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美少女になりてえよなぁ  作者: 釜蔵
我が道進む百合水仙
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即断即決な出来る美少女

 ルビアと別れ、俺は家でごろごろ~っと寝っ転がりながら呪術の本を漁っている。

 『殺意』だの『停滞』だのどこかおどろおどろしい物が並んでて使うに使えないのが多い。



(良かったのですか?)

(何が?)

(ルビアさんの事です。下手に刺激すると敵対されてしまいますよ?)

(大丈夫だよ。お前の類似品らしいし)

(類似品て)



 どうせまた会う事は決まってるんだ。まさかあのルビアでもいきなり襲ってくるなんて事はしないだろう。

 それよりも呪術だ。この半年間で結構読み終えたけどまだまだいっぱいある。持ってくるの大変だったなぁ。


 でも、前も言った通り触媒が必要になるから大体使えないんだよな。触媒無しだと酷い副効果出るし。

 もう少しこう、お手軽なのが欲しいんだけど。

 そう思ってまた一冊、本を手に取ると、面白そうな事が書かれていた。



「『呪具』だと。これは使えそうじゃねえか?」



 と、つい言葉を漏らす。

 所有者の寿命を減らすとかそういう危ないのはダメだけど、探せば大した代償も無いのが出てくるだろ。

 パラパラ~っと頁をめくると、一つの項目が目に留まる。



「『魔刃まじん』だって」



 相手の魔法を魔力で相殺し、消し去る呪具。クソ強そうじゃねえか。

 でも代償おねだんお高いんでしょう? と、概要を見てみると――



「代償は――『使用者の魔力吸出』」



 思いの外普通だった。いや、もしかしたらとんでもなく魔力を吸い出して干からびさせるとかそう言ったヤバい代物なのかもしれない。



(セピア、これどう思う?)

(ハナ様の言う通り危険かもしれませんが、魔法の対抗策としては魅力的ではありますね)



 まぁヤバそうならポイすればいいか。俺は即断即決な出来る美少女だからな。

 触媒は――何でもいいのかよ。いや、武器の形をしてた方がイメージしやすいと書いてあるな。

 じゃあ、アウレアからかっぱらったこの短剣の出番だな。


 危ないので普段は布で巻いて刺さらない様にしているが、ちゃんと鞘とかあった方が良いんだろうか。

 ま、それは後にして……早速作ってみるか。



(えっとぉ? ……まーたこんなながったらしい呪文言わせるのかよ)

(呪文は呪術のキモですので……)



 ホント戦闘時には致命的だよなこれ。言ってる間にやられちまうわ。

 愚痴りながらも、じっと呪文を見る。錯綜する錯綜する……よし、覚えたぞ。

 よくこういうのって魔法陣とか書くイメージなんだけど、必要無いみたいだ。楽で良いな。


 手を切らない様に気を付けながら、短剣を取り出す。手に持ち、魔力を流すよう念じながら、呪文を唱える。



「錯綜する回廊を絶つ。返し刀をふるえ――魔刃」



 目には見えないが、どろどろねっとりとした魔力が短剣に押し流されれているのを感じる。

 と思ったらすぐに止んだ。なんなんだ。



「ありゃ、失敗か?」

「何が失敗したのかのう」

「いや呪術が――って」



 ふと声がした方を見ると、リコリスが隣に座っていた。

 お前はタッパがあるからいきなり居るとビビるんだよ。



「いつの間に」

「お主が集中しすぎて気が付いてなかっただけじゃな。それで、どうして短剣なぞ出しておる。遊んでいたら危ないぞ」

「遊んでねえよ、実はな――」



 リコリスに呪術を施した事を説明する。

 ……なんですかその不満そうな顔は。



「何故お主はそう一人で危ない事ばかり」

「OKOK分かった!! そもそも、呪術をかけるの自体は危険じゃないから大丈夫だって!」

「……はあ、全く」



 長くなりそうなので無理矢理抑え込み、話を進める。



「それで、成功してるか否か分からぬとな」

「うん」

「直ぐ試せばよかろう。ほれ、行くぞ」

「え? 今からスか?」


 

 即断即決な美少女だが今日は立ちっぱなしだから疲れたんだけど……。

 と言う暇もなく、外に連れ出された。自分だって遠出してきたのに、元気な婆さんだな。


 もうすっかり夜だよ。ハナちゃん良い子だから夜は家で大人しくしてたいのに。

 でも、ほうっと息を出しても白くなくなったな。段々と、暖かくなってきた様だ。



「危なくない様にちゃんと優しく撃てよ」

「分かっておるわ」



 リコリスがスッと手に氷を出すと、そのままポーンと投げてきた。いやそういうのアリなの? 魔法カテゴリに入らなくない? 俺から言った事だけどさ。

 そのまま、氷へ向けて勢いよく短剣を突き出す。



「ワハハ馬鹿め、この程度の攻撃など! 秘技・魔刃返し! なんちって――」



 刃が触れた瞬間、スパン! と、弾けるような音が炸裂する。

 その後、花火の様な苛烈な光が現れ、氷は跡形も無く消滅した。



「……」

「……」



 俺とリコリスは、突然の出来事に沈黙している。

 なんだろうか。おふざけで科学実験やったら有り得ない反応起こしたみたいな。

 何だ今の光。これはやっちゃいました構文出すべきか?



「主よ。体は何ともないか?」

「え? うん、何ともないな」

「そうか」



 持ち直したリコリスがそう言うと、今度はバカでかい氷塊を出して、ズドンと下に置いた。怖いよ~~なんで無表情?



