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美少女になりてえよなぁ  作者: 釜蔵
へちまくれの流浪少女
173/181

美少女の俺が扱うにふさわしい双剣となるのだ

2024/5/30 ヴィネアの名前が間違っていたので修正しました。

 前門の虎後門の狼、ならぬ狐。取り合えず目の前から襲ってくる濁流を何とかしなければ。

 高台の様な場所はない。まぁ地下だしな。となれば、塞き止めるか壁作って一時的に安置作るかだな。



「ユーリ、土魔法で分厚めの壁作れ」

「えっ、水に流されちゃわない?」

「今できる全力でやれ。早くしないと間に合わんぞ」

「わ、分かった!!」



 直ぐに破壊されるだろうが、考える時間くらいは稼げるだろう。

 その間に後ろのうるせー狐と、前方にいるイカれてる騎士を何とかしないとな。


「ああ、円弧させた方が良いぞ。そっちの方が圧力逃がせるし」

「どんな感じ?」

「こう、わっかを半分にした様な形だ」



 体いっぱいに表現してやると、正面に向き直りユーリは魔法を使い始める。

 ユーリの魔法で、土の壁が構築されていく。うむ、雑だがちゃんと言った通りの形になっているな。

 厚めではあるが、流石に水の勢いが強いので長くは持たないだろう。



「おいアウレア。ここ出るまで大人しくするってんなら入れてやってもいいぞ」

「上から目線で言ってんじゃねえよガキが。そのヘボい壁ごと、私が潰してやるよ」



 そう言って、自分がピンチだってのに俺達に火魔法を放ちやがった。おーおー、面倒くせえヤツ。



「仕方ねえな。見せてやる、俺の新しい力をな」



 格好良く決めつつ、魔糸を更に人形へと繋げる。

 魔糸を更に繋げる事で、人形のギミックを更に引き出す事が可能なのだ。

 流石人形遣いのスキルを持ったジジイが作っただけの事はある。自分で使う為に作ったのではなかろうか。



「後ろは俺が止める。ケイカは風魔法で壁にぶつかってくる水を極力――」

「もごもご」

「いや何言ってるかわかんねえから」



 と言うか、俺が降りればいいか。

 ユーリから飛び降りると、俺はアウレアと対峙する。



「ハナ、私が援護する」

「ヴィネアさん」



 言うと同時に、アウレアの火玉をかき消した。

 火玉を下から斬りつける様に短剣で突く。どっかでみたような動きだ。


 ……ああ、ガーベラが同じ事やっていたな。もしかして、親族だろうか。

 ま、今は良いか。それよりも――



「リコリス」

「……」

「やれ」



 少し真剣な声色で、リコリスへ指示をする。

 リコリスも理解をしたのか、冷気を纏い魔力を放出している。



「これ、は……っ!」

「この辺でぶっ放すのはまずいが、水魔法の発生源なら問題ない。リコリス、全て凍らせてしまえ」



 リコリスは、片腕に魔力を集中させている。

 パキパキと、リコリスの周りが凍てついていく。



「リコリス――!! テメェの相手はッ!!」

「お前じゃねー座ってろ」

「ッ!!」



 人形が、アウレアへと迫る。

 先程よりも俊敏になり、二振りの剣は魔力を帯びて光り輝いている。

 その剣をアウレアに向けて振ると、大きく仰け反って回避する。



「にしし、受け止めないのか?」

「チッ!!」



 舌打ちをしながら、アウレアは更に距離を取る。この剣のヤバさに薄々気が付いている様だ。

 そう、この剣は魔力を流すと切れ味が増す。色も青白く輝き壮麗な美しさを纏う。美少女の俺が扱うにふさわしい双剣となるのだ。


 アウレアが避けながら此方へ攻撃を加えようとするも、人形が更にそれを上回る。

 蹴りを放つアウレアとすれ違いざまに、人形が剣で斬りつける。

 かすり傷がついたアウレアは、俺を睨みつけながら叫ぶ。



「このクソガキがァ!」

