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第十九話 「初めての朝とギルド」

 結局、カーラちゃんが自室に戻った後も宴は続き俺達はニコラウス邸に泊まってしまった。


 大人達は多分あの宴会場で飲み潰れてそのまま雑魚寝したのだろう。


 俺はと言うと流石にまだ酒は飲めないので別の部屋をあてがって貰い、こうして豪華なベッドで2人で優雅な朝を迎えたって訳だ。


 ………え?!


 2人…!?


 誰!?


 クラリスにしては小さい。


「う〜ん…」

「え?!ちょちょちょちょ!?えぇ?!」


「……あ、ヴィンス様…おはようございます…」

「カ、カカカ、カーラちゃちゃちゃちゃん!?」


 ツインテールをおろした髪が少し寝癖でハネた感があるが薄緑色の髪はカーラちゃんだ!!


「ヴィンス様は朝早いのですね…」


 まだ寝ぼけ眼といった感じで右手の甲で目を擦る姿にキュンとくるがそれどころじゃない。


「や、は、早いとか、そそそんな事より、どどどうしてここに?!」


「どうして?不思議な事をお聞きになられますねヴィンス様は。ここは私の家ですわ」

「や、そうじゃなくて!何で僕と同じベッドにいるのかって事です!!」


「なんでも何も昨晩、私が寝付けないのでご一緒しても?とお伺いしたらヴィンス様は気持ち良く了承して下さったじゃないですか」


 え?!いやいやいや、そんなはず無いぞ?!

 いくら俺でもそんな事言われれば覚えていないはず無い。


「それにしても……」


 寝起きから妖艶な目つきでカーラちゃんが含みを持たせて言う…。


「そ、それにしても…?」


 何だ?何を言い出す……?


「昨夜のヴィンス様……激しかった…」

「は、はげはげ、激しかった?!って何が!?」


 いくらなんでも無いだろう?!


 だってまだ子供だし!そういう事できる機能と言うか能力と言うか無いし!


「何って……ヴィンス様の……」

「ぼ、僕の……?」


 文字通り固い唾、固唾をゴクリと音を立てて飲み込む…。


「い・び・き」

「…………ん、ぅおぉおぉ……いびきね…いびき!!そ、そんなに五月蝿かったかな~?なはなは…」


 ぉおぅ、いびきか!そっか…そりゃそうだよね…!


「ええ、とっても激しいいびきでしたわ」

「い、いやぁ…自分では分かりづらいからね…そうですか…それは失礼しました」


「いえ、私が好きでヴィンス様と一緒に寝かせて頂きましたのですからヴィンス様はどうぞお気になさらず」

「い、いや…お気になさらずと言われても…」


 ホッとした半面、初対面の女の子の前でいびきを遠慮なしにかいていたのかと思うと、それはそれで恥ずかしいな…。


「それに……私もヴィンス様のいびきに今の内に慣れておきませんといけませんし」

「な、何でカーラちゃんが今の内にぼ、僕のいびきに慣れる必要性が…??」


「何でって…それ、私に言わせます?ヴィンス様ったら…」


 っ!?


 何?!何これ?!どう言う事?どう理解すれば良いの??


「あの、その、いや、それって…」

「あ!いけない!私、学校へ行く準備をしなければ。ヴィンス様、また後ほど」


「え?あ、ああ、ええ…はい…って、え?」

「御機嫌よう」


「あ、え?あ、はい…」


 そういうと足早に部屋を後にしたカーラちゃんだった。

 振り向き様に投げキッスをしながら…。


 いかんいかん!惑わされるな俺!!


 それに前世でも散々勘違いして恥かいたり痛い目に遭ったりしただろ?俺!


 そう言う天真爛漫な娘なんだよ、カーラちゃんは!!


 大体にして相手は子供だぞ??


 っていうか俺も今は子供か?しかも同じ年…

 傍から見ればロリコンでも何でも無いよな??


 あかんあかん!!


 魔性や…カーラちゃんは魔性の女や…!!


「ヴィンス??一人でどうしたの…?」


 っ!?


「か、母様!?」


 一人ベッドの上で枕を抱きしめ悶えていた所をクラリスに見られた!!


