美少女やるのも楽じゃないな
すみません今回短いです。
次回文章量多めにしたい(願望)と思います。
誰かに後をつけられるも、無事に宿へと辿り着く。
折角の旅行なんだからもうちょっと安心して過ごしたいんだがな。明日もいる様ならリコリスに追っ払って貰おう……。
大体、後をつけられるような真似はしてないんだがな。俺のファンか何かだろうか。全く美少女やるのも楽じゃないな。
「やっと着いたか」
「これくらいで根を上げていたら王都でもたぬぞ」
「どんだけ殺伐としてんだよ王都」
この世界の常識を未だに図りかねてるわ。
さっさと部屋で一休みしようと、中へ入る。おばちゃんに声を掛けようとカウンターへ向かうと、少女が楽しげに話をしていた。
「お客さんでしょうか」
「あんな小さい子が一人で宿に泊まるのか」
「誰かさんみたいにハーフなんじゃね」
と、各々好き勝手言いながら近づくと、少女がこちらへ振り向いた。
その顔を見て、思わず声が出る。
「あっ! お前は!」
「ハナさん!!」
その少女は、以前ディゼノで出会ったルーファという少女だった。
ボロ布のような服を着て痩せこけた美少女だったが、以前よりはマシな状態だな。
そんな少女ルーファにまさかこんなとこで出会うとは。異世界は狭いねぇ。
「お久しぶりです」
「おう、元気そうで何よりだ」
「なんじゃ、知り合いだったのか」
「あれ? お姉さん――」
リコリスを見て首を傾げるも、直ぐに俺の方へと向き直る。
「ああ、ケイカやリコリスには前に言ったかもしれんが、以前ディゼノで知り合ったんだ」
皆にざっくりと説明しつつ、話を進める。
「随分酷い目に合ったんですね」
「でも、ハナさんのお陰で今は自由の身です! 偶に追いかけられますけど」
「全然自由じゃないな」
笑顔で悲惨な事を言うので思わず引いてしまった。
あれからルーファは師匠の家に戻ろうとしたのだが、家が封鎖されており中に入ろうにも入れず泣く泣く王都へ向かったのだとか。
以前手に入れた金貨を切り崩してまた商売を始めたが、案の定売り上げはさっぱりで途方に暮れていたらしい。
「全く、誰もかれも見る目が無い奴ばかりですよ」
「あんなガラクタさっさと質屋に入れちまえよ」
「ガラクタじゃないです!!」
めっちゃぷりぷり怒っているが、美少女だから可愛いだけだぞ。
そんなルーファの隣で、ケイカがふるふると震えている。
「ルーファさんも呪いで苦労していたんですね……! その辛さは十二分にわかりますっ!!」
「わっ!? 何ですかこの人!! ちけーです!! ちけーですよ!!」
泣きそうな顔でルーファを抱きしめている。気持ちは分かるがルーファが嫌がっているぞ。
「これ、入口で騒ぐでない。宿主に迷惑がかかる」
「いいよいいよ、まだ早いし人もいないから。もう少ししたら夕食だからね、部屋でゆっくりしておいき」
取り合えず先に金を払い、部屋へと移る。
ルーファも一人で部屋を借りてるらしいし、どうせならって事で来てもらった。しかし、皆が3人部屋に集まると少し窮屈だな……。
「明日は一日休んで、後日火竜劇団の劇を見てそのまま王都へ向かう訳だが。そっちは問題あるか?」
「別に劇見た後、もう一日休んでも良いんじゃないか? 」
「まぁそうだけど……何というか、予定が空いたら取り合えず詰めとかなきゃという性分が」
「ダイナってその辺律儀というか堅いよな」
「シーラが大雑把すぎるんだ」
気持ちは分からんでもないがな。だが、劇を見終えた後で直ぐ移動ってのも疲れてしまう。
「王都はここから近いんですよね?」
「うん。馬車で半日も掛からない」
「じゃあ良いじゃないですか! 盗賊団も居て物騒ですし、王都へ移りましょう!」
確かに賊がいる所に長居する理由も無いんだよな。大体、王都の近くを拠点にするって大分イカれてると思う。潰されるのが目に見えてるだろ。
「物騒なら潰しちまえば良いじゃねえか」
「また物騒な発想だな」
「むやみやたらに追っかけたりすると規模が大きい分、散り散りになってまた二次被害が出るからね」
「騎士も来てるって言ってましたし、手を出さない方が良いでしょうね」
強い騎士様が賊を討伐とか本当におとぎ話というか、現代じゃ聞かないから実感が沸かないな。
俺達が出張る事も無いし。大人しく劇見て退散するのが吉である。
「そういやお前は何でここにいるんだ」
「勿論商売です!」
「なんか俺にくれるんじゃなかったのか」
「その為に日夜休まずに稼いでるです!!」
締め出されたせいで何も持ってこれなかったらしい。かわいそう。
「以前ハナさんのお陰で手に入った金貨で暫く凌げますので、問題無いですよ」
「おう、1日1回は俺を崇めろよ」
「問題大有りじゃろ。そのままじゃ飢え死ぬぞ小娘」
「ルーファです!!」
ルーファです!! じゃないが。このまま職に就けなきゃ犯罪者コースだ。スキルにスリあるし。
「お前、商売が好きなのか?」
「いや別に」
「じゃなんでわざわざ商人みたいな真似してんだよ」
「稼ぐには何か売るのが手っ取り早いですよ」
特に深くは考えていないようなので、ちゃんと金を稼ぐ仕組みさえ教えてやれば大丈夫かもしれない。
このまま見捨てるのも可哀想だし、良い機会だから俺が矯正してやろう。
「よし、お前明日は俺に付き合え」
「はい?」
「この俺が美少女に相応しい立ち振る舞いと、ついでに最低限生きていく為に必要な知識を教えてやる」
「そっちがついでなのかよ」
「まぁ、我が見ているから安心せい」
「えっ!? なんで勝手に決まってるですか!?」
お前が傍から見てて凄く危ういからだよ。さっきの話聞いただけでもいつくたばるか分からない状況だし。どれだけ刹那的な生き方してんだ。
次回更新11/27予定