表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美少女になりてえよなぁ  作者: 釜蔵
金木犀と春風の闇
7/181

1人旅をしている素性が知れない美少女だ!!

2018/05/03 一部修正

2018/11/04 会話表示修正、会話内容修正

 何とかスライムを食べて空腹を満たした俺は泉に戻ることにした。全裸で。

 現在、ローブを水洗いし、適当な木にかけて乾燥中である。



「はぁぁ……いつ見ても美しいな俺の体は」

(……)



 泉の中でジャバジャバと水浴びしている俺、現在自己陶酔中。

 ハーフエルフという種族に名折れしない素晴らしい肢体だ。神秘的という言葉が相応しいであろうその体はどの位置から見ても、どんなポーズをとっても端麗だ。



(ふぃー、やっと取れたか? スライムが結構しつこく髪に付いてたから時間が掛かっちまったな)

(ローブを被っていたお陰で前髪のみで済んでよかったですね。ハナ様は長髪なので全体に付着していたら大変でした)

(今後もスライムには気をつけなきゃな……)



 ある意味トラウマを貰ってしまったスライム。今後は一撃で倒せるようにもっと魔糸の精度を上げなければならない。

 美少女に磨きをかける、戦闘もこなす。両方やらなければならないのが美少女の辛いところだな。



(前者は後回しでもいいのでは?)

(絶対にノウ!)



 そんな話をしながら、俺は泉から出て、体を乾かす。

 火が欲しい……今から練習して火魔法とか使えないかと聞くと、自分の力だとすぐには分からないが、少し時間をくれれば適正を見てくれるのだそうな。

 言うほどこの世界のことを知らないのか? と言っても助かっているので文句は何一つないが。


 俺は近くの岩場に戻って腰を下ろす。

 さて、少し休んだらまた特訓だ。せめて危なげなくスライムを倒せるようにならなければおちおち昼寝も出来ん。

 というか、寝床をまだ決めてなかったな。流石に野ざらしで寝るのは危ないしどうするかな。

 先の事を考えていると、近くでガサッと物音が聞こえた。


「むっ!?」



 魔物か? だとすると普通にピンチなのでは。

 そういやここ水場だし普通に魔物集まるよね! 普通に考えたらわかるのに何故事が起きてからじゃないと動けないのか。

 まぁ、起きてしまった事は仕方ない。反省し次に活かすとしよう。生きていれば……だが。



「セピア、もし俺が正面から魔物とやり合った場合はどうすれば倒せる?」

「魔糸を使い遠距離から木の枝などで牽制し核に傷が入るまで逃げ回るしか無いでしょうね。ですがハナ様の体力はGなので素直に逃げることを推奨します」

「ですよねぇ」



 逃げると言っても安全な場所なんて無いし、出来ればここでなんとかしたいが。

 俺はさっとローブを着て、音のなった方から静かに離れる。

 生乾きだよ……ああもう、肌に悪いんだぞ。



(……何も来ないな)

(気をつけて下さい。何も無いと思わせておいてぱっくり行く事もあります)

(怖いこと言うなよ)



 俺は魔糸を地面に落ちている枝に飛ばす。さっきの要領で飛ばすことだけは出来るからな、飛びかかってきたら一発お見舞してやる。

 相手が動くのをじっくりと待つ。先に動いたほうが負け……動いたほうが負け……。

 いきなり、ガサガサッと近くの草木が揺れる。


「ひうっ」


 バシュッ! と明後日の方向へ飛び出す。

 やべっ、びっくりしてまた尻もちをついてしまった! そしてそのまま枝もシュート!



(ハナ様! 流石にどんくさすぎますよ!!)

(今のは仕方ないだろ! 相手が焦らすのが悪い!!)



 言ってる場合では無い! 早く体勢を立て直さねば!

 慌てて立ち上がり魔糸を飛ばそうと構える。



「ちょっと! ちょっと待って!」



 草むらから声がする。もしや――人間?

 声からして子供の声だ。何故子供がこんな所に……いや俺もそうなのだが。



「10秒以内に出てこなければ、貴様は蜂の巣になる」



 とりあえず強者っぽく相手を煽ってみる。

 だが、草むらから反応はない。チッ、だめか。



(何言ってるんですかハナ様!)

(いや、こう言えば有無を言わさず出てくるんじゃないかと)

(いきなり脅迫してどうするんですか!)



 うむ、ちょっと待ってと言っておきながら中々出てこないな。

 どんだけ焦らせば気が済む……あ、出てきた。



「えっと、君、ここで何してるの……?」



 物音の正体は1人の少年だった。

 身長は俺より少し小さいくらい。おどおどして自信なさげにこちらへ問いかけてくる。

 その割にはいっちょまえに帯剣している。中々、様になっているな。まだ子供だろうに持ち慣れているのか?



「あーっと……その、水浴び?」

「なんで僕に聞くの? と言うかここ、魔物がいるから子供は立入禁止だよ?」

「いやお前も子供だろ」

「僕は……慣れてるから大丈夫だよ」



 そーいう問題じゃねーだろ! 大人の言う事はきちんと聞きなさい!

