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 次の日、雫は教室で隣に座る生也に話しかけた。

 「鬼城くん、今日は音楽室にくる?」

 「行かない。」

 「どうして?」

 「二人の邪魔はできねーから。」

 「邪魔? どういう意味?」

 「そのままの意味だよ。良かったじゃん、憧れが叶ってさ。おめでと。」

 「え? 鬼城くん?」

 「俺と話してると、大山に怒られちゃうよ。」

 生也はそう言って、教室を出て行ってしまった。

 雫は何がなんだか分からなかった。

 その日の放課後、雫は音楽室で一人泣いていた。

 「森さん? どうしたんですか?」

 光はいつものように音楽室にくると、雫に声をかけた。

 「私、鬼城くんに嫌われたの。」

 「え?」

 「鬼城くん、もうここへは来ないって。」

 泣きじゃくる雫を見て光は、冷静に言った。

 「鬼城がここへ来ないのは、俺のせいです。」

 「え?」

 雫は顔を上げた。

 「こないだ、森さんが帰った後に鬼城が戻ってきたんです。あなたに会いに。」

 「私に?」

 「そう。でも鬼城が森さんに会いに来たのは、自分の欲求を満たす為。鬼城はずっとそうゆう目で森さんを見ていたんです。俺はそれが許せなくて……。俺と言い争いになったことが原因でここへはもう来ないんです。」

 もちろんこれは光の作り話だ。

 この前、雫は光の告白を断った。だが、このままの関係を続けていきたいという雫の優しさで話は丸く収まった。それでも光は雫への想いを断つことができずにいた。ちょうどそこへ、生也が戻ってきたのだ。生也が雫に告白することを察知した光は、生也の雫への想いを諦めさせる為に付き合うことになったという嘘偽りを言ったのだ。そして今も、雫と生也を離す為にこんな嘘を話しているのだった。

 「森さん、鬼城に近づかないほうがいい。あなたのためにも。」

 「……鬼城くんは、そんな人じゃない。大山くんは、鬼城くんを分かってないよ。」

 「でも、鬼城は最低な人なんですよ。」

 「最低なのはあなたよ!!」

 雫はまた泣きじゃくってしまった。

 「森さん……。」

 「ごめんなさい。一人にさせて……。」

 光は何も言えず、黙って音楽室を出て行った。

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