第十一話 「裏切り」
~~ソフィア視点~~
今日も何とか学校では苛立ちを抑え込み放課後まで持ちこたえた。
今日で4日目…いつまでもこんな状況が続くなんて耐えられない、気が狂いそう……。
そう考えた私は直球勝負で悪の根源ガスランから殺るのを止め、外堀のチャドとルロイから落とす作戦に切り替えた。
学校から帰宅して急いで私は街に出た。
ホント毎日こんな生活続けてたら体と美容に悪いわ。
早いトコ、チャドとルロイを見つけてゲロさせてやるんだから。
昨日、一昨日と自分ん家に隠れているガスランとはつるんでないみたいだから、いるなら2人一緒にいるはずだと私は踏んでいる。
怒りに任せて街を彷徨う私の前に2匹の獲物が現れた!!
チャドとルロイって獲物が。
逃がさないわよ。
私は師匠直伝の一足飛びで間合いを詰める!!
私の殺気に気付いたのか、たまたまか分からないけど2人は私に気づいた。
「わ、わ、わぁ!ちょ、ちょ、待って!!」
「ぼ、ぼ、僕達、ソフィアに話があって、ぎゃあ!!」
話が何とかって言ってたけどこのチャンスを待ちに待っていた私の動きは止まらない。
チャドを右手で殴り、返す刀の裏拳でルロイをぶっ倒す!
「ちょ、ま、待って!!」
「は、は、話を聞いてよ!ヴィンスの事だよ!!」
それぞれに追い打ちの2発目を行こうとした時、ヴィンスの事って言うフレーズで立ち止まった。
「ヴィンスの何だって言うのよ?その場しのぎのつまらない嘘なら要らないわよ!」
「嘘は言わないよ!」
「そ、そうだよ、僕達謝りに来たんだよ!」
左頬を押さえるチャドと右頰を押さえるルロイが涙目で必死に訴えてる。
どうやら話があるのは本当みたいね。
「ふん、とりあえず話聞いてあげるわ」
私はチャドとルロイを引き連れ近くの公園へと移動する。
公園のベンチに私は1人で独占する様に座る。
「で?何よ、話って?」
「ヴィ、ヴィンスの事で実は………」
意外にもチャドとルロイはガスランと3人でヴィンスをからかって橋から落とした事を自分たちから白状した。
3人でからかった結果、ヴィンスを橋から落として死んだと思ったけど死んでなくてデューク師匠ら大人を読んで助けた事。
大人を呼んだ事でガスランが命の恩人ぶってヴィンスに恩を着せてる事。
更にチャドとルロイの2人はブルーノさんにバレてブルーノさんには謝った事。
ブルーノさんは2人の事は言わないと約束してガスランのトコに行ったはずだと言う事。
こいつらが嘘をついていないとしたら今回のヴィンスの件はこれが全てのはず。
ヴィンスが何で橋から落ちたのか?
ブルーノさんが何でバルドック家で揉め事を起こしたのか?
大きな疑問の点と点が繋がった。
だけど話を聞いて別の疑問が大きく出てきた。
何でブルーノさんは事の成り行きをヴィンスに話さないのか?
まさかバルドック家に脅されて言わない?
あり得ないわ、ブルーノさんに限って。
何かしらの理由があるはず。
何にしてもガスランが主犯でヴィンスを痛い目に合わせたのは判明した。
「あんた達、よく言ってくれたわ」
「い、いやぁ…」
「僕達は今回の事でホントにガスランには付いていけないって…」
「えっ!?」
驚きの声を上げたのはチャドだかルロイだかのどっちかだがどっちでもいい。
そのチャドとルロイは仰向けにひっくり返ってる。
何故か?私が殴ったからだ。
「いってーーー!!」
「な、何すんだよ!!ソフィア!?」
殴られて納得いかないと言った表情で2人が訴えてくる。
「痛くて当たり前よ、殴ったんだから」
「ぼ、ぼ、僕達ホントの事話したじゃないか!?」
「それなのに何で殴るんだよ!?」
「何で殴るかですって?あんた達が年上のくせに寄ってたかってヴィンスを痛い目に合わせたからに決まってるでしょ」
私は更に追い打ちをかけるべく2人に詰め寄る。
「ちょ、ちょっと待ってって!だから悪い事したなって思ってこうして素直に話したじゃないか!」
「ちゃんと話したのに何で殴るんだよ!?」
「うるさい」
私は立ち上がった2人をまた殴る。
「いってーな!!」
「話が違うじゃないかよ、ソフィア!!」
「……話が違うって何の事よ?」
納得いかないって言うのを通り越し怒りにも似た表情で訴える二人だけど、話が違うって何のこと言ってんの?
