表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美少女になりてえよなぁ  作者: 釜蔵
へちまくれの流浪少女
135/181

私が余りに美しすぎて驚いてしまった……そうですね?

 服屋と言えば女の子同士の試着。俺みたいな可愛い美少女が、着せ替え人形の様にあれよあれよと色々な服を着させられて持て囃されるのだ。

 ルマリやディゼノだとそんなイベントは無かった……しかし、今回は違う!



「という訳なので、今日はよろしくお願いします」

「何がという訳なんだよ」

「何がよろしくなのでしょうか」

「そう真面目に捉え無くても良い。適当な事話しておるだけじゃ」



 移動中に、オクナとシーラに出会った。

 もう用事が終わったのかと聞いたら、シーラが飽きたから別れて動いてたらしい。

 流石に一人で、というのも何なのでオクナが一緒に来たという次第だ。



「荷物結構多かったですよね? 手伝えば良かったのに」

「二人も居ればいいだろ。多いって言っても、大道具だから大きいだけでたいした量じゃねえよ」



 シーラがケイカにそう言うと、黒い尻尾を振りながら街を見回している。

 その尾を、ボタンが必死に捕まえようとしている。



「何してんだお前」

「……きゃっち」

「触んな」

「りりーす」



 掴んだ尾を離し、再びキャッチしようと試みている。

 鬱陶しそうにしているが止めてはいないので放っておいても平気だろう。



「ダイナさんとガーベラさんはそのまま手伝ってるんですか?」 

「はい、その後にギルド長さんと話があるそうで、一度戻ってから夕方頃に集合場所へ戻るそうです」



 ここのギルド長はマッチョな爺さんらしい。

 ジナと言いファイトと言い、マッチョ比率多いなと思うけど体動かして命張ってる職業だから当然と言えば当然だった。



「で、お前達はどこに行くつもりだったんだ?」

「服屋さん!! ストレチアの中央はどんなのが流行ってるのか見たいと思って」

「何だ、俺達と一緒か」



 まさかの目的地一緒だった。旅したり冒険者やってると装備は当然として、中に着る服も消耗が激しいらしい。

 加えて、シーラは現代人っぽい……俺で言う所の、元の世界寄りなセンスをしているので、どうしても探すのに時間がかかる。

 なので隙あらば物色しているそうだ。うむ、おしゃれしたいハナちゃん的にはとても共感出来る。

 


