この世界に来てから妙な事だらけだから何一つ実感が湧かないハナちゃんです
次回更新を3/24→4/7に変更します。
急で申し訳ありません。
はい、と言う訳で到着しましたロゼ遺跡。
遠くから見たら洞窟っぽいんだけど、中へと入れば石柱がズラリと並んでいる。
もう見るからに古びた地下遺跡って感じ。これが、元の世界で旅行に来ましたとかだったらテンション上がるんだがな。
後ろでは、ケイカがおお……と声を漏らしている。
「なんだビビってんのか?」
「いえ、想像よりも大きくて驚いています。こんな所があったんですね」
「何故地下に街を作ったのかのう」
「婆さんでも知らないんだ」
「お主……我をなんだと思っているのじゃ」
大体何でも知ってる物知りババアだよ。
だが、滅びたのは500年くらい前らしいので流石にまだ生まれてないらしい。
さて、話もそこまでにして、とっとと二人を探さねば。
「取り合えずこのまま真っ直ぐ進むか」
「そんな適当で良いんです? 結構広いですよ」
「……我が先導しよう」
少し間があったのが気になるが、闇雲に探すよかコイツに任せた方が良いだろう。
リコリスを先頭にして、俺達は進み始める。
……暗いな。ぽつぽつと灯りが付いてるが、これは賊が灯してるのだろうか。
「ユーリ、お前周り見えてるか?」
「ん? 見えてるけど」
流石ライオンだ。夜目が利くのは便利だな。
「こんなだったらすぐリーファに人形渡して発光機能つけてもらうべきだったな」
「連れ戻したらお願いしましょうね」
「おう」
その暗い遺跡をじっと見渡す。
なんか殆ど半壊してて見るもんねーな。一応、人が隠れてないか見てるけど人の気配が全くない。
「ム」
「どうした」
「来るぞ。構えよ」
「え」
ぼうっと靄みたいなものが現れ、周りを囲まれる。
いきなり出てきやがって。なんだこいつら。
「レイスじゃな。魔力を通しての攻撃でなければ効果が無い、厄介な魔物じゃ」
「えっ俺どうすりゃいいの」
「人形が光弾出せるじゃろ」
「あ、そっか」
俺は人形を稼働させると、レイスへ向けて光弾を放つ。
ケタケタ笑ってたレイスが、一瞬で溶けた。おお、効果絶大やんけ。
光弾は俺の魔力使ってるから、回数に限りがあるので調子に乗ってバカスカ撃たない様にしないとな。
(因みに、人形の剣であればレイスも斬る事が可能です。剣にも龍の素材が混ぜられていますので)
(マジか)
(はい。ですが、この場は光弾で収めるのが良いかと)
それですよセピアさん。そういういざって時に知っておきたい情報をガンガン言って欲しい。
セピアの成長に感動していると、後ろから風の刃が放たれる。何枚もの風刃が、レイスを一網打尽にしている。
ケイカもやるじゃないか。だが、相変わらず派手な事するな。
「ケイカ、お前そんな飛ばして大丈夫なの?」
「問題ありません。段々と、角が元の形へと戻って来てますので、魔力が溜まる量も戻りつつあるんですよ」
「お、じゃあ転移も使えたりする?」
「それはまだ厳しいですね……あの時は何十年とかけて溜め込んだ魔力があったので」
超絶便利だし、そりゃ簡単には使えないか。
「お主ら、気を抜き過ぎじゃ。それにケイカ、もう少し出力を抑えよ。遺跡が崩れるぞ」
「すみません……気を付けます。けど、いつもよりは調整出来たかと思います!」
「そうじゃな。いつもなら『さいくろ』を、直ぐに撃っておったからの」
「暴風砲火です!!」
相変わらず謎の名前つけてんのか。戦闘中噛まないか心配だ。
「オイラは! オイラは何かやらなくて良いの!?」
「お前は待機だ。蔦は効かなそうだし、派手に土魔法をパなすと崩れそうだからな。でも、危ないと思ったら躊躇しなくて良いぞ」
「おっけ」
と、話しているうちに殲滅が完了する。
大した事無かったな。いや、俺が強すぎたわ。にしし。
「……」
「どうしたリコリス。いつもならここで俺にお小言を言うタイミングだぞ」
「いや、妙だと思ってな」
今日は……と言うか、この世界に来てから妙な事だらけだから何一つ実感が湧かないハナちゃんです。
俺が首を傾げると、ケイカが口を開く。
「レイスはですね、普通こんな沢山集まってこないんですよ」
「そうなの?」
「うむ。人の街近くに集まってきたら危険であるからの。いくら遺跡とは言え、ここまで集まっているのは――」
リコリスが話す途中で、突如遺跡が大きく震動する。
ミシミシと、石が動く様な音。地下でこの揺れはシャレにならんぞ。
「ユーリ、こちらへ向かって走れ!!」
リコリスが叫んだ瞬間、俺達を乗せたユーリの足元が崩れる。
浮遊感。時が一瞬止まり、すぐさま重力と共に意識が現実へと引き戻される。
「おおおおおお!!?」
「うえええええ!!?」
「主!! ケイカ!!」
暗く地の底へと落ち始める。
いきなり崩れるとかねえだろ!!
