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美少女になりてえよなぁ  作者: 釜蔵
へちまくれの流浪少女
145/181

とても美少女っぽくてお気に入り

 俺達は冒険者ギルドから離れ、劇場へと向かう。

 劇場と言っても建屋では無く、大きな広場に劇場を設けているらしい。


 劇が見たけりゃ、王都に行けば見れるので建てる理由も無いとの事。今回は特例でラフィルの公演をするのだ。



「すぐそこなんですね」

「中央の方が都合が良いだろうしな」



 ケイカの言う通り、ギルドからそう離れておらずものの数分で到着。

 建物が多いから見えなかったが、ここも中々の大きさだ。結構な人数が入るだろう。

 

 入口へ向かうと、見覚えのあるデカい鳥とお兄さんが立っている。

 ラフィル門前で見たあの鷹だ。足にもしっかりリングが付いている。



「こんにちわ、フェイオンさん」

「やあ。丁度良い時間に来たね、ダイナ」



 朗らかに笑って出迎えてくれたお兄さん。

 ラフな格好で冒険者って感じしないけど、この人も劇団員なのだろうか。

 そんなフェイオンと呼ばれた男が、俺達の方を見る。



「君達も良く来てくれたね。僕はフェイオンだ」

「宜しくお願いします、フェイオンさん」



 フェイオンはフロクスと同じ冒険者兼、劇団員だそうだ。大きな鷹を従えている所を見れば分かるが、魔物使いである。

 こちらも各々自己紹介していると、大きな鷹が羽を広げてバタバタとこちらへ歩いてくる。

 普通の鷹でも結構威圧感あるのに、これだけデカいとこえーよ! つい身構えてしまったが、フェイオンの近くへ寄るとピタリと停止する。



「ごめんごめん、怖がらせてしまったね。ほらイーラン、ご挨拶だ」



 鷹――イーランは首を上下させ、ピィーッと一鳴きする。

 おお、そういや鷹ってこんな鳴き声だったな。



「凄い可愛いです!!」

「名前はイーラン。レインハルと言う魔物だよ。隣国だとよく見るんだけど、この国だとあまり見ないかもね」

「珍しい魔物なんですね」

「ああ。この子は獲物を見つけるのが上手でね。こうして番犬ならぬ番鳥としていつも手伝って貰っているよ」



 不届きな事をしようとしたらパクリといかれるのだろうか。……可愛いか? 普通に怖いわ。

 俺がそう思っている事など露知らず、ルーファとケイカは臆する様子も無くイーランへと近づいていく。



「意外とふかふかです!」

「そりゃ羽毛だからね。優しく撫でてあげてね。顔の部分じゃなきゃ大丈夫だから」

「ふかふかー」



 ボタンが遠慮無しに、ぽふぽふとイーランを撫でている。

 こいつの羽で羽毛布団作ったら気持ちよさそう。



「おいおい、大丈夫なのか?」

「レインハルは鳥型魔物の中でも温厚だから大丈夫。気配を察知するスキルがあるんだけど、目の前にいるなら敵意があるかどうかくらいは分かる」

「物知りだね。イーランも例外じゃないから大丈夫だよ。乱暴に触らなければ大人しいからね」

「やっぱ知ってたか」

「ふふん、当然」



 ガーベラが自信有り気に説明してくれた。

 なら大丈夫だなと、俺も触りに行こうとしたら――



「キッ!!」



 めっちゃ睨まれたので体がピタッとフリーズする。

 こえー!!!! めっちゃこえーよ!!!! なんだよコイツ!!!!



「わはは、めっちゃ嫌われてんな」

「まだ何もしてないんだけど」

「普段セクハラばっかしてるから警戒されてんだろ」

「あーん?」



 シーラの奴、ここぞとばかりに煽ってきやがって。

 まぁいい、俺にはユーリがいるし。仕方ないのでそのまま後ろ歩きでイーランから離れる。



「ごめんね。機嫌は良い筈なんだけど」

「いえ、大丈夫です。そういう事もありますよ」

「彼もそのうち慣れるだろう。さぁ、案内するよ。イーラン、ちょっと見張っててね」



 ケイカやルーファに触られていたイーランは一鳴きし、ゆっくりと離れていく。

 やれやれ、いきなり鳥に嫌われるとは。何かしただろうか。



「個体によって相性はある。気にするな」

「あいよ」



 リコリスにポンと頭を撫でられる。別にショックという訳では無いのだが……しかし、少ししょんぼりしたフリをしたらガーベラも頭を撫でてくれたので、美少女のささくれた傷心も癒されてやる気アップアップですよ。

