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美少女になりてえよなぁ  作者: 釜蔵
へちまくれの流浪少女
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この美少女ボデーも俺の身の丈には合ってないんだがな

 目か口か。どっちも刺さるとグロいからあんまり狙いたくないけど仕方がない。

 とりあえずエデルの軽くなった口へ狙いを定め、ナイフを操る。



(ハナ様、距離に注意してください)

(分かってんよ)



 近づき過ぎるとお陀仏だからな。なんだったらこの射程でも危ないくらいだ。

 だが、問題無い。既にリコリスが立ち上がりエデルへと近付いている。



「シッ!!」

「ッ!!」



 近づきざまに繰り出した掌底が、エデルの顔を掠る。

 少し掠っただけだが、エデルの顔が半分凍り付いている。


 これを逃す手はない。俺はすぐさまナイフを操作しエデルへと攻撃する。



「小賢しいぞ、【人形遣い】ッ!!」



 何故かリコリスよりも俺の方にヘイトが来ているらしく、ナイフを俺目掛けて弾いてきた。

 俺は人形を目の前までもってくると、そのナイフを剣で防ぐ。


 ダメだな。生半可な攻撃じゃ却って危険だわ。やっぱ人形じゃないと駄目か。

 そう思った時、後ろからビュオッと風が流れてくる。



「一気に畳みかけましょう!!」



 後ろにいたケイカが、エデル目掛けて風魔法を飛ばしていた。

 エデルの左右から、かまいたちの様な風が辺りを破壊しながら迫っている。


 リコリスも、まるで分かっていたかのように離脱し氷の槍をエデルへと放っている。

 息ぴったりだな。隙が出来たら反射を恐れずに一斉攻撃か。俺と違って戦い慣れているだけある。


 言っている場合ではないので、遅れて俺も人形の光弾を放つ。

 ほぼ全範囲から来る魔法の攻撃。エデルですら避けるのは困難だろう。



「鬱陶しい」



 静かに、しかしはっきり聞こえる声で言い放つと、エデルの全身が光を帯びる。

 4つの腕から、それぞれ黒く禍々しい球のようなものを出現させている。


 その玉を放るように投げると、ケイカの放った風魔法と氷の槍が黒い球に吸収されていく。



(何だアレ)

(魔法を無力化する様ですね。見た所無力化のみで反射の様な効果は無いと思われます)

(さっきから反射だの無力化だのそんなんばっかだな)



 攻撃的な見た目の割に受け身な能力ばかりだ。だが、基礎的な力が強いせいで厄介だな。

 だが、俺の光弾だけは吸収せず、自身の体で受け止めている。


 光魔法は吸収できないか、もしくは俺の攻撃だけ弱めだから受ける選択肢を取ったか、だな。

 エデルの背中に光弾が突き刺さり、少しひびが入っている。



「おー、良い感じに割れてんな」

「チッ、制御が追い付かないか」

「身の丈に合わん過去の骨董品なんぞ呼びつけるからそうなるんだ」



 破壊神だかなんだか知らんが、一個人がそんなもんを見に宿して碌な制御など出来る訳が無いのだ。


 まぁ……この美少女ボデーも俺の身の丈には合ってないんだがな。

 1秒でも早くこの体に相応しい美少女になりたいんだから、こんな所で油を売っている場合では無いんだよ。



「どうやら、一斉攻撃は効くようだな」

「ですが、そう何度もこんなスキ作るのは――おっと!!」



 俺とケイカの間に剣山が飛び出てくる。

 立ち止まれないって辛いな。ユーリの奴め、こういう時こそお前の出番なのに、速攻戦線離脱しおって。



「ぐっ……おおおおおおっ!!!」



 エデルが突如唸ったかと思いきや、また体が発光し始める。

 翼が大きく広がった瞬間、羽から無数の針が飛び出てくる。

 また針か! というツッコミが出来る余裕もない。走り回ってる状態でこれは相当まずいぞ。



「ハナさん!」



 声と同時に、俺はすぐさまケイカの元へと駆け出した。

 風魔法で弾いてくれるに違いない。リコリスは自分で何とかすんだろ!!



(どんなに力も無尽蔵という訳ではありません。なりふり構わず力を使い始めたという事は、追い詰めている証左です)

(力に慣れてきてガンガン暴れてるって事じゃないんか)

(自分の力がどんなものか、どれ程で底が尽きるのかも分からない状態です。エデル自身も、慎重に魔力を使っていた筈です)



 で、命の危険を感じてなりふり構わなくなっていると。こっちは常に命懸けだってのに、良いご身分だな。



救世旋風イサ・イーバ



 周囲に風の渦が出来上がる。

 その風が、針を片っ端から弾いていく。



「ふうっ、ふう」



 汗をぬぐいながら、しんどそうにケイカが動き回っている。

 ケイカの体力がヤバそうだ。俺よりも先にずっと動いていたからな。

 

 リコリスは尾や腕で針を弾きながら、エデルへと近接戦を繰り広げている。



「焦っているな幻獣。動きが守勢になっているぞ」

「お主こそ、先程と比べ消極的な様じゃな」



 どちらも苦い笑みを浮かべながら、急所を狙っては避けを繰り返す。

 そろそろ決着をつけないと、こっちの体力も限界か。


 リコリスが押され始めている。あいつも結構焦ってるな。



「全力で行くか」

「ハナさん、何をっ……」

「体力使うからあんま喋んな」



 人形の力を引き出すにはそれ相応の魔力が必要だ。

 以前、リコリスと一緒に人形を扱う練習をした時にフルバーストしてすぐガス欠してしまったのを覚えている。


 瞬発的に力を引き出すには、魔糸を何本も繋げる必要がある。

 普段はなんかあった時用に3本迄にしているのだが――今回は出せる魔糸全て接続する。



「今出せる最大の火力で、あいつをぶった切ってやるぜ」



 全ての魔糸がつながった人形が、ゆらりと起動する。

 頭のてっぺんから足先、剣に至るまで、濃厚な魔力を帯びている。


 まあ、これ維持するのすげえ大変なんだけど。長期戦になる前に何とかしたいので、ここで全力を出す。



「リコリス!!」



 俺がリコリスの名を呼ぶと、察したのか攻めに転じる。

 体に針が刺さりながらも、エデルの急所目掛けて掌底を繰り出している。


 すまんな。後でいっぱいイチゴ食わせてやるから。



「行くぞ」


 

 誰に言うでもなく、ぼそりと言いながら俺は人形を前進させる。おお、凄い速さ。超加速だ。

 更に俺は人形の機能を開放する。光魔法による盾を正面に出し、針を防ぐ。

 以前、ルビアが矢を防ぐのに使っていた魔法を小規模にしたものだ。


 そのまま近付きざまに、エデルへ一太刀お見舞いする。

 反応はしていた物の、予想以上のスピードだったため防御が遅れている。切りつけられたエデルの腕から血が噴き出た。



「ッ!!」



 驚いた様子で人形を弾こうとするものの、それを躱し。更にその勢いで体を回しながらエデルをもう一度斬る。

 やはり魔糸全部乗せは威力も動きやすさも全然違うな。


次回更新11/24予定

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