「………大丈夫?」

「いや、は、な、何がです??ぼ、僕は至ってだ、大丈夫ですが??な、何か大丈夫じゃなさそうですかか…??あははは…」


「い、いえ、大丈夫…なのかしら?何か変な夢でも見てうなされてたのかしら?」

「え、ええ!そうです!!そうなんですよ!!だはははは…!!」


「よく分かんないけど早く起きて準備なさい、お父さん達はもう準備して食堂にいるわよ」

「そうなんですか?父様達は昨夜結構遅くまでお酒飲んでいたんじゃないですか?」


「遅くまで飲んでそのまま寝ちゃったみたいだけど二日酔いでも何でも朝起きて治癒魔術かければ普段通り過ごせるわよ」


「あ、ああ…なるほど」


「さあ、朝食用意してくれてるから早く用意して食堂まで来なさいよ」

「あ、はい、すぐに行きます」


 俺は慌てて準備をして食堂へ向かう。


 その前に食堂って何処?と思ったが廊下を出ればメイドさんが待機していてくれ食堂まで案内してくれた。



「おはようございます!」


「おはようヴィンス」


 皆さんと朝の挨拶を交わしていて気付いたがカーラちゃんはまだの様だ。


 俺も席に案内され着座して5分ほどだろうか、カーラちゃんがようやく食堂に現れた。


「おはようございます皆様、遅れてしまい大変申し訳ございません」

「おはようカーラちゃん」


 ブルーノ達が挨拶する。


「おはようカーラ、今日はどうしたんだ?いつもは早起きなのに」

「本当、珍しいわねカーラが寝坊だなんて」


 どうやらいつもは朝ちゃんと起きる子らしいカーラちゃんは。


「え、ええ、ごめんなさいお父様、お母様、昨夜は少し寝つきが悪くてつい…」


 っ!?


 チラッと俺を見た…!!


「ごほんっ!!げほんっ!!」


 やばっ!?思わずむせる…!


「どうした?ヴィンス?風邪か?」

「いやそういう訳じゃ…」


「風邪なら早く言えよ、治癒魔術ですぐ直んだからな」

「は、はい…」


「ヴィンス様、いびきかきそうですから喉が乾燥してしまったのでは?」

「げほっ!!ごほっ!!」


 カーラちゃん??


