第3話~ツバキプロジェクト始動~
お待たせしました。第3話が出来ました。今回は少しだけバトルもあります。書いている途中にいろんなネタが思いつきましたが、その中でも良い物を選びました多分………読んで見て気にいってくれると嬉しいです。では第3話を、お楽しみ下さい。
~始動~
アフパの擬態を見てから3ヵ月後のある日、灰音を除いたツバキプロジェクトのメンバーとJam所長と横田それに米田がミーティングルームに集まっていた。
「トレーニングを始めて6ヵ月、みんなよく頑張ってくれた。おかげで予想よりも早くツバキプロジェクトが完了したよ。みんなありがとう」
Jam所長はツバキプロジェクトのメンバーに向かって深く頭を下げた。数秒後頭を上げるとヘイゼルが口を開いた。
「Jam所長、こないな事で頭下げんといてください。オレ達みんなはやるべき事をやったまでやさかい」
ヘイゼルの後に秋人が続けて口を開いた。
「そうですよJam所長。ヘイゼルの言う通りオレ達みんなはあたり前の事をしただけです。そうだよなみんな?」
秋人がみんなに聞くと。
「そうですよ。Jam所長のおかげで自在に炎をコントロールできるようになったし」
「なちょも色んな事ができるようになっていくのが楽しかったよ」
「唯も~レベルア~ップ~」
「僕もチワコとトレーニング出来て楽しかったし」
「そうやねぇ~ウチも能力の制御ができるようになったんよ~あれは嬉しかったわ~」
「そうですよ。私もJam所長と一緒にモニターを見て、みんなの特性がわかりましたし」
最後に椿が言い終わるとJam所長は改めて感謝の言葉を口にした。
「そうかいみんな、でもここまで早く完了出来たのはみんなの頑張りのおかげだありがとう」
だが少しだけ違う事がきっかけで頑張りのプラスアルファになった者達もいる。その者達の心の中はというと………
秋人は………
(未来よりも早く課題をクリアできたし、未来に「秋人さん凄いッスね。俺ますます秋人さんの事、尊敬しちゃいますよ。秋人さんカッコいいです」って言われたし兄貴分の面子は保てたな。ヨシッ!)
未来は………
(トレーニングでさらに炎の威力が上がったし、もうこれってエース候補じゃなくて完璧にエースだろ、これから俺の活躍を見てみんながエースと認める日も近いなこれは)
なちょは………
(Jam所長にご褒美でごちそうしてもらったケーキバイキング美味しかったなぁ、また行きたいなぁ~、ヨシッ!これからいっぱい頑張って、もっともっとごちそうしてもらおう)
………もしかしてこの3人は……プラスアルファの部分が大きかったりして………結果オーライかな……多分……。
ちょっと脱線……話しを戻そう………改めて感謝の言葉を言ったJam所長は米田に手招きにして自分の元に呼び寄せた。手招きされた米田はJam所長の真横に立った。
「これからはオコメちゃんにもツバキプロジェクトの手伝いをしてもらう事になった。私や横ちゃんのように専属ではないけれど、みんなよろしくね。じゃあオコメちゃん挨拶お願いね」
「はい、わかりました。第1研究室主任の米田です。皆さんとはたまに、お喋りしたりしてましたけど、これからツバキプロジェクトの方にも関わらせてもらいます。皆さん改めてよろしくお願いします」
米田の挨拶の後に椿の表情が明るく笑顔になった。
「じゃあこれからはオコメさんといっぱいお話しできますね。今度一緒に闇亀ちゃんに料理教えましょう」
「いいですよ椿ちゃん」
「それはウチも楽しみやなぁ~オコメさんと料理したいなぁ~」
「闇亀ちゃんにとっておきのを教えてあげるね」
「楽しみやなぁ~」
米田と椿と闇亀が話している中、マナーモードにしていた横田の携帯がなった。横田は携帯の表示を見るとJam所長にジェスチャーで自分の携帯に指をさした。それに気づいたJam所長は片手を軽く上げわかったと横田にジェスチャーで返した。横田は携帯に出るためにミーティングルームの外に向かった。
