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異能力者達の日常  作者: jamネコ
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第4話~三戦士との戦い~ 

第4話が書き終わりました。前からバトルシーンの構想はある程度できていたので、結構すんなり書けました。未来、秋人、なちょの戦いは…………それでは第4話をお楽しみください。

       ~剛炎~


 炎基えんきはズボンのポケットから小さな黒い箱を取り出した。炎基は箱の上部をスライドさせた。箱の中には"設置"と"解除"の2つのスイッチがあり、設置のスイッチを押した後、箱を未来の方に見せた。

「今、この装置を使って倉庫の中全体に、透明な超耐火性の保護フィールドのまくを張った。これで思う存分、戦闘バトルが楽しめる。俺もお前と同じで炎使いだからな」

「いいのかい、能力バラしちゃって?」

「ああ、フェアじゃないからな。俺は差別が嫌いだ、だから未来、お前の事も食料だと思ってはいない。対等たいとう戦闘相手せんとうあいてだと思っている。見てみな」

炎基は右手を壁に向けて円球の炎を放った。

ドゴオォォォン

炎が壁に当たり、大きな音がした。けれども壁は何事もなかったように無傷で焦げ後すらなく、炎が消えていた。

「これで分かったろ未来、どれだけ思いっきり暴れても倉庫が火事になる心配はない」

「へぇ~、すごいなぁそれ」

炎基はスライドさせた箱を閉めた。

「この装置は箱を閉めた状態にすると頑丈だ、どんな衝撃や重さにも耐える熱にもだ。まんいちだが、俺を倒せた場合はこの装置の解除のスイッチを押してフィールドを解除しないとドアから出れないからな」

炎基は黒い箱を床に投げた。

まんいち冗談じょうだんは顔だけにしろよ炎基」

「ほざけっ!ヌゥゥン!!」

炎基えんきが気合いを入れると両手両足が、みるみるうちに炎におおわれていった。炎基がまとっている炎は激しく、そしてあら々しく燃えさかっている。

「へぇ~、すごい熱量だな炎基。だったら俺は……」

未来は左手を前に出し右手で左手首を持ち左手から円球の炎を出しちゅうとどまらせた。

炎帝剣えんていけんっ!!」

未来の掛け声とともにちゅうとどまっていた炎は、円球から剣の形にみるみる変わっていった。未来は燃えさかる炎の剣をつかむと軽く一振ひとふりし、炎基に向かってかまえた。

「行くぞ、炎基!」

「来い、未来!」

未来は炎の剣を構え、炎基に向かって駆け出した。炎基の間合いまで、5、6歩の所で地面を蹴り跳躍ちょうやくし炎基の頭上めがけて炎の剣を振り下ろした。

「でやあぁぁ!」

「甘い!!」

炎基は炎をまとっている左腕で炎の剣を受け止めた。

ガシィン!!

炎基は受け止めると同時に、右拳みぎごぶしに炎を集中させ、未来の腹部ふくぶめがけ右拳をした。

剛炎拳ごうえんけん!!」

ドゴォッ

剛炎拳は未来の腹部にクリーンヒットした。未来の腹の中にある空気が一気に押し出された。

「かはっ」

剛炎拳をまともに受けた未来は、炎基のあら々しい炎に体を包まれながら吹っ飛ばされ壁に激突げきとつした。辺りに轟音がひびいた。

ドガガアァァァン

壁に当たった瞬間、フィールドの効果で未来の体を包んでいた炎は消えていた。壁に体を打ち付けられた未来は地面へずり落ち、両膝をつき四つん這いになり嗚咽おえつした。

「かはっ……こはっ………」

その様子を見た炎基は。

「ほう、俺の剛炎拳をまともに受けて意識があるとは、たいしたものだ。だが、すぐには立てまい。終わりにするか?これ以上続けて、死に急ぐより一旦いったん引き返して、回復してから再度挑戦でもいいんだぞ未来」

未来は四つん這いのまま口を開いた。

「だから冗談は顔だけにしろって炎基。これくらいじゃないと、俺も本気をだせないからな」

未来は立ち上がり、炎基に向かって拳を構えた。

らずぐちが」


      ~雷帝秋人~


 少しだけ時間を戻し……秋人が52番倉庫に入ると、ガラの悪そうな連中が数人たむろしていた。その中で1人だけ、背もたれがついた木製の椅子に座っている者がいた。髪型はオールバックで目ツキがするどく、ジーパンと皮ジャンを着ていた。あとの数人は木製の椅子を取り巻くように立っていた。その中の1人が秋人に気づいてたずねた。

