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第十二話 「死神」

死神のセリフ言い回しを修正しました。

 ~~ソフィア視点~~


 冒険者崩れ(ヤツ)が左拳に力を込め振りかぶる!


 マズい!!

 何とか躱さなきゃ!!


 こんな時、師匠なら?

 どうする?


 っ!?


 ヴィンス!!


 ヴィンスみたいにイメージだけで魔術を発動するしか無い!!


 イメージするの!!具体的に!!


「デュークの弟子とは言えまだまだ実戦不足だったなぁ、まぁ尤も今後デュークから学ぶ事も無いがなぁ、最後に先輩である俺から教えてやろう、魔術使いには喋らせるな、だぁ。つまり言葉を発せられなければ術名を詠唱出来ないからなぁ。あーはっはっは!!」


 完全に余裕なのか振り上げた拳を振りかざさず気持ち良さそうに高笑いしている。


 っ!!?


 高笑いするヤツが顔面から煙を噴きながら後ろにすっ飛んだ!!

 おかげで私は何とかヤツから逃れられたけどそのまま地面に落下した。


 やった!!!


 術名を言わなくても魔術を発動出来た!!


 本当の無詠唱で火弾(ファイヤーボール)を発動させられた!


 ヤツの完全に無防備な状態で高笑いしているところにモロに喰らわせてやった!


「ぐ………ぐぉ……」


 仰向けに倒れたヤツは何とか立ち上がろうと上半身を起こしている。


 させるもんですか!!


「ぐぉあぁぁあ…!!」


 仕返しにヤツの鳩尾に足を思いっきり突き刺してやる。


「ど、どう…?…はぁ、はぁ…魔術…使いには…はぁ、はぁ…喋らせるな…でしょ…センパイ?」


 黒コゲになったヤツの顔を見下す。


「……………………」


 真っ黒コゲの顔に目だけが白く目立つ。


 っ!?

 何かヤバい!!

 私の直感がそう告げる!


 私は堪らず後ろにジャンプした!


 っ!?


 私がコンマ何秒か前にいた場所を刃物が空を切る。


「……ぐっ」


 ヤツは立ち上がった。

 立ち上がったヤツの手には短剣(タガー)が握られている。


雷矢(サンダーアロー)!!」

雷矢(サンダーアロー)…」


 私が放った雷矢(サンダーアロー)がヤツの放った雷矢(サンダーアロー)とぶつかり消滅する。


「……や、やってくれたなぁ、クソガキがぁ…」


火弾(ファイヤーボール)!」

火弾(ファイヤーボール)…」


 また同じ魔術を発動させ相殺させられる。


「無駄だぁ、はぁ、はぁ、お前ごときが使える魔術なら俺も使える。はぁ、はぁ、さっきはどうやったが知らないがぁ、何も詠唱せずに魔術発動しやがったから焦ったが術名を言うなら躱せるぞぉ」


 怒りながらも冷静になって私の魔術を見切っているわね。


火複数弾(ファイヤーボールズ)!!」

水壁(ウォーターウォール)


 私が射出した複数の火の玉はヤツが作り出した水の壁で消滅する。


雷複数矢(サンダーアローズ)


 水の壁の向こうから術名が聞こえた。


 っ!?


 ヤツが作り出した水の壁から複数の雷矢(サンダーアロー)が飛び出して来た!!


土壁(グラウンドウォール)


 慌てて土壁(グラウンドウォール)を作るが間に合わず何本かの雷矢(サンダーアロー)をくらった!


「ぐっ…!!」


 吹き飛ばされ転がる私は何とかヤツの方を確信しようと見たが目に入ったのは上空から落下してくる幾つかの岩だった!


「っ!?」


 …対応する魔術が思い浮かばないっ!!

 私は痛みに耐えながらただ転げ回って落下してくる岩を避ける。


 岩の落下が終わった…?


 っ!?


 転げ回りながら岩を避けていた私の真下の地面が猛烈な勢いでせり上がった!!


「きゃあっ!!!」


 土壁(グラウンドウォール)!?

 せり上がった土の壁に弾かれる様に飛ばされた私は高さ3mはある高さから宙に舞う!


「っ!?」


 宙を舞いながら視界に入ったのは短剣(タガー)を持ち落下点で待ち受けるヤツの姿!!

 マズい、躱さなきゃ!!

 気持ちだけが焦るも宙に投げ出された私は自由に動ける術は無い!!

 攻撃しか無い!!