「おいおいヴィンス大丈夫か?」

「うがいでもして来い」


「そ、そうですね…ちょっと失礼します、朝食は先にどうぞ」


 これ幸いとばかりに席を立つ。


「ヴィンス様、洗面所までご案内致しましょうか?」

「や、だ、大丈夫です…!カーラちゃん、ありがとうございます」


 そそくさと食堂を後にして廊下に出て一息つく。


 ふぅ…冷や汗かいたぜ…カーラちゃんときたら参るな…


 その後、食堂に戻り皆と一緒に朝食を取った。



 ~


「それではニコラウス様、我々は一旦自宅へ戻り改めて参ります」

「よせブルーノ、今更ニコラウス様だの他人行儀な呼び方は」


「いいえ、公私の区別をつける為には仕事中はそう呼ばせて頂きます」

「けっ、俺ぁ別に構わねぇんだがな」


 ニコラウスが小指で耳をかっぽじりながらつまらなさそうに言う。


「それじゃあブルーノさん、チコレットでのご住居まで私が案内します」

「悪いなランス、ちなみに俺もブルーノさんじゃなくてブルーノでいいんだぜ」


「いえ、私はこういう喋り方の方が楽なので」

「ふ〜ん、そんなもんかよ、それではニコラウス様、また後程」


「おう、ブルーノよ、そん時ぁちっとばかし真面目な話あるからな」

「は、は!」


 ニコラウスは耳垢が取れたのか分からないが小指にふーっと息を吹きつけながらもブルーノに目線をやり言う。


 その目線は鋭くマジだ。



 ~



 チコレットでの俺達の住居はと言うとシュミットでの家と比べても遜色は無く特に不便は感じない十分過ぎるほどの家だったので安心した。


 木と石で出来ている2階建一戸建てでちょっとした庭もある。


「なかなか立派な家じゃねーか」


 真っ先に家に入ったのはデュークさんで天井を見上げながら感心している。


「前の家と雰囲気が似ていて落ち着くな」


 ブルーノも部屋を見渡し気に入った様だ。


「さて私は掃除したり家の事しているからあなたは早くニコラウス様の所へ戻りなさい、デューク、ヴィンスはどうする?」


 クラリスは腕まくりしながら天井やら壁やらを確認する様にして尋ねてくる。


「僕は父様に付いて行っても良いですか?」

「それはダメだ、これからは仕事だからな」


 きっぱり断られたが、そりゃそうか。


「んじゃ、ヴィンスは俺とチコレットの街でも見て回って来るか」

「そうですね」


「て言うかわたしの手伝いをするって言う考えは無いわけ?」


 男同士で勝手に話を進めているとクラリスが突っ込んで来た。


「や、ああ、そうだな!そうしようヴィンス!」

「そうですね、それが良いですね…!」


 クラリスの冷静な突っ込みに俺とデュークさんは慌てる。


「冗談よ、ちゃんと手入れしてあったっぽいし魔術ですぐに片付きそうだからあなた達も好きにしてて良いわよ」


 クラリスは初めからあてにしていなかったのか、思っていたより家の状態が良かったからなのか分からないが微笑んで自由を許可してくれた。


「それじゃあクラリス、俺はニコラウスんトコ行って来るわ」

「ええ、しっかりね」


 クラリスはブルーノに握り拳を作って初仕事にエールを送る。


「俺達は…街の様子でも見て来るか」

「はい」


「あなた達も気を付けてね、行ってらっしゃい」


 クラリスは笑顔で送り出してくれ俺達は街へと出かけた。


 途中でブルーノはニコラウス邸へ向かう為に別の方向へ、デュークさんと俺は俺の希望で冒険者ギルドへ足を向ける。



 ~



 昨日も見たがやはり目の前で見ると存在感のある建物だな。


 堅牢な石造りの3階建ての冒険者ギルド。


 入り口は大きなアーチ状で重厚で頑丈そうな木製の両開き扉があるが開けっ放しの様だ。


 中からは喧騒とした話し声や物がぶつかる様な音が聞こえてきて何だか緊張する。


 俺の緊張を他所にデュークさんは自分の家に入るみたいにスーッと入って行く。


「あっ、デュークさんちょっと待って下さい…」


 遅れない様にと慌ててデュークさんの後に続く。


 俺のイメージでは見知らぬ者が入ってきたらならず者どもが一斉にジロリと威圧する様な視線で品定めされるみたいな感じでいたが開けっ放しの入り口から誰かが入って来ようと誰も気にしなかった。


「とりあえず、この街の冒険者ギルドに今出ている依頼でも見てみるか」

「はい」


 入り口から入ってすぐは両脇に丸テーブルがいくつか設置しており数グループが昼から飲みながら談笑している。


 そして突き当たり真ん中に2階へと続く階段があり、右奥は食事や飲み物と頼むカウンター、左奥は大きなテーブルがあり雑多に人々が話をしている。


「ん?おい、あれって…」

「あ?…デューク?」

「おい…」

「デュークじゃねーか…?」


 誰が入って来たかは気にしていなかった冒険者達だが、それがデュークさんだと気付くとザワつき出した。


 やっぱデュークさんってその筋じゃ有名なんだなと何故だか俺まで自慢げな気持ちになる。


「よう、デュークじゃねーか」

「お?えーと…」

「シンプソンだよ、コンジェット渓谷の迷宮で一緒に潜ったベアーフッドってパーティーにいた」


 シンプソンと名乗る男はピンクのモヒカンで身長も高く、ガッチリしたいかにも肉体派と言った風貌だ。


「お、おうおう!シンプソンな!久しぶりじゃねーか!」

「完全に忘れてるだろ…。ったくよ、普通迷宮に一緒に入ったピンクのモヒカン頭の男忘れるか?」


「いや、悪りぃ悪りぃ、俺も色んな奴と会ってるからよ」

「で?こんなトコでどうしたんだよ?冒険者は引退したんじゃなかったか?」


「ああ、そうなんだがよ、この甥っ子のヴィンスが冒険者ギルドに来てみてーって言うからよ、見学がてら寄ってみたってのよ」


「へぇ、ヴィンスってのか?宜しくな、俺はまだ現役で冒険者のシンプソンってんだ。デュークの野郎にはインパクト弱ぇみてーだがな」

「言うなって、悪りぃつってんじゃねーかよ」

「ふん、冗談だよ」


「宜しくお願いします」


 俺の身長に合わせて屈んで挨拶してくれるシンプソンさんは近くで見ると目が可愛らしく良い人そうだ。


「ところでシンプソンよ、最近はどうよ?冒険者事情はよ」

「まあ、昔より魔物系の依頼は減ったな、だが魔物の強さそのものは前より上がってるぜ」


「今この街で一番高い報酬依頼は何だ?」

「何だってお前、知らねーのかよ?」


 シンプソンさんはマジか?という顔で聞いてくる。


「いやぁこの街には昨日来たばかりでな」

「ああ…そうなのか、でもこの辺じゃ今ぁ大騒ぎだぞ」

「何だよ、その大騒ぎの原因ってのは?」


「…ついてきな」


 そう言うとシンプソンさんは踵を返し大柄な背中を見せながら2階へ向かう。

 俺達もシンプソンさんに続きながら2階へと上がる階段を登る。


 2階は大きい一つのフロアで真ん中に大きなテーブルがあり周りには依頼事項の掲示板が複数並んでおり一番奥に受付カウンターがある。


「これだよ」


 受付カウンターの一番手前にある一番大きな掲示板の前でシンプソンさんが立ち止まり、その掲示板1枚にでかでかと掲示された依頼書をいかつい親指でクイッと指差す。


【依頼事項】魔物狩り

 ・討伐対象:猛角地竜(マッドブルドラゴン)

