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美少女になりてえよなぁ  作者: 釜蔵
金木犀と春風の闇
13/181

元気いっぱいな美少女っぽくて凄いかわいいと思うんだけど

2018/02/12 サブタイトルを修正

2018/05/03 一部修正

2018/11/05 会話表示修正

 俺は店の方へ向かうと、爺さんが誰かと話しているのが見えた。

 あれは……衛兵か? 妙にがっしりした鎧を着ている。何かあったのかな。



「おお、ハナちゃんか。ぐっすりと眠っていたようじゃな」



 俺が顔を出すと、爺さんが話を中断し俺に話しかけてくる。爺さんも衛兵らしき人も温和な表情だ。そんな真面目な話でも無いのか?

 別に悪いことをしたわけでもないが、少し警戒気味に俺は言葉を返す。



「おはようございますダズお爺様、おかげさまで気持ちの良い目覚めでした」

「だいぶ疲れていたようじゃのう。元気になってよかったぞい、昨日の時点でも元気だった気がせんでもないが」



 どういう意味だ。昨日はジジイへのツッコミでヘトヘトだったよ。

 爺さんが冗談を言うと、後ろの衛兵っぽい人が声をかけてくる。



「ダズさん、彼女がさっき言っていた子ですか?」

「そうじゃ、昨日レイが逢引していた」

「してねーよお前を合挽きにしてやろうか?」

「恐ろしい事を言う娘じゃのう……爺ちゃん怖い」

「ハハハ、話に聞く通り人形の様な可愛さとは裏腹にとても元気な子ですね」



 いつものノリで突っ込んでしまうと後ろにいた衛兵っぽい人に笑われてしまった

 普段からお淑やかで行こうと決めていたのに爺さんにつられてつい。

 彼からは礼儀正しく優しい印象を受ける。良い人っぽいけど……。



「お見苦しい所を見せてすみません。お客様の前なのに」

「いやいや、気にしなくて結構。ダズさんと話をしに来ただけだからね。私はアーキス、この村に派遣されている衛兵だよ。よろしくね、お嬢ちゃん」

「私はハナです、よろしくお願いします。アーキスさんは衛兵……なんですね」



 どんぴしゃで予想が当たっていた。一体何しに……、もしかして俺がいきなり村に入ってきたから調べてるとか?

 いや、爺さんがさっき俺のことを話してるみたいだしこの様子だとそれはないか。一体なんだろう。

 俺が考えていると、アーキスが話を続ける。



「ああ、ここ最近夜中に幽霊が出るという噂があってね。ここら一帯にレイスが出るという話は聞かないし、目撃者も少ないから注意も兼ねて聞いて回っているんだよ」

「レイス……魔物なんですか?」

「魔物として区分されてはいるが、今回は特殊な個体かもしれないな。森の方で目撃されてね、なんでも透けた人間が浮きながらリールイ森林の奥へと消えていったらしい」



 森の方って思いっきり僕の出身地ですが。何あそこホラースポットだったの?

 俺透けてないしさすがに自分のことじゃないだろうけど、だとしたら余計怖いわ。



「それは、怖いですね。何か被害はあったりするんですか?」

「今のところは聞いてないな。だから上の方もそこまで厳重な警戒はしてないみたいだ」

「村から出なければ大丈夫じゃよ。レイにもしばらく森へは行かぬように言っておこう」

「はい、それが良いでしょう。元々立ち入り禁止ではありますが、他の者にも伝えないと」



 もし1日遅れていたらここに来れなかったかもしれんな。セフセフ。

 それにしても幽霊レイスか。本当に幽霊っていたんだな。映画とかホラゲによくある顔が血まみれでやべーやつだったら出会っただけで失神しそうだ。最近のホラーはグロすぎて見たらしばらくご飯食べられないよ……。



「心配しなくても大丈夫だよお嬢ちゃん。レイスは人が多くいる場所を嫌がるからね、村までは出てこないさ」

「良かった、ご飯は食べられるんですね」

「ご飯は関係あるかのう?」



 どうやら危険性は低いようだ。さほど気にかける事もないだろう。

 しばらくはこの村でほそぼそと美少女してよう……。そも調停者なんだから、余程のことがない限り自分から首をツッコむこと無いよな。



(たしかにそうですが、調停者だからこそもっと己を鍛え上げるべきでは)

(セピアよ、急がば回れと言うだろう。厄介事に巻き込まれないためならトリプルアクセルだって決めてみせる)

(その厄介事を避けるため違う方向に努力する感じがハナ様らしいです)



 もしかしなくても貶してるな? 段々とナチュラルなディスり方を覚えてきやがって。

 こっちも何か言ってやりたいが情報量が少なすぎる。声がイケボってことしかわからん。



(このイケボ!)