「「火弾(ファイヤーボール)!!」」


 私の火弾(ファイヤーボール)と同時にヤツも火弾(ファイヤーボール)を射出した。


 至近距離で火弾(ファイヤーボール)火弾(ファイヤーボール)が衝突した衝撃と光で一瞬、目が眩んだが何とかヤツの短剣(タガー)を見切って躱す事は出来た!


 とは言え爆風に弾かれる様にして何とか躱した私はそのまま地面に仰向けの状態で叩きつけられる!


 それにしても火弾と火弾とが衝突した衝撃の中でも短剣を突き刺してくるなんて想定外だったわ。

 何とか躱せたのはラッキーなだけだったかも知れない。


 見た目と違って戦いに関しては実践豊富なのは認めざるを得ないわね。


 早く体勢を立て直さなきゃと首を持ち上げヤツを確認する。


 流石にヤツも爆風の中に手を突っ込んだ代償はあったみたいで右手がズタズタになっている。

 まああれ位なら治癒魔術ですぐ治せるでしょうけどね。


 それにしても…何とか回避は出来たけどヤツの短剣(タガー)が頬をかすめたみたいで頬が熱く、血が滴るのが分かる。


「ふん…なかなか手こずらしてくれたが終わりだなぁ」


 ヤツは負傷した右手を治癒魔術で治しながらまたあのイヤらしいニヤついた表情で言ってくる。


「ま、まだ……!?」


 あ、あれ?おかしい…声が出ない!?

 体も起き上がる事が出来ない!!


 くっ!?喋れないし動けない…!

 仰向けに倒れ大の字になったまま体が動かない。

 マズい…!!


 ガスラン達は?

 バカ…!!何で今の内に逃げないの…?


 体が動かないが何とか目だけは動くからガスラン達を確認すればガスラン達は腰を抜かしたまま唖然としている。


「魔術はそこそこ使えるみたいだがぁ、お前みたいに馬鹿正直にぶっ放すだけじゃあダメだなぁ。俺みたいに属性の違う魔術を組み合わせてはじめて魔術戦は意味を持つんだぁ、デュークに習わなかったかぁ?」


 相変わらず人を見下しているみたいね。

 そうやって余裕かましてなさい、今、呼吸を整えて回復してみせるんだから!

 と、とりあえず何とかしてガスラン達を今の内に逃さなきゃ。

 あれ?おかしい、まったく身動きが取れない!?

 これって単純なダメージだけじゃない?!


「ふははははは!!俺が余裕をかましてると思ったかぁ?ああそうだぁ、余裕をかましているんだよぉ」


 っ!?どういう事??


「気付かないのかぁ?毒だよ毒ぅ、この短剣(タガー)には神経性の毒が塗ってあるんだよぉ。しばらく体は動かないぞぉ」


 っ!?


「さっき作戦変更だと言ったがぁ、更に作戦変更だなぁ。お前はなかなか高く売れそうだがぁ諦めよう。売るのはあいつら男の貴族だけだぁ。お前は罪深いしなぁ、俺様に傷を付けた上によく分からないが無詠唱魔術も使ったぁ、その上精神的にもなかなか強い」


 ぺらぺらと喋りながら私に近づいてくる。今がチャンスなのに……!


「お前みたいなのは売っ払ったりしても結局は生きてる以上、俺に復讐しようとするのは明白だぁ。俺はこう見えてなかなか臆病者でなぁ、そんな危険分子が世の中にいるのかと思うと落ち着かないしなぁ」


 毒が塗ってある短剣(タガー)をしげしげと眺めながら私に言っている。


「よってぇ………殺す!!」


 っ!?

 身動きが取れない私に容赦無く短剣(タガー)を振り下ろそうと、いや、振り落とされるのが見えた!!




 ……………………………。


 え??何??

 何で何も起こらないの?


 ダメだと諦めて閉じていた目を開ければ短剣(タガー)を振り下した途中で止まっているヤツがいた。


 え??何?どう言う事?


 静寂な時間が流れる。

 な、何?時間が止まった?


 私は毒で動きを封じられているがヤツもピクリとも動かない。


 どうなってるの?と思ったその時、ヤツの首に横一文字の赤い線がスーッと入る。


 首の端から端へと赤い線が繋がると同時にヤツの頭と体がズレた!


 ズレた頭は回転しながら落ち、ドンっと鈍い音がして地面に転がった。

 頭部を失った体はバランスを崩し、そのまま後ろにひっくり返る。


 理解が出来ない。

 ヤツは死んだの?

 何で?

 誰が殺ったの?


 師匠??ブルーノさん??

 何せよ助かったの??

 訳が分からないまま、転がるヤツの頭部に目を奪われていると上空から声がした!