「ユーリ、何とかしろ!!」
「ムリムリムリ!! オイラ重いから落ちちゃうってえええええ!!」
ある程度の高さならユーリなら大丈夫だろうが、下が見えないのがヤバいな。
ケイカの風魔法ぶっ放せばある程度は緩やかに出来るか? でも2人と1匹の重量じゃ風だけだと効果が薄いか。
落下しながら思考を巡らせていると、いつの間にか幻獣化したリコリスが隣にいた。
「ユーリよ、暴れる出ないぞ」
「へ? ……うおわああ!!?」
ユーリごと、俺達はグルグルと尻尾で固定される。
「わぷっ!? リコリス!! 大丈夫なのか!!」
「心配するな、このまま下へと落ちるぞ。じっとしておれ」
いつもなら離れ離れコースなのに、やたら頼りになるじゃないか。それでこそ俺の従魔だ。
騒いでいるユーリの声を聴きながら、俺達は地下遺跡の更に下へと落ちて行くのだった。
「はひい……死ぬかと思った」
「ユーリ、お主でもこれくらいは対応できるはずじゃ」
「流石にこの高さは無理だよ!?」
「もっと研鑽を積むが良い」
「相変わらず厳しすぎるこの婆さん!!」
リコリスに降ろされながら説教されているユーリ。
俺とケイカも一緒に降りる。うげー、真っ暗だ。なんも見えん。
「誰か灯りとか持ってないのか?」
「ここに来るって分かってたら持って来てたんですけどね」
仕方ない、頑張って目を慣らすか。ほら、異世界転生的に夜目スキル手に入るかもじゃん?
(その様なスキルは――)
(シャラップ! 無くてもそういう挑戦心が大切なのだよ。セピアも日ごろから挑戦し続けていきなさい)
(ッ!! 承知しました!!)
という訳で、頑張って周りを凝視しているとリコリスがピクリと尻尾を振る。
幻獣状態だからそれだけでも存在感あるな。
「おい、尻尾当たってんぞ。デカいんだから気を付けろよ」
「すまぬな。……ふぅ、覚悟はしておったのじゃが」
「なんだ、いきなり神妙になって」
顔は見えないけど、何処か暗い声色でリコリスは話を続ける。
「……おるぞ。アウレアが」
「あ、やっぱり?」
「軽いですね」
「なんかそんな気がしてた」
これだけ狐人が云々言ってて違う人でした~って訳無いからな。やたら狂暴らしいし。
カンザからここにいるとも聞いていたしな。
「ケイカ、アイツは話通じないからな。もし出会ったらまずボコる。動けなくなるくらいボコった後で話をする。分かったな」
「そうですね。私もそう思っていました。まずボコボコにして再起不能にしましょう」
「お主ら……」
少し気が抜けたのか、よろけた声で喋るリコリス。
うむ、リコリスは真面目過ぎるからな。ちょっと緊張をほぐしてやらないといかん。アウレアがいるなら尚更だな。
だけど、ここがどこかも分からんからな。ボタンとルーファだけじゃなくて俺たちまで行方不明になったら笑えんぞ。
「リコリス、出口は分かるか?」
「魔力を追うのは……難しいじゃろうな。強い力を放つ者がゴロゴロとおるわ」
「マジ……いや、オイラも感じたわ」
「なんでそこで知ったかぶるんですか」
騎士とアウレアだろ? 賊も気を付けなきゃいけないが、アウレアが一番ヤバいと思うんだがな。
「ま、とりあえず進みますか。最悪上に進めば何とかなるだろ。リコリス、アウレアの位置は分かるのか?」
「うむ、かなり近い。避けた方が良いな」
「リコリスはそれで良いのか?」
「……」
少し間を開けて、リコリスが頷く。
ちょっぴり意地悪な問いだったかもしれんが、今の目的はボタンとルーファだからな。
「ま、ボタン達を見つけたら寄っても良いんじゃないか」
「ええ。ハナさんやリコリス様をいじめた罰を受けてもらいます!」
「やる気満々だな」
前から思う所があった様で、ケイカはアウレアへの敵意が高い。あんまり気合入れ過ぎないで欲しいが。
方針が決まった所で、再びリコリスが先導し、アウレアを避けつつボタン達を探しに再出発だ。
だが、本当にこのだだっ広い遺跡を練り歩いてるだけで見つかるのだろうか……。
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