表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ヤンキー国志  作者: のりたま左大臣
1/2

初詣じゃあ!

 肌を刺すような冷たい空気と体温を奪う冷たい雪と風の中男たちは去る河川敷に集まっていた。

 

 まるでその寒さを感じさせない熱量をまとった彼らはおよそ300人と言った所だろうか、三つの勢力に分かれ互いに睨み合っている。 今にも飛び掛り大きな暴動になりそうな彼らの先頭には恐らくこの集団をまとめているのだろう、四つの人影があった。


 大晦日の深夜、記録的な寒さと強風となったこの日彼らはとある目的の為に集まっていた。


「初詣は俺らのモノじゃあ!コラァ!」 「私立はひっこでんろォ!!」



「海に沈めるぞぉ?!」 「お参りの前に参りましたって言わしたるぞコラぁ!」



「ベッドの上で日の出見るか?!おぉん?」「もう見てんだよぉ!今年はお前の番だクソがぁ!」




 この記録的にクソ寒い深夜、それも降る雪は吹雪の様相を呈してきた中彼らはこんな吉事とも珍事とも祭日とも災日とれるバカげた集まりを一昨年から三校で毎年のように行っていた。




_____それもこれもどこが一番最初に初詣を行うかという内容でだ。




 この市の中で最低の偏差値と暴力沙汰が起これば大体ここと言う血の気の濃さ、教室の窓ガラスはやっぱり割れているし学内での派閥争いが止む事はない、しかし「ケンカと技術で舐められてはいけない」と言う精神を持ちケンカの強さと技術力の高さを合わせ持つ、「県立宇栄工業高等学校」

 

 


 解り易い不良校と言う訳では無いがその理由はその硬派な在校生に有る。偏差値は言わずもがな低く、集まる新入生は悪ばかりそんな彼らを軍隊の様に叩き扱き新たな呉越校生としまう、しかし根っこは元のまま売られたケンカは必ず買い、その強い団結力は仲間がやられたりしようものなら何処までも追いかけ報復する。

「市立呉越農業高等学校」

 



 私立にして高い偏差値を持つこの高校は一昨年より悪い噂が漂い始めた。


曰く、呉越の生徒とモメていたの”見た”


曰く、他校の人間への恐喝の噂を”聞いた”


曰く、宇栄を潰す準備を行っている”らしい”


その他多くの噂や二校との小競り合いの話が後を絶たない、清純を象徴する真っ白い制服に隠された底の見えない黒い不気味な存在「私立白蘭海洋高等学校」



今やこの街は三校がしのぎを削り互いが互いを食らいあう混沌の三国志となっていた。



 三校の生徒が睨み合い互いが互いを押し潰さんと熱量のみが上がっていく。

気付けばいつの間にか罵声や掛け声は鳴りを潜め風が通り抜ける音と静寂だけが場を支配していた。



 どれくらい経っただろうか、静寂とは裏腹にそわそわと空気に落ち着きがなくなっていく。


期待からか敵意からか集団心理か一人一人の鬱憤や覚悟からか熱量はまして際限なく増していく。



 鐘の音が響く


新年の開始を告げる除夜の鐘の音、珍しくも新年の開始と共に鐘を撞くこの寺の鐘がそのまま男たちの開戦のゴングとなった。


 『潰せぇぇぇぇええええええええ!!!』


 『沈めろぉ!』

 

 『全員!!』 『埋めちまえぇぇ!!』


「「「「ウォオオオオォォォォォォォォォォォォォオオオオオオ!!!!!」」」」


各先頭に立つ男たちが吠える。それぞれの勢力から雄叫びが上がる。


彼らは目の前の敵を捻り潰さんと駆け、声を荒げ、拳を握り飛び掛らんと足に力を込める。




 しかして彼らの戦いは始まらなかった。


彼らの中心、突如そこからそれぞれを三つに分けるかのように輝く線が走る。


戸惑うもの、足を反射的に止めるもの、事態を理解できずそれでも前に出ようとするもの。


 


 そんな彼らを爆発的に膨れ上がる光は包み込んで行き________。


________そして雪の降る河川敷には誰も残っていなかった。

 

 

 


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