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美少女になりてえよなぁ  作者: 釜蔵
我が道進む百合水仙
100/181

今日は絶対に戦わないという強い意志を持っている美少女である

今回で100頁目です。文字数45万を超えると言った所まで来る事が出来ました。ありがとうございます。

引き続きマイペースな更新ですが、よろしくお願いします。

 飯を食べ終わり、ルビアのいる衛兵の駐屯所へ向かう。

 ちなみに、今回はかなりの軽装だ。髪も三つ編みに結って貰った。つまり、今日は絶対に戦わないという強い意志を持っている美少女である。



「よし、んじゃ行くぞ。ユーリ、魔断の剣は重くないか?」

「問題無しだ。これくらいなら後10本は持てるぜ!」



 それはそれとして、お試しでユーリに『魔断の剣』を持たせている。

 リコリス曰く、かなりの業物らしいからな。以前は持ち出すのを渋られたが、今後また襲われかねないし、出来る限り所持していた方が良いと許可を貰った。さっき自分の言った事を秒で矛盾させているが、仕方ない。俺も出し惜しみして死にたくはないからな。

 俺とリコリス、ユーリ、ボタン。美少女と従魔ズで向かおうとしたら、ケイカもちゃっかり後ろにいる。



「あれ? ケイカも来るのか?」

「はい。私も一応、討伐に参加していましたので」

「そう言えばそうだったな」

「忘れないで下サイ」



 黒いレクスを倒して回ってたんだったか。

 俺達だけでも結構な量だったのに、一体どれだけいたんだよ。

 という訳で、この3人と2匹で向かう事となった。



「少しいか?」

「ん?」



 家を出た所で、リコリスに呼び止められる。

 ……おお、良いな。三つ編み美少女がくるって回って振り向くの。最高に美少女やってる気がする。



「……お主にこれを渡そうと思ってな」



 リコリスが俺の手を取ると、掌に小さい指輪を置く。

 うお、これアレじゃん。ナッツの店で見た、たっけぇ装飾品じゃねえか。



「……いきなりなんだ? プロポーズか?」

「たわけ。この間、褒美をやると言っただろうに」

「ああ、そう言えば」



 黒いレクスが現れ、俺がディゼノに向かう前にそんな事言ってたな。

 しかし何故このタイミング。



「本当はもっと地力を上げてからの方が良いのだがな。お主、何の因果か必ず騒動に巻き込まれるからの。用心に越したことは無い」



 とか何とか言ってぇ、本当は渡すのが照れ臭いから適当に理由付けてるんでしょ? という顔で見てたら頬を横に引っ張られる。



「それは魔力を循環を促し、スムーズに魔法の行使を補助する装飾品じゃ。いついかなる時も肌身に付けておれ。わかったか?」

「ふぁいふぁい、わはっあはらひっはうな」



 リコリスの魔の手から解放された俺は、指輪を……ちょっとデカいな。俺の指だと親指が丁度良いか。

 という事で、右手の親指にはめる。良いね、美少女力が増したぞ。



「にしし、ありがとなリコリス。大切にする」

「……」

「どうした?」

「いや、余りに素直な感謝を向けられて驚いていただけじゃ」

「なんでや」



 いつもどんな目で俺を見てやがるんだ。酷いオババだな。



「ケイカ。お主もじゃ」

「えっ!? 私にもあるんですか?」

「当然じゃろう。ほれ」



 指輪を渡すと、ケイカは目をキラキラと輝かせてリコリスを見ている。



「うわぁ、これ凄い高かった奴ですよ!」

「命には代えられまい。お主はもう少し魔法の連発を抑えるべきじゃな」

「リコリス様……!」

「むおっ!? これ、歩き辛いからもう少し離れい」



 ぎゅっとリコリスに抱き着くケイカ。俺もやりゃ良かったなあれ。まだまだ美少女に対して勉強不足だわ。



(ハナ様のは理由が疚しいのです。本気で美少女になりたいと思うなら、そう言った思考は徐々に改めていかなければ駄目ですよ?)