「誰だお前?」

「オレは秋人あきとだ、対戦者だ。伝雷でんらいってのは、どいつだ?」

木製の椅子に座っている男が答えた。

「俺だ」

伝雷は立ち上がり秋人に向かって歩き出した。秋人の前に立つと伝雷は周りを見渡みわたし秋人に尋ねた。

「あんた1人か?」

「そうだが、それがどうした?」

秋人が答えると取り巻き連中が一斉に笑い出した。

「ハハハハハッ」

取り巻き連中はそれぞれに口を開いた。

「マジかよ。ウケる~」

「伝雷のアニキに1人でかなう訳ないだろ」

「どうせ、途中で逃げ出すだろ」

「伝雷のアニキは優しいから、ちゃんと逃がしてくれるぞ~良かったな」

伝雷は自分の取り巻き連中の方を向き。

「まあまあ、お前らあんまり笑うなよ。この人は俺の強さを知らないんだから」

伝雷は秋人の方に向き直り。

「え~と、秋人だっけ?」

「あぁ、そうだ」

「悪いな、うちの舎弟どもは口が悪くてな。気にしないでくれ」

「そんな事より伝雷でんらい、オレは此処ここにいる奴ら全員の相手をしなければならないのか?」

「いや、たたかうのは俺だけだ。コイツらは観客だと思ってくれればいい。仮に俺が負けたとしても、コイツらは手をださない。このゲームはそういうルールだからな」

「わかった。ならさっさと始めようぜ伝雷」

「まあそうあわてるな秋人、少し準備をするから待っててくれ」

秋人にそうげると伝雷は舎弟達の元に戻っていき木製の椅子に座り舎弟達に。

「おい、鏡とクシ」

そう言われると1人が鏡を伝雷の顔の位置に固定して持ち、もう1人がクシを渡した。伝雷はクシをうけとると鏡で髪型をチェックして髪にクシを通した。一通り終わると伝雷は立ち上がり舎弟達に聞いた。

「お前達、どうだ俺のヘアースタイルは?」

伝雷に聞かれると舎弟達が次々に答えた。

「バッチリです。アニキ」

「今日もキマッてます」

「最高です。伝雷のアニキ」

「そうかい、ありがとよお前ら、今からお前らに見せてやるぜ、俺のカッコよさをな」

舎弟達が歓声をあげた。

「カッコ良すぎですアニキ」

「うおおーシブすぎるぜ」

「どこまでもいていきます。伝雷のアニキ」

その様子をみていた秋人は思った。

(何なんだコイツらの、このノリは……ひと昔前の、ノリだなこれ………)

「お前ら危ないから、下がってな」

伝雷に言われると、そそくさと舎弟達は倉庫の壁際に下がっていった。

「待たせたな秋人」

「もういいのか、だったらオレも準備するか」

秋人は足を少し開き、両手は下げたまま拳を握りしめ、鼻から大きく息を吸い込んだ。

「はああああ」

秋人の体の周りに、細く青白い光が徐々に見え始めた。

バチッ、バチッ

秋人の髪の毛がだんだん逆立っていった。細く青白い光はどんどん増えていき体の周りを走り始めている。

バチバチッ、バチッバチチチ

秋人はさらに気合いを込めた。

「ハアァァァッ!」

すると青白い光は閃光になり、秋人の体の周りを縦横無尽じゅおうむじんめぐった。

バチッバチチチチチチ

「待たせたな伝雷でんらい

「ほぅ~、秋人の能力は電気か……でもその光…電気と言うよりかみなりだな」

「そうだ、オレはかみなりまといし者……雷帝らいていだ」

「でも奇遇だな秋人、俺の能力も電気だ。だがお前とはしつが違う。俺は体の中に流れる電気信号を速める事ができる。それによって、超人的な動きが可能になる」

御託ごたくはいい……さっさと来な」

「いくぜ秋人、俺の超人的なスピードについてこれるかな!」

伝雷でんらいは地面を蹴り、秋人に向かって走りだした。3、4歩走った所で伝雷の姿が消えた。数秒後、秋人の周りを数十人の伝雷がかこんだ。

「どうだ!これだけの残像を作れるほどの超高速な動きはついてこれねぇだろう!!」

秋人は無言のまま冷静に前だけを見ていた。

「なんだぁ、驚いて声も出ないか?だったら1発で終わらせてやるよ」

伝雷は秋人の右側に回り込み真横から秋人の顔面を狙い、超高速な動きで右ストレートを繰り出した。

(ヨシッ、捕らえた)

