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異能力者達の日常  作者: jamネコ
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第5話~真相と真実~

第5話が完成しました。今回はこの部分は書いとかないと今後のストーリーがおかしくなるし、このシーンは必ずいれなければというのが多数あり、構成の迷宮にダイブしやっと出口に浮上しました。稚依子(ちよこ)の闇幻術をモロにくらったような感じでした。三戦士の真相とは。それでは第5話をお楽しみください。

        ~任務完了そして~


 52番倉庫で秋人あきと伝雷でんらいは唯を待つ間、話しをしていた。

「伝雷、連れて行くのはお前だけなんだが舎弟しゃてい達はどうするんだ」

「あーあいつらにはきちんと言ってあるから大丈夫だ。おいお前ら」

伝雷は舎弟達を呼んだ。舎弟達は足早あしばやに伝雷の元に集まった。

「前に言った打ち合わせ通りに頼むぞ」

舎弟達は次々に返事をした。

「任せてください。アニキ」

「すでに準備はバッチリですぜ。アニキ」

「アニキは何も心配しないでください。上手うまくやりますから」

「おう、任せたぞ」

秋人は伝雷に聞いた。

「それで具体的ぐたいてきにはどうするんだ?」

「簡単な事さ。俺を死んだ事にするか、コイツらを裏切った事にすればいいのさ」

「そんな単純な事で大丈夫なのか?」

「ああ、三竜さんりゅうたちはそこまで調べないからな。奴らにとっては俺もコマの1つにぎないからな。くわしくは秋人達のリーダーに話すよ」

唯と瀬戸が52番倉庫の扉を開け入って来た。

「秋人さ~ん~」

「お~、唯ちゃんに瀬戸さん待ってたよ。悪いけど、こっちに来てくれないか?結構疲れててな」

唯と瀬戸は秋人と伝雷の元にけていった。唯は秋人と伝雷の元にくと秋人に聞いた。

「秋人~さ~ん~この人が~伝雷~さ~ん?」

「そうだよ。唯ちゃん」

「2人~と~も~傷だらけだ~ね~」

「まあな」

「唯が~治して~あげるから~そのまま~すわって~て~」

そう言うと唯は2人の前に両手出した。

「い~た~い~の~とんでけ~」

秋人と伝雷の2人は心地ここちよい風に包まれた。数秒後、風がおさまると2人の傷はなおり痛みも消えていた。

「唯ちゃんありがとう」

「エヘヘ~でもね~疲労~までは~消せない~か~ら~ね~」

「ああ、わかったよ」

伝雷は秋人に聞いた。

「この子は唯ちゃんっていうのか?」

「ああ、そうだ」

伝雷は唯にお礼を言った。

「唯ちゃんありがとう。おかげで痛みが消えたよ」

「どう~い~た~し~ま~し~て~」

瀬戸は伝雷に話しかけた。

「伝雷、あなたにはあと特殊電子錠とくしゅでんしじょうをかけます。今は手伝ってもらいたい事があるので、お願いします」

「ああ、わかったよ。傷も治して貰ったし、とりあえずみんなで外に出るか」

「そうだな」

秋人と伝雷、それに唯と瀬戸は52番倉庫の扉に歩いていった。

 51番倉庫では未来みらい炎基えんきが地べたに座り話しをしていた。

「未来、三竜さんりゅうとは、炎竜えんりゅう雷竜らいりゅう氷竜ひょうりゅうの3人の事を言う。未来に倒してもらいたいのは炎竜だ」

「その炎竜ってのは炎基より強いのか?」

「ある意味、俺より強いな」

未来は疑問に思い炎基に聞いた。

「ある意味?」

「ああそうだ、やつらは力や能力は俺となんら変わりない。しかし実力で言えば上だ」

炎基の話しを聞き、未来の頭の中には、さらにハテナマークが増えていった。

「どう言う事??」

「そうだな、例えばゲームにはルールがあるだろ。ルールをやぶると反則負はんそくまけになるよな、奴らはそのルールの反則スレスレの事やルール内であっても、誰もやらない卑怯ひきょうな事を平気でしてくるんだ」

「ズルがしこいって事か」

「簡単に言えばそんな所だな」

「でも、炎基と同じくらいの強さなんだろ?倒せないのか?」

「ああ、それは無理なんだ。俺達では倒せない」

「俺達?」

「ああ、言ってなかったな。俺達、三戦士は三兄弟だ。長男は俺、次男の伝雷でんらい、三女の氷姫こおりひめだ」

「へぇ~そうなのか。それで何故倒せないんだ炎基?」

「俺達、三戦士はな、三竜達に心縛しんばくの術ってのをほどこされていてな。俺達三戦士が攻撃の意志を持って、三竜に攻撃してしまうと心臓が破裂はれつしてしまうんだ。だから俺達は手も足も出せないんだ」

「そうだったのか……ところで炎基、タバコ吸っていいか?」

「ああ、いいぞ。だったら俺にも1本くれないか未来」

未来はポケットからタバコケースを取り出した。それを見た炎基は未来に聞いた。

「変わったタバコケースだな?」

「あぁ、これか……俺の能力は炎だから、能力を発動させてもタバコが燃えないように、超耐火性ちょうたいかせいのタバコケースなんだ」

そのタバコケースはタバコの箱と同じ形をしていて、ふたがなく、側面に丸いくぼみがあり、窪みを指で押し込むと上部じょうぶいている穴からタバコが1本だけ出てくる仕組しくみだった。未来は炎基にタバコを1本、わたすと指をパチンとならした。

「あれ?火が出ない……」

未来は何度も指をならしたが火が出てこなかった。その様子を見ていた炎基は笑いだした。

「ガハハハハっ、それくらい力を使い果たしたってことだな未来」

炎基は指をパチンとならすと親指に火がともった。

「ほら、未来」

炎基は火が灯っている親指を未来に差し出した。

「サンキュー炎基」

未来はタバコをくわえると火が灯っている炎基の親指にタバコの先端を近づけ火をつけた。炎基も自分のタバコに火をつけると、また話し出した。

くわしい話しは、未来達のリーダーもまじえてあらためて話たいのだがどうだろうか未来?」

「だったら、今から仲間と通信して聞いてみるから待っててくれ」

未来はその場でJam所長に呼びかけた。

「Jam所長、聞こえますか?」

「椿です。未来お兄ちゃん」

応答おうとうしたのは椿だった。

「椿ちゃんか、Jam所長は?」

「Jam所長は今、いそがしくて。それでね未来お兄ちゃん、炎基さんの話した事なんだけど、少し前に同じような事を伝雷さんが秋人さんに話してたんだ。だからこっちではもう了解済りょうかいずみだよ」

