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美少女になりてえよなぁ  作者: 釜蔵
我が道進む百合水仙
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皆から愛される美少女

 俺はユーリを背もたれの様にして座り、ダイナの方を向く。

 何故ダイナがユーリのスキルを知っているのか。それを聞かなければ。



「俺の事がわかってスッキリしただろ? 次は、俺もスッキリさせてくれよ」

「……そうだな。ルビア様には申し訳無いが」

「ルビア?」



 アイツが絡んでやがったか。さっき会った時に何かしやがったな?



「正確には、彼女の部下であるエレムルスさんだな。その人が、【解析アナライズ】のスキルを持っている」

「また分かり易いスキル名だな」

「ああ。そのスキルで、ハナ達の能力を確認していたんだろうな」



 【解析】。大方、相手の能力が見えるとかそんな所だろう。

 異世界定番スキルだな。そんな定番チートスキルとは初めて出会ったが、全く気付かないもんだな。怖い怖い。

 ユーリだけじゃなく、他も全員見られてるのだろう。だが、俺以外は見られても対して問題無い。そして俺自身は――



「俺については何か言ってたか?」

「いや、何故かハナは見えなかったそうだ」

(アンタ、何か小細工してるでしょう?)



 勿論している。こういう時の為の【隠蔽】呪術である。ばっちり機能している様で良かった。

 どうやら、俺の【人形遣い】はバレなかったようだ。



「まぁ、私調停者なんで? そういう対策バッチリなんスよ」

「おいおい、俺への当てつけか?」

「うん」

(可愛げのない子供ね)



 苦笑いで返すダイナ。

 そうは言っても、対策はかなり絞られるんだよな。偶々呪術が使えたから良かったのの、他の人はどうするんだろう。



(他のスキルや、魔装具などで防ぐ手立てもあるそうです。相応の金銭が必要ですが)

(やはり金、金は全てを解決する)



 スキルはともかく、魔装具なら頑張れば手に入るな。まぁ俺には必要無いが。

 セピアと話していると、リオンから念話が届く。



(ちょっと獣。私……ダイナにも【同調】使いなさい)

「【同調】?」

(さっきこの獣のスキル聞いていたでしょう? 【同調】を使えば、私達もこの子の補助神の声も聴けるのよ。ほら、早くしなさい)

(え~? なんで?)

(後輩クンがしっかり仕事してるか聞きたいのよ)



 あんまり念話で会話してると頭の中がごっちゃになるからやめて欲しいんだがな。

 ダイナも同じ気持ちの様で、あんまり無理言うなよとリオンを宥めている。



(セピアは? リオンちゃんと話したい?)

(いやいいです)

(早口)



 感情が籠っていなかったのであまり健全な仲では無い様だ。

 だが、普段の仕返しが出来るチャンスなので悪ノリしてやる事にした。



(ユーリ、同調を使ってやれ)

(ハナ様!?)

(良いの?)

(良い。俺が許す。セピアも俺以外の奴と話して見識を深めなさい)

(そうですか……)



 どうせ断ってもこうなるであろう、と諦めの声色でセピアは返した。

 ユーリがダイナへ同調を使うと、リオンが真っ先に念話を飛ばしてくる。



(セピアー! 久しぶりじゃない!)

(リオンさん。お久しぶりです)

(何よテンション低いわね。元気でやってる?)

(ええ、ハイ。まぁ)

(アンタねぇ、こうして調停者同士出会う事なんて稀なのよ? もっと喜びなさい?)



 あのセピアが超絶面倒臭がっているぞ。例えるなら俺がスノーと会話しているみたいになっている。

 ……なんか最近、事ある毎にスノーを比較に出している気がするな。



「その、セピアさん? なんかごめんな?」

(いえ、大丈夫です。ダイナさん、よろしくお願いします)

「ああ、よろしく」

(はああっ!? なんで私と全然態度違うのよ!?)



 リオンがピーチクパーチク言うのを、華麗に流しているセピア。

 段々と話がずれてきたな。えっと、何の話してたっけ? ……ああ、【解析】の話だ。



「で、話を戻すがそのエレムルス? って誰だ?」

「ハナにお金を渡してくれた騎士がいるだろ? その人だよ」

「ああ、糸目おっぱいか」

(ホント下品よねアンタ)



 報奨金を渡された時に【解析】したのだろう。全然気づかなかったわ。

 優しい顔して俺の事覗き見していたのか。とんだむっつりさんだ。



「エレムルスさんは、ルビア様に命令されていただけだと思うぞ」

「なんでそんなコソコソと。聞けばいいのに」

「聞いて教えてくれる様なもんじゃないと分かってるからじゃないか?」

「でも、いきなり覗き見なんて酷いじゃん?」

「それはまぁ、そうだが」



 ダイナ自身も思う所があったのか、同調するように答えた。

 


(その事で結構揉めてたわよ。ルビアって子、かなり強引よねぇ)