伝雷がそう思った瞬間。

バチィィ

秋人は前を見たまま真横から繰り出された伝雷の拳を右手で受け止めた。

「なに!?」

「そんなもんか伝雷でんらい

「チッ」

伝雷は舌打ちすると十分じゅうぶん間合まあいをとる為に大きく後ろへ跳んだ。

「今のはマグレか……かんか……秋人は俺の動きをとらえていなかったはず……そうだ、きっとそうに違いない」

秋人は右側を向き、伝雷にげた。

「伝雷……今からお前に本物の"速さ"というものを見せてやるよ」

「本物の速さだと、やれるもんならやってみろよ」

「では行くぞ」

伝雷の目の前から、秋人は音もなく消えた。その刹那せつな、伝雷の体が、くの字に曲がった。秋人の右拳が伝雷の腹部に打ち込まれていた。

「がはっ!」

伝雷は膝から崩れ落ちた。その時、音が聞こえた。

ドンッ、ドドン

それは数秒遅れでった秋人が地面を蹴った音や踏み込んだ音だった。秋人は伝雷を見下ろし口を開いた。

雷帝打らいていだ刹那せつな……本物の速さは音さえも置き去りにする。かみなりのようにな」

秋人は伝雷に背を向け歩き出した。数歩進むと後ろから伝雷の笑い声が聞こえ秋人は後ろをかえった。

「フハハハハハ、いいぞ秋人、ひさしぶりに本気をだせる」

伝雷は立ち上がると皮ジャンを脱ぎ捨て、ジーパンのポケットからスタンガンを取り出した。

「ちょっと待ってろ秋人、充電すっからよぉ」

伝雷はスタンガンのスイッチを入れ自分の腕に押し当てた。数十秒後、伝雷はスタンガンを投げ捨てた。

「待たせたな秋人、充電完了だ。さあ、続きを始めようか!」

秋人は腰を落とし、静かに拳を構えた。


     ~氷と水の女神なちょ~


 また少しだけ時間を戻し……なちょは53番倉庫に入ると、そこには小柄こがらで髪の毛は銀髪で腰の辺りまで伸びていて前髪は目の上で綺麗きれいそろえてあり黒のふわふわスカートのゴスロリファッションの女の子が立っていた。ゴスロリファッションの女の子は、なちょに気がつきたずねた。