さかってるところ悪いが、そろそろタイムアップだぞ」

「!!」



 ドドドッ、と大きな音を立て荒れ狂う水。濁流がすぐそこまで迫っていた。

 ケイカはユーリの蔦で持ち上げられ、上側から濁流へ向けて風魔法を放つ。



暴風砲火サイクロン!」



 目の前まで迫っている水へ、突風が襲い掛かる。しかし、意を介さぬ様に水は土壁へと激突した。

 焼け石に水……ではある物の、無いよりはマシ。


 実際、壁は水を受け止め、一部を塞き止めている。



「うおおおお!? ハナ!! ハナ!! これヤバい!! すぐ壊れちゃう!!」

「気合入れろ、お前が待ちに待っていた活躍の時間だ。あと1分は持たせろ」

「オイラが望んていたのはこんな活躍じゃなーい!!」



 必死に足元をずりずりと掘る様に前足を動かし、土魔法を行使するユーリ。

 壁を避ける様に、濁流が横を流れ抜けていく。



「ぬうっ!! ぐううううっ!!?」



 アウレアが端に移動すると、流されまいと壁を掴み必死に抵抗している。

 今攻撃すればやれそうだが……いや、人形の射程外か。光弾撃っても良いが、周り破壊して崩れたらまずいか。ただでさえぶっ壊れかけてる所に水攻め受けてるのに。

 俺は警戒しつつも、リコリスへと話しかける。



「リコリス。被害は気にするな。頭冷やしてやれ」

「心得た」



 リコリスは高く飛び上がると、右腕を前に出し構える。……おお、指が狐さんのジェスチャーっぽくなってる。

 狐の様な形……もとい、つまむ様な形に構え、手の先に小さな氷が添えられている。



「しっ」



 リコリスは口を閉じて息を吐く様な声を出し、指先の氷を射出する。

 テニスボールよりも小さい氷の玉が、一直線に遺跡の奥へと飛んでいく。



「一気に冷えるぞ。衝撃に備えておけ」

「一体何を――」



 ヴィネアの言葉が終える前に、奥からビュオンと風のきる音が聞こえた。

 その後、吹雪の如き強烈な寒気が奥からなだれ込んできた。



「さっぶっ!!? 馬鹿お前やりすぎだっつの!!」

「お主がやれと言ったのであろう。大元ごと凍らせるには大量の冷気が必要だからの」

「ボタンさん達は大丈夫ですかね?」

「安心せい。ボタンであればルーファを庇いつつ防げる」



 こいつと一緒にいると定期的に冷えるから、簡単に着れる上着が必要だな……。



「ハナ! もう無理! 限界!」

「そのうち収まる。もう少し辛抱せい」

「え?」



 そう言った直後、水の勢いが弱まっていく。

 元が凍り付いたから放出されなくなったって事か?



「ふいい……助かったぜ婆さん」

「気を抜くな。後ろにアウレアがまだおるぞ」



 一応警戒してはいるが、なんか大人しいぞ。

 こっちを見てはいるものの、様子見てる感じだろうか。



「よし、今のうちに進むぞ。ちょっと寒いけど」

「直ぐに収まる。直ぐに向かうぞ」

「……あの、リコリスさん」

「安心せい。少し凍ったくらいじゃ死にはしない。いや、騎士自身は無事かもしれぬの」



 何か言いたげなヴィネアだったが、リコリスが遮る様に言った。

 まぁいきなり探してた騎士氷漬けにしたらビビるよな。でもな? こっちが危険な以上仕方ないねん。


 普通に考えて人は凍ったら死ぬんだけど……まぁこの世界頑丈な奴いっぱいいるし、気にしない。

 


「じゃあ行きますよユーリさん。ほら、ハナさんも」

「ケイカは元気だなぁ」

「あんま活躍してないしな」

「は?」

「いや、だっていつもパッとしない……いだだだっ! 毛を引っ張るな!」

「ケイカ、遊んでる場合じゃないぞ」



 ユーリも言ってやるな。結構マジに気にしてるんだから。


次回更新5/19予定

→6/2へ延期

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