折角この後はお買い物する美少女キメようとしてたのに
あれから数分後、俺達は冒険者ギルドの前まで辿り着いた。
本通りは既に衛兵たちによって制圧されており、既に結構倒した感があるんだがまだまだいるのだろうか。
「むふー」
「どうしたボタン」
「めし」
「まだお昼ちょっと過ぎだろう。確かにエネルギーはかなり消費したけど」
買い食い出来る状況でも無いしな。折角この後はお買い物する美少女キメようとしてたのに。
「あーあー、これじゃお買い物出来ねえじゃねえか。ふざけやがってよ」
「何を買うつもりだったんですか?」
「そろそろ暖かくなるから薄手の服だな。まぁ、しっかりした物は既に特注を頼んであるから良いんだけど」
「薄手の服ですか。肌着だけで良いんじゃないですか? 経費も削減出来ますし」
「何言ってんだこいつ……」
夏場はクーヤマーヤに近づかないでおこうと思いました。
「着きましたよハーちゃん。とんだデートになっちゃいましたね」
「彼氏ヅラすなや」
「もう~照れちゃって」
話してると疲れてくるので、無理矢理切り上げて前へ進む。
「ハナ、お前さんはギルドで待機……いや、どうするかな」
「え? 避難させてもらえないんです?」
「だってすぐどこか連れていかれるし……」
「それは俺のせいじゃないだろ」
ケイカの時もリコリスの時もあっちが勝手に誘拐しただけで俺は悪くないんだよなぁ。
そんな話をジナとしながら、ギルドの中へと入る。
この間より更に人多いな。冒険者の他に、避難してる住人もいるのか。
こういうのは衛兵の区分なんだろうが、流石に緊急事態だしそんな事も言ってられんか。
ジナはマリーを探すべくとっとと向こうへ行ってしまった。
「狭苦しいですねぇ」
「あれ、ブローディアさんは?」
「あっちで丸まってますよ」
ブローディアは青い顔をしながらギルドの隅で縮こまっている。
「防衛本能が働いてるんですかね」
「完全に拒絶反応じゃねえか」
「そのうち慣れるでしょうから放っておきましょう」
あっけらかんとして言っているが何気に酷い奴だな。でも、おっぱい潰れてて眼福だから良いか。
俺がブローディアを鑑賞していると、突然誰かに抱き着かれる。
「ハナじゃない。危ないわよディゼノに居ちゃ。今大変なんだから」
「スノーさん、いきなり抱き着かないでください」
スノーもいたのか。ケイカが依頼でディゼノから離れると聞いていたから、てっきり一緒なのかと思ったぞ。
「聞いてるの? 危ないから早く帰んなさい」
「アホか。今出たら危険だろが」
「私が守ってあげるわよ」
「お前が来たらもっと危ないわ」
「どういう意味よ」
もちろんそう言う意味なのだが、考える前に突っ走るスノーに言っても無駄だろう。ストッパーは何処行った。
「スノーさん一人ですか?」
「リアム先輩も一緒だけど、ギルドに着いた途端どっかに連れてかれちゃって」
「リスク管理がなっとらんな」
スノーをフリーにするんじゃないよ。こんな状況だと何するか分からんぞ。
「むう」
ボタンが頬を膨らませながらスノーを引き剥がそうとしてくる。そんな顔せんでも離れるから胸をぐいぐいと押さないでほしい。
「えっと、もしかしてボタン? へぇ、シーラから聞いてたけど凄いわね、人になれるなんて」
「むふ」
「あんまり褒めると増長して餌を強請るぞ」
「んー!!」
「揺らすな揺らすな。そんな揺らしても無い胸は揺れんぞ」
食い気があるのは本当なんだからそんな怒らなくても良いじゃない。
「随分仲が良いですねぇ。妬けちゃうなぁ」
「誰?」
「クーヤマーヤです!」
おっと、そう言えばもう一人何するか分からんのが居たわ。ちょっと胃もたれする面子である。
「そう言えばフロクスさんは何処へ行ったんでしょうねぇ。先に向かうって言ってたのに」
「ギルド長に奥へ連行されてたわよ」
「おやおや、何を企んでいるのやら」
「人聞きの悪い事を言うな。対策を講じるべく話をしていただけだ」
そんな事を言っていると、タイミング良くギルド長のマリーが現れる。
「おや、マリーちゃん。その対策とやらは決まったのですか?」
「対策と言っても既に収まって来ているがな。しかし、討ち漏らしがあってはまずい。徹底的にリナリアとフロクスが探し回る事になるな。後、マリーちゃんはやめろ」
なに? 収まってきてるの? じゃあもう俺帰って良いかな。
「マリー、まだまだゴブリンはいるんだからそんな楽観的な事言っちゃダメだよ」
後ろからリナリアが話しかけてくる。
以前に比べて余裕がある。マリーがいるからだろうか。
「楽観的などではない。私がいない間に好き勝手荒らされた上に、こうして今も喧嘩を売られているしな、相当キてるよ」
「同一犯って確定した訳じゃないんだから冷静にね」
「安心しろ、不届き者は冷静に始末する。私も出るからな」
「ダメだこりゃ……」
まさかのギルド長参戦らしい。まぁ街がパニック状態だから使える物は何でも使うって事か。
そんな中、リナリアと目が合う。
「おや、また君が居るとは。君も苦労人だね」
「勘弁してほしいですね本当に」
「しかも災難みたいな人間に好かれている様だし。教会で祓ってもらった方が良いかもね」
「誰の事ですかねぇ?」
「もちろん君だよ、三眠」
リナリアとクーヤマーヤがバチバチと睨み合っている。こいつら仲悪いのか? 俺を挟んでそう言う事するの居心地悪いからやめて欲しいぜ。