「アイツ何者なんだよ。チビの癖に騎士なんだろ? しかも元帥って軍の頭じゃねえか」

(アンタもチビでしょう。でも、確かに気になるわねぇ。恐らくアンタと同じハーフだけど)



 まぁ、何となく予想付いてたけど。俺とセントレアに雰囲気似てたもんなぁ。

 あのチビめ。なんとか一泡吹かせてやりたいが……どうするかな。

 俺がそう考えていると、ダイナが口を開く。



「そういえば、なんでハーフエルフって事隠していたんだ?」

「人間と精霊のハーフってすげー稀少だから、人攫いに狙われやすいんだと」

「なんでそんな種族にしたんだよ」

「ずっと可愛くてずっと美少女でいられるからに決まってんだろ」

「はあ、そうなのか……いつつ、なんで殴るんだ」



 どうでもいいみたいな気の抜けた返事にイラっとしたので、ぽこぽこと美少女パンチをお見舞いする。

 ダイナは叩かれつつも、何か気づいた様な顔で俺に聞く。



「ん? 今の姿は生前の物じゃないのか?」

「そうだよ。でも中身は流石に以前と一緒だから安心しろよ」

「成程な……という事はもしかして、元はおと」

「女だ」

「いやでも」

「女だ」

「……そうか」



 無粋な詮索は美少女には不要なのだ。

 おっと、また話が逸れてしまった。同郷の人間に会うとついつい話し込んでしまうな。



「ま、大体の話は分かった。教えてくれてありがとな」

「いいや、俺達も胸のつっかえが取れたよ。人に秘密を握られるってのは、気分も良くないしな」

「それについては本当に悪かった。ほら、ユーリも」

「いや、オイラは……ハイ、すみませんでした」



 俺はユーリに寄っかかっていたのをきちんと座り直し、頭を下げた。

 慎重になる必要があったとはいえ、不快にさせたのは間違いないので素直に謝る事にしたのだ。

 それを見て目を丸くしたダイナは、すぐに言葉を返す。



「俺達もいきなり押しかけてすまなかった。これからは、同僚としてよろしく頼む」

「おう、あとガーベラちゃんくれ」

「断る」



 転生者と初めて出会い、少しばかし緊張の糸が解れた気がした。いずれダイナと、ゆっくり前の世界の話をしたいもんだな。

 ……しかし、ケチなヤローだ。3人も女を侍らせてるんだから1人くらい良いだろ。





































 俺とダイナは話を終え、店の方へと顔を出す。

 ケイカとガーベラ、そしてボタンが店内の薬を見ている。ケイカが、ガーベラに薬効の説明でもしていたのだろう。



「ボタン、これは?」

「……おむば」

「凄いです! ドンドン覚えちゃいます」

「うん、ボタンは凄いんだね」

「んふー」



 どうやら、ボタンに薬草の種類を教えていたようだ。

 ガーベラに頭を撫でられて、ボタンはご満悦である。表情は変わってないけど。

 ずるいぞ、俺も撫でられたい。

 俺が羨ましく思っていると、ボタンが俺に気づいたようでまっすぐこちらへと向かってくる。



「はなー」

「あれ、もう終わったんですか?」

「ああ、時間がかかるような話じゃないからな。来るなり追い出してすまなかった」

「ごめんねガーベラちゃん」

「ん、気にしてないよ」



 俺は猫撫で声で擦り寄ると、ガーベラは頭を撫でてくれる。

 フッ、我ながら良い技術を会得した物だ。



「そういや、ボタンの事聞き忘れてたな」

「んー?」

「別に大したことじゃないぞ。今朝起きたらボタンが人に変化出来る様になっていただけだ」

「……昨日の今日でか?」

「おう、本当にいきなりで俺もびっくりしたわ」



 ヴェガの魔核の事は伏せておかねば。うむ、俺は何も見ていない、何も見ていないのだ。

 それに魔核が原因ではない事も無きにしも非ずだからな。未確定情報をさもそうである風に話すのはまずいのだ。うん。



「ボタンが頑張ったんだよ。な、ボタン」

「がんばった」

「ほらダイナ、ボタンを撫でてやってくれよ」

「俺?」



 言われるがまま、ボタンの頭を撫でるダイナ。



「……凄いな、本当に人みたいだ」

「だろ? 髪の質感までそっくりなんだ。スライムだから変質したっていうより魔法で変えたって言った方が正しいかもしれん」

「んふう」



 可愛がられ、更に気分を良くしている。……待て、そのポジションは俺が狙っていた物なのでは??

 皆から愛される美少女……ぐっ、なんと羨ましい……!!