「あなたは誰?」

尋ねられたなちょは両手を振り元気よく笑顔で答えた。

「なちょだよー!あなたは?」

「私は氷姫こおりひめ、その服可愛いね」

氷姫はなちょの白いロリータファッションの服をめた。

「でしょう~氷姫の服も可愛い~」

なちょも氷姫の黒いゴスロリファッションをかえした。

「ありがとう。それで、なちょは何をしにきたの?」

「なちょはね、氷姫と戦いにきたの」

「じゃあ、なちょが私の対戦者なのね」

「そうだよー、でもね、なちょあんまり戦いたくないんだぁ~」

「どうして?」

「なんていうか気分じゃないから、だからさ氷姫、なちょが勝った事にしてくれない?ねーいいでしょ」

「それはダメ、私が負けた事になるから」

「えー何でー負けでいいじゃん」

なちょのイヤホンからヘイゼルの声が聞こえた。

「なちょ、ちゃんとし~や~」

なちょはそれに答えた。

「戦わなくて勝てるならその方がいいじゃんヘイゼル」

それを聞いていた氷姫は首をかしげた。

「ヘイゼル?」

「あーごめん氷姫、今仲間と通信してたんだぁ」

「でも、よく見るとその服なちょには似合ってないよ」

「えーなんでー」

「だって、なちょは全然ロリータっぽくないし……そうだ例えるなら若作りのオバサンが女子高生の制服着てる感じかな」

「ハアァァ?……………あっそうか分かった。氷姫はロリータしか着れないんでしょ。だよね~だってそんな幼稚体型ようちたいけい)な胸してるし」

「なんですってー、胸は関係ないでしょう!!この制服オバサン!!」

「誰がオバサンだぁー!このツルペタガキんちょ!!」

「オバサン!」

「ガキんちょ!」

コントロールルームでその様子を見ていたヘイゼルがJam所長に言った。

「あの~Jam所長、なちょが氷姫と言い合いしてはりますが……どないしましょう?」

「う~ん、いいんじゃないのかなヘイゼル?一応ケンカしにいってるようなものだし」

「でもJam所長……これ口喧嘩くちげんかですやん」

その時ヘイゼルを呼ぶ声がモニターから聞こえた。

「ヘイゼル、やっぱりなちょ戦う。もう~アッタマきた。この幼稚体型ようちたいけいのツルペタガキんちょに、なちょのスゴさを見せてやる」

ヘイゼルはなちょに答えた。

「さよか~、ほな頼むでなちょ」

ヘイゼルはタメ息をつきながらJam所長に聞いた。

「ハァ~、こんなんでいいんやろかJam所長」

「まぁ~、結果オーライじゃないかなヘイゼル」

53番倉庫では、まだ口喧嘩が続いていた。

「また私の事ガキんちょって言ったわね!このオバサン」

「なちょはオバサンじゃないよー。それにガキんちょにガキんちょって言って何が悪いのよ。このツルペタ幼稚園児ようちえんじ!」

「誰が、ツルペタだってー!もうー怒った。どうなっても知らないんだから覚悟しなさい!!」

氷姫こおりひめは両手を真横に広げた。すると氷姫の周囲しゅういに、直径2センチほどの氷の粒がいくつもあらわれた。

「くらいなさい!氷連弾ひょうれんだん!!」

氷姫は真横に広げた両手を素早すばやく前に持っていった。すると幾つもの氷の粒が、なちょめがけ飛んでいった。

「なんの!アクアウォール!!」

なちょは両手を前に出すと自分の目の前に厚さ10センチ、横幅1メートルの水の壁を作った。氷の粒が水の壁の中に入ると、動きが止まり次々に消えていった。

「見たか、ガキんちょ!そんなもんなちょには効かないよーだ。お返しに、アクアショット!!」

なちょは目の前にある水の壁に右手でれた。すると水の塊が氷姫めがけて、水の壁からはなたれた。

「当たらないわよ、そんなもの」

氷姫は横に跳んで水の塊を避けた。

「1発な訳ないじゃん、どんどんイっくよー」

なちょは水の壁から連続で水の塊をはなった。

「えいっ、えいっ、てりゃ、ほいさ」

「チッ、めんどくさいわね。氷刀こおりがたな!」

氷姫の右手に氷でできた日本刀があらわれた。氷の刀を持ち、氷姫はみずから水の塊に突っ込んでいった。

「でやああぁぁ、セイッ!」

氷姫は水の塊をぷたつにいた。切られた水の塊はいきおいをうしな四散しさんした。氷姫はなちょが放った水の塊を次々にりながら、なちょにどんどん近づいていった。

「セイッ、ハッ、とおりゃ」

氷姫は水の壁の前までたどりき氷の刀で水の壁を一刀両断いっとうりょうだんに斬りいた。

「とおりゃぁぁぁ」

水の壁は四散しさんしてえた。

「終わりよ。なちょ」

なちょはその場をはなれようとした時に足が動かない事に気づいた。足下あしもとを見ると、なちょが立っている地面と足が一緒にこおらされ固定こていされていた。

「アイスロック……逃げられると面倒めんどうなので動きをふうじさせてもらったわ。さよなら、なちょ」

ザシュゥゥゥ      

氷姫はなちょを‛袈裟斬けさぎり’にせた。

(袈裟斬り→左肩から右脇腹にかけて斬る事)

