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美少女になりてえよなぁ  作者: 釜蔵
我が道進む百合水仙
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いざという時に何も出来なければ意味が無いからな

ギルドの外へと出た俺達。早速と言わんばかりに、フロクスが杖を用いて魔法陣を描いている。

 え、すっご、杖でなぞった所が光ってるぞ。正に魔法って感じだな。

 俺が目をキラキラさせながら見ていると、フロクスは笑って話しかけてくる。



「これは【魔力感知】と言ってね。特定の魔力を感知するスキルなんだ」

「ほお、そんな便利な魔法が」

「結構使い勝手はよろしくないのだがね。魔物限定で、この通り時間も掛かる」

「しかし、今の状況ならリナリアの【探査】よりも有用だ」



 スキルなのに陣を描く必要があるのか。そうセピアに聞いた所、「物によっては魔法陣を介するスキルがあります」との事。

 わざわざ魔法陣描くなんて面倒だな、普通に魔法撃てた方が良くない?



(普通に扱う分にはそうでしょうが、魔法陣を描いた時点で魔力が消費され、起動には魔力を使いません。また、ある程度陣から離れていても起動が出来ます。使い方次第ですよ)

(設置型には設置型の良さがあるという訳か)



 フロクスはするすると澱みなく描いている。よくこんな複雑なの覚えてんな。



「ぴかぴか」

「こらボタン、邪魔したらダメだぞ」

「ぶいぶい」

「ハハ、今度またじっくり見せてあげよう」



 ボタンも興味津々だったようで、光っている陣に触れようとしていたのを俺とトマホークで制止する。

 フロクスが魔法陣を描き終えた所で、杖を魔法陣の上でコツコツと鳴らす。



「ぼたんもやる」

「やるなやるな」

「んー!」

「後でなんか杖っぽいの買ってやるから」

「……貴様等、もう少し緊張感を持て」



 マリーに怒られてしまった。やれやれ、好奇心が旺盛すぎるのも困りものだ。

 そのまま大人しく見ていること数分。フロクスが杖を下げ、口を開く。



「ふむ、一際大きな魔力の塊があるようですな」

「本当か?」

「ええ。あのゴブリンと同系統の物で間違いありません。動いてはいないようですが――」

「直ぐに向かうぞ。フロクス、頼めるか?」



 ジナの言葉に、フロクスは頷いた。



「では案内しましょう。……道中、討ち漏らしがあるようですが如何なさいますか?」

「雑魚は他に任せたいがな」

「恐らく隠れ潜んでいるのでしょう。彼らは小柄ですので、入り組んだディゼノの街中では場所はいくらでもありますから」

「仕方あるまい、全て狩りながら向かう」

「畏まりました。こちらです」



 フロクスの後ろに付き、大きな魔力の場所へと向かう。

 道中、案の定隠れていたゴブリンをマリーやジナが瞬殺する。



「そういやお前さん、実物を見るのは初めてか」

「黒いルクスの死体を見てはいるが……やはり通常種とは異なるようだな」



 マリーは剣で的確に急所を狙い、逃げるゴブリンを次々に倒していく。

 ギルド長になっても普段から魔物狩りはしているらしく、衰えは無いそうだ。忙しそうなのにどうやって時間作ってるんだろうな。



「ギルド長、めっさ強いじゃないですか」

「そりゃそうだろう。冒険者から叩き上げのギルド長なんだから。しかし、相変わらず容赦ないなぁ。これで魔法の方が得意だってんだから世の中理不尽だ」

「貴様が理不尽を口にするのか……私など、貴様と比べれば器用貧乏も良い所だよ」



 マリーは剣に付いた血を払い、ジナが揶揄うのを軽くあしらう様に答える。



「それに――力があったとて、いざという時に何も出来なければ意味が無いからな」

「……」



 どこか含みのある一言。ジナも、マリーの様子を見て言葉が詰まっている。

 俺は違和感を覚えたが、フロクスがこの辺のゴブリンを全て倒した事を伝えると、直ぐにその妙な空気から切り替わる。



「さっさと事態を治めて休暇が欲しい物だな」

「ヴィルポートは良い旅行になったんじゃねえか?」

「ほう、そう思うのなら次は貴様を行かせてやろうか」

「……遠慮しときます」



 冗談を言い合いながらも、手早く剣を収め目的地へと向かう。

 ううむ、二人共神妙な顔してたから気になったが、今はそれどころではないか。


 そこから何度か会敵したものの、一方的な、というかタイムアタックみたいなレベルの速さでゴブリンを掃討していく。

 


「なんというか……役不足感が凄いな。ジナさんかマリーさんどっちかだけでも良かったんじゃないですか?」

「念の為だ。何が出てくるか分からないからな。この前だって、とんでもないアルラウネが現れたのだろう?」



 確かに訳分からんくらい訛ってるのが出てきたけど。でもあの状況もジナが居たら多分もっと上手く抑えられたんじゃないかなと思う。

 過ぎた事なので割愛するが、それぐらいの信頼度という事だ。



「すぐそこまで来ていますよ。トマホーク、辺りにゴブリンの反応は?」

「ぶう」



 すんすんと鼻を鳴らして、トマホークは一鳴きする。

 