「僕達はちゃんと話したから許されるはずだろ!?」
「そうだよ!悪いのは嘘つき続けてるガスランだろ!!」
そう言う事か。
私は地べたにへたり込んでいる2人を足蹴にする。
「な、な、何だよ?!ソフィア!!」
「わ、訳分かんねーだろ!!」
「あんた達何か勘違いしてない?ちゃんと話したから許される?何言ってんの?ヴィンスを痛い目に合わせた罰は受けて貰うわよ」
私は更に2人に近づく。
「わ、わ、わぁあぁぁ…だ、だ、だから僕達が悪かったって!!」
「あ、謝ってるんだから許すだろ!?ふつー!!こっち来るなよ…!!」
「謝る相手が違うでしょ!それにあんた達年上のくせに3人で年下のヴィンスをこうしてイジメたのに何言ってんのよ!!ヴィンスが止めてって言って止めた?!」
私は更に2人に蹴りをお見舞いした。
「そ、そ、そんな事今言われたって…」
「ぼ、僕達、ガスランがやれって、ガスランがウチの方が偉いんだから言う事聞けって、そう言うから…」
「そう言うから何だって言うのよ!じゃあガスランが死ねって言ったら死ぬの?!あんた達さっきから自分達は話したから許されるはずなのに私が許さないとか、ガスランがやれって言ったから自分達はやったとか、人のせいにしてばかりじゃない!!」
私は2人を立たせようと胸ぐらを掴む。
「いてててて…!!」
「は、は、離せよ…!!」
「立ちなさい!!あんた達みたいにヴィンスとか年下や階級の違いで逆らえないのをいい事に好き勝手やる奴は許さないんだからね!!」
「だからもうやらないって!!」
「ヴィンスにもちゃんと謝るから許してよ!!」
「…ふんっ!!」
2人からもうやらないって言う言葉とヴィンスにちゃんと謝るって言う言葉で2人を離してやる。
「今あんた達が言った事、約束だからね!?破ったら…」
「わ、わ、分かってるって!!」
「や、約束するよ…!!」
2人とも胸ぐらを掴まれていたからか首を押さえ必死に訴える。
「それじゃあ先ずガスラン連れてきて」
「え!?」
「ガスランを!?な、何で僕達が…?」
必死に訴えていたのが一転、鳩が豆鉄砲を食ったような顔する2人。
「何でって、あんた達ヴィンスにちゃんと謝るんでしょ?だったら3人揃って謝らなきゃ意味無いじゃない」
「そ、そうだけど、そしたら僕達がソフィアに全部話したってバレちゃうじゃん」
「当たり前じゃない、バレるも何もあんた達はそう言う事をしてきたんだから最後までちゃんと責任取りなさいよ」
「で、でも、そしたら今度はぼ、僕達がガスランにイジメられちゃうよ…」
「はぁ……ねぇ!あんた達!さっきからどうしようも無いわね、私にもやられっぱなしで許しを乞うばっかりでやり返さないし、ガスランが何だって言うのよ!イジメられるなら2人で立ち向かいなさいよ、2対1なら勝てるでしょ?」
「む、無理だよ、みんながみんなソフィアみたいに強い訳じゃないんだから」
「そうだよ、仮に2対1で勝ったとしてもガスランの奴、家柄を持ち出してまた僕達みたいな子分作って仕返しするに決まってるよ」
「自分で子分とか言う?ったく、じゃあこうしましょ、あんた達はガスラン連れてきて。ヴィンスに謝らせるのは元々私が説得するつもりだったし。そしてガスランがヴィンスに謝ったら、あなた達からガスランに事実を話しなさい」
「な、何だよ、事実って?」
「私に痛い目に合わされて白状させられたって。そしてヴィンスに謝れっ言われたって。それから弱い者イジメしたら私が許さないって言ってたって」