「そうだったのか……だからJam所長は忙しいんだね椿ちゃん」

「うん、結構バタバタしてるし他のみんなも手伝ってるよ。それでね、そっちに唯ちゃんが着いてるから、とりあえず炎基さんと倉庫の外に出て他の人に聞いてくれないかな?」

「わかったよ椿ちゃん」

「あっそうだ、未来お兄ちゃん」

「なんだい椿ちゃん?」

椿はモニターの前でモジモジしながら頬を少しあからめて話し出した。

「その……カッコ……良かったよ………未来お兄ちゃん…………あっ、私も呼ばれたから手伝いにいくね。じゃあ外に出て聞いてね未来お兄ちゃん」

炎基は未来の顔を見ておどろき、ビクッと体をふるわせた。そこには、これでもかというくらいに表情がゆるみまくり思いっきりニヤケている未来の顔があった。

「未来……?」

炎基は未来の顔の前に手をだして2、3回ほどってみたが未来に反応はなかった。

「しょうがない」

炎基は右手にデコピンの形を作り、未来のひたいに思いっきりデコピンをくらわせた。

バチイィィン

「いってえええ……何するんだ炎基」

「やっと戻ってきたか。それでどうするんだ未来?」

「とりあえず此処ここから出て外にいる俺の仲間に話しを聞く」

「そうかわかった」

炎基は立ち上がると未来に声をかけた。

「立てるか未来?」

未来は立ち上がり足を前に1歩出そうとした瞬間、体に痛みが走った。

「痛つっ!」

未来はバランスを失い倒れそうになったが、すかさず炎基が未来の体をささえた。

「大丈夫か未来、俺につかまれ」

「悪いな炎基」

未来は炎基の体に掴まった。

「ああ、そうだった」

「どうしたんだ炎基?」

炎基はポケットから小さな黒い箱を取り出した。

「お前の所に行く間に拾っておいたんだ」

炎基は箱の上部をスライドさせ解除のスイッチを押した。

「これで外に出られる。しっかりつかまってろよ未来」

炎基は未来を支えながら倉庫の外に出るとなちょの声が聞こえた。

「あっ、お兄ちゃんが出てきた」

炎基と未来の所に秋人、なちょ、唯がってきた。

「うわー、お兄ちゃんボロボロだね」

「唯の~で~ば~ん~そこに~立って~て~」

唯は炎基と未来の前に両手を出した。

「い~た~い~の~とんでけ~」

炎基と未来は心地ここちよい風に包まれた。すると傷と痛みが消えていった。未来が唯にお礼を言った。

「ありがとう唯ちゃん」

「どう~い~た~し~ま~して」

「もう大丈夫だ炎基。痛みが消えたから普通に歩けるよ」

「そうか」

炎基は未来の体を支えてる手をはなすと秋人が炎基に話しかけた。

「あんたが炎基か結構デカイなオレは秋人だ。未来が世話せわになったな」

「すまない秋人」

「別にあやまることじゃないさ」

なちょが申し訳なさそうに炎基に話しかけた。

「あの~炎基……なちょね……氷姫こおりひめを……こおらせちゃったんだ……」

「そうか……でも気にする事はない。俺達はそのぐらいの覚悟でいたからな」

「でもね……」

秋人がなちょの言葉をさえぎった。

「なちょ、その続きは横田さんに説明してもらおう」

秋人は後ろを振り向き横田を呼んだ。

「横田さーん、ちょっと来てくれますかー」

秋人に呼ばれると横田は秋人のもとに駆け寄って行った。

「どうしたんだい秋人?」

「横田さん、炎基に氷姫の事を説明してください」

「わかった。炎基、初めまして私は横田といいます。現状を説明すると、なちょに氷をいてもらい秋人と伝雷に私が乗ってきた車の中にある、冷凍保存装置れいとうほぞんそうちの中に氷姫を入れてもらいました。なので氷姫は現状、仮死状態かしじょうたいですので研究所に戻ったら氷姫を起こします。ですので安心してください。氷姫は生きています」

「そうですか横田さん、ありがとうございます」

「いえ、それでですね炎基と伝雷には私の車に乗ってもらいたいのです。見た目は私達と同じですが人間とフォビアの民の体の違いついて教えて欲しいのです。氷姫を起こした後に後遺症こういしょうがおこらないようにしたいので」

「分かりました横田さん」

「それと念のため何ですが、この特殊電子錠とくしゅでんしじょうを着けてもらいます。所長のところに行くまでですので。じゃあみんな研究所に帰ろうか。秋人達は瀬戸さんの車に乗ってくれ」

唯が横田のそでを引っ張った。

「どうしたんだい唯ちゃん?」

「横田さ~ん~唯は~飛んで~か~え~る~ね~」

「わかったよ唯ちゃん」

唯はふわふわと体を浮かせると飛んでいった。炎基と伝雷は横田の車に乗り、秋人達は瀬戸のワゴン車に乗った。助手席にはなちょが、その後ろには秋人と未来が座った。未来が秋人に話しかけた。

「秋人さん初任務完了ですね」

「そうだな、とりあえずみんな無事ぶじで良かったよ」

「そうですね」

瀬戸は車を走らせた。数分後、秋人の右肩に何かが乗っかってきた。秋人は右を向くとそこには、秋人にりかかり未来が眠っていた。秋人は未来を見ると微笑ほほえんだ。

「フッ、お疲れ様未来」

秋人の声に気がつき、なちょは後ろを振り向いた。

「お兄ちゃん寝ちゃったんだ」

「ああ、相当そうとう疲れたんだろうな。このまま寝かしてあげよう。なちょ」

「そうだね秋人さん」

数十分後。瀬戸の車が研究所に着いた。

「皆さん、着きましたよ」

なちょは後ろを振り返り未来を見ると秋人に聞いた。

「お兄ちゃん起きないね。秋人さんどうするの?」

「このまま寝かしておこう。オレが未来を運ぶよ。Jam所長にもオレから言っとくから。なちょ少し手伝ってくれ」

秋人はそっと未来を押さえながら、自分の体からはなして1度車から降り、なちょに手伝ってもらい未来をお姫様だっこのようにかかえた。秋人達4人は研究所の玄関を入り、地下施設に行く為にエレベーターに乗った。エレベーターの中で未来の寝顔を見ながら、うずうずしてるなちょに気がつき、秋人はなちょに聞いた。

「なちょどうしたんだ。やけに、うずうずしてるけど?」

「なちょね今、すごく油性マジックでお兄ちゃんの顔に落書きしたい衝動しょうどうき起こってるの」

「やめとけよ。後で未来に怒られるぞ」

「秋人さんさえ言わなければ大丈夫な気がする」

「オレが言わなくたって未来は気づくと思うぞ。こういう事するのは、なちょしかいないって」

「そうかな?」

「そうだよなちょ、だからやめとけ」

「は~い」

エレベーターが地下施設に着き扉が開くと、そこには椿がいた。

「椿ちゃんただいま」

「ただいま椿ちゃん、なちょ帰ってきたよー」

「ただいま戻りました。椿さん」

「みんなお帰りなさい」

椿は秋人の元に行くと未来を見ながら秋人に話した。

「未来お兄ちゃん、寝ちゃったんだ」

「そうなんだ椿ちゃん。相当そうとう能力を使ったんだろうな未来は、このまま未来の部屋に連れていくから椿ちゃん、未来の部屋を開けてくれないか」

「わかったよ秋人さん」

「なちょは先にコントロールルームに行ってるね」

「私もJam所長に応接室で待つようにと言われているので」

なちょと瀬戸はそれぞれ、自分の向かう場所へ歩き出した。秋人と椿は未来の部屋に向かった。未来の部屋の前に着くと椿が未来の部屋のドアを開けた。秋人がベッドの近くまで行くと椿は布団ぶとんをめくり未来の靴を脱がせた。秋人はそっと未来をベッドに寝かせると掛け布団をかけた。

「未来お兄ちゃんの寝顔、なんだかカワイイですね秋人さん」

「そうだな」

秋人はそっと未来の頭を一撫ひとなですると寝ている未来に向かって口を開いた。

「おやすみ未来。椿ちゃんコントロールルームに行こうか」

秋人と椿は未来の部屋を出て、コントロールルームに向かった。2人がコントロールルームに入るとJam所長が出迎でむかえた。

「秋人、ご苦労様。よく頑張ってくれた、お疲れさん。あれ、未来は?」

「未来は相当そうとう能力を使ったみたいで、車の中で寝てしまって起きなかったので、オレが部屋に運びました」

「そうだったんだ。未来も相当頑張ってくれたし、無理もないだろうね秋人」

「そうですねJam所長」

「それで秋人、本当はみんなで、出迎えようと思ってたんだけど知ってのとおり状況が変わってしまって。今、他のみんなにも手伝ってもらって三戦士の対応をしてる途中なんだよ」