「黒いゴブリン自体はいないようですな。しかし魔力の反応はあると」

「以前の巨大レクスの様な、隠密スキルを持っているとか?」

「なんにせよ、油断はするな」



 いきなり来るからな……マジでビビるよあんなデカいのといきなりのエンカウントは。

 俺はそれを思い出しながら辺りを見回す。

 ここは……ユーリの首輪を買った、ナッツの店辺りか。彼も無事だと良いんだがな。



「こちらの路地に入った辺りですね。参りましょうか」 

「フロクス、お前さんも気を引き締めろよ?」

「私はトマホーク頼りなのでご心配なく」

「めっちゃ心配なんだが……」

「……ぶう」



 サッと後ろへ下がり、トマホークの後に付くフロクス。この人冒険者だよな?

 前にジナ、マリーという無敵編成で路地へと入る。



「何もいないな。マリー、適当に剣を振り回してみても良いか?」

「やめろ……街を壊す気か?」



 二人は警戒しながら身長に調査を進めるが、何かいる気配はない。当然、姿を消すようなスキルがある事を念頭に置いているが、その上で、魔力の元を確認できない。


 段々と日が落ちてきている物の、まだまだ明るい。高い建物も無いので、視界は良好だ。

 既に行き止まりだが……どうなってるんだ。隣では、ボタンが唸っている。



「んー」

「どうしたボタン。なんか気づいたのか?」

「そこ」



 ボタンが指差す先には……何もない。

 おいおい、まさかまた幽霊案件じゃないだろうな。



「何もないじゃないか。腹減って幻覚でも見えてるんじゃないか?」

「んー!!」



 ジナの揶揄いに怒って、ボタンがぽこぽこ叩いている。



「……そこに何かあるのか?」

「ん」

「フム……トマホーク」

「ぶいぶい」



 トマホークがボタンの指し示す先を調べる。

 すると、ぶいぶいと鳴きながらこちらへ振り向いた。



「何か見つけたようだな」

「ええ。恐らく、微小な生物なのかもしれません。トマホーク、気を抜かず見張っていてくれ」

「ぶう」



 小さいのか。てっきりまた巨大なのが来ると思ったんだが。

 俺も一応ナイフを準備しておく。


 マリーが剣を構えながら近づき、姿を確認する。



「……見つけたぞ。これが諸悪の根源だとは思えないが――」



 俺は横からひょこっと顔を出してみてみる。

 途轍もなく小さいゴブリン。ゴブリンは小鬼って表現する事あるけど……そんなんじゃなく、マジで豆粒くらいに小さい。そんで、しっかり黒いのな。

 すげえな……こんな魔物もいるのか。



「なんだこのゴブリン……ゴブリンか? 初めて見たぞ」

「見つからない訳ですね……ボタン殿が居なかったら見落としていたでしょう」

「よく気づいたなお前」

「んふー!」



 無表情だが、どやっているのは分かる。

 人間の姿だが、目で見てる訳ではなさそうだからな。相手を補足する器官があるのかもしれない。



「しかし、このゴブリン? が大元だとすると一体どうやってこんなたくさんのゴブリンを呼んだんだ?」

「分かりませんな! そもそも、この小さいゴブリンが原因かも不明ですからね」

「生け捕り……は、流石に危険か。これ以上ゴブリンを増やされても困る。早々に駆除した方が良いだろう」



 マリーは手を小さいゴブリンへ向ける。

 そして、細い針の様な水の塊を作り上げると、ゴブリンへ向けて放った。


 魔法で倒すまでも無さそうだが、念には念を入れて、だろう。

 その水魔法はゴブリンの元へ一直線に向かうと――



「ギホホ」

「――何?」



 変な声をあげて、その豆粒の様なゴブリンは魔法を跳ね返した。

 何をしたか分からなかった……と言うより小さすぎて見えねえ!



「コイツ、魔法が効かないのか?」

「ジナ、剣で潰してみてくれるか?」

「分かった。なんか虫を潰すみたいで気が乗らねえが……」



 ジナは、ゴブリンへと大剣の腹を圧し潰すように落とす。



「ギッホホ」



 またもゴブリンが声をあげると、今度は一瞬で大剣の上へ移動した。



「おい、こいつ……」

「私も見えませんでしたが……凄い速度で剣の上に乗ったのでしょうね。正直、今視認するのが精いっぱいですが」

「侮らない方が良さそうだな……魔法が効かない以上、直接斬り込んで倒すしかあるまい」

「小さすぎて当たんねえぞ!?」

「貴様は適当に振り回しておけ」

「お前さん、さっきやめろって言ったじゃねーか!!」




 意外にも苦戦しそうな気配だ。命の危険は感じないが、コイツが何かする前に倒してしまいたい所だな。

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