……?


 そんなバカな?今までどんだけ修羅場を潜り抜けて来た?

 命の危険に何度遭遇してきた?

 竜だって何匹狩った?

 それなのにこの幼い少女相手に何をビビッてる…??


「今、ブルーノ様は約束とおっしゃいましたね…?」


「え、ええ…」


 約束なんて言って不味かったか??


「それを聞いてカーラ、安心致しました」


「そ、そうですか…そ、それは良かった…」

「但し…万が一にも約束を反古する様な事があればその時は私もどうするか…分かりません…」


 っ!?


 これはハッタリでも脅しでもない!!

 警告だ!!


「か、かしこまりました…肝に銘じておきます…」


 そう言いながら俺はニコラウスとランスの表情を伺う。

 伺うも2人とも顔を伏せておりその表情を窺い知れない…


「それでは皆様大変お騒がせし誠に申し訳ございませんでした。私の様な子供が大人の話に首を突っ込み反省しております、失礼致します」


 納得いったのかカーラちゃんが深々と頭を下げ反省の弁を述べる。


「い、いやぁ…」


 ひきつった笑顔のランス…。


「カ、カーラ…後は俺たち大人に任せてゆっくり部屋で休んでなさい」


 その表情は明らかに疲れているニコラウス。


「はい。お父様、失礼します」


 カーラちゃんは踵を返し部屋を後にする。

 我々いい年した大人が一斉に安堵のため息を付く。



「あ!そうだ!!」


 カーラちゃんの声に吐いた溜め息を再び飲む!


「ど、どどどうした?カーラ?」

「お父様に謝りに来たのを忘れるとこでした」


「な、な何だ…?」


「実は今日、ブルーノ様への仕事内容とヴィンス様がまた来るかもと気になってしまい学校を休んでしまいました…ごめんなさい…」


 カーラちゃんは深々と頭を下げる。


「それはいかんぞカーラ!学校とそれは別の話、いくら気になる事があっても学校を休んで良い理由にはならん、ましてや親に無断で休むとは言語道断!!」


「ごめんなさい…反省しております…」


 俺とランスは先ほどまでのやり取りでひやひやしながら見ていたがカーラちゃんもおとなしく頭を下げ反省している様だ。


「罰として今日のおやつ抜きと夕食は野菜のお浸しだけとする。異論は無いな?」

「…はい、お父様」


「今日は部屋でおとなしくしていなさい、分かったな?」

「はい。お父様」


 やっと親子のあるべき姿になってホッとしたがカーラちゃんもああやっていると本当に聞き分けの良い出来た子だと分かる。

 やっぱり昨夜ニコラウスが言ってたちょっと感情的になるとこはあるみたいだが。

 でも、やっぱりニコラウスとランスの焦りようは何かあるのか……?


「ブルーノ様…」

「え?あ、はい」


「約束はお願い致しますわよ…」

「は、はっ…!!」


 何だ?あの氷の様な凍てつく鋭い眼光は?!やっぱり感情的にさせたらやっかいになりそうだ…。


 緊張した時間をやり過ごし、その原因であるカーラちゃんを俺たちは見送った。


「……………」


「ブ、ブルーノ…お前、ヴィンスの件…間違っても連れて行くなよ……?」

「わ、分かっております…」


「そ、それではブルーノ殿、会議室にて以後の作戦を…」

「あ、ああ、そうだな。では、ニコラウス様またご報告はさせて頂きます」


「お、おう、頼んだぞ……色々とな…」

「は!」




 その後、ランスと猛角地竜狩りについて作戦を練り勤務初日は終了した。




 ~



 家に着く頃には日も暮れすっかり宵となってしまった。


「戻ったぞ」


「お帰りなさい、父様」

「お疲れさん、ブルーノ」

「お帰りなさい、あなた」


 ふぅ……初日と言う事もあったが何だか疲れたな…


「父様、話があります」


「…何だ?ヴィンス」


 やけにヴィンスが張り切ってる。

 何だか嫌な予感がするな…。


「実は父様…」

「ちょっと待て!ヴィンス」


「え?どうかしましたか?」


 出鼻を挫かれた形のヴィンスが拍子抜けした顔しているが俺の勘が止めた方が良いと言っている。


「あ、いや、今日はちょっと疲れてな、急ぎじゃ無ければ明日でも構わないか?」


「は、はあ…別に明日でも構いませんが…」

「す、すまないな、明日必ず聞くからな」


「はい」


 何だ?この罪悪感…しかし今日の俺は勘が冴えている、気がするんだ。


 実際、カーラちゃんの威圧感によって冒険者時代に感じた研ぎ澄まされた勘が蘇った感じだったしな。


 すまない、ヴィンス…明日必ず聞くからな。


「大丈夫か?ブルーノ、何だか顔色も悪りぃぞ?」

「本当、あなた治癒魔術でもかけておく?」


 デュークとクラリスも俺の顔を伺い心配してくれる。


「あ、いや、大丈夫だ、とりあえず風呂入ってくるかな」


 逃げる訳じゃないが実際風呂に浸かって疲れを抜きたい。


「じゃあお風呂作るわね」

「ああ、頼む」


 俺でも水魔術と火魔術を掛け合わせて風呂を作る事は出来るがクラリスにやってもらった方が早くてちょうど良い湯加減になるから助かる。



 ~


 ふぅ……疲れがお湯に染み出す……やっぱりクラリスに風呂作ってもらって正解だったな。


 しかし、カーラちゃんはどんな風に感情的になるのだろうか?