なちょはその場に倒れこんだ。

「あっ、服も斬っちゃた。この服可愛いかったのに、これじゃあ、もう着れないな」

氷姫はなちょの服を見ているとおかしな事に気づいた。

「えっ、なぜ、確かに斬ったのに、なんで血が一滴いってきも出てないのよ」

次の瞬間、氷姫の目の前でなちょの亡骸なきがらが水になり消えていった。

「えっ、これはどういうこと??」

氷姫の後ろから、なちょの声が聞こえた。

「なちょはこっちだよー」

氷姫が後ろを振り向くと、そこには両手を前に出し笑顔で両手を振っている、なちょがいた。

「これはどういうこと?説明して!」

「えーわかんないのー、やっぱガキんちょだなぁ~」

「私は、なちょを斬った。斬る前まであなたの息づかいも感じていたのに……なぜ?」

「いいよー説明してあげる。それはウォーターコピー、水で作った、なちょそっくりの水のお人形さんだよ。簡単に言うと忍者の変わり身の術みたいなものだよ~」

「いつ入れ替わったのよ、そんな時間はなかったはず?」

「えー結構あったよ。なちょが入れ替わったのは連続でアクアショットをってる時だよ。途中で撃つのきたから、なちょそっくりのウォーターコピー作って入れ替わったの」

「嘘よそんなの!人形にあんな動きできるわけないじゃない」

「えーできるよー。ウォーターコピーは姿形すがたかたち、動きまでも完璧かんぺきにコピーするんだから。あとね氷姫、なちょね戦うのきてきちゃったから、そろそろ終わりにするね」

「そんな簡単に私を倒せると思ってんの?」

「ううん、違うよ。倒すんじゃなくて眠ってもらうの」

なちょは両手を横に広げ、その場でくるくると回転した。なちょの手から小さな光の粒が次々と出てきて倉庫の中全体に広がっていった。なちょが回転を止めると氷姫は周囲の温度が異様いように下がっていることに気づいた。

「寒い……これは冷気」

「ピンポン、ピンポン正解だよ氷姫。なちょは今ね倉庫の中全体に冷気を充満じゅうまんさせたの。じゃあ終わりにするね」

なちょは人差し指を立てた右手を上にげ、一気に右手を振り下ろした。

「ゆきうさぎの涙!!」

氷姫はビクッとなり思わず声が出た。

「ヒィッ」

だかしかし周りの寒さ以外は何も変わらなかった。

「なによ、何もきないじゃない」

ポトッ

氷姫の頬に水のしずくが落ちてきた。

「えっ、何これ……」

ポトッポトッポトポトポト

倉庫の中にもかかわらず氷姫の頭上から雨が振っていた。

「なちょ、なによこれは、こんなのただ濡れるだけ………」

ピキッ

氷姫は自分の腕に違和感をおぼえた。腕を見ると雨に当たった箇所がこおっていた。

「なにこれ……」

気づいた時には遅かった。腕の凍っている部分の範囲がどんどんと広がって行きあっという間に体全体が凍ってしまった。まだ動く顔でなちょを見ると、そこには笑顔で自分に向かってバイバイしているなちょの姿が見えた。その数秒後、氷姫の視界が完全に閉ざされた。なちょは完全に氷におおわれた氷姫の元に静かに歩いていき氷姫の前で立ち止まると笑顔で氷姫に声をかけた。

「氷姫……おやすみなさい……」


        ~真意~


 コントロールルームでモニターを見ていた椿がJam所長に話しかけた。

「なちょらしい倒しかたですねJam所長」

「そうなのかい椿ちゃん?」

「ええ、そうです。なちょは本当は優しい子なんです。傷つける事はあっても本心では誰も殺したくないんですよ。だからなちょはこおらせたんだと思います。後で蘇生が可能なように」

秋人のモニターを見ていたヘイゼルがJam所長を呼んだ。

「Jam所長」

「どうしたんだいヘイゼル?」

「秋人のとこなんやけど、2人の動きが速すぎて、ようわからんのですわぁ~」

Jam所長がモニターを見ると時々、影らしきものが見えるのだが、2人の姿がまったく映ってはなく戦っている音だけが聞こえていた。

52番倉庫では秋人あきと伝雷でんらいの攻防戦が繰り広げられていた。伝雷は秋人にラッシュを浴びせかけていた。

「オラオラ、どうした秋人。防戦一方ぼうせんいっぽうじゃねぇか」

秋人は伝雷の攻撃をふせぎながら違和感いわかんを感じていた。

(パワーアップしてこの程度なのか?いや……何かおかしい……こいつ…まだ何か隠しているんじゃないか?)