「オレも何か手伝いますよJam所長」

「いや大丈夫だ。秋人も結構疲れているだろ。後の事は私達に任せて、秋人は休んでくれ。なちょも、ついさっき部屋に戻って休んでるはずだから」

「わかりましたJam所長。では、先に部屋に戻ります」

「秋人、お疲れ様」

秋人はコントロールルームを出て自分の部屋に向かった。部屋に入ると秋人はベッドに腰をかけた。

「ふぅ~よっこいしょっと。さすがに今日は疲れたな……」

ふと、秋人は自分の右手を見てこぶしにぎり、数秒間、右拳みぎこぶしながめた後につぶやいた。

「オレも、まだまだだな……刹那せつな……完成させないとな」



        ~朝の風景~


 目覚まし時計のアラームが鳴り響いた。秋人あきとはベッドから起き上がると、目覚まし時計に手を伸ばしてアラームを止めた。

「朝か……」

秋人はベッドから降り、立ち上がると両手を真上に挙げて、大きく体を伸ばした。

「うーん、腹へったな。昨日の夜は、そのまま寝てしまったからな。食堂に行くか」

秋人は自分の部屋にある洗面台の鏡を見て、髪を手でなおすと部屋から出ていった。秋人が食堂に入ると三角巾さんかくきんかぶりエプロン姿の稚依子ちよこが声をかけた。

「あっくん、おはよう」

「おはよう、ちぃー」

「今、椿つばきちゃん達に手伝ってもらって朝御飯あさごはん作ってるんだ。もう少しで出来できるから、あっくんテーブルに座って待ってて」

「わかった。何が出てくるか楽しみに待ってるよ」

「期待していいよ。あっくん」

稚依子は厨房ちゅうぼうに戻って行った。秋人は6人用のテーブルが2つ並んでいるテーブルに行くと、そこにはヘイゼル、炎基えんき伝雷でんらい、なちょが座っていた。秋人はみんなに挨拶をしながら椅子に腰掛こしかけた。

「みんなおはよう。炎基と伝雷は拘束こうそくは解けたのか」

伝雷が秋人に答えた。

「ああ、昨日Jam所長に会って少し話したら、すぐに電子錠でんしじょうを外してもらえたよ。なぁ、炎基兄さん」

「そうだな伝雷。ヘイゼルさんが俺達の世話役と研究所の案内役にくという条件である程度自由になったんだ秋人」

「そうか良かったな、2人とも」

秋人は辺りを見回してヘイゼルに聞いた。

「ヘイゼル、未来と氷姫は?」

「あっ、そうやなぁ。秋人は昨日、すぐに休んでもうたから知らんかったな。氷姫は昨日、あの後すぐにな、横田さんが覚醒かくせいさせて今は医務室いむしつや、今日の午前中に横田さんが検査して問題なければ炎基達と合流ごうりゅうやな。未来はまだ寝とるみたいやな。Jam所長が無理に起こさんといてええって。未来やから、腹へったら起きてくると思うで秋人」

「そうだなヘイゼル。炎基と伝雷もここにいるって事は一緒に朝飯あさめしか」

炎基が秋人に答えた。

「そうだな秋人、こうして普通に食事できることに感謝している」

「よせよ、水臭みずくさい。もう俺達は仲間だろ」

伝雷が秋人にれいを言った。

「ありがとう秋人。それで今、結構楽しみなんだよ。この世界の料理は俺達の世界には無い料理が多いから。どんな料理が食べれるのかなって」

「ちぃーが言うには期待していいらしいぞ伝雷」

秋人達が話しているとゆいが箸立てを持ってきた。

「ここに~置くね~」

唯はテーブルに箸立てを置くと炎基と伝雷を見て、首をかしげて考えた。

「うーん、炎基さんと~伝雷さんは~お箸~つ~か~え~る?」

伝雷が唯に答えた。

「大丈夫だよ唯ちゃん。使えるよ」

「良かっ~た~」

唯は安心すると厨房に戻って行った。唯と入れ替わるように椿と闇亀あんぶがオードブル用の大きな皿をそれぞれに持ってテーブルにやってきた。2つの皿には、おにぎりが皿一杯に乗っていた。ヘイゼルが皿を見て。

「椿、えらい量やなぁ~」

「うん、人数が増えたし、秋人さんや、なちょは昨日すぐに部屋で休んだから、お腹空いてると思って」

椿と闇亀あんぶがテーブルに、おにぎりの乗った皿を置くと稚依子ちよこと唯が二段式の台車を押してきた。台車の上の段には大きな寸胴鍋ずんどうなべが乗っていて、下の段には人数分の少し大きめのおわんが乗っていた。稚依子ちよこはテーブルに着くと。

「今日の朝は、おにぎりと豚汁とんじるだよ。おにぎりはテーブルにあるだけだけど、豚汁は結構多めに作ったから。椿ちゃん、闇亀ちゃん、僕が豚汁をよそうから、それをテーブルに並べて」