 ・生息地域:チコレット北部森林地帯

 ・依頼期間:討伐対象消滅まで無期限

 ・討伐褒賞:1,000金貨

 ・討伐者形態:単独orパーティー、複数パーティー共闘、不問(但し褒賞は1,000金貨/1形態)

 ・討伐条件:生死不問 

 ・依頼主:チコレット領主


「竜が出てんのかよ?」


 依頼書を見ながらデュークさんが尋ねる。


「ああ、もうすぐ1ヶ月経つな」

「未だ退治出来ずか?」

「ああ、残念ながらいくつかのパーティーが竜狩りに向かったが帰った者はいない……」


 少し重い空気が流れる。


「あの……竜ってやっぱりスゴイんですか…?」

「ああ、ヴィンスはまだ見た事ねーから知らねーだろうが魔物の中じゃ群を抜いて強ぇな」

「竜を狩れれば上級パーティーとしてギルドからも世間からも認められるって言われてるぞ」


「へぇ……」


 デュークもシンプソンさんも真顔だ。それだけ竜って言うのは強いのだろう。


「全盛期のイーグルクローがいりゃあ楽勝だったろうがな」

「まあ、無いもの言っても仕方がねぇだろ」

「そりゃそうだな」


 こうして冒険者と話しているとデュークさんも冒険者の風格が漂う。


「あの、この猛角地竜(マッドブルドラゴン)って言うのは竜の中でも上位種なんですか?」


「いや、竜の中では下位種だな、魔竜、飛竜、群竜、水竜、翼竜、地竜の順に厄介って感じだ」


 デュークさんが竜の種類を説明してくれた。


「竜の中でも地竜だからまだマシな方だがそれでも猛角地竜(マッドブルドラゴン)は地竜の中では最上位種だからな下手な翼竜より強ぇぞ」


 シンプソンさんが補足説明してくれる。そうか…竜種だけでみれば下位だけど強さとは別物ていう事か。


 気付けば周りの冒険者達やギルドの受付の人達もデュークに気付きこの竜退治依頼についての答えに興味を持って見ている様だ。


「ん?おいおい、何だよ皆んなして俺を見て。俺は冒険者引退してんの、依頼を引き受けるもクソもねぇーぞ?」

「何だよデューク、引き受けねぇーのか?」


 シンプソンさんは意外と言った表情でデュークに聞く。


「ったりめーだろ、イーグルクローならまだしも俺一人で竜退治なんか出来る訳ねーだろ」

「そのイーグルクローの面々は今どうしてんだ?」


 冒険者たちがイーグルクローの現在については興味があるみたいで聞き耳を立てる。


「ブルーノはヴィンスの父親で今日からこのチコレットで騎士職に就いてるぜ、クラリスはこのヴィンスの母親、ケリーも別の土地で別の仕事に就いてるよ」


「ブルーノとクラリスは結婚したのか!で?ヴィンスが息子かぁ……いやでもよ、ブルーノとクラリスがこのチコレットにいるんならデューク(お前)と組んでまだドラゴン退治の望みはあるな」


「ねーよ、ブルーノはともかくクラリスは今やヴィンスの立派な母親だ、今更命を危険に晒す真似させられっか」


「そっか……で、でもよ、俺もイーグルクローとまで言う程、厚かましくはねーが一応冒険者なんだぜ?ブルーノ、デューク、俺とくればあと一人どうにかすりゃ地竜くれーなら何とかなりそうじゃねーか」


「どうだかな、ま、いずれにしろニコラウスの旦那もブルーノに真面目な話があるって言ってたからな、多分今頃この話を聞いてるんじゃねーか」


 デュークさんは窓の外を見ながら考えているのは考えていないのか分からない素振りで答える。


「あ、あの……デュークさん?」

「ダメだヴィンス」


 デュークさんは外を見たままで即答だ。


「え、ちょ、まだ何も言ってませんが?」

「竜退治してーってんだろ?ダメだ」


 デュークさんは窓の外から俺に目線を戻し諭すように言う。


「そんなぁ…」


 どうして分かったんだ?