秋人は考えながら防いでいたのでわずかにすきが出来てしまった。その隙を伝雷は見逃さなかった。

「腹がガラ空きだぜ秋人」

伝雷の前蹴まえげりが秋人の腹部ふくぶにクリーンヒットしばされた。

「ぐふっ…しまった!」

秋人は空中で体を半回転させ、体勢たいせい調ととのえ地面に着地した。秋人は立ち上がり伝雷に問いかけた。

「伝雷……お前何か隠してないか?」

「何を言っている秋人?訳が分からんな」

「何か、お前と戦えば戦うほど……オレの力をためしているような気がしてならないんだが?」

「だったら、こうしようじゃないか。さっきの技、雷帝打らいていだ刹那せつなだっけ、あれをもう一度俺にってこい。あの技の致命的ちめいてきな弱点に気づいたからな」

「何を言ってるんだ伝雷、刹那せつなに弱点なん……」

伝雷は秋人の言葉にかぶせて答えた。

「あるだろ、何なら俺が説明してやろうか。あの技は精神やパワーを物凄ものすごく集中するんだろ。だから打った後の数秒間は歩くことしか出来ない。もしあの技がふせがれたりえられたりしたらモロに相手の攻撃をけてしまう諸刃もろはつるぎだ。違うか秋人?」

「そこまで見抜みぬいたのか伝雷……だがオレの刹那は一撃必中いちげきひっちゅうだ」

「充電してパワーアップした俺なら耐えられるかもしれないからな」

「だったら伝雷……今度はフルパワーで打ってやるよ」

「ああいいぜ、それに耐えられたら俺の勝ちだからな」

伝雷は両手を大きく上にげて構えた。

「来い!秋人!!」

「行くぞ!伝雷!!」

2人の間にしばしの沈黙ちんもくおとずれた。お互いに意識を集中している。沈黙をやぶるように秋人が静かに言葉をはっした。

雷帝打らいていだ刹那せつな

秋人は音もなく消えた。その刹那、伝雷の腹部に秋人の右拳が打ち込まれていた。

「ぐはぁっ」

だが今回は違っていた。伝雷は膝からくずちなかった。耐えきったのだ。

「フハハハハ、耐えたぞ秋人!」

伝雷は大きく上に挙げた両手を秋人めがけて振り下ろした。秋人は思わず目をつぶってしまった。しかし伝雷の両手は打撃ではなく、秋人の両肩にかれた。

「えっ?」

秋人は状況じょうきょう把握はあく出来ず、すっとんきょうな声を上げた。

「合格だ秋人。今から俺の話しを聞いてくれ、お願いだ」

「どういうことだ伝雷?」

「とりあえず座っていいか秋人、お前の刹那……結構効いてるんでな」

伝雷は地べたに腰をおろした。それを見た秋人も地べたに腰をおろした。

「秋人タバコ持ってないか?」

「ああ、持ってる」

「1本くれないか?」

「ああ、いいよ」

秋人は伝雷にタバコを渡し、ジッポに火をつけて差し出した。

「すまない」

伝雷はタバコをくわえると秋人が持っているジッポの火にタバコの先端せんたんを近づけ火をけた。秋人もタバコを咥え火を点けた。

「それで、話しというのは何だ?」

「その前に1つ言っておく。秋人すまない、実はお前の事を試してた」

「それは何でだ?」

「三竜様………いや、三竜を倒せる者かどうかをな」

「それにオレは合格したって事か」

「そうだ、今からすべてを話す聞いてくれ秋人」

伝雷は秋人に話し始めた。


       ~唯のおつかい~


 伝雷が一通ひととおり秋人に話し終えた。

「そういう事だったのか伝雷」

「ああ、そうだ分かってくれたか」

「それなら、ちょっと待っててくれ今仲間に通信して聞いてみるから」

秋人はその場でJam所長を呼んだ。

「Jam所長、今の話し聞いてましたか?」

コントロールルームにいるJam所長はマイクに向かって答えた。

「ああ、聞かせてもらったよ。でも正直に言うと私はまだ半信半疑はんしんはんぎなんだよ秋人」

「でもJam所長、オレは伝雷がうそを言ってるようには思えないんですよ」

「う~ん、では若干じゃっかん)拘束こうそくはするが、それでも話しをしてくれるか伝雷に聞いてみてくれないか秋人」

「わかりました」

秋人は伝雷に今の話しを伝えた。

「伝雷、多少の拘束はあるけどいいかって事なんだけど?」

「ああ、別にかまわない」

「そうか、大丈夫だそうですJam所長」

「わかった、では今からそっちに特殊電子錠とくしゅでんしじょうを持たせて唯ちゃんを向かわせよう。唯ちゃんなら車より早く行けると思うから。秋人は唯ちゃんを待っててくれ」