椿と闇亀は一緒に返事をした。

「はーい」

「ち~さん~唯は~?」

「唯ちゃんは箸を並べて」

「わかっ~た~」

稚依子は豚汁をお椀によそいそれを椿と闇亀は次々にテーブルに並べていき、唯は箸を並べ始めた。装いながら稚依子はヘイゼルに聞いた。

「ヘイゼル、未来君は?」

「未来はまだ寝とると思うで」

「そっか~、じゃあここにいるので全員だね」

椿、闇亀、唯はそれぞれの作業が終わると席についた。稚依子も自分の分を装うと席につき。

「それじゃあみんな食べようか、いただきます」

稚依子の後に続いてみんなが一斉いっせいに言った。

「いただきます」

みんなが食べ始めた。そんな中、炎基えんきは豚汁をまじまじと見て稚依子ちよこに聞いた。

「稚依子さん、これは豚汁という料理ですか?」

「そうだよ」

「この料理は俺達の世界には無い料理ですね。美味おいしそうな匂いだ」

炎基は豚汁を一口ひとくちすす)った。

「うん、これはうまい!それになんかこう落ち着く味ですね」

そう言うと炎基はあっという間に豚汁をたいらげてしまった。

「すいませんが、おかわりをもらってもいいですか。稚依子さん?」

「まだまだあるので、遠慮えんりょしないでどうぞ、炎基さん」

「では、お言葉に甘えて」

炎基は席を立ち寸胴鍋ずんどうなべの所に行き、豚汁をよそった。炎基が席に戻ると伝雷が炎基に話しかけた。

「炎基兄さん、このおにぎりもうまいぜ。中にいろいろとが入ってて」

「そうか、どれ」

炎基はおにぎりを手にると一口、頬張ほおばった。

「これもうまい!この中身は魚か」

椿が炎基に話しかけた。

「炎基さん、おにぎりの具はさけ、おかか、ツナマヨの3種類ですよ。それは鮭ですね」

伝雷が食べかけのおにぎりに指をさして椿に聞いた。

「椿さん、もしかしてこれがツナマヨですか?」

「そうです。それツナマヨですよ伝雷さん」

炎基は残りのおにぎりを一口で食べると、またあっという間に豚汁を平らげてしまった。

「この豚汁という料理結構気に入りました。椿さん」

「そうですか。それなら夕飯は豆腐とワカメのお味噌汁みそしるを作りましょうか」

「今から夕飯が楽しみです。では、豚汁のおかわりをしてこよう」

炎基が席を立つと伝雷も席を立った。

「炎基兄さん、俺もおかわりだから一緒に行くよ」

その様子を見てた秋人は炎基と伝雷に話しかけた。

「お前ら朝から結構食べるな」

伝雷が秋人に答えた。

「そうかな?フォビアの民はこれが普通だぞ秋人」

「そうなのか」

みんなが楽しく食事をしていると未来みらいが食堂にやってきた。

「みんなおはよう」

秋人が未来に答えた。

「おはよう未来」

「あの……秋人さん」

「どうした未来?」

「もしかして昨日……俺の事…部屋まで運んでくれました?」

「ああ、研究所に着いても起きなかったから部屋まで運んだよ」

「やっぱりそうですか。ありがとうございます秋人さん」

「いいよ礼なんて。それより未来も腹へってるだろ?朝飯食べようぜ」

「はい、秋人さん」

炎基が未来に話しかけた。

「未来おはよう、悪いが先にいただいてるぞ。この豚汁という料理はうまいな」

「メニューは豚汁か。俺もさっそく食べよう」

稚依子は未来の豚汁をよそおうとテーブルに手をかけ立ち上がろうとした。

「それじゃあ、未来君の分もだね」

立ち上がろうとした。稚依子に未来が声をかけた。

「あっ、いいっスよちーさん。自分でよそうから」

「そう、じゃあ下の段のお椀使ってね」

未来は自分の分の豚汁を装うとお椀を持ち空いている席に座った。席に着くと唯が未来に(はし)わたした。

「お兄~ちゃん~どう~ぞ~」

「ありがとう唯ちゃん。それじゃあいただきます」

未来が豚汁を食べていると、椿が未来に声をかけた。

「未来お兄ちゃん、おにぎりもどうぞ。中身は鮭とおかかとツナマヨだよ」

未来はおにぎりをとると、一口食べた。

「おっ、ツナマヨだ」

未来は豚汁をすすつた。

「うまい、豚汁とおにぎり合うな~」

未来がくわわり楽しい朝食になった。炎基えんき伝雷でんらいは何度も豚汁をおかわりして、大きな寸胴鍋の半分以上を2人でたいらげてしまった。全員が一通ひととおり食べ終わると稚依子ちよこは寸胴鍋の中をのぞいた。

「後1、2杯くらいかな。炎基さん、どうです?」

「俺はもう大丈夫ですよ稚依子さん」

「伝雷さんは?」

「俺も大丈夫です。美味しかったです」

なちょが稚依子に話しかけた。

「ちーさん、あまった豚汁なちょが後で氷姫に持っていくよ。氷姫も朝御飯まだだと思うから」

稚依子はテーブルに目をやるとおにぎりが3つ余っていた。

「じゃあ余っているおにぎりも一緒に持っていってね、なちょちゃん」

「はーい、ちーさん」

「そやっ、みんなーちょっと聞いてくれるかぁ」

ヘイゼルは全員の視線を自分に集めた。

「これからの事なんやけどな、今日の午後に炎基達の話しを聞く事になったんや。だからみんな、14時にミーティングルームに集まってくれるかぁ」

ツバキプロジェクトのメンバーがヘイゼルに向かって返事をした。

「はーい」

ヘイゼルは炎基と伝雷の方を向き話しかけた。

「炎基と伝雷はこれから俺と一緒に所長室に行ってもらって、Jam所長とこれからの事についての話し合いや。ほな、そろそろ行こか。炎基、伝雷」

炎基と伝雷は立ち上がるとヘイゼルと一緒に所長室に向かった。稚依子は立ち上がると。

「さてと、僕はそろそろ片付けようかな。なちょちゃんはおにぎりと豚汁を取り分けて氷姫こおりひめの所に持っていって。椿つばきちゃんと闇亀あんぶちゃんは片付け手伝って」

「唯も~お手伝い~す~る~よ~ちーさん」

「うん、唯ちゃんもお願いね」

秋人は稚依子に聞いた。

「ちぃー、オレと未来も手伝うよ」

「あっくんと未来君は部屋で休んでていいよ。あんまり人数いてもしょうがないし」

「そうか、ならオレ達は部屋に戻るか未来」

「そうしますか秋人さん」



         ~真相~


 -午後14時-全員がミーティングルームに集まり席に座っていた。米田こめだ三脚さんきゃくを立てビデオカメラを設置し、横田は音をひろう為に集音マイクを設置した。ツバキプロジェクトのメンバーと向き合うように炎基えんき伝雷でんらい氷姫こおりひめが座っていた。Jam所長は辺りを見回し全員がいることを確認するとドアの鍵をかけ話し始めた。

「それでは炎基えんき達に真相をみんなに話してもらおう。オコメちゃん録画の方お願いね。後で内調ないちょう瀬戸せとさんにてもらうから」 

「はい、Jam所長」

「それでは炎基始めてくれ」

「わかりましたJam所長。それではまず、フォビアと俺達三兄弟の事について話しをしよう。俺達の世界フォビアには祖先が恐竜の恐人きょうじんと祖先が猿人の人間が共存きょうぞんしていて、きちんと住み分けもしている。恐人の方は王政おうせいで代表が王であり人間の代表は大統領だ。恐人きょうじんは人間の肉も食べるが、それにもきちんとした条約じょうやくを人間とむすんでいた。その条約の内容とは、恐人はむやみに人間をおそったり、狩ったりしない。もし人間が他の種族に襲われている時には力の強い、我々が人間を守る。そのかわりに人間の細胞を少しだけ分けて欲しいというものだ。細胞と言っても髪の毛やつめの先でいい。それを人間から分けてもらい、意思いしのない食用のクローンを培養ばいようする。そうすれば人間には被害ひがいがないし、恐人も食料の確保ができる」

炎基えんきがここまで話すと伝雷でんらいが口を開いた。

「それで、みんなに勘違かんちがいしてほしくないのは、恐人の主食しゅしょくは人間ではないという事なんだ。別に人間の肉を食べなくても、みんなと同じで牛、豚、鳥の肉でも何の不憫ふびんもなく暮らしていける。フォビアにもこの世界と同じようにスーパーマーケットがあるけど、そこに陳列ちんれつされている人間の肉は加工や調理されているもので俺達もその状態の物しか見たことがない。だから目の前に生きてる人間がいても、あの人間うまそうだなって思って襲ったりしない。みんなと同じだと思うんだけど……未来みらいだって目の前に生きてる牛がいても、うまそうだなって思って、いきなり牛にみついたりしないだろ?」

「そうだな伝雷、だったら何故三竜は、この世界の人間をさらっているんだ?」

「それは……」

伝雷は言葉を言いかけると、悲しげな表情をした。氷姫は伝雷の様子を見て口を開いた。

「伝雷兄さん、ここからは私が話しましょう」

氷姫はツバキプロジェクトのメンバーの方を見て話し始めた。

「三竜の目的より先に、私達の事から話した方が分かりやすいので……まずは私達三兄弟の父は前の王で私達は王族でした。ですが、子供だからと言って簡単には王位おうい継承けいしょう出来ません。恐人きょうじんの王位の継承の仕方しかたは2つあります。1つは現王げんおう(現在の王)が次の王を指名して、王位を継承する。実の子供でも指名されなければ継承は出来ません。2つ目は現王を倒す事です。三竜達は元々は前の王、私達の父の家臣かしんでした。三竜達は用意周到よういしゅうとうでした。まずは体に蓄積ちくせきするどく極微量ごくびりょうに父の食事に入れ数年かけて父を弱らせていきました。まさか毒で弱くなってるとは誰も気付きづきませんでした。普段の生活も不自由ふじゆうなくごしていましたし、ベッドに寝たきりになるわけでもなかったので、父もそれなりに年をとっていたので弱くなっているのは年のせいで体力が落ちているのだと本人もまわりも思っていました。そして父が完全に弱った所で三竜達はクーデターをこしました。前々から影でレジスタンスを作り表向きのリーダーを立てて、それを裏であやつっていました。実際に父を殺したのは三竜さんりゅう達ですが、レジスタンスのリーダーが父を倒した事にして王位を継承させ現王げんおうにして今も三竜達が裏であやつっています。私達も父が殺された時、自分達の死を覚悟しました。だが、三竜達は使えるからと言って現王に私達を三竜達の部下になるように命じさせ私達を生かしました。その時に私達は三竜達に心縛しんばくの術を施されました。心縛の術とは相手に制約せいやくあたえ、制約をやぶると心臓が破裂はれつして死にいたります。三竜達が私達にせた制約は"三竜や現王に攻撃意志こうげきいしを持ち攻撃をしない事"私達は三竜や現王に手が出せないのです。だから私達は三竜達にしたがいながら倒してくれる人を探していました」