(……すみませんでした)



 セピアにぐうの音も出ないほどの正論で殴られる。



「いいなぁ、オイラにもオイラにも」

「お主はこの間買って貰ったばかりじゃろう」

「まぁ、そのうちまたなんか買ってやるよ」

「よっしゃ!」



 ユーリは蔦をくねらせて喜んでいる。

 と言っても、まずは自分優先だけどな。そろそろツバキおばさんの所行って、新作コーデを頼まなければ。考案は幾つかあるのだ。

 ボタンの服もだな。コイツにはコイツの良さって物がある。俺のおさがりだけじゃ可哀想だからな。

 俺は妄想を膨らませながら、駐屯所へと向かって行くのだった。























 小さい村には似つかわしくない立派な建屋が目の前にある。

 村の中央付近に建っており、家からここまで迷いようが無い、この大きな建物が衛兵たちの駐屯所だ。



「何気に初めて来たな」

「私は半年前、何度かお世話になりましたよ」

「そういうと悪い事して出所したみたいに聞こえるな」

「もう、またそういう事言って」



 冗談を言いながら、入口へと向かうと一人の若い男の騎士が立っていた。

 あれ? ルマリにこんな人いたっけか。見覚えが無いな。ずっとここで働いてて外に出てないとか? 


 その騎士が、俺達を視線に捉えるとこちらへと向かってくる。



「貴方がハナという魔物使いでよろしいか?」

「はい、私がハナですが……えっと、貴方は?」

「失礼した。私はマスデバ。ストレチア魔導騎士隊の隊員だ。王都よりルビア元帥を迎えにルマリまで来たのだが、どうしても貴方と話したいそうでな。お連れする為にここで待機していたのだ」



 おお、なんか騎士っぽい騎士に初めて会った気がするぞ。ちょっぴりの親切とちょっぴりの尊大さを足して2で割ったような感じ。



「そうだったのですか。ご親切にありがとうございます。お待たせして申し訳ございません」

「……」

「どうしました?」

「む? いや、聞いていたよりも大人しく、礼儀正しかったのでな。何、気にする事は無い。元帥がお待ちだ、付いて来てくれ」



 ルビアの奴、なんて言いやがったんだ? この俺を悪し様に扱うとは。後で覚えてやがれ。

 俺達はマスデバの後に続き、中へと入る。


 暫く歩くと、少し広めの部屋に連れてこられた。ルビアが奥で偉そうに座っている。他にも、何人かの衛兵がいるな。セントレアもいるな。あいつ、傷は大丈夫なのか?

 後、何故かリナリアにジナ。ダイナのパーティ……『六曜』がいた。ホームパーティでも始めるのか?



「マスデバ、ご苦労さん。下がって良いぞ。……よく来たな。まぁ、その辺にかけてくれ」



 お言葉に甘えて、俺達は用意されていた椅子に座る。

 何やら厳かな空気だ。いつもなら気を紛らわせる為に爆笑一発ギャグをかますところだが、凄い空気になりそうなので控える事にした。セピアを共感性羞恥で殺害する訳にはいかないからな。

 久々の美少女モード全開で、ルビアへと話しかける。



「ルビア様、これは一体どういう事ですか? 皆さん集まってるなんて聞いてないですけど」

「ああ悪い。褒美を与えるだけのつもりだったんだがな。こいつらと色々話を擦り合わせなきゃならんのだ。少し協力してもらうぞ」



 ルビアは首でリナリアを指すと、リナリアはそれに頷いた。

 リナリアは最初から最後まで俺と一緒に動いていただろうに。何を擦り合わせるってんだ?