「了解しましたJam所長」

Jam所長はテキパキと指示を出した。

「オコメちゃんは特殊電子錠とくしゅでんしじょう3つと小型の通信機を1つ用意して唯ちゃんに持たせてくれ」

「はい、わかりました」

「横ちゃんは至急、簡易冷凍保存装置かんいれいとうほぞんそうちんだ車で現場に向かってくれ」

「はい、ではいってきます」

横田はコントロールルームを出ていった。

「唯ちゃんこれ現場までの地図だよ。オコメちゃんから受け取ったら、すぐ現場に飛んで行ってくれ」

「わ~か~り~ま~し~た~唯~お~つ~か~い~だ」

「頼むね唯ちゃん」

「は~い」

         -15分後-

 ゆいは倉庫地帯の上空で瀬戸せとの車を探していた。上空から倉庫地帯を見回すと1台のワゴン車を見つけた。唯は下降かこうして上空からワゴン車に近づいていきワゴン車の上に着地した。

トンッ

ワゴン車で待機していた瀬戸は自分の乗っている車の天井から音がしたので上を見上げた。その時誰かが運転席側の窓をたたいた。

コンコン、コンコン

瀬戸は窓の方を見て驚き悲鳴を上げた。

「いやああああ」

唯はワゴン車の上に着地するとうつせになり車の上から運転席側を覗いたので、瀬戸には、ありない場所から顔が出てきたように見えたのだ。

「唯だよ~開~け~て~」

瀬戸は声に気づき窓から覗いている顔をまじまじと見て唯だとわかったので車の窓を開けた。

「唯さん、どっから顔出してるんですか!おどかさないで下さい」

「エヘヘ~ご~め~ん~」

唯はワゴン車の上からりて瀬戸に小型の通信機を渡した。

「Jam所長に~渡してっ~て~言~わ~れ~た~の~」

「私にですか?」

「そう~だ~よ~通~信~してだっ~て~」

唯に言われ瀬戸は通信を始めた。

「こちら瀬戸です。聞こえますか?」

通信に答えたのはJam所長だった。

「はい、Jamです。聞こえてます。瀬戸さん少し状況が変わったので私の話しを聞いてください」

Jam所長は瀬戸に今の状況を説明した。

「了解しましたJam所長。では唯さんと一緒に52番倉庫に向かいます」

「瀬戸さん、お願いします」

瀬戸は通信をり車をりた。

「瀬~戸~さ~ん~つかまっ~て~」

唯はふわふわと体をかせて、瀬戸の頭上に行くと瀬戸に両手を差し出した。瀬戸は上を見上げながら唯に聞いた。

「もしかして、飛んで行くんですか?」

「そう~だ~よ~」

「……わかりました」

瀬戸は両手で唯の両腕をつかむと唯も瀬戸の両腕を掴んだ。

「じゃあ~い~く~よ~」

「唯さん、あの……ゆっくりめでお願いします」

唯はゆっくり上昇を始めた。瀬戸の足が車の窓あたりまで上がると一気に急上昇した。たまらず瀬戸は悲鳴を上げた。

「ひやあああああ……唯さんんんん」

唯は一旦いったん上空で停止するとキョロキョロと辺りを見回した。

「あ~っち~だ~」

「唯さん、ゆっくり……」

唯は瀬戸の言葉を聞かずにいきおいよく飛びだした。瀬戸は再度さいど悲鳴をあげた

「いやああああああああ」


      ~決着の炎~


 51番倉庫では未来が炎基えんきに連続攻撃を仕掛しかけていた。炎基は未来の連続攻撃を受け止め、かわしながら未来に言った。

「こんな攻撃、いくらやったって無駄むだだ。未来、これがお前の本気なのか?」

未来は大きく後ろに跳び炎基との間合いを開けた。

「しょうがない……あれやるか……炎基っ、今から俺の本気を見せてやるから、少し待ってろ」

「ほう~それは楽しみだな。では、待つとしよう」

未来は目を閉じ、精神を集中した。数秒後、目を見開き言葉をはっした。

「炎帝モード・コロナ!!」

未来は全身に薄い炎の膜をまとった。

「待たせたな炎基」

「ほう~たしかに今までとは熱量が違うな、かなり上がってやがる。どれほどのものか試してやる。来い、未来!!」

「行くぞ、炎基!!」

未来は地面を蹴り一瞬で炎基の間合いに入った。それを見た炎基は。

(速い!?スピードが増した)