「そんな事言ったってガスランが納得する訳無いよ!」
「あっそ、ならもういいわ、私が自分で直接ガスランのトコに乗り込んで今聞いたヴィンスの橋落下事件の真実を突きつけてやっつけてやるから」
「そ、そんな事したら完全に僕達がソフィアに密告したみたいじゃないか!?」
「だって実際そうでしょ?」
「いやいやいや、た、確かにそうだけど、僕達がソフィアに痛い目に合わされたって言うのが無くなってるじゃん!」
「あんた達が私に痛い目に合わせられたとかはどーでもいいの、私の目的はあんた達3人にヴィンスにちゃんと謝らせる事なんだから、その目的が果たせれば経緯はどーでもいいの」
「わ、わ、わ、分かったよ、僕達がガスランを呼んでくるよ、な?」
「う、うん。だからさっきソフィアが言ったソフィアに痛い目に合わされて無理矢理白状させられたって事にしてよ」
痛い目に合わせて無理矢理吐かせたって…私はヴィンスの仇を討ったんだけど。
真実を言ったのはあんた達の罪悪感からじゃ無かったの?
何か私の救済提案に尾びれ背びれが付いた気がするけどまぁいいわ。
何せガスランは狡猾に私から逃げてるから早いトコこいつら使ってでもガスランを懲らしめなきゃ。
「分かったなら早くガスランをここに連れてきなさい」
「分かったけど、その前にこの傷治してよ」
「ソフィア治癒魔術使えるんだろ?」
何を言い出すかと思えば…何言ってんの?こいつ等…。
「治癒魔術は使えるけど何で私があんた達の傷を治さなきゃならないのよ!」
「いいのか?こんな傷だらけの顔でガスランにソフィアが呼んでるから来てって言って」
「僕だったら絶対に行かないな」
「ぐぅ………」
確かにそうかも………。
「さぁ早く治して」
「僕達の為じゃないよ、ヴィンスの為だよ」
は、腹立つけど、確かにこいつらの言う通りだわ。
そ、そうよ、こいつらの為じゃないわ、ヴィンスの為よ!私!
「治、治癒魔術…」
「おぉ!!治った!」
「うん、痛くなくなった!」
「さ、さあ、早くガスラン呼んで来て」
「分かった、任せておけ」
「待ってなソフィア」
何故か誇らし気にすら感じる表情と台詞を残し2人は足早に公園を去りガスランの家の方へ走って行った。
何だろう…このケンカに勝って勝負に負けた感は……。
それにしてもあの2人大丈夫かしら…。
まぁバックれる事は無いでしょうけど上手くガスランを引っ張ってこれるかしら…。
バカな事言ってガスランの警戒心を強めたりしないかしら…。
あぁ…考えれば考える程不安になってきた…。
やっぱり強行突破でも自分で行くべきだったかも…。
~
あれやこれやと悩んでいたら2人はあっさりとガスランを連れて戻って来た。
「ん?ソフィアじゃねーか!?何であいつがここにいるだよ!?」
「ようやく会えたわね、ガスラン!」
ホントにようやくだわ、この何日間かこいつのせいでどれだけ腹が立ったか。
今まさに仇を目の前にして血が沸き立つのが分かるわ。
私は両拳を鳴らしながら近づく。
「お前らぁ!俺様を騙しやがったな!」
「い、いや、違うんだよ!僕達ソフィアにボッコボコにされて無理矢理言う事聞かされただけなんだ!!」
「そうそう!死ぬかと思う位、痛い目にあったんだから仕方ないんだよぉ」
「話は全部聞いたわよガスラン、覚悟なさい…」
「ひ、ひぇえぇぇ…」
怯えたって遅いんだからこーかいさきにたたずよ!
「なぁんてな!バーカ」
??