「今のはそいつが汚い」


 誰!?逆光でよく見えない。

 と思った瞬間、体が動く様になった!


 私は慌てながらも警戒しつつ立ち上がり、顔に手をかざし上空を見る。


 その人物は公園の1番高い木の天辺、つまり木の枝の先に立っている。

 細い枝がしなる事無く、一見すると宙に浮くように立っている。

 腕を組み足を揃え立つ姿は私より年上に見えるが、少女と言った感じだ。


 黒髪…!?


 あの黒髪って、まさか…?!


 不吉の象徴である真っ黒な髪…。

 冷たくどこまでも見通してそうな蒼い瞳。

 噂というよりお伽話にしか聞いた事無いけど…。


 死神!?


 本物?!

 何で??


 明らかに狼狽している私を死神は黙ってただ蒼い瞳で見ている。


「あ、あ、あの……た、助けて…頂き、ありがとうございます…」


 事態が飲み込めないがお礼は言わなきゃ…。


「ふ、なかなか礼儀正しいな、大抵はこう言う場合、助けたお礼も言わずにいきなり誰?とか質問してくる奴が多いんだがな」


 死神?彼女は腕を組んだままの格好で木の上から見下ろしながら私に言う。


「た、助かりました、本当にありがとうございます」

「いい、別に其方を助けた訳じゃないしな、結果、其方は助かった、って言うだけだ」


「そ、そうなんですか?か、仮にそうだとしても命を救われました、わ、私はソフィアと言います。助けて頂いた方のお名前を伺っても?」

「本当に礼儀をわきまえているお嬢ちゃんだな。今時珍しいからいいだろう、私はベルリネッタ、名前なんかより死神って答えた方が其方の望む答えかな?」


 っ!?やっぱり、死神!?


「い、いえ。で、でも死神のあ、あなたが何故、私を助けて下さったんですか…?」

「だから其方を助けたのでは無く、結果的に其方が助かったのだ、分かるか?逆に考えてみろ」

「逆…ですか……私を助けたんじゃなくて、あいつを殺した?って事ですか?」

「そうだ、其方とあいつの闘いを目にしたのは偶然だったがなかなか楽しかった、その闘いをあいつは(けが)したから終わりにしただけだ」


「ど、どう言う事でしょうか?」


「そのままだ、あいつは卑怯だったから。卑怯な事を汚いって言わないか?実力の差は仕方ない、まぁ生まれ持った素質はあるにしろ、訓練や経験の差だからな、それでも実力が下の相手に、増して丸腰の相手に、神経性の毒を塗った暗器を使うなんて汚くないか?少なくとも私の美学には反する」


「た、確かに短剣(タガー)が頬をかすめただけで体が動かなくなったけど」

「格下相手に暗器を使って嬲り殺すのは汚い」


「い、いずれにしても私達は助かりました、ありがとうございます」


「だからいいって言ってる、其方が気にする事じゃ無いし、もしあいつが真っ向勝負していたなら私は其方を助けなかっただろうしな」


「え?そ、そうなんですか?」


「それはそうだ、良いか悪いかは置いておいて闘うにはそれぞれの理由があって闘ってる訳だし、私が常に負けている者を助けて勝っている方を殺していたら世界のバランスがおかしくなると思わない?いつも正しい者が負けているとは限らないしな」


「そ、そうですね…」


「と言う訳だ、それじゃあな」


 話の途中って訳でも無かったけれどあっさり去ろうとする死神に私は少し驚いたのと同時に少しの寂しさを感じる。


「あ、ありがとうございました!この恩は忘れません!!」


 踵を返し去ろうとしていた死神ことベルリネッタさんは振り返った。


「…頬の傷」

「え?」


 突如傷を指摘され思わず傷に手をやる。

 血が固まりつつあるけど生暖かくヌルっとする。


「さっき解毒魔術をかけて体の自由だけは戻したけど、早く高度治癒魔術(ハイヒーリング)で治した方がいいぞ、毒を含んだ切傷は痕になるからな」


 ベルリネッタさんが毒を含んだ傷について教えてくれる。


「ありがとうございます、だったらこの傷はこのままにしておきます」

「ん?男ならまだしも女が顔に傷痕なんか無いに越したこと無いぞ?」


 特段不思議と言った感じの表情ではないがその冷たい目で私の事を見る。


「いいんです、この傷は自分への戒めです」

「…戒め?」

「はい、実戦不足で世間知らずなまま感情だけで闘って負けたこの苦い経験を忘れない為の戒めです」


 少しだけ不思議そうな表情になった様に見えなくもないけど基本的にはクールな表情のままだ。


「そんなに気負わなくてもいいんじゃない?誰にでも初めてはあるぞ?まぁ、でも其方が強くなる為にそうしたいならいいのか?」

「それから助けて頂いたベルリネッタさんとの出会いの記念でもありますから」


 今度は完全に不思議と言った表情になる。


「私のせいで女の子の顔に傷痕が残るのはイヤだな」

「冗談です、いえ、半分本当ですけど」


 何だろう?死神に会ったって言うのに不思議と怖くない、怖くないどころか何か通じる気がするのは毒の後遺症かしら?