「これを呪具で切って見せよ」

「いや切るっていうかさっきの爆発してましたよねあれ」

「はようせい」



 せっかちなんだから。俺はリコリスに言われるがまま、その氷をナイフで切ってみる。

 さっきよりヤバい爆発来るんじゃないかと恐る恐るやってみたものの、先程と同じ様に、美しい花火と共に氷が弾けて消えた。



「お、ちょっと魔力吸われたかも」

「あれを少しで済ませるか。ならば問題あるまい。というか、なんじゃその呪具は。明らかに異常じゃぞそれ」

「俺が聞きたいよ~~」



 ここでまさかの主人公特有チートアイテム生み出すテンプレ来るとは思わないじゃない。

 しかも何のドラマもない適当に作った奴なのに……もう少し気合入れるべきだったか。


 ここまで強いとなんか副作用が無いか不安にもなる。

 魔力が吸収され続けて魔法が使えなくなるとか。ある意味致命的だもんなぁ。

 まぁ、偶に使うくらいなら大丈夫だろう。



「過信はせず、ここぞって時に使うべきだな。普段から多用すると思わぬ落とし穴とかあったりするんだ」

「それが良かろう。無用なトラブルは避けた方が良い」



 欲しがる奴とか出てきそうだしな。ハッ、量産して金儲け……しようと思うだけでリコリスが睨んでくるからやめておきます。

 それにしても綺麗なエフェクトだな。ゲームみたいだ。煌びやかで華々しい俺に相応しいと思う。



「そういやケイカは?」

「じいやの手伝いをしておるが」

「お前もケイカも働き者だねぇ」



 俺は帰ってきてから速攻部屋に籠るからな。

 現代人は皆そうなんだ……すまん、主語がデカかったよ。



「お主が怠け者なだけじゃ」

「そう言うなよ、俺があちこち動き回っても困るだろ?」

「確かにそうじゃが、自分で言うとちょっと腹立つのう」

「なんでだよ」



 いずれはもっと色んな所行きたいけどなぁ。ごたごたが落ち着いてから、もっとゆっくりと旅行気分で回りたいものだ。

 何にせよ、新しい得物を手に入れてハナちゃんがパワーアップしたぞ。ミスリルの短剣と呪いのナイフで二刀流だ。やったーカッコイイ!!



「きゅう」

「待てボタン。ナイフに嫉妬するのは流石に見苦しにぎゅう」

「ばか」



 ボタンが人型になったかと思ったらいきなり頬を抓られる。理不尽すぎるだろ。

 バカとはなんだバカとは。俺はそんな子に育てた覚えはありませんよ?

 


「バカなんて言葉使っちゃあいけません。人を罵ったら自分に帰ってくるんだぞ」

「まさにお主の事じゃろうに……」

「そんなバカな」



 驚愕の事実を受け、少しばかりのショックを受けながらボタンをあやして止める。

 こんな優れたナイフがあっても、懐刀ふところがたながボタンなのは間違いないのだ。



「そう妬くなボタン。どんな良い武器があろうと、いつだってお前が一番だよ。一生俺の傍を離れるな」

「今時、そんな歯の浮くようなセリフを言う者がいたとはな」

「うるさいよ!! 大体お前がイマドキとか言うな!!」



 まさか何百年生きてる婆さんにそんなダメ出しされるとは思わなんだ。

 だが、ボタンはそれに満足した様子でぎゅうぎゅうとくっついてくる。言った俺が言うのもなんだけどちょろくて心配になってきた。

 そのまま俺達は部屋へ戻る。部屋の奥で、ユーリがぐーすかと寝ている。



「そういえば、ユーリは魔法を使えたのか?」

「おう、セントレアのお陰で何とか物にしてたぞ。後は回数こなしてりゃ上手く扱えるようになるだろ」

「その割には、やけに静かではないか」

「アルス達と遊んでたから疲れて寝ちゃってるよ」



 リコリスに、今日の出来事を伝える。もちろんルビアの一件は隠して。



「なるほどのう。家で暴れられても困るから、良かったと言うべきか、迷惑をかけて申し訳なかったと言うべきか」

「どっちもだな。というか、アイツから訓練を手伝えって言ってきたんだから少しくらい良いだろ」



 次も頼むでし~って言ってたから問題あるまい。次は王都行った後だろうがな。

 しかし、あんなに騒いでたのにまた頼むのか……。次は穴だらけにしない様に言っておかねばな。指示したの俺だけど。


 寝ているユーリを撫でると、ぐるぐると喉を鳴らす。寝てると可愛いんだけどなコイツ。



「それで、本当にユーリを貸し出すのか?」

「まぁ約束だし。ユーリも乗り気だったし良いかなって」

「ストッパーがいないのが不安なんじゃが……」



 ユーリが暴走してもアルスが居れば……ダメか。ロメリアに……一緒に突っ込みそうだな。

 実は危険か? いやいや、傭兵上がりなんだろ? 節度はある筈。

 でもまぁ……念には念を入れるべきかもしれない。狐のお姉さんに頼むしかないな。



「じゃあ、リコリスもついて行けばええやん。よろしくお願いしま――す! オス!!」

「やはりそうなるのか……お主はまた勝手にそんな大事な事を決めて……!!」

「きゃうっ!? 待った待った!! 俺はユーリを為を思ってだな!!」

「ユーリでは無く、お主が不安じゃ!! 目を離すと碌な事をせぬからな!」

「そんなヤンチャなワンちゃんみたいな言い方しないでくれよな」



 別に手伝うっていっても数日だし、俺の近くにはボタンがいるから平気だろ。この辺なら衛兵さんがいるし、ディゼノに居ればギルドも近いし。

 ディゼノで買い物したいしな。王都へ行くまでに、NEWニューハナちゃんへ進化しなければ。

次回更新12/5予定

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