嘘、私のステータス低すぎ……?
2018/11/04 会話表示修正、会話文修正
意識がだんだんと覚めていく。
変な夢を見ていた。女神様に異世界に転生するからと言われて、美少女にしてくれと懇願した夢だ。
夢の中でも俺はそんな事を……全くどれだけ今の自分に不満があるのだろうか。
俺はゆっくりと目を開く。床が固い。俺はいつもベッドで寝てたはずだが……。
「よっと……!?」
聞きなれない声に俺は驚く。可愛い声だ。
キョロキョロと見渡しても誰もいない。というか……ここ何処だ。
「なんでこんな森に……ウェア!?」
更に俺は驚く。俺の声が可愛くなっているのだ。
これは凄い。自分が可愛い声を出すとこうやって聞こえるのか。
俺は起き上がって自分の体を確認する。
透き通る程白い肌。小さくて細く、綺麗な手。脚は正に美脚と言っていいほどだ。
さて、ここからが重要だが……。
俺は服装を確認する。
と言ってもローブしか着ていない。その他は何も着けていない様だ。
さて……確認しなければ。俺はゴクリと喉を鳴らすと襟元を開いて中を覗く。
「――フッ」
やはりだ。本来無ければまずいものが存在していない。体は縮んでいると言うより最早別物。少女そのものだ。
やっぱりこれは夢ではないらしい。まさか本当に……。
(お疲れ様です。雪中 花様)
「うっひょいぃ!?」
俺は思わず飛び跳ねて周りを見渡す。
だが、誰もいない。男の声が聞こえたと思ったのだが。
(あれ、カラー様から説明を受けているはずですが……私の声が聞こえますか?)
やっぱり男の声がする。カラー様って夢に出てきた神様か……?
「聞こえてるけど何処にいるかわかんねーよ」
(貴方に念話で語りかけているので私はそこにはいませんよ。まずは転生お疲れ様です)
「あ、やっぱりこれ夢じゃないんだ」
俺はもう一度辺りを見回す。
木々に囲まれた森の中。こんな所来たことがない。
それに、やっぱり視界もいつもより低い。背が縮んでいる。
(……もう話しかけてもいいでしょうか?)
「おう、大丈夫だぞ。で、アンタは何者だ?」
わざわざ話すタイミングを待ってるだなんて律儀な男だ。
(私はセピアと申します。雪中 花様の今後を補佐する者です)
「なるほど、サポート的な役の人ね」
(そう捉えて頂いて大丈夫です)
あの女神様、そんなの来るって言ってたかな。……まぁいいや、減るもんじゃなし。
とりあえず、サポートってことは色々教えてくれるんだろう。
「んじゃ、適当に説明頼む」
(はい、話が早くて助かります。まずここは先程も言った通り雪中様で言う所の異世界です。雪中様はハーフエルフとして転生しておられますね。それは大丈夫でしょうか?)
「うん、問題ないぞ」
ついに手に入れた美少女(予定)の体。だんだんと実感湧いてきた。あっ今すごいワクワクしてる!
体は文句なしに合格。早く自分の顔が見たい。
(ハーフエルフの特徴はまず人間よりも魔法に長けております。そして長命であり、約500~600年ほどの寿命があります)
俺、今日から500年程生きれるらしい。ナ○ック星人かよ。そんなに生きてどうするのか。
(姿は生まれて少し成長すると殆ど変わりません。基本は儀式を行う事で長身になり、所謂大人の姿になれる様ですが、稀にそのまま少年少女の姿でいるエルフも存在しているみたいです)
なるほど、儀式を行うことで体が成長するのね。俺は絶対やらんけど。
(注意すべき点は、エルフはともかくハーフエルフは大変稀少です。世界に10人はいないのではないでしょうか)
「そんなにいねえのか。とすると、運が悪ければ……」
(はい。敢えて酷い例を挙げるならば、悪質な商人に囚われて、奴隷や慰め者として扱われる可能性があります。ゴブリンやオークなどの魔物に母体として使われてしまう事もありますね)
「ひえ……」
大分ハードな世界だ。勘弁して欲しいわ。
まずは森を抜けて人の多い場所を目指すか? いや、人間が全員良い奴とは限らんしなぁ。
(ご安心下さい。そうならない為に私がいます。まずはステータスの確認をしましょう。因みに、どんなスキルを頼んだのですか?)