闇亀あんぶが手を挙げて氷姫に質問した。

「ちょっといいかなぁ~」

「闇亀さん何ですか?」

「ウチ、気になる事があるんよぉ~。その心縛の術って、どうやったら解けるんかなぁ~って思ってたんよ~」

「心縛の術の解き方は術者が死ぬか、術者自身が解くの2つです」

「そうなんやぁ~、ありがとなぁ氷姫」

氷姫は闇亀の質問に答え終わると向き直り話しを続けた。

「私達の目的は父のかたきをとり、炎基兄様えんきにいさまに王位を継承してもらう事です。お願いしますみなさん………」

氷姫は両手を握りしめ、体を小刻こきざみにふるわせてうつむいた。頬には涙がつたっていた。

「どうか……三竜達を倒してください……炎基兄様……あとはよろしくお願いします」

炎基はうなずき、口を開こうとした時に何処からか声が聞こえた。

「ひっ…えっぐ…えっぐ」

全員が声のする方に振り向くと、声のぬしは今にも涙腺るいせん決壊けっかいして号泣ごうきゅうまで数秒前のヘイゼルだった。

「うぉぉぉぉぉん……ぞないなごどだっだんが∌*』="『!¿×」

ヘイゼルの涙腺が決壊した。両目からは滝のように涙が流れていた。

「ごれば泣げるばなじ*∌!¿∌?←¢」

炎基えんき伝雷でんらい氷姫こおりひめは、ヘイゼルのあまりの号泣ぶりにおどろき、あっけにとられた表情で数秒間の間、ポカ~ンっとヘイゼルをながめていた。すると、なちょが氷姫に話しかけた。

「氷姫、涙止まったね」

「目の前で、あれだけ豪快ごうかいに泣かれたら……ビックリして涙も止まるわよ」

炎基は状況を把握はあく出来ず未来にたずねた。

「未来……えーっと……これは?」

「気にしないでくれ炎基、ヘイゼルは涙もろすぎなんだ。氷姫の話しを聞いて、涙腺が決壊しただけだから」

「いつもの事なのか未来?」

「まぁ~……そうだな」

椿がヘイゼルにティッシュ箱と小さなゴミ箱を渡した。

「ほらヘイゼル、これ使って」

「ずばんなぁ~づばぎ」

ヘイゼルは受けとるとティッシュで涙を拭き思いっきり鼻をかんだ。

ズビィィィィ

「炎基、気にせず話しを続けてくれ」

未来は炎基に話しを進めるようにうながした。

「いいのか……未来?」

「あぁ、大丈夫だよ炎基」

「わかった。では三竜の目的について話そう。三竜の目的は簡単に言えばかねだ。フォビアは他の時系列との輸入や輸出を行っている。勿論もちろん両方の時系列が自由に時系列間を移動できるのが最低条件だが。元々フォビアでは時系列間の人間の輸入や輸出を禁止していた。だか三竜達は現王げんおうに新しい法律を作らせた。“フォビア以外の時系列の人間ならば輸入や輸出を許可する“という法律だ。しかもそれの監督かんとく)を三竜に一任いちにんしている。三竜は時系列間の移動が出来ない時系列で人間を捕まえ、それを他の時系列に売り私腹しふくやしているんだ」

「炎基、ちょっといいか」

「なんだい秋人?」

「人間ってそんなに売れるのか?」

「ああ、売れる。人間を乱獲らんかくしすぎて、絶滅ぜつめつしてしまった時系列とか、絶滅仕掛かってる時系列というのが結構あるんだ。後は人間が奴隷どれいのようにあつかわれている時系列にな」

「そうなのか……胸糞むなくそ悪い話だな炎基」

「すまない秋人」

「炎基があやまる事じゃないさ。話を聞きながら考えたんだが、オレらもいきなり肉が食えなくなったら、それはそれでこまるだろうし……確かに肉が食えなくても生きてはいけるけど……でもオレ達が三竜を倒して炎基が恐人きょうじんの王様になれば、フォビアはそれにかかわらなくなるんだろ。恐人は人間を守る種族だからな。そうだろ炎基」

「ああ、そうだ。俺が王になれば、今以上にフォビアを良くして、もっと人間と歩みより最終的にはクローンであれ人間の肉を食べる文化を無くしたいと思っている」

炎基は立ち上がった。それを見て伝雷と氷姫も立ち上がった。

「その為には、みんなの協力が必要だ。三竜を倒してくれるなら、俺達兄弟は何だってする。だから、このとおり……たのむ」

炎基は深々と頭を下げた。それに続いて伝雷と氷姫も頭を下げた。Jam所長は炎基達に話しかけた。

「君達、頭を上げてくれ。我々は最初からそのつもりだよ」

「ありがとございます」

炎基が礼をいうと3人は頭を上げ椅子に座った。Jam所長は少し考えてから炎基に尋ねた。

「炎基……では三竜の事について教えてくれるかい?」

「わかりました。三竜とは炎竜えんりゅう雷竜らいりゅう氷竜ひょうりゅうの3人の事を指す。能力はそれぞれの名前の通り炎、雷、氷です。Jam所長に聞いたら実戦じっせんは俺達と戦ったのが初めてだと。そこで考えたのは俺達を相手に実戦形式じっせんけいしきのトレーニングをして戦闘の経験をみんなにんでもらおうと思っているのです。特に未来、秋人、なちょは俺達と同じ能力なので教えられる事は多いと思いますし、他のみんなもトレーニングで対炎、対雷、対氷といった実戦も積めますし体術なんかも教える事が出来るので、どうでしょうかJam所長」

Jam所長は腕組みをして考えこんだ。

「う~ん………よしっ、ではこうしよう。現状、敵の動きがわからない状態で瀬戸さんの情報待ちだからね。トレーニングは3日後から始めよう。炎基、伝雷、氷姫、ヘイゼル、椿ちゃん、横ちゃん、オコメちゃんは明日と明後日で私とトレーニングについての打ち合わせや準備をしよう。他のみんなはトレーニングまでとりあえず自由ということで今日は終わりにしよう。では解散かいさんしよう」

全員がそれぞれにミーティングルームを出ていった。未来が自分の部屋に戻ると、枕元に置いてあるスマホが鳴った。未来はスマホの画面を確認すると焔火えんひ)からの着信だった。未来は電話に出た。