「よしっ、オコメちゃんの挨拶も終わった事だしみんなには、これからの事について話そう。みんなは今までのトレーニングで自分の異能力の制御、コントロールの他に異能力のレベルアップまでやってのけた。これでツバキプロジェクトの最終段階が完了した。もういつでも任務に行ける状態だ。これからは任務に向けて改めてツバキプロジェクトを始動する」
「はい、Jam所長質問」
未来が手を上げた。
「何だい、未来?」
「任務はみんなで一緒に行くんですか?」
「う~ん、みんな一緒って訳じゃないよ。任務に行く実働部隊は基本的には3人1組の1チームその方が動きやすいし戦闘もしやすいからね。でも任務の状況に応じては4人1組になったり2チームにしたりするよ。後のメンバーは任務中はコントロールルームにいてもらう形だね。状況に応じて現場に向かってもらう事もあると思うから、椿ちゃんとヘイゼルは基本的にはコントロールルームで私と一緒に実働部隊の指示役をしてもらうよ。その為にヘイゼルには少しきついと思ったけど異能力のトレーニングの他に指示役の勉強もしてもらったからね」
「Jam所長、正直キツかったですわぁ~あれは、でもみんなの為やさかい頑張りましたわぁ……でもそうするとオレは任務に行く事ってあるんですか?」
「勿論あるよ。その為に椿ちゃんとヘイゼルの2人を指示役にしてるしオコメちゃんにも手伝って貰うんだからね。もしかしたら今後任務中に私が他の仕事でコントロールルームに居ない事もあるかもしれない。その時は横ちゃんに代わりをお願いするからサポートよろしくね椿ちゃん、ヘイゼル」
「はい、わかりました」
「まかしといてくださいJam所長」
「それと前に少しだけみんなに話したと思うけど任務の情報は内閣調査室、通称"内調"から私や横ちゃんに届く事になっている。すでに初任務の情報は私の元に届いているし初任務の日も決まっている。初任務は5日後、その為にこの後に内調のエージェントに来てもらって任務の内容を詳しく説明してもらう事になっている。直に現場で情報収集してる人の方が細かく説明できるからね。私も会うのは今日が初めてなんだけど……男性陣には嬉しい事かもよ、内調のツバキプロジェクトの担当は女性エージェントらしくまだ若いらしいから」
女性エージェントと聞いた未来は横にいる秋人に。
「どんな女性ッスかね~秋人さん?」
「どんな女性だろうなぁ?内調のエージェントってイメージだと可愛い系より美人系な気がするな」
「あっ、それは俺も思いました。スーツが似合いそうな美人系な女性」
「やっぱり未来もそうか、それでこう~スッとしててスタイルが良くて」
「そうッスね、イメージだとそんな感じッスね秋人さん」
未来と秋人の2人が女性エージェントのイメージを話していると…
ギュゥゥゥゥゥ
秋人は左の脇腹を未来は右の脇腹を同時に誰かにツネられた。あまりの痛さに2人同時に声を上げた。
「痛だだだだだ」
2人はツネられた方を見ると、秋人には稚依子が未来にはなちょがそれぞれの脇腹をツネっていた。
「痛たたたた、何でツネるんだよ?ちぃー」
「僕もわかんないけど、なんとなくムカついたから」
「何だその理由は…痛い痛いやめろって」
「なちょは何で……痛たたた……ツネってんの?」
「なちょもわかんないけど、なんとなくお兄ちゃんにムカついたから」
「何だよその理由は……痛い痛い……やめろ、なちょ」
ツネられている2人の所に椿が笑顔で近寄ってきた。それに気づいた秋人は椿に。
「痛たたた…椿ちゃん助けてくれ、オレは何もしてないのに」
未来も椿に気づいて。
「椿ちゃん、痛たたた…やめるように言ってくれ、俺と秋人さんは何もしてないから」
椿が2人の前に立つと笑顔で無言のまま2人のツネられていないもう片方の脇腹を同時にツネり出した。
ギュゥゥゥゥゥ
「痛だだだだだ」
2人揃って椿に。
「何で椿ちゃんまでツネるんだよぉ」
未来と秋人、2人の声がシンクロした。
「何でって言われても…何かわかんないけど私も少しイラッとしたから、ねーなちょ、ちーさん」
「そうだよねー椿ちゃん」
「だよねー椿ちゃん」
その様子を闇亀は笑って見ている。
「あはははは、何か大変やねぇ~未来君と秋人さん」
「笑ってないで助けてよ闇亀ちゃん……痛たたた」