(イケボってなんです? と言うかレイくんを待たせてますよ)

(あ、いけね忘れてた)



 飯が冷めてしまう。卵焼きは冷めても美味しいけどな。

 無駄に量があるから一人で先に食ってても食いきれないくらいだし大丈夫だと思うが。

 俺は爺さんに飯のことを伝える。



「お爺様、ご飯といえば昼食の用意が出来ましたよ。レイくんがそわそわして待ってるはずです」

「おお、ハナちゃんが呼びに来てくれたということじゃったか」

「そう言えばもうお昼でしたね。お時間を取らせてしまいすみません。私はそろそろお暇させて頂きます」



 アーキスは頭を下げて外へでようとする。



「いいや、いつも情報を持ってきてくれて助かっているよアーキス。また何かあればよろしく頼むぞい。逆に、薬が必要なら頼ってくるといい」

「ハハ、出来れば薬にはやっかいになりたくありませんがね、ではまた。お嬢ちゃんもまたね」

「はい、アーキスさん」



 それでは、とアーキスは軽く手を挙げて立ち去る。

 俺もそれにあわせて手を大きく振って見送った。あっ、今のかわいい。



「今のバイトし始めの元気いっぱいな美少女っぽくて凄いかわいいと思うんだけどどう思います?」

「さ、戻ろうか。レイも待たせてるしのう」

「聞けやジジイ」

「もう少し素が出なければのう……」



 条件反射でつい。これは今後の課題だろう。こんなんではいつまでたっても美少女とは呼べないからな。

 俺と爺さんはアーキスを見送り、レイの所へと戻った。











「ハナちゃん、これ凄い美味しいよ!」

「うん、普通に美味いな」



 戻ると既に準備万端のレイが待っていた。既に綺麗に取り分けてある。良いお嫁さんになりそう。

 食べ始めると、腹が減っていたのか卵焼きにがっついているレイ。やっぱ豆だけじゃだめじゃねーか!

 俺も一口食べてみる。甘さは無いが少量の塩だけでも味はするな。。切り分けた場所によって豆が凄い偏ったりしていたが、それもまた良し。

 割と上手く出来たな。レイも満足そうだしこれくらい雑でいいなら作ってやれるだろう。



「お爺様、味はどうですか?」

「ああ、美味しいよ。これからちゃんとした料理が家で食べられると思うと爺ちゃん嬉しい」

「そんなに」



 ちゃんとした飯はずっと外ですませてたのか。料理に対しての意識が低すぎる。

 そしてレイ、そんなに急いで食べると喉をつまらせるぞ。



「レイくん、よく噛んで食べないと体にわるいよ?」

「むぐっ、……美味しくてつい。ごめんね、もっと味わって食べるよ」

「うむ、よろしい」



 そんなに美味しかったか? 悪くもないが別段褒められる程でも無いと思うが。



(異性の手料理はなんだって嬉しいものだとカラー様から聞いたことがあります)

(何かそれ騙している気がして悪いな)

(大丈夫です。同性でも美味しいものは美味しいです。レイくんもやみつきですよ)



 色々危ないフォローをありがとう。確かにあんな美味しそうに食べてもらうと悪い気分はしない。

 ずっと卵焼きってわけにもいかんけどな。やっぱ肉だよ肉。レイも体づくりしなきゃいけないしな。

 と、考えている間に卵焼きが無くなっている。結構あったんだがな。



「ごちそうさまでした! 爺ちゃん、買い物行ってくる!」

「これこれ待ちなさいレイ。ハナちゃんと一緒に行って案内してきなさい。何が何処にあるのかわからないと今後不便だからのう」



 そうだな、案内して貰った方が分かりやすくていい。

 昨日ざっと見た限りでも結構店はあったしな。これでも小さい村らしいので大きな街ならどんだけあるんだろうか。



「レイくん、少し休んでから行こうよ。食べたばかりだし」

「わかった! 僕、外で剣の練習してるね!」



 やる気に満ち溢れているな。流石に俺は飯を食ったら一服したい。

 剣の練習って言ってたが素振りでもするのだろうか。真面目な子だ、ああやって夢に向かって努力する姿を見ると応援したくなるな。

 やっぱり冒険や強さを求めて、魔物モンスターを倒し強敵を倒していくってのは憧れるのだろうか。男と生まれたからには一生のうち一度は夢見るからな。



(ハナ様にもそう言う時期があったのですか?)

(あったかなぁ。子供の頃の話なんて忘れちゃったよ。クリームがたっぷりのったケーキをたらふく食べたいなぁなんて思った事はあるが)

(意外と可愛い……いえ、失礼しました。子供らしくて素敵な夢ですね)



 今は全然思わんけどな。クリームは胃もたれするし。

 体にも悪いしな。お肌荒れそう。

 ゆっくり食っていた爺さんも食べ終わったようで、満足そうに腹を擦っている。



「ごちそうさま。ハナちゃんに来てもらってよかったのう。これからよろしく頼むぞい」

「食材さえあればもっと美味しいものが作れますよ。ですので、今日の食材選びは私に任せてもらってもいいですか?」

「ああ、構わぬよ。元々儂らはその辺が疎いのでな」



 肉や野菜の相場が判らんが、そこはレイに聞けばいい。

 硬い肉でも切りまくれば食えるだろ、多分。そもそもどんな肉扱ってるんだ? やっぱり異世界だし魔物? オークとかあったら人肉みたいでなんか嫌だなぁ。レイが肉嫌いなのってそういう理由かな。

 その辺もきっちり聞いとかなくちゃな。

 


「お爺様、少し休憩してから買い出しに行きますね」

「ほほ、それが良い。今日は食材だけで良いんじゃが、ついでに自分の服も買ってくると良い。その格好では不満もあるじゃろう」

「本当ですか? ありがとうございます!」



 服貰えるだけでもありがたかったけどな。だが、頂けるものは頂くのだ。

 思えば、銀色長髪美少女に白シャツ短パンってだいぶアンバランスな格好してるしな。

 少し休憩を挟んだ後、俺とレイは買い出しに向かった。

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