「ふふふ、其方は面白いな、いいだろう、気に入った、次会う事があったら、その時はまた其方の味方となろうソフィア」


「ありがとうございます!また会えるの楽しみにしてます!その時にはもっともっと強くなってますから!!」


 気に入ったと言うその一言に私は何故か嬉しくなる。


「それは私も楽しみだな」

「期待してて下さい!」


「あ、それから其方は私の事、ベルリネッタって呼べ。ベルリネッタさんでもベルリネッタちゃんでも無く、ベルリネッタとな、それから敬語も要らないぞ」


「え?ベルリネッタ…な、何か呼びにくい…わ」

「そうか?私の名前はそんなに言いにくい名前じゃないと思うが?」


「い、いえ…そういう意味じゃなくって…ベ、ベルリネッタは神様だから、呼び捨てにしたりタメ口で話すのはちょっと、抵抗があるって言うか…」


「ああ、人間はそういうの気にするな?だが私がいいって言ってるんだからいいのだ、何だったら呼び捨てにして敬語やめろ、これは命令だ、とか言った方がいいかな?」


「わ、分かった!ベルリネッタ!そこまで言ってくれるなら友達とみたいに接するわ」


「友達?」

「あ、友達は調子に乗り過ぎ?」


「いや、そうじゃないが私は友達と言う者が1回もいた事がないからな、少し戸惑っただけだ」

「な、なら、私がベルリネッタの友達第1号になるわ!ダ、ダメかな?」


「ふ……いや、ダメじゃない、宜しくお願い出来るかな?」

「やったー!!よろしくネ!!」


「ところでソフィア、あそこにいる人族の男の子供達…特に真ん中で腰抜かしているガス何とかって子供…」


「え?あ、ああ。ガスラン達?」


「そうだ、あいつら私の友達である其方に嫌がらせしてたみたいだな?おかげでそいつみたいな冒険者崩れに命の危険に晒されたって感じか?」


「え?いやぁまぁ…そうではあるけど…」

「ならそいつと同じく首を落とそう…」


 そういうとベルリネッタは右手に大きな氷の剣を出した。

 ベルリネッタも完全無詠唱だ…。

 あの剣は氷属性魔術で創り出した氷の剣ね。

 冷たく鋭く研ぎ澄まされた氷の剣…あれでヤツの首を刎ねた。


 っ!?


 違う違う!!感心してる場合じゃない!!


「ちょ、ベルリネッタ!!あいつらの首は刎ねないで!!」

「何故だ?……あぁ、そういう事か?」


 ベルリネッタは1人で何やら納得しているが…。


「そ、そういう事って…?」

「ソフィアが殺りたいって事だろ?当然だな、いいだろう譲ろう」


 そういうとベルリネッタは氷の剣を回転させ私の足元に刺した。

 剣先が地面に音も無く刺さった氷の剣は妖しく光る。


「違う違う!!確かにあいつらはイヤなヤツらだけど一応同級生だし、殺すまでイヤなヤツらじゃないわ!!」


「ふーん、そういうものか?」


「そういうものよ!!だからあいつらは放っておきましょう!?ね?」


「…まぁソフィアがそういうなら、そうするが、ちょっと納得いかないな」


 ベルリネッタは音も無くジャンプする様にガスラン達の元へ飛ぶ。

 あれって飛んでるの?それともジャンプ?

 …じゃなかった!!止めないと!!


「ベルリネッタ!!ストップ!!ストップ!!」


 慌ててベルリネッタを呼び止めるも時遅し。

 腰を抜かしたガスラン達の元に舞い降りたベルリネッタ。


 私は全力でガスラン達の元に走る!!

 が、さっきの闘いで体力使い果たし体が思う様に動かない!


「ベルリネッタァ!!」


 聞こえていないのかこっちを振り向かない!