「もしもし、どうしたんだ焔火」

「未来、明日っていてるか?」

「明日か、うん、空いてるけど」

「良かった。じゃあさぁ、この前のお礼もしたいから明日遊びに行かないか?」

「ああ、いいよ。それじゃあ待ち合わせ場所は何処どこにしようか焔火」

「そうだなぁ、未来が案内してくれた公園にしよう。時間は13時でいいかな?」

「じゃあ13時に公園だな焔火」

「ああ、それじゃあ明日な、未来」

「ああ明日な、焔火」

未来は電話を切るとベッドに大の字になりつぶやいた。

「明日かぁ……楽しみだなぁ……」

その日の夜、椿つばきは自室のベッドに腰をかけ本を読んでいると頭の中で声がした。

「椿ちゃん……椿ちゃん……」

椿は読んでいた本を横に置き、顔を少し下にうつむかせて、精神世界をのぞいた。

「あっ、灰音はいねちゃん。やっと起きたんだね」

「うん、起きたというよりは居間に出てきたんだけど。それで今からアタシの言う事を聞いてほしいの椿ちゃん」

「うん、なあに灰音ちゃん?」

灰音は椿に話し始めた。



         ~精神体の強さ~


 翌朝、所長室でJam所長と横田が軽い打ち合わせをしていた。打ち合わせが一段落ひとだんらくすると、横田は気になる事があったのでJam所長に尋ねた。

「所長、聞きたい事があるのですが」

「何だい、横ちゃん?」

灰音はいねちゃんの事何ですが、私は一度しか見たことがないので、今後の為に教えてほしいのですが」

Jam所長はボサボサの髪をきながら考えこんだ。

「灰音ちゃんか………それで横ちゃんの聞きたい事はなんだい?」

「抽出はどうするのかですね。そろそろ抽出した方がいいと思うんですよ。みんなも今の状態になるまで、それなりに時間がかかっているので」

「う~んと……それなら闇亀あんぶちゃんを例にして話そうか。まず第二段階の時の事を思い出してみて、闇亀ちゃんは他のみんなとくらべるとテストをする回数が少なかったよね。確か半分以下だったと思うけど」

「そう言えばそうですね」

「それなのに闇亀ちゃんは、みんなと同じように強化クローンにれているよね。これって結構すごい事じゃない?」

「そう……ですね」

「何故だと思う?」

「みんなからコツを教わったとかですか?」

「それもあるとは思うんだけど……私は異能力が関係してると思うんだ」

「といいますと?」

「異能力の強さ………じゃなくて……あつかいずらいというか……まぁ、使うのに厄介やっかいな異能力だね。横ちゃん、闇亀あんぶちゃんの異能力は?」

「闇亀ちゃんの異能力は、重力操作じゅうりょくそうさ物体ぶったい物質ぶっしつ重量変化じゅうりょうへんかですね。前に体験させてもらいましたけど、5キロの鉄アレイを見た目や質量しつりょう)を変えずに500グラムにしましたからね闇亀ちゃんは。実際に鉄アレイをはかりましたけど500グラムでしたし。闇亀ちゃんが能力を解除した瞬間に、あっという間に5キロに戻りましたけど」

「もし闇亀ちゃんが異能力の制御に失敗したり、間違った使い方をしたら大変な事になると思わないかい?」

「確かに……」

「それが炎ならば、確かに死傷者は出るだろうけれど、我々でも被害をおさえる事が可能で逃げることもできる。それが重力になると全然話しが変わってくるよね」

「そうですね。逃げる事も難しいし、もしかしたら一瞬かもしれませんね」

「私が思うには、性質が強力な異能力を分け与えられた人格というのは、精神体が他の人格よりも強いと思うんだよ。強いといっても戦闘力とかではなくて、精神体そのものの強さだね」

「精神体の強さですか……」

闇亀あんぶちゃんを見てるとわかるんだけど、精神体が強いと適応能力てきおうのうりょくすぐれていると私は思う。だから強化クローンにもすぐにれたんだよ闇亀ちゃんは。だけど、それよりすごいのが灰音はいねちゃんなんだ」

「灰音ちゃんが……」

「以前、椿つばきちゃんに人格交代してもらって灰音ちゃんを出してもらった時の事なんだけど。灰音ちゃんが言うには、自分の人格が強すぎて、自分が表に出ると椿ちゃんの体への負担が大きすぎるから、あまり表に出ないようにしてるって言っていたんだ。確か、灰音ちゃんが強化クローンでテストしたのは3回だったかな。横ちゃんが見たのは1回目だよね」

「確かそうですね」

「あの時は、私もだけど横ちゃんも、かなりおどろいてたよね」

「それは驚きますよ。生活に必要な動き以上の事を30分もしないうちにやりましたからね灰音ちゃんは」

「バック転とか体操選手並みの動きだったからね。横ちゃんはなかったけど、3回目で灰音ちゃんの異能力を見せてもらったんだよ」

「どんな異能力なんですか?」

「そうだな……一言で言うなら“光“かな」

「光ですか……?」

「指先に光を集中させて増幅ぞうふくさせ、さらに圧縮あっしゅくしてはなつ。レーザービームだね」

「レーザービームですか……確かに強力ですね」

「あとは光を圧縮せずに、その光で敵を包み込む事も出来るって言ってたよ」

「それって原子炉げんしろ核融合炉かくゆうごうろに入れられるようなものじゃないですか……炉心融解ろしんゆうかいですね」

「あとは性質を真逆にも出来る」

「真逆といいますと?」

「灰音ちゃんに何でもいいから生き物を用意してと言われてね。実験用のマウスを用意したんだけど、灰音ちゃんはマウスを手につかむと、いきなり両手でめ殺しちゃったんだよね」

「ハァ?」

「それで灰音ちゃんは、マウスが死んだのを確認すると、今度は両手でマウスを優しく包み込んで両手に光を集めたんだ。そして数秒後、手を開けるとマウスが元気に動いたんだ」

治癒ちゆ)……蘇生そせいですか」

「蘇生だね。灰音ちゃんが言うには性質が強すぎるから最低でも瀕死ひんしの状態じゃないと使えないらしい」

「何故です?」

「わかりやすく例えるなら、薬の多量摂取たりょうせっしゅだね。ひどい風邪を引いて1回2錠でいい薬を効かないからといって1回で10錠飲むと、逆に具合悪くなるでしょ。それと同じで回復の力が強すぎるから、回復させすぎるんだよ。そうすると逆に体の組織そしき破壊はかいしてしまうんだよ」

「だから最低でも瀕死というわけですか」

「そうだね。灰音ちゃんは、もうそこまで出来るから、私は何時いつ抽出しても大丈夫だと思っているんだよ」

コン、コン

所長室をノックする音が聞こえたのでJam所長は返事した。

「はいは~い」

椿つばきです」

「どうぞ~」

椿が所長室に入るとJam所長は時計を見た。

「椿ちゃん、まだ打ち合わせの時間じゃないけど、どうしたの?」

「灰音ちゃんの事なんですけど。昨日の夜、灰音ちゃんが私に話かけてきてJam所長に伝えてほしい事があるからって、今は灰音ちゃんは中で起きてます。それで交代するからって言ったんですけど、中にいるから私が伝えてって言われたので」