ガスランが舌を出して私の事を馬鹿にする。
「この俺様がノコノコと丸腰で来る訳ないだろ、バーカ」
何なの?って言うか、ホントこいつにバカバカ言われる事程頭に来る事無いわ。
「おーい!!出番だぞぅ!!」
ガスランが茂みに向かって叫ぶ。
「あいよぉ…」
っ!?
低い声がする方を見れば公園の茂みから大きい男の人が出てきた。
デュークさんより少し年下かしら、雰囲気は全然違うけど冒険者か何かの雰囲気だわ。
何か…汚いっていうか、ガサツっぽいっていうか。
「ちょ、何なのよガスラン…!」
「ふふん、どうだソフィア。俺専属のボディガードだ」
腕を組み得意げにふんぞり返るガスラン…。
「子供同士のケンカなんか興味ねーが金くれるって言うからな、悪りぃが痛い目にあってもらうぜ」
ニヤリと汚らしい顔で薄ら笑いを浮かべる大人。
「あんたホントに卑怯ね」
「バーカ、お前デュークに魔術とか剣術とか習ってるだろ!?そんなヤツ相手にまともにケンカなんかするかバーカ!」
べーっとを舌を出すガスランに怒りで気が狂いそうになるわ。
「デューク?デュークってあの冒険者のデュークか?」
汚らしい冒険者崩れか何かがガスランに問う。
「あの冒険者かどうかは知らないし、お前には関係無いだろ!?さっさとこの女を痛い目にあわせろよ!!」
「いや、あのデュークの教え子なら話は別だぜ。リスク高すぎだろぉ?」
「……………………」
この冒険者くずれの怪しいオトナは舐める様に私を見る。
「おい!ふざけんなよ!お金もう払ったんだからな!今さらキャンセルは受け付けないぞ!!」
「ああ、違う違う、キャンセルなんかしねーよぉ。流石にこの俺でもあのデュークには敵わねぇからなぁ、とは言え俺はリスク高いのキライじゃねーぜぇ、いわゆるハイリスクハイリターンってヤツがな」
「何だ?値上げでもしよーって言うのか?」
「ふふん、惜しいが少し違うなぁ。値上げと言えば値上げだが正確には作戦変更だぁ」
「な、何だよ作戦変更って?何でもいいからさっさと働けよ!」
「ふん、貴族ってのは口の利き方ってやつを知らねーのが昔っから鼻に付くがまぁいい。そう、どーでもいいんだぁ今となってはなぁ。悪いがお嬢ちゃんをはじめ、お前ら全員俺と一緒に来てもらうぜ」
「ちょ、ちょ、ちょっと待て!お前ら全員ってどういう意味だ?ターゲットはこの女だけだぞ!?」
「だから作戦変更だと言っただろう、その辺のガキを1発2発殴るだけで金が貰えるなら安くても割りに合うかと思ったが、デュークの弟子相手なら流石の俺も復讐がこえーからなぁ」
「デュ、デュークが怖いからって何だって言うんだよ!?」
「デュークに足がつかない様に雇い主のお前、そこの目撃者の男のガキ2人、それにデュークの弟子のガキ、お前ら全員攫って売っ払う事にしたぁ。それなら足はつかない上にガキの小遣いなんかと比べものにならない金が入るしなぁ」
ニィー……と前歯が何本か抜けた口でイヤらしい笑みを浮かべる。
「ふ、ふふ、ふ、ふざ、ふざ、ふざけるな!僕が雇い主なんだぞ!雇い主の言う事を聞け!!」
「はははは、悪いが契約は破棄だぁ、何なら違約金払うぞぉお前ら売っぱらった金からなぁ」
「み、み、み認めないぞ!!そ、そうだ!!そ、それなら父様に言ってさっき払った倍のお金払うぞ、どうだ?」
ガスランは青ざめながらも提案してみる。
「冗談なら面白いぞぉ。お前ら売ればそんなはした金の何百倍にもなるって言うのになぁ。それにお前みたいな貴族の子供専門に売買してる闇市場に行けば何百倍どころか何千倍にもなるからなぁ」