 俺が悶々としていると、後ろから爺さんがやって来る。



「おや、お客さんがおったのか。気が付かなくてすまんのう」

「貴方は?」

「この人はダズさん、ジナさんの父上ですよ」



 爺さんの代わりに、ケイカが紹介する。

 ダイナとガーベラが軽く会釈すると、爺さんも返す様に頭を下げる。



「すみません、今日はハナに話があって来ただけで」

「なるほどのう。その様子だと、その話は終わったのかな?」

「はい」

「なんだあ? 何か買って行かねえのか?」

「コラ、そんな押し売りみたいに言っちゃダメですよ」



 俺がワザとらしく煽ると、ダイナは折角だからと、商品が置いてある棚を見ている。

 律儀な奴だ。流石元日本人……いや、日本人なのか? 顔立ちはそれっぽいけど。そういや聞き忘れていたな。



「トウビの粉薬を……1回の摂取量はどれくらいです?」

「トウビなら、一つまみ程で効果は出るじゃろう」

「じゃあ、それを10回分程。ああ、袋もお願いします」

「ほほ、毎度あり」



 ダズは棚の横に下げてあった袋を手に取り、慣れた手つきでトウビの粉薬を袋へ詰める。



「トウビってなんです?」

「腹痛を抑える薬草じゃな。冒険者やっていくなら必須品じゃろう」

「なるほど」



 確かにな。この世界正〇丸無いし。突然の腹痛でも魔物や盗賊は待っちゃくれないしな。

 ダイナが金を払い袋を受け取る。その横でガーベラが鼻をすんすんと鳴らしている。かわいい。



「それにしても、このお店いい香りがする。薬屋なのに、薬草の匂いが薄い」

「あ、わかる? オイラのお陰なんだぜ?」

「ユーリの?」



 ガーベラの言葉に、後ろで控えていたユーリが答える。

 ユーリは蔦を伸ばすと、その先から幾つもの花を咲かせた。



「この花の香りだよ。オイラしか咲かせられないんだぜ?」

「ノイモントのライズさん達にも大絶賛されていましたね」

「うん。確かにとてもいい香り。犬人は薬草の刺激臭は苦手だけど、ここは全然辛くないよ」

「ほほ、あの匂いは慣れるまで普通の人間でも辛いからのう」



 予想通りと言うべきか、犬人は鼻が利く様だ。

 これはチャンスである。ガーベラちゃんの好感度を上げるために、俺は店の奥へ引っ込むと、自作の香水を急いで持ってくる。



「どうしたんだハナ。そんなどたばたして」

「ふふん、ガーベラちゃんにこれをあげようと思ってね」

「私に?」



 ちょこちょことユーリの花を捥いで作った香水……いや、見よう見まねで作ったから香水というには疎かなものだが、少なくとも香る水ではあるだろう。

 その香水をポーションの容器に詰め、何個か保管してあったのだ。その一つを、ガーベラへと渡す。



「ユーリの花から作った自作の香水です。是非使って下さい」

「良いの? お金は――」

「いえ! お近づきの印です! 売り物じゃ無いのでお金は大丈夫ですよ」



 ガーベラは少し戸惑いながらも、俺を気持ちを汲んでくれたのか頷いて受け取ってくれた。



「ん、ありがとう。犬人が使える香水は貴重なんだ。大切に使うね」

「にしし、喜んでくれて良かった」

「何かお礼が出来れば良いんだけど」

「じゃあ、ギュって抱きしてめてくれたらなんて――」



 冗談めかした事を言い終える前に、ガーベラがむぎゅっと俺を寄せる様に抱きしめる。

 うお……これは、ヤバい。いつもながらの語彙力だが、ヤバいのだ。丁度顔が胸に当たってもう凄い。凄いのだ。



「……ハナ?」

「……」

「もうっ、いい加減離れて下サイ!」

「んー!!」

「あうっ!」



 暫く抱き着いていたのだが、ケイカとボタンに無理矢理引っぺがされる。



「あーん、もっと」

「コラコラ、ガーベラも悪ふざけはやめなさい」

「ふふ、面白い」



 どうやら揶揄われていたようだ。全く悪い女の子だ。好きになっちゃうぞ。

 ダイナが凄い訝し気な目で見てくる。あいつ、既に俺が元男だと確信してやがるな。

 そんなダイナがふと外を見ると、日が暮れ始めている事を知る。



「おっと、そろそろ帰らないとシーラにどやされるな」

「ディゼノまで戻るんですか?」

「ああ、宿を取ってるからな。もう暫くはここで活動して、また王都に戻る予定なんだ」

「リールイ森林にも行かないと」



 ガーベラはやる気に満ちた表情でそう言った。

 オクナもそうだったが、この子も変わってるな。まぁ、冒険者なんて全員どこか変わっているが。



「ほほ、何かあればまた来ると良い。まぁ、薬屋の世話にはならない様にするのが一番じゃがのう」

「確かにな」

「リールイ森林に向かう時、また立ち寄ります」

「うむ、待っておるぞい」



 受け取った袋を懐へ仕舞うと、ダイナとガーベラは店を後にする。

 いきなりの訪問だったが、実のある話が出来て良かった。今後もアイツとは関わる事になるだろう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ボタンかわいいなあ、ボタン。 美少女というよりは、まだ小動物枠に近いですけど。 [一言] ハナちゃん? ああ、そんな可愛い子もいましたね。 ただし、この世じゃ二番目だ……
[一言] 美少女なのにまるで嘘つきで変態のように思われている…… なんでだろう?
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