「そうか、それなら打ち合わせの時間までまだあるから聞かせてくれるかい椿ちゃん」

「はい」

椿は灰音の事を話し始めた。



       ~友達~


 未来みらいは待ち合わせの公園の近くでスマホの液晶画面見て時間を確認した。

「12時45分かぁ……ちょっと早いけど公園のベンチで座って待つか」

未来は公園に入ると、すでにベンチに座って待っている焔火えんひを見つけた。

「おーい焔火」

声に気づき焔火は未来の方に振り向いた。

「未来、こっちだ」

未来は小走こばしりで焔火が座っているベンチに向かった。

「焔火早いな、もしかして待ったか?」

「そうでもないさ未来、俺もついさっき来たから。ところで未来、ゲームとかやる?」

「うん、やるよ」

「だったらゲーセン行かないか未来」

「いいね~、行こう焔火」

未来みらい焔火えんひはゲームセンターに向かい歩き出した。10分後、2人はゲームセンターに到着した。

「焔火、対戦しようぜ」

「いいよ。だったら……」

焔火はあたりを見回した。

「あの、車のレースゲームなんかどうだ?」

焔火はレースゲームを指さし、未来に聞いた。

「よしっ、ゲーマー未来の実力を見せてやるよ焔火」

「望むところだ未来」

2人はレースゲームに座ると、100円を入れレースゲーム始めた。レース中盤ちゅうばん、未来がトップを走り、そのすぐ後ろを焔火が走っていた。

せるかな焔火」

「知ってるか未来、このゲームは、こういう抜きかたもあるんだぞ」

焔火は自分の車を未来の車の後ろにピッタリとけた。コースが直線に入った瞬間、焔火は一気いっきにアクセルを踏み加速すると未来の車に体当たりをした。何度か未来の車に体当たりすると未来の車のパワーゲージがどんどんっていき、最後にはコースの外に吹っ飛ばされてしまった。

「なにー!何だその無茶苦茶むちゃくちゃな抜き方はー!?」

「未来、早くしないと追いつけなくなるぞ」

その後未来は必死に焔火を追いかけたが、1度に大きく離されてしまった為に追いつけずにゲームが終了した。焔火の画面にはWinの文字が、未来の画面にはLoseの文字が、でかでかと表示された。未来は焔火の方を向き聞いた。

「焔火~このゲーム、結構やり込んでるだろ?」

焔火は少し、とぼけたように未来に答えた。

「いや、全然そんな事ないよ。前に1回しかやった事ないよ」

「絶対嘘だ!よしっ次はあっちのパズルゲームで勝負だ焔火」

未来と焔火の2人はパズルゲームやクレーンゲームにガンシューティングなど色々なゲームして楽しんだ。一通りゲームをやり終えると、どこかでお茶でもしようということになり2人は街中を歩っていた。すると焔火は映画館の前で立ち止まった。

「んっ、どうした焔火?」

「このアクション映画、まだやってたんだ」

未来は焔火の見ている映画の看板に目を向けた。

「へぇ~なんか面白おもしろ)そうな映画だな焔火」

「この映画、前から気になっていたんだよ」

「だったら、ようぜ焔火」

「いいのか未来?」

「お茶なら映画を観ながらでも出来るだろ」

「それもそうだな。じゃあ入るか未来」

2人は映画館に入っていった。映画が終わり2人が外に出ると、日が暮れ始め太陽が夕日に変わっていた。

「未来の好きな食べ物って何だ?」

「好きな食べ物かぁ……」

未来は少しの間考え焔火に答えた。

「そうだなぁ……麺類めんるいが好きだな」

「そうか、だったらラーメンなんかどうだ?この前のお礼もあるし、俺がおごるからさ」

「本当か、焔火」

「ああ、この前この近くにうまいラーメン屋見つけたんだよ」

「そうかだったらすぐ行こう、サッサと行こう、サクサク行こう」

未来は焔火の右腕を掴むと焔火を引っ張りながら歩き始めた。

「未来、そんなにあわてなくてもラーメン屋は逃げないよ」

未来は焔火の右腕を引っ張りながら街中を歩いていると、焔火が気がつき未来に声をかけた。

「未来ここだよ。通りすぎる、通りすぎるって」

未来は焔火の右腕を離すと左を向いた。そこには[人竜じんりゅう]と書かれたラーメン屋があった。

「ここかぁ~」

未来と焔火が中に入ると威勢いせいのいい店員の声が聞こえた。

「いぃぃらっしゃいませー!」

未来は店内を見ると、右側にカウンター席があり左側には4人掛けの席が3つあった。店内はさほど混んでなく客もカウンター席に数人しかいなかった。2人は空いている4人掛けの席に向い合わせに座り、テーブルの脇に立て掛けてある、メニューを見ながら未来は焔火に聞いた。

「焔火、どれ食べてもいいのか?」

「何でもいいよ。好きなの注文してくれ未来」

「よし、じゃあこれにしよう。焔火は決まったのか?」

「ああ、決まったよ。じゃあ店員呼ぶか」

焔火は辺りを見回すと少し大きな声で店員を呼んだ。

「すいませーん」

しばらくすると店員がやってきた。

「ご注文ですか」

2人は店員に注文をげると待っている間、映画やゲーセンの話で盛り上がった。しばらく話していると店員が注文されたもの運んできた。

「お待たせしました。チャーシューメン大盛の半チャーハンセットの方は?」

「はい、俺です」

未来が手を挙げ店員に答えると店員は焔火の方を向き。

「では、そちらがネギ玉しょうゆラーメンのミニチャーシュー丼セットですね」

店員はテーブルの上に並べ終わると。

「ごゆっくりどうぞ」

と言い立ち去った。

「未来、遠慮えんりょせずにどんどん食え」

「それじゃあ、いただきます」

焔火は微笑みながら未来の食べてる様子をながめていた。それに気づいた未来が焔火に話しかけた。

「んっ、どうした焔火?」

「未来って、うまそうに食べるなぁと思って」

「そうか?ほら、焔火も食えよ。じゃないと俺がそれ食べちゃうぞ」

「これは俺の分だ未来」

2人が食べ終わり外に出ると辺りはすっかり暗くなっていた。

「焔火、ごちそうさま。うまかったよ」

よろこんでもらえて何よりだよ」

焔火はスマホの液晶画面で時間を確認すると。

「19時前か……まだいてるな。未来」

「どうした焔火?」

「ケーキ店にいこう。この前ケーキもらったから、そのお返しだ」

「ラーメンおごってもらったばっかりだし、何か悪い気がするなぁ」

「いいよ。遠慮えんりょするなって、あの時、未来だけなんだよ、声をかけてくれたのは、あそこまでしてもらって本当に嬉しかったんだ。だからお返しさせてくれ」

「そうか……でも俺……あんまり甘い物は食べないんだよな」

「未来が食べなくても妹や家族が食べるだろ。それに甘い物が苦手な人でも食べられるケーキもあるからさ。ほら、行くぞ」

今度は焔火が未来の腕を引っ張り歩き始めた。

「ちょっと、焔火」

「大丈夫だ、このケーキマスター焔火にまかせておけ」

ケーキ店に入り、焔火はショウケースを少しながめると、次々と店員に注文していった。途中で未来に説明をしながら、店員に箱に入れるケーキの順番まで指示していた。2人は最初に待ち合わせた公園まで帰り道が一緒だとわかり、公園まで話しをしながら歩いていた。公園に着くと未来が焔火に話しかけた。

「焔火、今日は楽しかったよ。お土産みやげまで、もらちゃってありがとな」

「俺も楽しかったよ未来。また今度遊ぼうな。あっ、そうだ」

焔火は首の後ろに両手をまわすと着けていたペンダントをはずして、未来の前に近づき、未来の首に両手をまわしてペンダントを未来に着けた。

「焔火…これは……?」

未来は着けられたペンダントを手にとりながめた。ペンダントトップは星の形をしていた。

「それは俺と未来の友情のしるしだ。いつも着けといてくれよ」

「友情の印か……」

未来は満点の笑顔になった。

「ありがとう焔火。俺、大切にするよ。じゃあそろそろ行くわ、またな焔火」

「またな未来」

焔火は未来を見送ると公園のベンチに座った。

「楽しみだよ……未来………どんな顔するのか……」

未来は研究所に入ると椿を見かけた。

「椿ちゃんただいま」

「おかえり未来お兄ちゃん。何処行ってたの?」

「友達と遊んできたんだよ。それでケーキもらったからみんなで食べようと思って、みんなは?」

「応接室にいるよ。Jam所長が使ってない時は居間として使っていいって。多分炎基さん達も一緒だと思う。ケーキか、それなら飲み物がいるね。未来お兄ちゃん一緒に食堂に行って飲み物持って応接室行こう」