「さすがにウチ1人じゃなぁ~3人止めるのは無理やと思うんよぉ~堪忍やなぁ~」
「そんなぁ殺生なぁー」
そんな中誰かがミーティングルームのドアを外から叩いてる音が聞こえてきた。
ドンッドンッ、ドンドンドン
その音に気づいたJam所長は少し首を傾げて。
「んっ、誰だろう?」
「あっ、もしかして……Jam 所長、僕がドア開けるよ。多分叩いてるの誰か解ったから」
「そうかいよろしくね、ちーちゃん」
「はーい」
そう言うと稚依子はツネっていた手を離しドアの方に歩きだした。稚依子が手を離すと椿となちょもツネるのを止め元いた場所に戻って行き未来と秋人は開放された。
「2人とも大丈夫かいな?」
「ヘイゼル、オレら何もしてないよなぁ」
秋人に聞かれたヘイゼルは少し考えこんでから口を開いた。
「う~ん、確かに何もしとらんけどな……自業自得なような気もするんやねんな……よう分からんけどな」
ヘイゼルの言葉を聞いた未来と秋人は2人同時にヘイゼルに向かってツッコミをいれた。
「何だよそれは!」
またもや未来と秋人の声がシンクロした。
稚依子がミーティングルームのドアを開けるとそこにはチワコがいた。
「あ~やっぱりチワコか、おとなしく部屋で待ってなきゃダメでしょ!」
チワコは怒られたと思い、少しうなだれて寂しげな声をだした。
「クゥ~ン」
「でも来てしまったものは、しょうがないな」
そう言うと稚依子はチワコの頭を撫でた。
「よしよし、1人で淋しかったの?それともお腹空いたの?」
頭を撫でられたチワコは稚依子にすり寄ってきた。
「あれ、チワコやないかい。でも何でここにいるんやろか?」
「あっそうか、まだみんなには言ってなかったね」
「ちー、説明してや」
「うん、前からJam所長にはトレーニングが一段落したらチワコを僕の部屋で飼わせてってお願いしてたの。だから今日の朝から僕の部屋に連れて来たんだけど淋しくなったのかな?僕の匂い辿ってミーティングルームまで来ちゃったみたい。Jam所長チワコも中に入れていい?」
「どないしますJam所長?」
「そうだな、来てしまったのならしょうがない。今の所は特に問題はないからチワコを入れても大丈夫だよ」
「ありがとうJam所長、チワコおいで入ってもいいって」
チワコがミーティングルームに入ると唯がトコトコと駆け寄って来た。
「あ~チワコだあ~唯も~な~で~な~でするぅ~」
唯がチワコのいろんな所を撫でだした。撫でながら唯は稚依子に訊いた
「ねぇ~ねぇ~ちーさん~唯ね~チワコの~せなかに~乗~ってみ~た~い~の~いい~かな~?」
「う~ん、どうだろう?だったら唯ちゃんチワコにお願いしてみたら」
「わかっ~た~し~て~み~る~」
唯はチワコの正面に立ち、チワコに聞いてみた。
「チワコ~唯を~チワコの~せ~な~か~に~乗~せ~て~」
唯が言い終わるとチワコが唯に近づき唯の頬をペロペロ舐めた。
「ヒャっく~す~ぐっ~た~いよ~チワコ~」
「唯ちゃん、チワコが乗ってもいいって」
「ほ~ん~と~う~ヤッ~タ~」
唯がチワコの横にトコトコと駆けて行き、チワコの背中に両手を置きチワコの背中に乗ろうとした。
「よ~い~しょ~う~ん」
唯がチワコの背中に乗ろうと頑張っているがチワコが大きい為になかなか乗れないでいた。その様子を見ていた稚依子はチワコに。
「唯ちゃんが乗れないから、チワコ伏せ」
チワコはその場で伏せをした。
「唯ちゃんいいよ」
「あ~り~が~と~う~ちーさん。よ~い~しょっ~と~」
唯はチワコの背中にまたがった。
「唯ちゃん、チワコを立たせるから気をつけてね」
「は~い」
「チワコ、ゆっくり立ってあげて」
チワコはゆっくりと静かに立った。
「うわ~た~か~い~」
「みんなの所に行くよ、チワコ」
稚依子の後に続いてチワコは唯を乗せたまま歩き出した。チワコの背中に乗っている唯は笑顔満点で楽しげだった。
「唯ちゃん楽しそうだね未来お兄ちゃん」
「そうだね椿ちゃん、唯ちゃん動物好きだしね」
「いいなぁー唯ちゃん、今度なちょもちーさんに言ってチワコに乗せてもらおうー」