「あー? スキルは女神さんにお任せした。俺はこの姿だけを望んでたからな。セピアさんはなんか聞いているか?」
(おまかせですか……そんな方は初めて聞きましたよ。私も聞き及んでいないので、一緒に確認しましょう。それと、私の事はセピアと呼び捨てにして頂いて結構です)
「あ、そう? じゃあ俺もハナと呼んでくれ。そっちの方がしっくり来る」
(承知しました。ハナ様。それとですね、私と会話する時は念話で対応して頂いた方が――)
(えっと、こんな感じ?)
(はい、ありがとうございますハナ様)
様はいらんのだが、まぁいいか。
俺はセピアに言われた通りスキルを確認する。
(ステータスやスキルは、状態石と呼ばれる石を手に握れば確認が出来ます。ですが、私がいればその必要はありません。聞いて頂ければ目の前に現在のスキルを表示します)
(便利だなぁ)
(ありがとうございます)
俺の目の前にスキルが表示されていく。ゲームみたいだ……わかりやすく日本語。
この世界、日本語通じるのだろうか? まぁセピアがいれば大丈夫か。
名前:ハナ
情報:ハーフエルフ 女 10歳
体力:G
筋力:G
敏捷:G
魔力:D
知力:B
魅力:A
幸運:A
スキル:
特殊スキル:【人形遣い】【魔物使い+】
嘘、私のステータス低すぎ……?
下限がどこか知らんがGが低いのはわかる。魔力がDなのは救いだが上3つがGとは……。
(因みにステータスの下限はどれくらいだ?)
(Gが最下限、Sが最上限となっていますね)
(俺3つも下限あるぞ!?)
なんてこった。いきなりベリーハードでしたか。
1人で生き抜くには大分つらいスペックだと思うのですが……。
(確かに転生者にしては低いですが年齢も10歳ですしまだまだこれからですよ。それに、その分魅力と運が高いですし、スキルだって素晴らしいものを頂いています)
(スキルねぇ……)
(スキルとはその者が持つ才能のような物です。生まれた時から持っている先天性のスキルもあれば、努力したり特殊な条件を満たして取れる後天性のスキルもあります)
人形遣いと魔物使いか。どっちもテクニカルなスキルじゃん? と言うか魔物使いってスキルじゃなくて職業だろ。
まぁそんなツッコミは置いといて、どんなスキルなのか聞かないとな。
(人形遣いは文字通り人形を扱うことに長けた先天性の魔法スキルです。魔糸と呼ばれる糸を手先から出して人形をコントロールし、操ることが出来ます)
(スゲー。しかも先天性って事は後から覚える事も出来ないんだろ?)
(はい、神より与えられた者の血筋のみしか覚えられない稀少スキルになりますね。ハナ様の場合ハーフエルフで人形遣いと言う極稀な存在となっています。重ね重ね、お気をつけ下さい)
極稀か。そんなに属性盛らなくても俺は美少女なだけでよかったのだがな。自分でハーフエルフとか言っちゃったからそこは俺が悪いのだが。
(魔物使いも先天性のスキルです、テイムを成功させることにより魔物を従えることが出来ます。従える数にも限りがあり、普通のスキルでは1体。+が付く毎に1体づつ枠が増えます)
(兼ね予想通りだな。と言う事は現状従えることが出来るのは)
(2体になりますね。そして、無条件に従えることが出来るわけではありません。魔物と戦い、殺さずに相手に負けだと自覚させなければなりません。そこで初めてテイムが出来、魔物が了承すればテイム成功となります。最初からテイム可能な特殊な例もありますが……それは稀ですね)
ふむ、流石に簡単にはテイム出来ないか。早速テイムしてこき使ってやろうと思ったのだが。
(普通のスキルは現在覚えていませんが、研鑽を積んだり、自身の努力で覚えるものもあります)
(魔法とか武器の扱いとかそんな所か?)
(はい、どちらも個人個人で適正がありますのでご注意下さい。火水土風の4大属性、他にも固有魔法がありますが、適正によっては覚えられなかったりします)
ま、それはどの世界でも同じだ。人によって才能、得手不得手がある。
(スキルの説明は以上になります。ステータスはご説明しましょうか?)
(言葉通りの意味だろ? 分からなければ都度聞く。わかりやすい説明をありがとな。さて、まず何から始めればいいか提案はあるか?)
(はい、まずは視界が取りやすい場所の確保と、実際にスキルを確認するのが良いかと)
(わかった、これから頼りにするよ。よろしくな、セピア)
(はい、よろしくお願いします!)
こうして俺は、セピアと共に異世界へと転生した。