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美少女になりてえよなぁ  作者: 釜蔵
へちまくれの流浪少女
148/181

俺は可愛いとちやほやされて幸せだし、周りは可愛い俺を見て幸せになる

2023/4/20

改稿しました。

以前のハナと考えが食い違っていたので、ハナの書庫へ行く云々の台詞を弄っています。

それに伴い、138頁も少し改稿しています。

大きく話が変わっている訳ではないので、そこまで気にしなくても大丈夫です。

 いつまでも居座っていたら迷惑なので、俺達は直ぐに劇場から離れる。

 コキアにまたいつでも来てくださいと言われるくらいには親しくなった。明日来るけどな!



「むふ、むふふふふ……」

「ハナさん、ご機嫌ですね」

「そんなに他者から持て囃される事が良いのかのう」



 良い。とても良い事だ。俺は可愛いとちやほやされて幸せだし、周りは可愛い俺を見て幸せになる。幸せスパイラル現象だ。



「お前が苺で幸せになるのと一緒だ」

「そうか……そうかの?」

「ボタンだって飯食ってる時幸せだろ?」

「うん」



 幸せ談義に花を咲かせながら歩いていると、線の様に区切られた道へと辿り着く。

 中央区を円の様な道で囲って、そこから出ると他の区画になっている。分かりやすくて良い。



「ハナさん、私は書庫へ行きたいので東区へ向かいます」

「そういやオクナさんが言ってたな。東区っていうと……」

「貴族様がいっぱいいるとこです!」

「ルーファさんが言う程いっぱいはいませんが……領主様がいらっしゃいますから、必然周りは関係者で埋められますね」



 オクナが言うには、書庫へ入るにも許可がいるらしい。冒険者ギルドで許可を貰ってれば入れるのだとか。



「そうなんですか?」

「なんでケイカが知らないんだよ」

「ディゼノで話だけ聞いてたから全く知りませんでしたよ!」

「私が許可証を頂いてますので大丈夫ですよ。それで、ハナさんはどうします?」

「そうだなぁ……」



 あれから考えてはみたが、外に出て街を歩くと色々行ってみたい衝動に駆られてしまう。

 書庫って要は図書館だろ? ボタンの変化の事は置いといて、他になんか調べたい事あるかな。

 ……美少女の可愛い仕草100選とかあるだろうか。



(そこはこの国の歴史とか、魔物の事を調べましょうよ!)

(いいよ……歴史はともかく魔物はセピアが教えてくれるだろ)

(確かにそうですが……)



