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美少女になりてえよなぁ  作者: 釜蔵
へちまくれの流浪少女
164/181

声援と共に送り出される美少女

次回更新ですが、間に合いそうにないので12/31となります。

申し訳ございません。


 俺達はラフィルへと入った門――南門へと向かった。

 どうやら劇場での騒ぎは既に耳へと入っているらしく、一昨日来た時よりも衛兵たちが沢山いる。


 そこへ、外へと出たがっている人々が大声で文句を言っていた。

 話を聞くまでも無く、入口が封鎖されていると分かる。



「大騒ぎになっていますね」

「領主が襲撃されればこうもなろう」

「冷静に言うてる場合か。俺達も出れないじゃん」



 ディゼノなら、ジナの名前出せば何とかなったかもしれんが。ここでもワンチャン……無いな。

 侯爵と話するにしても時間がかかるしなぁ。どうしようか……ユーリとリコリスを上から突っ込ませて騒ぎになった所を通り過ぎるか?



「却下じゃ」

「まだ何も言ってないだろ」

「その邪な目を見れば何を考えているか分かる」



 酷い言われようだ。

 もう面倒だから突っ切ろうかなと思った時、横から声を掛けられる。



「姐さん達!! こっちだ!!」



 誰? ……ああ、カカオに付き添ってたおっさんか。妙にツッコミが多いから覚えている。



「何じゃお主は」

「『リシャグル』の社員だよ! 昨日会っただろ?」

「リシャグルって何」

「昨日話してたカカオさん達の勤めてる社名ですね」



 初出の単語を知ってるだろみたいに言われても困るぞ。

 とか思ってたら、昨日俺が居る時にちゃんと言ってたらしい。ごめん頭の中女の子の事でいっぱいだったから聞いて無かったわ(笑)