 そしてヴィンスだ、あいつの話ってのは何だろうな?


 まさか竜狩りに行きたいって事は無いだろうが、昼間デュークと冒険者ギルド行くって言ってたから当然猛角地竜(マッドブルドラゴン)の事は知っているだろう。


 …いや、やっぱり十中八九竜狩りの事だな。


 覚醒してからのあいつは良くも悪くも積極的だ。


 今までの消極的だった分を取り戻そうとしているのかとすら感じる。


 違う言い方するなら何か生き急いでいるとも思える。


 さて、問題はあいつが竜狩りに行きたいと言ってきた時、どう返すかだな……。


 どう返すも何もないか、ヴィンスはまだ子供で冒険者じゃない、竜クラスの魔物狩りは冒険者じゃなきゃ行えない決まりだしな。


 まさかデュークとクラリスも?


 いや、デュークはどっちみち連れて行くつもりだが、冒険者を引退して母親になったクラリスは無いな。


 いずれにしてもヴィンスには7歳になって冒険者にならないと連れて行かないとかわせば良い、よし!問題無しだ。


 明日きちんと話をしよう。





 ~翌朝~



 朝早くから俺とヴィンス、そしてまだこの街で新居を決めていなく我が家で居候をしているデュークと共に朝稽古だ。


 朝は俺が出勤前と言う事もあり剣術中心に稽古を行う。


「はぁあ!!」


 掛け声と共にヴィンスが突っ込んでくる。

 初速から最高速に乗るその一足飛びは天性なのか油断できない。


「ふんっ!」


 まだ力差があるからスピードがあっても捌けるが剣も日に日に重くなってきている。きっと見てない所で筋トレもしているのだろう。


「どりゃ!」


 剣筋を捌かれ体勢を崩すもヴィンスは予知していたかの様に崩された重心を上手く使い回転しながら二の太刀を振るう。


「くっ!」


 何とか自分の剣を盾にして防ぐが遠心力を活用した太刀筋は威力を増強している。


 激しく木剣と木剣が衝突し辺りに乾いた音を響く!!


 っ!?


 衝撃で一瞬目をつぶっちまった!


 どこだ?!

 上かっ!!

 ヴィンスは弾かれる前提でいたのかその衝撃の力を上手く体に使い上空に逃れ、そこから縦に回転しながら空中で上段から振り下ろしてくる!!


「ぐっ!!」


 咄嗟に剣を盾にして防ぐも先ほど弾かれた時の反動とその力を活かした回転の遠心力で更に剣が重くなってやがる!!


 堪らず左手も剣に添え両手で受け止める!


 力と力がぶつかり合った衝撃で軽いヴィンスは飛び越えるように俺の頭上を越す形で前方へ弾かれる。


 っ!?


 俺は前方へ転げる様にして逃げる!


 逃げながら自分が突っ立ていた場所を確認するとヴィンスが逆さまになりながら剣を振りぬき空振りしたのを見た。


 ヤバかった…あそこで防いだと安心してたら後ろから頭かち割られてたとこだった!


 安心するな!!


 俺の勘がそう告げる。


 何とか体勢を立て直し構える!


 空中でバランスを崩し落下したヴィンスが片膝、片手で着地し力を溜め飛ぼうとしている!