「な、な、な、なな、何だって?そ、そ、そそそれなら、い、い、いい事教えてや、やるよ、こ、この女は、な、何とシュミット領主カルヴァート家の子供なんだ、ぼ、ぼ、僕なんかよりよっぽど階級の高い貴族だ!だからこいつだけでも攫って売ればかなりのお金になると思うよ、だ、だから僕は見逃してよ、なぁ!?誰にも言わないから!絶対!!や、約束する!!な、いいだろ!?それで……」
「ガスラン、あんたって…」
もうなりふり構わないガスラン…プライドも人間としての自尊心も無いのね……。
「あはははは、あーはっはっはぁ!!いいぞぉ、お前みたいに腐ったガキは嫌いじゃあ無いぞぉ」
「は、は、はは、じゃ、じゃあ、そういう事で、い、いいな?」
引きつりながら僅かな望みにかける様に聞くガスランだけど……。
「ダメだなぁ、今更1人だけ攫っても必ず足がつく。お前の情報には感謝するがぁそれとこれとは別だぁ、それに領主の娘に貴族のお前、その2人とつるんでるそっちの2人も貴族だろう、ならば尚更全員攫う」
「「ひ、ひぃいぃぃい…」」
チャドとルロイは腰が抜けたみたいで地べたにへたり込む。
「ふ、ふん!冗談じゃないわ、誰があんたの言う事なんか聞くもんですか!!」
「ふふふ、流石お嬢ちゃんだけはデュークの弟子だけあって勇ましいなぁ。だがなぁお前らには2択しか選択肢は無いぞぉ、1つは黙って俺の言う事を聞いて攫われるか?もう1つは痛い目にあって俺の言う事を聞いて攫われるかだぁ」
手なんか洗った事ないであろう汚れた指2本を立て笑う冒険者崩れ。
「2択なら違う2択よ!黙って尻尾巻いて帰るか?私に痛い目に遭わされてから帰るかのどっちかよ!!」
強気に出てみるけど本音は違う……お願いだからさっさと帰ってよ!!
「はははははははは、勇気は褒めてやるがぁ膝が笑ってるぞぉ?悪い事は言わねーから、黙って俺と一緒に来い、そうすれば今は痛い目にあわないで済むぞぉ、今はな。くっくっく」
「くっ…!」
悔しいけどどうしても膝がガクガクする。
勇気を出しなさい、私!!
私はあの師匠とブルーノさんから物心ついた時から教えてもらってんだから大丈夫!!
師匠だって並の大人なら負ける事無いって言ってくれてたし!
…でも、あいつ…並の大人…?
「ソ、ソ、ソフィアァ……」
「ソ、ソフィア、僕達が悪かった!!な、なぁ、ソフィアにもヴィンスにも謝るから何とかしてくれ!!頼むよ!!なぁ!?」
「…………………」
ガスラン達は完全に腰が抜けてへたり込んでる。
これじゃあ逃げられない。
私だけでも逃げて誰か助けを呼んでくる?
いいえ、それは無理ね…。
私があいつなら腰が抜けてへたり込んでる3人は放っておいて私の動きだけ注意を払うわ。
「どうしたお嬢ちゃん?諦めな、俺は逃さないぞぉ。言っただろう、お前達には2択しか無いとなぁ」
「ソフィア…!?」
「た、た、たた頼むよぉ…!!」
「…私も言ったはずよ、違う2択しか無いってね!!」
やるしか無い!!!
私は師匠直伝の一足飛びで敵との間合いを詰める!
「あはははは、子供は単純だなぁ、まさか俺に勝てるとでも?」
冒険者くずれのオトナは余裕と言った感じでズボンのポケットに手を入れたまま見下す様に笑ってる。
「火弾!!」
私と敵の間に火弾を放ち土煙りをあげ敵に目眩しをかける。
と同時に右にステップし次の魔術を発動する。
「雷……っ!?」
「ふははははは!ホントに子供だなぁ、正に子供だましだ」
敵は予知していたらしく土煙りに惑わされず一気に私との間合いを詰めてきた!!
「そぅら!」
「っ!?」
今でのノラリクラリとした雰囲気とは、うって違い素早い動きから鋭いパンチを繰り出してくる!