「折角だし、シーラさんのお勧めを教えて下さい」

「俺もこいつらと付き合い始めてから気にしてるワケだし、そんな懇意にしてる所はねえよ」

「オクナさんは?」

「王都なら何件か心当たりがありますが……ラフィルはあまり来ませんので。知らないお店ばかりですね」



 ま、知らん店を開拓していくのもまた一つの楽しみ方だ。

 丁度そんな事を考えていたからなのか、小綺麗な服屋を発見。ちゃんと文字は勉強していたので今ならはっきりと服屋だって分かるぞ。



「よしここだ。俺の魂がここに良い物があるって言ってる」

「どうでも良いけどコロコロ性格変わるのやめろよ」

「慣れろ」 



 シーラのツッコミをスルーしていざ中へ……と、その前に。



「ユーリ、お前は外で待機だ。大人しくしてなさい」

「へいへい、早くしろよー」



 興味が無いのかユーリは素直に返事をすると、店の横で体を丸める。

 ……放置して大丈夫だよな? 人が通る度にユーリに視線が向くんだが……通報されない事を祈りながら、俺達は服屋へと入る。


 結構広いなと思ったが、これくらいが普通か。

 ルマリのはどっちかと言えば古着屋兼、仕立て屋って感じだったが、こっちは普通に服屋だな。



「じゃあ早速やりましょうか」

「何を?」

「勿論私の着せ替えタイムですよ。ほら、着て欲しい服を選んで下さい」

「自分で言う奴初めて見たな」



 だって言わないとやらないじゃん。女の子の定番だぞ、なぜやらないんだ。



「ハナさんは着たい服とか無いんですか?」

「着たい服は全部作って貰うからな。でも、色んな服が似合うからやっぱ色々着てみたいじゃない」

「凄い自信ですね」



 何でも良いぞと胸張って宣言すると、ボタンがとてとてと奥へ向かう。



「我が見ておこう」

「頼んだ」



 一人だと何するかマジで分からんからな……商品に手は出しちゃダメだと言ってはいるが、まだまだ人の常識に疎いのだ。



「ケイカだって俺に何か着せたいだろ? 遠慮すんなよ」

「遠慮はしてませんけど、どうせなら一緒に見ましょうよ」

「そうだな」



 という訳で、残りの4人で店を見て回る。

 適当に入った店だが、意外と品揃え多くてビビった。


 客も何人かいて、何人かが店員と話している。従業員がいる服屋は何気に初めてだ。

 今まで店主しかいない店しか入った事無かったからな。もしかしたら裏方で雇っているのかもしれないけど。


 何というか、着飾る服はあるが貴族っぽい……ドレスチックなのが多い。

 庶民向けパーティドレスである。主に商人の奥さんとかが着るそうだ。成程、一応需要に沿っているらしい。


 当然俺も着た。子供用もあったぞ。すげー着辛かったけど。なんやこのヒモは。どこをどう結ぶねん。

 オクナに手伝ってもらい何とか着れたけど、メッチャ暑い。



「ぜいぜい……どうだ? おしゃまな美少女ハナちゃんだ」

「なんか着られてるって感じだな」

「ディスりから入りやがって」



 手伝って貰って悪いが暑かったので直ぐに次へ向かう。

 こういう時カメラが無いと不便だ。俺の美少女メモリーに残せないのは極めて遺憾である。



「でも、本当にお人形さんみたいで可愛いかったですよ!」

「オクナは優しいなぁ」



 オクナの好感度が上がっていきつつ、次の服を物色する。

 メイド服とか無いの? と聞いた所、そう言うのはオーダーメイドで頼むらしい。メイドだけにな。


 くだらない事を考えていた俺の目に留まったのは一枚のレギンス。



「スパッツだと……」



 この伸縮性のある黒いボトムスは間違いなくスパッツである。

 結構売れ筋の様で、大量に仕入れてある。



「冒険者の方に人気ですね」

「スノーさんも着てましたよね。動きやすくて蒸れないから気に入ってるって」



 ぴっちりしてるのが苦手な人もいるだろうが、便利なのは間違いない。

 これで健康的な美少女を演出するのも悪くない。スカートでもオーバーパンツ的な役割も果たせるしな。これは買いだ。



「ディゼノじゃ売って無かったよなこれ」

「ラフィルと比べたら駄目ですよ。そもそもディゼノの強い所は海に近い事ですし」



 確かに食料品はいっぱいあったな。



「取り合えず2着買っちゃうぞ。ケイカは?」

「確かにディゼノじゃ売って無いんですよね……私も買っちゃいます」



 良い物が手に入った。バリエーションが充実していき、美少女力が上がっていくのを感じる。

 そんな中、シーラは獣人向けの服を見ている。尻尾を出す穴があったり、襟の部分が広かったりと特徴的な服が多い。



「ケイカは、あっちの服じゃなくて大丈夫なのか?」

「角が引っかかるので首の辺りは広めの方が良いですが、後は普通の物で問題無いですよ」



 種族によって色々あるんだなと再認識する。

 リコリスも大変だろうな。尾は凄い事なっとるしスタイルヤバいし。全部特注じゃないといかんと違うか。



「まぁ俺達には関係無いな」

「何が関係無いんです?」

「どうせ碌でもない事ですヨ」



 そんな死んだ目で見るなよ。お前はまだ成長の余地があるんだから。

 俺がケイカから目を逸らすと、一人の客が目に移る。


 サングラスにマスク付けた……門で顔パス(顔見えないけど)した女じゃないか。

 普通に服屋とか入るのか……顔隠してるけど逆に浮いてるぞ。


 その女がこっちを向いた途端、俺を見て固まる。

 どうしたんだろうと思ったら、手が緩んだのか持っていたカバンがどさっと落ちた。



「あの、大丈夫ですか?」

「……はっ、いえ、だ、だ、大丈夫です!」



 つい声を掛けてしまったが、明らかに俺見て動揺してるよな?

 一体何が……はっ!! まさか……!!



「私が余りに美しすぎて驚いてしまった……そうですね?」

「……」



 俺が思わずそう聞くと、わなわなと震えて俺を見ている。図星に違いない。



「ちょっとハナさん、迷惑かけちゃダメですよ!」

「かけてねーよ!! この人が俺を見てめっちゃ感動してるだけだ」

「また訳分からない事を……ごめんなサイ、この子すぐ暴走する癖がありまして――」



 ケイカが謝るとサングラスの女は、はっとしてこちらを見る。



「いえ、お気になさらず。こちらこそ申し訳ありませんでした」



 最初の動揺が嘘の様に穏やかな声でそう言うと、ずれたサングラスを直してその場から離れる。

 何だったんだ一体。



「美しすぎるというのも罪だな。少しは抑えた方が良いかもしれん」

「何言ってるんですか。ほら、行きますよ」



 どうやら、オクナがシーラに引っ張られて向こうへ行ってしまった様だ。強引な奴だな。



「ハナ」

「ん、ボタンか。もう飽きたのか――」



 ボタンが寄ってきたので声を掛ける途中で、声を失う。

 やたら上品なドレスを着ている。髪に目立つリボンが添えられている。



「お前……滅茶苦茶可愛いな」

「んふ」



 ちょっと悔しい。しかし可愛いのだ。こいつめ、普段はのほほんとしてる癖に良いセンスしてやがる。主人に似たんだろうな。

 是非とも買ってやりたいがお金足りるかな。さっき見た感じだと結構しそうだぞ。



「安心せい、我が払ってやる」

「流石おばあさま!!!」

「ばあばー」

「こういう時だけ崇めるでない」



 そうは言っているが、リコリスもリコリスでノリノリだったようだ。孫を可愛がるような気持ちかもしれん。

 このまま着せて外に出たいが、あまりにも目立つ。先に買う事を店員に言って、店を出るまでは着せといてやろう。

次回更新10/30予定

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