 ベルリネッタは何かをガスラン達に話している様だ。

 ガスラン達は腰が抜けて動けないみたいだが大きく顔を縦に振ってうなづいている。

 やがて口を開けたまま硬直し股間からオシッコを漏らしたみたいで濡れている。


 駆け寄る私に気づいたベルリネッタはガスラン達に踵を返し私の元へフワッと舞って来る。


「はぁ、はぁ、はぁ、ベルリネッタ、ガ、ガスラン達に、はぁはぁ、な、何したの?」


「何もしてない、ただソフィアとは唯一の友達だから、その友達に嫌がらせや困らせたりしたらあいつみたいに首を刎ねるから覚悟しろってちょっとだけ殺気込めて話しただけだ。あいつらも本気でビビってたから今後はソフィアの周りに嫌がらせしないと思うぞ」


 私はガスラン達を見る。

 完全に放心状態だわ。

 まぁあいつらにはちょうどいいお灸かも知れないわね。


「あ、ありがとうベルリネッタ」

「いいのだソフィア、じゃあそろそろ行くぞ、またな」

「うん!またね!ベルリネッタ」


 ベルリネッタは口元を少し上げ大きくジャンプする様に空へと飛び立った。


 ベルリネッタはあっという間に見えなくなり私はガスラン達の方を見る。


「さてと…あいつらをヴィンスの所に連れてかなきゃ」


 未だに放心状態のガスラン達。


「ちょっと!!あんた達!!いつまで惚けてんのよ!!」

「…はっ!?ひ、ひぃぃいいぃ!?」


 大きな声で話しかけた私に気付き怯えるガスラン達。


「うるさいわね。私よ、少し落ち着きなさいよ!」

「ご、ご、ご、ごごめんなさいい!!」

「だから謝るのは私じゃなくてヴィンスにだって言ってるでしょ!!」

「は、はいぃい!!」


「分かったらさっさとヴィンスんトコに謝りに行くのよ!さぁ!立って」

「そ、そ、それが立、立てないんだよ…こ、腰が抜けちゃって…」

「ったく…ほらっ!!」


 私は立て続けに3人の頬に平手打ちをかます。


「な、な、何すんだよ!ソフィア!?」

「これで腰が抜けたの治ったでしょ?さぁ行くわよ」

「ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ!こ、これ!!」


 ガスラン達は3人とも揃いも揃って漏らした股間を指差す。


「知らないわよ…そんなの。いいから行くわよ」

「や、や、ヤダよ!僕達貴族の子供なんだから!恥ずかしいし、家名に泥塗っちゃうよ!ソフィアなら分かるだろ?」

「うるさいわね、大体にしてそういうのを身から出た錆びって言うのよ!」

「そんなぁ、だって誰だってあんな闘い見せられて挙げ句の果てには死にが…」


 チャドとルロイが慌ててガスランの口をふさぐ。


「わわわわわ!!」

「ガ、ガ、ガスラン!!ダメだよ!!死神(あの人)に関わる事言ったら殺しに来るって言われたじゃない!?」


「そ、そうだった!!!えーっと…だから…とにかくホントにホントに反省してるから、ね?ソフィア頼むよ!おもらし(これ)おもらし(これ)何とかしてくれたらヴィンスに謝りに行くからさ!お願い!!」


 びしょ濡れになった股間を恥ずかしげもなく見せるコイツ等って……。


「って言うかレディに対して男の股間を指差してこれこれ言うあんた達って……」

「お願いしますぅ!!ソフィア様ぁ〜!お、お前たちも一緒にソフィア様にお願いしろよ〜!!」

「「お、お願いします!!ソフィア様〜!!」


 ガスラン達は正座した格好で下げた頭の上で両手を合わせて拝む様に私に懇願している。


「ちょっとぉ止めなさいよ!神様じゃないんだから拝まないでよ」

「いいえ!僕達にとってはソフィア様は神様みたいな存在です!な、お前たち?」

「「うん!!」」

「神様って…」


 まぁでもこいつらが私の言う事を聞く様になるならイジメや嫌がらせが減って世の為になるかも。


 そんな風に考えながらガスラン達を見ればひたすら私を拝み続けている。


「分かったわよ、だからその見っともないお願い止めなさいよ」

「「「は、はいぃぃ!!」」」


 ガスラン達は返事と共に拝んでいた両手を膝の上に置きピシッとした正座になる。


「その代りあんた達、これからヴィンスの所に行ってちゃんと謝るのと2度と階級を振りかざして威張らないって私に約束出来る?」

「「「はいぃぃ!!」」」


「もしも約束破ったら…分かってるわよね?」

「「「はいぃぃ!!」」」


「じゃあ順番に並びなさい」

「「「はいぃぃ!!」」」


 そうして私は順番にガスラン達の濡れた股間を火魔術と風魔術を組み合わせた温風で乾かしてやった。

 何やってんだろ?私…って思いながら。

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