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音楽室

 「はいはい、どーもすみませんでした!!」

 男子生徒は先生の話を聞かずに職員室を出てしまった。

 この男子生徒の名前は「鬼城生也おにしろしょうや」高校2年生の俗に言う不良少年。今も、先生に怒られていたところだ。

 「いちいちうるせーんだよ、クソが!!」

 生也は目の前にあったゴミ箱を蹴り飛ばした。すると、ケータイが鳴った。

 「……もしもし?」

 「生也く〜ん。今日どうしても生也くんに会いたいの。時間ある?」

 電話の相手は、生也の彼女のうちの一人。

 生也はだるそうに返事をした。

 「あぁ。」

 「じゃあ、7頃私の家来てね。」

 それで電話はきれてしまった。

 生也にとって女とは自分のおもちゃのような存在だった。少し優しい言葉をかければ、すぐにおとせる。こんなふざけた恋愛しか知らない生也に運命の出会いが待っているのだった。

 「ん?」

 生也は何か音がすることに気がついた。

 「空耳か……。ん? やっぱり何か聞こえる。」

 生也は音のする方へと向かっていった。


 たどり着いた場所は、特別教室棟4階の一番奥にある第二音楽室だった。

 「ここか……。」

 生也は少し開いている扉から中を覗いた。

 中には女の子がいた。後姿しか分からないが、白いワンピースを着たロングヘアーの女の子。窓のほうを向いて、何か口ずさんでいる様子だった。

 「……おい。」

 生也は中に入っていった。すると、女の子は生也の方へ振り返った。

 「あ、あの……勝手に入ってすみませんでした!!」

 女の子はそう言って、生也の横をすり抜けて出て行ってしまった。

 「ちょ、おい!!」

 生也の声は女の子には届かなかった。


 次の日、生也は珍しく朝から学校にいた。だが、生也に話しかけてくる生徒は誰もいない。生也は学校全体から恐れられているので、“友達”と呼べる人は一人もいない。話しかけるどころか、みんなは生也を見てコソコソと何かを言っていた。その行為が生也を苛立たせた。

 「てめーら、何コソコソしてんだ!! ぶっ殺すぞ!!」

 すると、教室のドアが開き担任の先生が入ってきた。

 「はい、みんな席に着いて。今日は転入生を紹介します。」

 先生が廊下に目をやると、一人の女の子が入ってきた。

 「あ。」

 生也は女の子を見て、小声で呟いた。

 「森雫もりしずくさんです。森さんはお父さんの仕事の都合で3歳から今までイタリアにいました。じゃあ、森さんから一言どうぞ。」

 「よろしくお願いします。」

 雫は鈴がなるような声で挨拶した。

 「じゃあ、席は……あそこ座って。」

 先生が示した席は、生也の隣の席だった。

 雫は自分の席へと向かうべく歩き始めた。席に座る瞬間、生也の存在に気づいた。

 「あ。」

 雫は軽く会釈して席に着いた。

 

 授業中、生也はずっと雫を観察した。なんせ、今まで自分が付き合ってきた女とは違うタイプだからだ。

 生也の中で何かが起きようとしていた。しかし、生也が自分の変化にきづくことができるのはもう少しあとになってからだ。



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