未来は炎基の顔面めがけて、左拳を繰り出した。炎基は右手で受け止めたがいきお)いが止まらず右手がどんどんと押されていった。

「なに!?」

炎基は未来の勢いに負け、後ろに吹っ飛ばされた。炎基は何とか体勢たいせいととのえ地面に足をき後ろに滑りながら踏ん張った。

ズザザザザっ

「なかなかの威力いりょくだ未来。正直、おどろいたぞ」

「だろっ、これが俺の本気モードだ」

表情にこそ出していないが未来は体のあちこちに痛みをおぼえた。

(いくら体が強化クローンでも、さすがに負担が大きいか……炎帝モード・コロナは体全体をつねにブースト状態しているからな……これは早くめないと……だったら)

「炎基っ!今からお前に必殺技を見せてやる」

「予告するとは、ずいぶんと余裕よゆうだな未来」

「そりゃそうだろ、ただのパンチで、あれだけ吹っ飛んだ奴には絶対に受け止めきれないからな」

面白おもしろい、やってみろ未来。全部受け止めてやる!」

未来は体にまとっている炎をすべて左の拳に集中させた。左腕を後ろに引き、炎基に向かってかまえた。

「バーニングモードラグナロク!!!」

未来は左拳を前に突き出した。左拳から巨大きょだいな炎が渦となって炎基にはなたれた。炎基は両腕をクロスさせ炎の渦を受け止めたが少しずつ後ろに押されていく。

「ウオオオオオ!!」

炎基は雄叫おたけびを上げ両足を踏ん張り押されていく体を止めた。

「ぐぬうううう」

炎基は炎の渦を受け止め必死に耐えている。その時、未来が雄叫びを上げた。

「ウオオオオオオオオ」

未来が雄叫びを上げると炎の渦の威力が増し炎基はジリジリと後ろに押されていった。数十秒間この状態が続いたが先にこらえきれなくなったのは炎基だった。炎基は炎の渦に包まれ壁に激突げきとつした。

ドゴオォォォォン

炎基は壁に打ち付けられ地面にずり落ちた。炎基の体からは黒い煙が立ちのぼっていた。

「ハァ……ハァ……ハァ……」

未来はあらい息づかいをし、少しよろめくとその場に座り込んだ。

「ハァ……ハァ……頼むから……もう立つなよ……炎基」

炎基の体がピクッと動いた。炎基はゆっくりと立ち上がり未来に近づいていった。

「ハハハ……立ちやがった……マジかよ……」

未来は立ち上がろうとしたが体がいうことをきかない。それでも未来は必死に立ち上がろうとしていたが、先に炎基が未来の前にたどり着いた。

「未来、今の技はたいしたものだったぞ。俺もさすがにヤバいと思った」

「炎基……あんた化物かよ……俺は力を使い果たしたってのによ」

「未来」

「何だよ?」

「実は俺も力を使い果たした」

炎基はその場に座り込んだ。

「ハハハ、何だよそれ。じゃあこの勝負はどうなるんだ?」

「未来、お前の勝ちだおめでとう」

「どういう事だそれは?」

「未来なら三竜に勝てるかもしれない。未来、今から俺の話しを聞いてくれ」

炎基は未来に話し始めた。



        ~次回予告~


『ヘイゼルや。みんな無事に勝ててなによりや、でもまさか三戦士がこないな事考えていたとは正直、おどろいたわ。次回はその辺りの話しやで~三戦士の真相とは?お相手はヘイゼルでした』













第4話を読んでいただき有り難うございました。ストーリーの都合上、今回もヘイゼルを号泣させる事が出来ませんでした。慎んで御詫びを申し上げます。現在第5話も書き始めています。これからも異能力者達の日常をよろしくお願いします。それでは第5話の後書きでまた会いましょう。以上jamネコがお送りしました。

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