 まぁ魔物じゃなくて助かったがいきなり人間に出会うとは。イベントのテンポが早すぎませんかね?



「それよりも君、村の人じゃないよね? どこから来たの?」

「あー、えっとー、それはだなー」



 どう返答しようか。バカ正直に異世界から来ました! は流石にマズイよなぁ。

 かと言って流離さすらいのハーフエルフでーす☆って言うのもマズかろうし。


(ハナ様。早くに両親が亡くなって見知らぬお婆さんに育てられて、そのお婆さんも亡くなって1人旅をしている素性が知れない少女の設定で行きましょう)

(なるほど。自分も分からなくて困ってる設定か。色々便利だな)



 何聞かれても分からないで通せるしな。土地勘も知識も無いという不審な所もクリア出来る。



「俺は早くに両親が亡くなって見知らぬお婆さんに育てられて、そのお婆さんも亡くなって1人旅をしている素性が知れない美少女だ!!」

「!?」



 少年は驚いている。流石に設定盛り過ぎか? いや魔物がいる世界観だからこそこれくらいが丁度いいはず……。



(ハナ様、そのまんま言っちゃダメですよ……完全に他人の説明になってるじゃないですか! だいたい自分で美少女って!)

(本当に美少女なんだから良いだろ!)



 セピアのツッコミも板についてきた。的確に急所を突いてきやがる。

 頭のなかで会話していると、少年が申し訳なさそうに口を開く。



「う……なんかごめんね。聞いちゃいけない事聞いちゃったかな」

「む、気にするな少年」



 いやこっちこそ騙してごめんな! そっちが申し訳なさそうにするとこっちまで申し訳ないだろ。

 少年はこちらへと寄ってくる。



「僕はレイ。この近くの村に住んでるんだ。君は?」

「俺はハナだ。あっ、いや待て」

「ん? どうかしたの?」



 せっかく美少女になったんだからそれらしく振る舞わないとな。せっかくの美少女が台無しだ。



「私はハナって言うの。よろしくね、レイくん♪」

「……」

「……」



 声を高めに、少しはにかむようにレイに自己紹介する。

 あっ、今の俺すっごい可愛い……癖になりそう。



「……二重人格?」

「どっちも俺だよ? 意識切り替わったりしてねーからな? というかよく二重人格なんて言葉知ってんな」

「あ、戻った。よかったぁ」

「いやだからどっちも俺だから」



 ふてえ野郎だまったく。この可愛さがわからんとは。

 


「ハナちゃんっていうんだね、よろしく!」

「おう、よろしくな。で、ここは一体なんなんだ? 魔物が出るって言ったけど」

「ここはリールイっていう森林なんだけど、さっきも言った通り子供は立ち入り禁止なんだ。最近は魔物がかっぱつか? してきたみたいで」



 イントネーション的に活発化の意味がわかってないな。意味も分からず使っとるのか。二重人格は知ってるのに。

 魔物が活発化ねぇ。来たばかりの俺にはわからんが、世間様では何か起こってるのかもな。そこら辺も含めて何とか知りたいが……。



(ハナ様。ここはこの少年に頼り近くの村に移動するのがよろしいかと)

(それは俺も思ったが大丈夫か? ハーフエルフ的な意味で)

(問題ありません。一般人から見てハーフエルフは人間と姿形は変わりませんので自己申告でもしない限りバレることはないでしょう)

(なるほどな)



 と、なると何とかこのレイという少年に、村まで連れてってもらわねば。



「それで僕はここに薬草を取りに来たんだけど、偶々君を見つけて、その」

「見つけて――なんだ?」

「いや、その、なんでもないよ」



 なぜコイツはそわそわしているのか。

 ……あ、なるほどな。



「お前、覗いてたな?」

「あわわ、それは違くて、その、いつも休憩してた場所に君がいたからその」



 いや仕方がない。これだけ可愛い美少女が水浴びしていたら見惚れてしまうのは当然だ。

 ああ良い。水浴びしている所を少年に覗かれてしまった俺は最高に可愛い。ふへへぇ……。



(なんとなくカラー様が仰っていたことが分かってきた気がします)

(あの女神さんがなんか言っていたのか?)

(いえ、こっちの話です)



 セピアは偶によくわからないことを言う。まあ一々気にしていたらキリがないか。

 俺は赤面しているレイに視線を戻す。



「ま、それはそれで良いとして」

「いいの!?」

「実は道に迷ってしまっていてな。村まで連れて行ってほしいのだが」



 人がいる場所ならとりあえず安全だしな。

 最悪飯はスライム食べたから大丈夫だし。う、思い出すと気持ち悪くなってくる。



「うん! じゃあ一緒に行こう! ちょうど薬草も採れて、休んだら帰ろうと思ってた所なんだ」



 レイは笑顔で答えてくる。

 これが本物の無垢な笑顔か。学ばせてもらおう。

 こうして俺はレイという少年に近くの村まで連れてってもらうことにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 流石に人前に出たら相応しい喋り方になるよな?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