 取り合えず立ち往生していても仕方が無い為、おっさんについて行く事に。

 走りながら(俺はユーリの上だけど)話を聞いていく。



「姐さん達が南門へ来るだろうってオヤジが言っててよ、ちょいと使いを頼まれたんだ」

「我等が来ることが分かっておったのか」

「じゃあ黒幕に違いないな」

「ンな訳ねーだろ!! 西区の穴を見に行ったら怪しい奴が居たからとっちめてたんだ。で、カカオの兄貴から連絡が来てな。それで事情を知ったんだよ!」



 今朝方、ブラキカムとその部下数名が西区の抜け穴を見に言ったところ、二人の怪しい男達が穴の前にいたらしい。

 激闘の末に何とか取り押さえ、話を聞きだすのに時間がかかったのだとか。



「良く話が聞けましたね。見た感じ会話出来る様には見えませんでしたけど」

「ああ、喰い終わった骨付き肉の骨をやったら途端に喋る様になった」

「犬かよ」



 なんだよそのシュールな弱点は。というかどんな流れで骨を渡す事になったんだよ。

 一応、ボタンとルーファを見かけてないか聞いたが、やっぱり見ていないとの事。西区から逃げた訳じゃなさそうだ。

 西区へ入ると、さっきまでガヤガヤしていたのが聞こえなくなる。人がいないって訳じゃないが、どこか閑散として寂しい街並みだ。



「ぜえ……ぜえ……もうすぐだ……というかお前らよくペース落ちねえな……」

「鍛えてますから!」

「お前ももっと鍛えろよ」

「嬢ちゃんは走ってねえだろ!!」



 結構な速さで走ってたな。ケイカも結構体力あるなぁ。

 そういや西区は初めてだ。パッと見は他の区と変わらない。もっとスラムっぽい感じで、ゴミとか落ちてて小汚いガキがちょろちょろしてるイメージだったが。

 ただ、少し裏道を進むと確かに不安にさせる様な薄暗さがある。


 そんな薄暗い道を進むと、奥にブラキカムが見える。どうやらのんきに一服している様だ。

 その近くに、例の獣人が二人縛られているのが分かる。



「オヤジ、連れて来たぜ」

「おう、ご苦労さん」



 ブラキカムは葉巻を部下へ渡し、俺の方を向いた。



「待ってたぜ。随分大事になってるみたいだな」

「ええ。おまけにボタンとルーファまで連れ去られまして。今急いでるんですが」

「そうだろうな。じゃあ手短に行くか」

「何か知っておるのか」

「役に立つかは分からねえが、得た情報はくれてやる」



 ブラキカムはそう言って、獣人の方を向く。



「こいつらが言うには、目的は一つだ。ラフィルの住民を誘拐し、外にいる盗賊共の時間を稼ぐ。だからこそ侯爵の孫娘が狙われたんだろう」

「時間? 逃げる為の?」

「いや、そうじゃないらしい」



 確かにまぁ、逃げるならとっくに逃げてるか。



「何か良からぬ事でも企てておるのかのう」

「ま、そんなとこだろう。こいつらに聞いても、『お頭の時間を稼ぐ』としか言わねえ。何をやってるか知らされてねえのか、そもそも分かってねえのか」



 その獣人二人はめっちゃ骨をしゃぶっている。一心不乱にしゃぶってるから普通に怖いわ。

 こいつら囮に陽動してるって線もあるが、俺達はそれよりもボタンやルーファを取り戻さないといかん。

 そんな焦燥を知ってか知らずか、ブラキカムは続け様に言葉を重ねる。



「恐らくだが、今日騒ぎを起こした奴らもここから侵入したんだろう。見てみろ」



 俺が言われた方を見ると、確かに壁の下に穴があった。

 だが、聞いていたのよりずっと大きい。これじゃ誰でも通れちまうぞ。



「元々あった穴を広げたんだな。これじゃ外から見てもバレる。もう使う気は無いんだろ」

「これならあの大きな天使さんも通れそうですね」

「あれを天使と呼ぶのはヤメロ」



 この大きさならガタイの良い羽付きのおっさんや、マポイフっぽい奴もギリ通れそうだ。

 そして、この穴を使えば俺達も外へ出れるな。普通に犯罪だからできれば使いたくなかったが、緊急事態だから仕方あるまい。



「その様子だとロゼ遺跡へ行くんだろ? もしそうなら、気を付けな」

「まぁ、盗賊団のアジトに行く訳だから気を付けますよ」

「そうじゃねえ。今日はその盗賊団討伐の決行日だ。冒険者が周りを囲み、選りすぐりの騎士がロゼ遺跡に突入している」



 なるほど、それで時間稼ぎ。でも、ちょっと遅くねぇ? 

 ……いや、火竜劇団の公演に合わせたのか。



「なら、一緒にボタンさんとルーファさんを探してくれるかもしれませんね!」

「……冒険者はともかく、騎士の方は期待しない方が良い。いや、むしろ危ないかもしれねえな」

「何故です?」

「その王都から来てる騎士がな。『汪騎士』と言って、ストレチアの四騎士と呼ばれる方が出向いているんだが、これが中々苛烈でな」



 四騎士とか如何にもな単語が出て来たぞ。やっぱ居たんだな……『四天王』が……!!

 俺が全く関係ない所で盛り上がっている中、ブラキカムは話を続ける。



「基本、目標は殲滅。賊だろうが悪徳貴族だろうが、敵対したら皆殺しだ」

「取り逃がしたら後が大変であろうしのう。それぐらいなら他にも居るのではないか?」

「そうかもな。だが、厄介なのは生け捕りの命すら聞かない。人質も場合によっては始末する」

「こわっ」



 よくそんな奴が騎士やってんな。クビにしろよ。



「憶測になるが、その人質や捕虜が死んだ方がマシな状況だったのかもしれないがな。なんにせよ、事実だけ挙げれば苛烈な騎士には違いない。そのおっかない騎士が、そのロゼ遺跡にいる」



 冗談じゃないぞ。ボタンやルーファまで巻き添えくらっちまうじゃないか。

 俺の意識は現実へ一気に引き戻される。



「なら、尚更早く行かなくちゃな。ありがとうございます、ブラキカムさん」

「ああ。俺達は街中の掃除をしなくちゃいけねぇ。ここも、お前達が行ったら衛兵に伝えて後を任せようと思う」

「分かりましたっ!」



 俺達はそう言って、抜け穴へと近付く。

 うむ、これくらい大きいなら服も汚れないな。服が汚れそうなら別の手段で行くしかなかった。



「頑張れよお前ら!!」



 舎弟のおっさんを皮切りに、リシャグルの社員が送り出してくれた。出会い方は最悪だったが、良い奴らだな。おっさんも今度ちゃんと名前聞いとこ。

 声援と共に送り出される美少女……良いな。悪くない。この半年で美少女力がステップアップしているのを感じる。



「よし、行くぞユーリ!」

「いや、降りないと潜れないから。この大きさでもオイラギリギリだし」

「締まらないのう」



 締まらないが、やる気は充分なのだ。いざ、ロゼ遺跡へ!! 

次回更新12/31予定

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