 それでも、少しだけ触ってみたかったけどな。鷹なんて遠目でしか見た事無かったし。名残惜しくも、俺達は劇場へと入る。


 屋根は無い物の、周りが壁で覆われて中が見えない状態だ。入口の所だけ開けているので、そこからお邪魔します。

 見た所、前世の世界と似たような作りの劇場だな。前に舞台があって、そこから観客席がずらーっと並んでいる。



「ほう、このような造りなのか」

「リコリスさん、演劇は見た事ありませんか?」

「ウム。その様な娯楽があるのは知ってはいたが。しかし、一方からしか見れぬのか。てっきり騎士の模擬試合見たく全方位から見える様な物かと思っていたが」

「それだと舞台の準備が大変ですし、場所によっては役者が見え辛かったりしますので。やはり役者の顔――表情は、観客を劇へ引き込む最大のアクセントですから」

「そういうものか」



 実際見ないとピンと来ないかもな。明日見れるんだし、楽しみに待とうじゃないか。

 舞台の方へ近づいていくと、フェイオンは舞台のセッティングをしていた団員に声を掛ける。



「ダイナ達が来たよ。丁度良いから休憩にしよう」

「あら、もうそんな時間!? ごめんね、直ぐ準備するから!」



 挨拶する間もなく奥へと引っ込んでしまった。忙しいなら長居しない方が良いんじゃないだろうか。



「そんな畏まらなくても大丈夫だよ。今日は午後にリハーサルして終える予定だから。彼女が忙しない性格なだけさ。それより、お昼はまだかな? 良かったら一緒にどうだい?」

「良いんですか? 何も持ってきて無いですけど」

「ああ、昨日手伝って貰ったし依頼料の延長で良いんじゃないかな? 元々副団長が言ってたことだからね。そっちもスケジュールがあるんだろう? 無理強いはしないけど」



 俺等は特に問題無い。ダイナ達も、ご相伴に与ろうとその気だったのでお誘いを受ける。



「じゃあ、折角なので」

「良かった。少しここで待っててよ、副団長を呼んでくる。そこの椅子使っちゃって良いからね。ちょっとゴタゴタしてるけど、気にしないで」



 速足でフェイオンは離れてしまった。

 折角なので一番見やすそうな観客席の所へ行ってどかっと座る。う~ん、こんな特等席で見れたら最高だろうな。



「おいダイナ。後でこの席取っといてもらえるように交渉してくれよ」

「自分でやりなさい」

「ちぇっ」



 そんな図々しい事言える筈も無いので諦めよう。

 足をプラプラさせて待っている(←とても美少女っぽくてお気に入り)と、色白の美人なお姉さんがやってくる。


 おお、素敵なドレスだ。街中で着る様な物では無いし、劇の衣装だろうな。

 それを踏まえても、とても自然な着こなしである。美少女として見習うべきだろう。



「皆様、ようこそいらっしゃいました。こんな姿でごめんなさいね」

「綺麗な衣装です! お人形みたい」

「ありがとう、お嬢さん」



 正に演劇の様な振る舞いで礼をするお姉さん。動作の一つ一つが洗練されてるぜ。

 素晴らしい……最初は、さくっと挨拶済ませるか~くらいに考えていたが、学ぶ事が多そうだ。



「コキアと申します。火竜劇団の副団長をさせて頂いてます」



 薄く笑ってそう名乗ると、ダイナへ話しかける。



「先日はありがとうございました。契約外の事までやって頂いて」

「いえ、たいして働いてませんよ。ちょっと重い大道具持っただけで」

「それだけでも助かりました。体力に自信のある団員は多いのですが、力はそこまでありませんので」



 ダイナへ軽く会釈すると、今度は俺達の方へと目を向ける。なんか目がキラキラしているような……。



「貴方がハナさんですか? 噂に違わぬ美しさね」

「え?」

「そこな桃色髪の貴方も、狐人の貴方も素晴らしい。なんとも着せ甲斐のある……と、失礼しました。フェイオンから話は通してあると思いますが、昼食をご一緒したいなと思いまして」



 手を合わせて、にこやかにコキアは言った。こんな美人さんと飯が食えるなら大歓迎ですよ。



「聞けばハナさんも魔物使いだとか。この火竜劇団は、魔物使いの方が集まっているので是非話を伺いたくて」

「そうなんですか。じゃあ、コキアさんもですか?」

「ええ、元々はフロクスと冒険者をやっていたのですよ。最初こそ、生活の為に依頼続きで大変でしたが……稼ぎが安定してきて、他の事がやってみたいと一念発起し始めたのが演劇なんです」



 冒険者から転職するのも珍しい事ではないらしい。むしろ、体が動かなくなる前に別の職に手を付けるのは当然の事だとか。

 ジナくらいにもなると、生涯冒険者やっていけるんだと。やはりあれは規格外だ。



「ここで話すのもなんですし、奥へ参りましょうか」

「良いんですか? 部外者が入っちゃっても」

「ええ、大したものはありませんし、信用出来る方々だと思っていますので。それでお昼ですが、今日は野外で串焼きにしようと思っています。お肉は大丈夫ですか?」

「大丈夫です」

「そこのもふもふしてる子も平気? なんなら生の肉も用意できますが」

「この子は何でも食べますので。その辺の草でも大丈夫です」

「!?」



 ユーリに尻尾をバシバシ当てられるが気にせず奥へと向かう。



「てっきり肉食かと思ったけど、好き嫌いしない子なのね」

「私の従魔だから当然です!!」



 俺の美少女ジョークも付き合いで笑ってくれるコキアは良い人だな。

 コキアが他の団員に声を掛け、休憩に入っていく。どの人も同じ服着てるけどオーダーメイドだろうか。飯の時聞いてみよう。


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