「ははは、随分と勇ましいんだなヴィンスは、さすがブルーノの息子だけあるな」

「大体にして俺がそんなの許可してみろ、俺がブルーノに殺されんぜ」


 ブルーノがデュークさんを責めている図か……想像に容易いな…


「でもまあ、両親、親戚共に冒険者でそういう意味じゃ純血種じゃねーか、なら10年後ぐれーには竜退治出来るかもな」


 シンプソンさんは慰めてくれてるのかその大柄な体に似つかわしくない可愛らし気な笑顔を見せる。


「いえ、10年後じゃなくても…今出来ると思うのですが…」

「だからダメだってーの」


「チェ…」


 ん~ドラゴンか…興味あるよな…




 結局デュークさんも冒険者引退しているし、イーグルクローの復活もなさそうだしで周りの冒険者達も次第に俺達から興味を逸らし各々の雑談とへ戻っていった。


「なあデューク、ヴィンスはやっぱ冒険者としての素質はあるのか?本人はやけに自信満々の様だが?」

「ん~まあ…確かに才能はあるな……実際冒険者試験を今、受けても多分受かんじゃねーか」


 デュークさんは一度俺を見てから何かと感じたのか目線を外し天井へと視線を外す。


「だったら冒険者試験受けて、正々堂々と竜を狩りに行けば良いんじゃないですか?!」

「だから7歳からしか受けられないんだから仕方ないだろ?」


「ぐぅ……」


 ダメもとで言ってみたが諭す様に言われぐぅの音が出る。


「いや、デューク、冒険者試験なら受けようと思えば受けられるぞ?」


 あきらめかけた俺にとって希望の一声だった。


「本当ですか?!シンプソンさん!!」

「おいシンプソン、確か試験受けられるのは例の魔族王子が受かった7歳からじゃなかったか?」


「そうなんだけどよ、あれからやたら親バカが増えてな、毎年4月の新年度になるとその年7歳になる冒険者試験志願者が殺到してよ、まあ大半が貴族で冒険者にする気もなる気もないんだがな」


 冒険者ギルドに貴族がいるとは思えないが一応シンプソンさんも周りをちらちら見渡してからその大きな体を屈め声を潜め気味に言う。


「ったく親バカ貴族が息子自慢の為に我先にってか」


 対照的に気を使わないデュークさん。


「ああ、そうだ。で、受付やら肝心の試験やらが混み過ぎちまってどうにもならないんだ、これが」


 ほうほう、前世で言う確定申告時期みたいなもんか?まあ俺は親も俺もサラリーマンだから確定申告ってのはやった事無いけど。


「で?それと7歳じゃなくても冒険者試験が受けられるのとどう繋がるんだ?」


「要はギルドとしても混雑阻止と効率化、もっと平たく言えば現実を前もって知らせておきたいって訳だ、で、7歳未満でも5歳から冒険者適正試験って制度が新設されたんだ」


 試験を受ける為の試験って事か?


「なるほど、んで適正があると分かったヤツは7歳前から試験自体は受けられるって事か?」


「そうだ、しかも適正ありと判断されて冒険者試験受けて合格すれば史上最年少記録更新、しかもあの魔族王子を抜いてだ、地位と名声が命の貴族にとっては美味い話だろ」


「確かにそうだが、そしたらそしたで今度は5歳になった時点で適正試験渋滞が起きるんじゃねーか?」


 そりゃその通りだよな?7歳まで待つメリットより5歳で受けるベネフィットの方が大きいし魅力的だ。

 俺とデュークさんは興味津々だ。


「そう思うだろ?だが但しがある」

「何だよ、但しって」


「5歳から7歳の間で適正試験で受けて、不適正と判断されたものは通常より2年遅れの9歳にならないと冒険者試験を受けられないって言うリスクがある」


「なるほど、ギルドも考えたものだな、ちなみに7歳前に適正試験受けて合格したヤツぁいるのか?」


「いれば流石のお前でも聞いた事あると思うぞ」


「ねぇな」


「つまり、適正試験どころか未だ7歳で冒険者試験に受かったのも魔族王子のパナメーラただ一人って事だ」


 静かにデュークさんが俺を見る。


「ねぇ、デュークさん、とりあえず適正試験だけでも受けてみたいのですが…」


 デュークさんが俺を見て、シンプソンさんを見る。


 シンプソンさんは最高の笑顔で親指を立てウインクする。

 漫画ならウインクした目から星が出ていそうな最高の笑顔だ。


「まぁ、とりあえず適正試験の話はブルーノとクラリスにしてみるか」

「あざーっす!!」


 ようし、この調子で何とかしてドラゴン退治、せめて冒険者登録まで持って行きたいなー!

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