予想を上回る早さに何とか躱したものの転げて必死に避けた私は次への態勢が整っていない!
態勢を整えようと慌てて顔を上げれば目の前に革靴が見えた!!
次の瞬間、私はヤツの蹴りをまともに顔にくらった。
ふき飛びながら口の中に広がる血の鉄の味を噛み締め何とか態勢を整え様とする次の瞬間、腹部に重く激しい痛みを感じた!!
「がふっ!!」
ヤツが私のお腹を踏み付けた事で私は口の中の血を強制的に吐き出した。
「ふははははは、脆いなぁ脆すぎるぞぉ」
「ぐうぅ…ううぅぅ…」
私のお腹を踏み付けたまま踵でグリグリと捻じる。
「どうしたぁ?降参かぁ?」
「だ、誰が……」
私はヤツの足を掴み退けようと抵抗する。
「はははは、無駄だぁ無駄、お前ごときガキの力で退けられるとでも思うかぁ?」
ヤツは更に力を入れてくる。
「ぐっ…!雷弾…!!」
っ!?
ヤツも魔術発動を察し足をどかそうとするが私は離さない!掴んだまま雷弾を発動させてやる。
「ぐぁあっ!!」
「ぐっ…!!」
ヤツは片足を感電やけどしながら堪らず私から距離をとる。
私は私でお腹をやけどしたが何とか距離を取れたから助かった。
「中級治癒魔術」
「中級治癒魔術」
お互い治癒魔術をかけ傷を治療して態勢を整える。
「少しふざけ過ぎたなぁ、流石デュークの弟子って言ったところか?まさか自分との距離ゼロで魔術発動するとは少しイカれてるみたいだなぁ」
「ふん!子供だと思って舐めてるからよ!」
「確かに舐めていたなぁ、分かったぁ少し本気出してやるかぁ」
っ!?
早い!!
私は慌てながらも迎撃する魔術を発動する!!
「火複数弾!!」
消えた!?
と思った次の瞬間、背後がぞっとした。
「ぐっ!?」
背中を蹴られ前のめりになり転げる。
前も上も下も分からないまま転がされる内に横から蹴り上げられた!
堪らず仰向けになる。
「っ!?」
ヤツは軽々と私の胸ぐらを掴み持ち上げる。
「ふんっ!」
胸ぐらを掴まれたまま鼻を殴られた!!
鼻血が吹き出す!
「ふっ!ふっ!ふんっ!!」
更に3発殴られた後、ゴミでも投げ捨てるかの様に放り投げられた。
「ふふふ、あまり長い間掴んでるとゼロ距離で魔術発動しやがるからなぁ気をつけないとなぁ」
「かっ、は……!!」
胸ぐらを掴まれ宙づりにされていたのと大量に出た鼻血で息が続かない、これじゃあ治癒魔術も発動出来ない!
何とか立とうと膝をつき両手で上半身を起こす。
「そらっ!!」
「っ!?……………っ!!」
四つん這いの私の鳩尾にヤツは遠慮ない力で蹴り上げる!
息がとまる…!!
「ふふふ、息が出来ないだろう、つまりだぁ魔術も発動出来ないって事だぁ」
マズイ!!
呼吸を整えなきゃ!
ヤツは余裕なのか私に恐怖を与えようとしているのかゆっくり近づいて来る。
逆に言えば今がチャンスなのに!!
ダメっ!!呼吸が…!!
息が出来ないっ!
苦しい…!
「かっ………はっ……」
苦しいだけで声が出ない…。
「ふははははは、まだ声が出ないかぁ」
四つん這いで痛みに堪え息を整える私の首を握り潰すかの様な力で掴み再び持ち上げる。
「…………!!」
「ん?何だぁ?何か言いたいならはっきりと言えぇ、はっきりとなぁ。くくくくくく、分かってるよぉまだ息が出来ないんだろ?それじゃあもう1発いっとくかぁ?喋れなきゃ魔術を発動する事も出来ないから安心だぁ」
右手で私の首を掴んだまま左拳に力を込め振りかぶる!
マズい!!
何とか躱さなきゃ!!