 セピアは行ってほしそうな感じだな。昨日ノリノリだったし。

 ま、本当に必要ならその時行けばええやろ。王都にも似たようなのあるだろうし。小難しい事はセピアに任せるのだ。

 それに、歴史なんて見ても10秒で頭から抜ける自信あるし。


 そういう訳なので、俺はルーファやリコリスと共に昨日と同じくラフィルを回る事にした。

 そもそも俺冒険者じゃないから、許可下りるか分からんし。



「分かりました。ハナさんが好きそうな本があったらお伝えしますね」

「頼むぜ」

「じゃあ、俺達も別行動だな」



 後ろからダイナが声を掛けてくる。ラフィルに来たら寄ってみたい所があったらしい。



「別行動じゃなくても、一緒に寄ってもええんやぞ」

「ラフィルの武器屋は見た事無いしじっくり見たいからな、色々見て回りたいんだろ?」

「まぁ、そういう事なら仕方あるまい」



 ダイナとシーラは武器屋へ行くそうだ。ダイナはともかくシーラまで行くのか。

 そう聞くと、使わないけど武器見るのは大好きらしい。




「相手が扱う得物も知っておくに越した事は無いからな。ボタン、お前も知っておいた方が良いぞ。スライムとて、武器によってはお前に効果がある物も存在するからな」

「んー?」



 ゲームだとスライム殺しなんて限定的な武器あったりするもんな。物理無効とは言え気を付けた方が良いか。



「……ボタンも行ってみるか?」

「んー……いかん」

「昨日、後をつけられていた事もあるしのう」



 そういやそうだったな。ボタンは防衛の生命線だから安易に離れるのはまずいか。



「王都へ行ったら、一度そういった店を覗いてみるのも良いか」

「それが良い」

「じゃあ、今回は見送りで」

「了解。じゃあ日が暮れるまでに宿へと戻ろう。リコリスさんも言ってたけど、昨日の今日だからな。皆、気を付けてくれ」



 そう言って、ダイナとシーラは大きな道を沿って歩いて行く。

 心なしか足早な気がするぞ。



「ダイナ、実は武器屋とか行くの大好き」

「そうなんですか。魔物の構図とか進化過程とか調べるの好きそうだから、ケイカやオクナさんと一緒に書庫行くのかなって思ってたけど」

「既にそういうのはあらかた調べたそうだから」

「なる」



 なんだかんだ彼も、第二の人生を楽しんでいるようである。

 という訳で、オクナとケイカは書庫へ向かい、ガーベラは俺達と一緒に街を散策する事に。



「おお……意図してなかったがガーベラちゃんと二人でデート出来るなんて」

「我等はどこへ消えたのじゃ」

「お前とボタンとユーリはペットみたいなモンだ」

「ひでえ!」



 ぐいぐいと顔を押し付けてくるユーリをいなしながら、ルーファの方を見る。



「う~ん……まずは服屋だな。適当なとこ」

「何故私を見て言うですか」

「私もハナに賛成。ルーファは取り合えず服を何とかした方が良い」

「ボロボロだしなぁ。オイラから見ても奴隷に見えて外聞良くないと思うぞ~」

「誰が奴隷ですか!」


 ルーファが容赦なくユーリをどついている。言い方はあれだが心配してるから程々にしてやってほしい。

 ルーファ以外は賛成という事で、俺達はダイナ達と反対方向へ歩き服屋へと向かう事にした。





























 ハナ達と離れ、ラフィル東区へと向かったケイカとオクナは、ストレチア王国内でも数少ない書物が集まる場所――ラフィル書庫へと辿り着いた。

 ラフィル書庫は小さな塔の様になっており、外から階段で上がり二階から内部へ入れる。 



「変な作りですね、わざわざ上がってから入るなんて」

「どうしてでしょうね」



 そんな疑問を口にしながら、ケイカとオクナは階段を上がる。

 入口には扉が付いており、少し古びている見た目とは裏腹に、ドアノブを回し押してみるとズシリと重く厳重な扉であった。



「ぐう……重かった」

「そんなにです?」

「ハイ……ハナさんじゃ絶対開けられないですね」



 本を読みに来たのだがいきなり汗をかいた。

 すこしげんなりしつつも、ケイカは中へと入る。


 入口に初老の男性が座っていた。受付をしているみたいで、オクナが許可証を見せるとにこやかに案内してくれた。



「どのような本をお探しでしょうか?」

「獣人の種類が載っている本はありますか?」

「それでしたら、ここから1階へ降りて頂き、真っ直ぐ進み突き当たりを右に曲がった所に獣人種の調査記録がございます」

「ありがとうございます!」



 オクナはまた別に調べ物があるとの事なので別行動をする。

 ケイカは案内を受けた通りに進むと、棚内が疎らな本棚を見つける。


 いくつかの本を手に取り、用意されていた机へと持ち運ぶと、パラパラとめくり始める。

 主に角のある種族……羊人や牛人等の情報が記載されている本を優先的に見ている。



(……ううん、やっぱり掠りもしませんね)



 分かっていた事だが、自身の種族である犀人の情報はまるで載っていない。

 本が種族事に分かれているので、例えば牛人の本に犀人の記載が無いのは当然であるが、それでもケイカは念入りに本を見ていく。


 奥の方にしまわれた、少し埃っぽい本も全て見て行くが、見つける事が出来ない。

 やっぱりそう簡単には行かないかと思いつつも、再び本を探しに立ち上がる。


 すると、ギシギシと足音が聞こえる。

 オクナがこちらへ来たのかと思いそちらの方へ向くと、見た事も無い女性がそこに居た。



「……!!」



 ふんわりとした長い髪だが、どこか目つきが鋭い美形の女性。

 ケイカを見るなり、驚いた様子で口を抑えていた。

 それに驚いたケイカも思わず声を掛ける。



「あの、どうしたのですか?」

「……いえ、何でもありません。まさか人がいるとは思わず、驚いてしまっただけです。申し訳ありませんでした」



 頭を下げるその動作がどこか手馴れており、貴女なのだろうかとケイカは少し姿勢を直す。



「あはは、私も初めて来たのですが、確かにあまり人がいませんね」

「一般人はあまり東区へ近寄りませんからね。貴族からいらぬ顰蹙を買いかねませんので。普通にしていれば問題無いのですが」

「そうなんですね」



 貴族だったらどうしようかと思っていたが、今の言葉からそうではなさそうで一安心した。

 相槌を打ちながら、ケイカは本を仕舞っていく。



「邪魔をしてしまいましたね」

「いいえ! ずっと本を読んでいたので良い気分転換になりました。気にしないで下サイ」

「……そう。では、ごゆっくり――」



 そう言って、その女性はその場を離れる。

 ――つもりであったが、その足が止まる。



「あれ? モルセラさん?」

「……」



 後ろからオクナが現れ、その女性――モルセラの名前を口に出した。



「オクナさん、もしかして知り合いですか?」

「はいっ! モルセラさん、奇遇ですねっ!」

「……ええ」



 オクナとは対照的に、何処か死んだような眼をしているモルセラ。肩と頭が下がりプルプル震えている。

 その様子を見て、一体どんな関係なんだとケイカは首を傾げた。

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