 俺は疑問を感じつつも、ルビアの話へと耳を傾ける。



「まず、例の黒い魔物の件だ。私は見てないが、黒いアルラウネがいたそうだな。それも二体」

「そうですね。私は一体しか見て無いですけど」

「我が交戦しておるな。アルラウネにしては、些か巨大であったが」



 些かどころか、かなりデカかったぞ。そこにいる黒龍よりデカかったし。



「で、ハナ。私が聞きたいのは――アルラウネと何を話したか、だ。お前、理解出来たんだろ? アルラウネの言語を」

「……」



 こいつ、俺が言い辛い事をズカズカ聞きやがって。リナリアがごめんと表情で謝って来るが、リナリアが悪い訳じゃない、俺が油断していただけだからな。

 リナリアだけじゃなく、六曜の連中にもバレてるからいずれ言わないといけなかったが……仕方ねえな。



「そうですね。私、ハーフエルフですし」

「っ!」

「あっさり言ったな。ゴネるかと思ったが、素直で助かるぜ。安心しろ、ここにいる奴ら以外には絶対公言しない。な、ジナ」

「あ、ああ。そうだな」



 ジナがなんとも言えない表情をしている。すまんな、隠してて。普段から冗談ばっか言ってたが、こればっかりは理解して欲しい。

 ケイカも顔には出してないが、驚いているのはわかった。



「すまんな、ハナ。お前が素性を隠す理由は分かるが、この件ばかりはそうも言ってられなくてな」

「大丈夫ですよ。で、アルラウネが何を言ってたか、ですよね?」

「おう、話が早くて助かるよ。分かる範囲で頼む」



 俺は、黒いアルラウネ……ヴェガが何を言っていたか状況を交えて、ルビアに説明する。

 


「アルラウネの名前はヴェガ。魔人『ピースコール』の従魔で、黒い丸薬『アポロス』を服用して黒い魔物となった。んで、理由は知らんがルマリとディゼノをレクスを使って襲撃した、と」

「あの数のレクスを寄生したなど、考えにくいですが……」

「どうでしかね、確かにレクスらしくない動きだったでしが。少なくとも、ハナは嘘なんて付かないでし」



 レビアの横にいる男の騎士の言葉に、セントレアが答える。



「俺らもレクスをぶっ倒して回ったがよ、確かに動きがらしく無かったな」

「どんな感じだった?」

「そうさな、連携がいつもより雑だった気がする。そんときゃ数が多くてそこまで気にしてなかったけどよ。ケイカはどうだ?」

「私もジナさんと同じです。この前ノイモントへ行く時に現れたレクスより魔法当てやすかったですし」



 どうやら、普段よりも単調な動きだったようだ。討伐に慣れている冒険者の意見なら間違いないだろう。



「ふむ、アウラウネの能力は間違いなさそうか。後は、襲撃した理由だが――」



 ルビアはセントレアの方を向く。



「セントレア。お前、魔族とやり合った時に何か気づいたか?」

「レクスの母体が云々と言ってたでしが、細かい所までは聞こえなかったでし。あんたこそ魔族とやり合ったのに何も感じなかったでしか?」

「会話すると疲れる相手でな。なんか言ってた気がしたけど何も聞いてなかった」

「何やってるでしか」



 すまん、とルビアは軽く謝りリコリスの方へと話を振る。



「リコリス、お前はピースコールと名乗る魔人とやり合ったそうだが、何か聞かなかったか?」

「ふむ、そうじゃな。『自分の実力を測る為』に襲撃したと言っておったが、あまり当てにはなるまい」

「他には何か聞いているか?」

「いや、後は何も」

「そうか」



 ぐむぐむと唸って、ルビアは手を顎に付け考えている。

 結局何しに来たが分からんのが不気味だな。



「結構。不躾に色々聞いてすまんかったな」

「これで何かわかりました?」

「今はまだなんとも言えんが、少しでも情報を集めて、事実を固めておきたい所だからな。助かった、感謝する」



 ルビアはそう言って、頭を下げてくる。他の騎士達も、一様に礼をしてきた。礼儀正しい……最初に出会った時からこうなら良かったのに。



「んじゃ、堅苦しい話は終わりにして、褒美の件だ、ハナ一行と六曜の諸君」



 どうやら、六曜はこの為に呼ばれたらしい。あいつらも頑張っていたしな。

 さて、何をくれるのか楽しみだ。この美少女に相応しいご褒美を寄越してほしいもんだな。


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