「そこまでだ」


 デュークがヴィンスの首根っこを掴み止める。


「うぉ!?っとデュークさん?」

「ヴィンスお前朝から飛ばしすぎ。そんなんじゃ一日持たねーぞ?」


 そう言いながら猫みたいに持ち上げたヴィンスをゆっくり降ろす。


「え?ああ、すみません無我夢中にやってました」

「ま、一生懸命なのは良いがペース配分ってやつもな」


「ですね、気をつけます」


「で?ブルーノ、大丈夫か?」


 ニヤニヤと冷やかす様にデュークが聞いてきやがる。


「大丈夫じゃないように見えるか?」

「いや、大丈夫に見える」


 野郎……完全に冷やかしてやがる。


「父様は防戦だけでしたから、もし攻撃に転じられたら僕はやられていたでしょうね」

「何だヴィンス、俺に気を使っているのか?」


「いえ、そんなんじゃないです、デュークさんが言った様に全力で攻撃したにも関わらず一太刀も浴びせられなかったのが悔やまれているのです」


 いや、朝稽古と言うか模擬戦にしてもなかなか最近感じたことの無い重圧の中での戦いだった。


 昨日から勘が冴えているから何とかかわせたがぼんやりやっていたら初めの一手でやられていてもおかしくなかった。


 そういう意味じゃカーラちゃんに感謝だな。


「でもよ、もしヴィンスが剣術に捕らわれず魔術を織り交ぜてきたらどうなってたかな?」


 デュークの野郎がニヤニヤしやがながら聞いてくる。


「お前はどうなんだ?デューク」

「かっかっか、俺は一太刀喰らっていただろうな!」


 こいつ、よくあっけらかんと言うな。

 だがそれがこいつの良いところか。


「確かに魔術、しかもそれが(そら)魔術だったらやられたかもな」

「ま、そうしたらそうしたで対処法はあるけどな!」

「そうだな、だがヴィンス、本当にスゴイ戦い方だった」


「本当ですか!?ありがとございます」


 ヴィンスは褒められて本当にうれしそうだ、何より稽古を楽しんでいるから更に強くなるだろう。

 俺もデュークもうかうかしていたらあっという間に追い抜かれるな。


「ところで父様、昨夜言っていた話ですが…」

「ダメだ!」


「かっかっか、俺と同じ反応だな!」


 ヴィンスがキョトンとしている。

 デュークは何故だか笑っている。


「と、父様、何の話か知っているのですか?」

「知ってはいないが予測は出来る……竜だろ?」


「っ!?そ、そうです。竜狩りに連れて行って下さい」


 やはりそうだったか……。

 だがこっちもシミュレーションしてある。


「連れて行くも何もいいか?ヴィンス、竜クラスの魔物狩りは冒険者じゃなきゃ行えないって言う決まりがるんだ」


 ふふん、どうだ?諦めざるを得まい。


「その事なんだがよブルーノ、5歳でも冒険者になれる手段があったんだよ」

「何!?」


 しれっとデュークが言う。

 何だそれ?冒険者になるには7歳からじゃないと試験受けられないんじゃないのか?


「何でも貴族が一斉に7歳解禁になると申し込んで混むからその対策で5歳から冒険者適正試験っていうのが出来て5歳からチャレンジ出来るようになったんだと」


 はぁ?何だそれ?デュークの説明じゃよく分からん!!

 大体にして貴族が何で冒険者試験受ける必要があるんだよ!!


「つきましては僕も先ずは冒険者適正試験を受けようかと思いまして、それで適性ありと認められ試験に合格すれば今の父様の話にあった竜狩りの決まりに則り大手を振って竜狩りに行けますしね!」

「ダメだダメだ!!」

「なっ?!父様?!」

「ブルーノ??」


「いや、その、何だ……」


 いかん、予想外の展開に思わず慌てて全否定してしまった…!

 ヴィンス、デューク共にポカーンだ。


「どうしたんだよブルーノ?何をそんなに慌ててんだ?」

「お、俺が?!あわあわ、慌ててる?ななななー何で?」


「いや知らねーよ、こっちが聞きてーよ」


 どうする?どう答えれば良い?


「何か僕が冒険者になる事で父様に迷惑がかかるのですか?」

「な、何で迷惑?べ、別に誰と約束?」

「は?何だ約束って?」


「うっ、や、約束なんて言ってませんが……?」

「言ったじゃねーか今、自分で。なあヴィンス?」

「ええ、確かに約束と言いました、僕が冒険者になっちゃマズイ、もしくは竜狩りに行っちゃマズイ約束でもして来たのですか?」


 やばい…!どうする?どうすれば良い…??何て言って切り抜ける??

 正直に言うか??

 いや、それは得策じゃない気がするぅ~。


「あ!も、もうこんな時間だ!仕事に行かなきゃ…!!じゃ、じゃな…!!」


「あ、おい!ブルーノ!!」

「と、父様…!?」


 奴等が呼び止めるの無視してとりあえずその場を後にした。

 ひとまず距離を置いて作戦を練り直さなければ…。


「父様…?」


「んあ?ヴィ、ヴィンス?!」


 こいつ一足飛びで付いて来てやがった!!

 完全に怪しんでいる目だ!!そりゃそうか!!


火弾(ファイヤボール)!!」

「うわっ!!」


 俺はヴィンスの足元に火弾(ファイヤボール)を食らわせ(ひる)んだ隙に逃げる、伊達に長年冒険者をやってきちゃいないぜ!


 ……よし、()けたな。


 遠くでデュークが大人げねーとか何とか喚いているが知ったこっちゃねー。


 とりあえずランスに相談するか、っていうかあいつ5歳から適正試験受けられるとか知らなかったのか?

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