未来と椿は食堂で紅茶のペットボトル2本と紙コップを持つと応接室に向かった。応接室に入ると椿がみんなに声をかけた。

「みんなー未来お兄ちゃんが友達にケーキもらったから、みんなで食べようって、飲み物も持ってきたから」

「ケーキ、本当、なちょ食べたいお兄ちゃん早く」

「なちょ、今そっち持って行くから少し待ってろ」

未来はビニール袋からケーキの箱を2つ取り出しテーブルに置くと箱を開けた。

「みんな好きなの選んでくれ。炎基達も選びなよ」

「俺達もいいのか未来」

「いいよ。遠慮するなって」

「そうか、なら伝雷、氷姫、先に選びなさい。俺は後でいいから」

炎基は未来がしているペンダントが気になり未来に尋ねた。

「未来、そのペンダントは?」

「これか、友達にもらったんだ」

「着けたままでいいから、ちょっと見せてくれ」

「別にいいけど」

炎基は未来の着けているペンダントを手に取るとまじまじと眺めた。

「炎基、このペンダントがどうかしたのか?」

「う~ん……何処かで同じ物を見たような気がするんだが……」

「探せば何処かには同じ物が売ってると思うぞ炎基」

「う~ん……多分俺の勘違かんちがいだと思う。見せてくれてありがとう」

「みんな選び終わったみたいだから、ほら、炎基も好きなの選んでくれ」

「ああ、ではいただこうか」

炎基がケーキを選んでいると、ヘイゼルが未来に話しかけた。

「このケーキほんまにうまいわぁ、それでな、その友達に直接お礼言いたいんやけど、連絡とれるかぁ未来」

「俺から言っとくからさ、いいよヘイゼルは、相手もいきなりヘイゼルからだとビックリするし」

「そうかぁ~、それならケーキほんまにうまかったありがとうって言っといてや~」

「わかったよヘイゼル、伝えとくよ」

未来の近くに闇亀あんぶが来て尋ねた。

「未来君、このケーキほんまにおいしいなぁ~。ウチなぁ~もう1個食べたいんよ~いいかなぁ~?」

未来はケーキの箱をのぞいた。

「まだ結構あるし、好きなの選びなよ闇亀ちゃん」

「ありがとなぁ~未来君」

闇亀がケーキの箱を覗いて選んでいると、なちょもやって来た。

「なちょも、もう1個食べる」

「なちょは、あんまり食べ過ぎるなよ」

「えーどうして、お兄ちゃん。こんなにあるのに-」

「それ以上大きくなったら……」

未来の言葉にかぶせてなちょが笑顔で未来を呼んだ。

「お兄ちゃん。氷とー!」

なちょは右手に氷の玉を出し宙にとどまらせた。

「水とー!」

今度は左手に水の玉を出し宙に留まらせた。

「どっちが好きかな-!」

未来はあわてて、しどろもどろになった。

「え、あ、その、えと、」

「ねぇ~どっち~お兄ちゃん!」

なちょがジリジリと未来に近づいた。未来は咄嗟とっさに両手にケーキの箱を持って、なちょの前で片膝かたひざをつき両手でケーキの箱を、なちょの前に差し出した。

「なちょ様、好きなだけおおさめください」

「よろしい!」

なちょは氷と水を消すと未来が差し出している箱の中のケーキを選び出した。

「でも本当に、なちょはこのケーキのチョイスの仕方は上手だと思うよお兄ちゃん」

「だろ、ケーキマスターが選んだからな」

未来はみんなに焔火えんひと遊びに行った出来事を楽しげに話している。その様子を微笑みながら見ている秋人あきと椿つばきが話しかけた。

「未来お兄ちゃん、うれしそうだね秋人さん」

「そうだな椿ちゃん、すごく楽しかったんだろうな未来は、初めて普通の友達ができたんだからな」

「私にもできるかな?」

「もちろんできるさ椿ちゃんにも。これからみんなは、もっともっと表に出るんだから」

「そうですね秋人さん」

秋人と椿が話していると、椿のスマホがなった。椿は液晶画面を確認するとJam所長と表示されていた。椿が電話に出た。

「もしもし椿です」

「椿ちゃん、調整と準備が終わったんだけど、みんなはどうしてる?」

「応接室にみんないますよ。炎基さん達も一緒です」

「わかった、じゃあ応接室に今から行くから」

「Jam所長、みんなにはまだ言ってないので」

「そうか、じゃあそんな感じにするか。一旦いったん切るよ」

Jam所長が電話を切ってから、5分後Jam所長が応接室に入って来た。

「みんなーちょっといいかい」

Jam所長はみんなの視線を集めた。

「今からみんなに会わせたい人がいるんだ。入っておいで」

Jam所長に呼ばれ入って来たのは女性だった。身長は165センチくらいでショートカットで髪の長さは全体的にあごの下まであり前髪が左目にかかっていた。ツバキプロジェクトのメンバーは入って来た人物を見ておどろ一斉いっせいに声を上げた。

灰音はいねちゃん!!」

「みんな、久しぶり灰音です。椿ちゃん言ってなかったの?」

ツバキプロジェクトのメンバーが一斉に椿の方を見た。

「フフっみんなビックリしたでしょう」

椿は、してやったりの顔をしていた。未来が椿に尋ねた。

「椿ちゃん、いつ灰音ちゃんが体に入ったの?」

「未来お兄ちゃんが帰ってくる1時間前位かな。灰音ちゃんが少し体をらしたいからって、トレーニングルームで調整してたみたい」

「じゃあ灰音は、もう体に慣れたんかいな」

「ええ、異能力の制御まではできるよヘイゼル」

「そりゃ凄いな」

「灰音ちゃんにチワコを紹介しないと」

「ちーさん、チワコって?」

「僕のパートナーだよ灰音ちゃん。後で会わせるから」

唯が灰音の所にケーキの箱を持ってきた。

「お兄~ちゃんの~おみやげだよ~どう~ぞ~」

「ありがとう唯ちゃん」

灰音はケーキを手に取ると、一口食べた。

「おいしい」

灰音の様子を見ていた闇亀あんぶしゃべり出した。

「そうやねぇ~ウチと同じで、あまり表に出てないからなぁ~。灰音ちゃん、表には美味おいしい物がたくさんあるんよぉ~」

「本当、闇亀ちゃん。楽しみだな、アタシ色んな物食べてみたい」

ツバキプロジェクトのメンバーが灰音と楽しく話してる中、炎基がJam所長に尋ねた。

「Jam所長あの子は?」

「ツバキプロジェクトのメンバーの最後の1人、灰音ちゃんだよ」

Jam所長と炎基が話してると、椿がやって来た。

「Jam所長、みんなそろいました」

「椿ちゃん、本当に良かったね」

椿は満点の笑顔で返事をした。

「はい」



        ~次回予告~


稚依子ちよこです。やっと灰音はいねちゃんが出てきました。灰音ちゃん、チワコ見たらどんな反応するんだろうな……ちょっと楽しみです。次回は炎基えんきさん、伝雷でんらいさん、氷姫こおりひめとのトレーニングです。僕も頑張がんばらないと。それでは次回もお楽しみに。お相手は稚依子ちよこでした』














 






















第5話を読んで頂き有り難うございます。今回はヘイゼルを号泣させましたし、灰音ちゃんを出す事が出来ました。いや~良かった良かった。第6話も少しずつ書き始めています。次は闇幻術をくらわぬようにしたいと思います。以上jamネコがお送りしました。

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