俺を可愛い美少女にしてくれ
よろしくお願いしますm(_ _)m
目を覚ますとそこは限りなく白い世界。
今までいつの間にか寝ていた事なんて家で本を読んでいるか、ゲームしている時くらいしか無かったはずだが。
少なくとも、出先で寝落ちすることなんて無かった。ここは何処だろうか。
「ごきげんよう」
透き通った綺麗な声だ。第一に、そんな印象を受けた。
俺はキョロキョロと辺りを見回す。すると、後ろには青い髪をした綺麗な女性が立っている。
青髪か。派手な髪色は関西圏にいるキツいババアのイメージだが、なるほど。美人だとなんでも似合うという事か。
見惚れている俺に、その女性は更に声をかけてきた。
「ごきげんよう。私の声が聞こえますか?」
そうか、声をかけられていたな。それを忘れるくらいには衝撃的だった。
俺は彼女に問いに答える。
「ああ、聞こえているよ。こんにちは、綺麗なお姉さん」
(自分としては)無難な返しをすると、女性は笑みを浮かべて返答する。
「良かった。何とか間に合ったみたいですね。私の名前はカラーです。よろしくお願いしますね、雪中さん」
俺の名前を知っている? 何故だ。それにカラーって……。日本語を流暢に話しているが日本人ではないのか?
そんな疑問が頭に浮かぶ中、女性は続けて話す。
「突然で驚いているでしょうが、雪中 花さん。とても言い辛いのですが……」
言い辛い? いきなり話しかけておいて何を言ってるんだ。
とてつもなく嫌な予感がする。何を言い出すんだろうか。
「貴方は家でお休みになられている所、不幸にも火事に巻き込まれて……そのまま亡くなってしまいました」
ほう……こいつはまた……。冗談にしては随分真顔でいいやがるな。
しかも火事ってお前、俺はそう言うのが怖くてガスコンロすら使ってないんだぞ。
「あのな、いきなりアホな事抜かすな。俺は一人暮らしだし火の元だってきっちり管理して電気製品のコンセントすら抜いてんだぞ。そもそも死んでたらこんな風に話なんて……」
「隣の住人がどうやら部屋で花火をしていたらしく、それが原因で発火し、火事に繋がったようです」
部屋で花火? なにそれ頭おかしい。いや、まともな教育を受けてないバカはやるか。テレビとかで見たし、いたもんな実際。
それで巻き添えで死んだ? 嘘だろお前……。途中で起きるんじゃね普通は。
「いえ、正確には焼死ではなく一酸化炭素中毒が死因です。寝ている間に中毒になり、そのまま死亡してしまったようですね」
ああーなんとなく聞いたことあるな。体が動かなくなってそのまま意識が無くなって死ぬと言う自殺の方法で人気なやつか。
ほう、隣人と無理心中ですか。オイオイオイ、死んだわ俺。いやまて流石に嘘だろう。俺は今、意識あるし。
俺はそう思い冷静になって女性に答える。
「仮にそうだとして、アンタは何なんだ? まさかここは天国で女神様って奴か?」
「いいえ、ここは天国ではありませんし、天国自体存在しませんが……私が女神なのは正しいですね」
「ええ……」
自称女神か。本当かどうか知らんが見た目の可愛さが女神級なのはわかる。
後、天国って無いんだ……。色んな人が発狂しそうだ。
「信じていないようですね……時間がないので一方的ですが、これからの説明をさせて頂きますね」
「時間無いんだ」
「ええ、もうすぐ異界への扉が閉まってしまいますので」
天国への扉ならぬ異界への扉か。こりゃいよいよもって夢みたいになってきたぞ。
その手の話は嫌いじゃない、むしろ大好きだ。俺は面白半分で聞く事にした。
「まず貴方には、その意志を持って異界へと転生して頂きます。そこで貴方には調停者として世界の秩序を乱す者を抹消して欲しいのです」
中々殺伐としている世界のようだ。調停だの秩序だの難しい言葉を並べる辺りは女神っぽい。
俺はそこまで頭が良くないんだ。もっと噛み砕いて話してくれないと困るんだが。
足りない脳みそで考えると――
「もしかして、勇者になって魔王を倒せとかそんな感じか?」
「いいえ。勇者も魔王もいますが、貴方にその役割をして頂かなくても大丈夫です。要は、何方かが滅ぶような、または世界が壊れるような状況にならなければ良いのです」
「難しい話だなぁ。具体的にどうすればいいんだ」
「例えば勇者が倒され、魔族が世界を支配される時はあなた方に均衡を保って頂く必要があったり、逆に人間が魔族を弾圧して魔族がいなくなりそうな状況にあればそれを阻止して……」
ハハァ、つまりは神様の傀儡になって世界を守れと。
生きにくそうな世界だなー。もっとメルヘンな世界だと思っていたが、夢の中でも夢見させてもらえないってか。
「勿論、何もない時は自由に人生を謳歌して頂いて結構です。そうそうそんな殺伐とした状況にはなりませんよ。きっと」
「きっとかよ。神様適当だな!!」
「貴方の世界と違ってあちらの世界は比較的自由ですよ。此方より少しだけ命の重みが軽視されてますが」
だから最後に怖いこと言うなって! 比較的自由ってなんだよ例外はありますみたいな言い方しやがって。
俺が心の中で思っていることに返答するかの如く、女神様は話を進めていく。
「確かに最初は恐ろしく感じるかもしれません。ですが、転生者には最初に特典があります。いきなり転生しても、力がなければ役割を果たせませんからね」
……ほう。特典ね。
「貴方の行く世界にはスキルと言うものが存在します。そして、特典は主に転生者のスキルとなります。今の私の力では万能なスキルと言うのは渡せませんが……他にも要望があれば出来得る限りで応えましょう」
「要望?」
今この女神さん、出来得る限りで叶えるって言ったよな?
俺には、一つだけ夢があった。絶対に不可能だが、叶うのであればなんだってする覚悟がある。これが例え夢だとしても、それが叶えられる機会が出来たのであれば、躊躇する理由はない。
「女神さん。一つだけどうしてもお願いしたいことがあるんだが」
「なんでしょうか? よく言われるのがチートとか俺tueeeeeとか出来るスキルをくれと言われるのですが」
「いや、そうじゃなくて俺のお願いは……」
万能なスキルなどいらん、ましてやチートもいらん(貰えるなら欲しいけど)。
いや、ある意味チートかもしれんが。だが、もし叶うのであれば……
「俺を!!!!!!!!! 可愛い美少女にしてくれ!!!!!!!!」
「……はい?」