「えっ、なちょが乗るの?」
未来は1度なちょの頭から足まで見ると、後ろを向き顎に手をやり考えるポーズをとりながらブツブツ言い出した。
「なちょがチワコに………う~ん……甘いものばっかり食べてるからな………大丈夫かな……チワコ……う~ん」
「ねぇねぇお兄ちゃん」
なちょに呼ばれ未来が振り向くと、そこには両手を頭の上にあげて巨大な氷の塊を持ち上げている、なちょの姿があった。なちょを見た未来は慌てて、なちょを制するように両手を前に出した。
「わっ、わっ、ちょっと待て、なちょ落ち着け」
「それってどういう意味なのか詳しく聞きたいなーなちょは…教えてくれるかなお兄ちゃん」
なちょは表情こそ笑顔だが、こめかみに怒りを表す血管が浮き出ている。
「大丈夫だ!なちょはチワコに乗れる、な、な、俺が悪かった、なちょ、とりあえず落ち着け、な、」
「なちょちゃんあかんよぉ~いくら体が強化クローンだって、さすがの未来君もそれをぶつけたらなぁ~気絶してしまうんよぉ~」
「な、なちょ、闇亀ちゃんも、ああ言ってるし、俺が悪かった謝るから、な、なちょとりあえずその氷の塊を消してくれこのとおり、たのむ」
未来は顔の前に両手を合わせて、なちょに謝りながら頼んでいると。
「お兄ちゃんなちょね、お昼ご飯の後デザートにチョコケーキ食べたいんだけど」
「へっ、チョコケーキ?」
「ダメかなぁ~お兄ちゃん?」
そう言いながら、なちょは氷の塊を持ち上げたまま未来に少しずつ近づいていった。
「わ、わ、わかった、チョコケーキな、な、買ってくるから、チョコケーキ1つな、」
「え~1つ~、なちょはみんなで食べたいのになぁ~」
「わかった、みんなの分も買ってくるから、な、」
「みんなってJam所長や横田さんそれにオコメさんのもだよ。勿論お兄ちゃんは分かってるよね」
「あ、ああ、もも勿論分かってるよ、なんならチョコケーキと他のケーキも買ってくるから」
「じゃあお兄ちゃんお願いね」
そう言うとなちょは氷の塊を一瞬で消した……お願いと言うよりは脅迫に近いなこれは………未来がホッと胸を撫で下ろしていると横田がミーティングルームに入って来てJam所長の所に駆け寄っていきJam所長に話し始めた。
「所長、瀬戸さんが15時にこちらに来るそうです。どうしますか?」
「そうだなぁ~」
Jam所長は今の時間を確認するためにスマホを取り出し電源を入れた。画面を見ると11時47分と表示
されていた。
「じゃあ横ちゃん、瀬戸さんの迎えと案内頼むね。説明はこのミーティングルームでしてもらおう」
「わかりました」
「みんな注目」
Jam所長はみんなの視線を自分に集めた。
「15時に内調のエージェントの方が来る。一旦解散して15時にまたミーティングルームに集まってくれ。それまではお昼と自由時間だよ」
ツバキプロジェクトのメンバー全員が一斉に答えた。
「わかりました」
「あと、ちーちゃん」
「何ですかJam所長?」
「その時はチワコは来ないようにしてね。もしかしたら内調の人が驚いてしまうかもしれないから」
「わかりました。その時は部屋を暗くしてチワコにお昼寝させます」
「それと横ちゃんにオコメちゃん、昼食の後でいいからミーティングルームに長机と椅子とホワイトボードの用意を頼むよ」
「わかりましたJam所長」
「わかりました所長」
「それじゃあ15時にミーティングルームで、とりあえずみんな昼食にしよう」
「はーい」
~目的~
昼食後、未来がなちょの脅迫………もとい頼まれたケーキを買い自転車で研究所へ帰る途中、前方に左腕を抑えてしゃがみこんでいる男性を見かけた。未来は少し気になりしゃがみこんでいる男性の横で自転車を止めると降りて男性に声を掛けた。
「あの~どうしました?大丈夫ですか」
声に気づいた男性は未来の方を向き話し始めた。
「ああ~すいません。左腕が痛むもので…でも少し休めば落ち着きますから、発作みたいなものですからお気遣いなく」
「だったら、この近くに公園がありますからそこで休んだらどうですか?」
「公園ですか……すいません最近引っ越してきたばかりなので、ここら辺の地理に詳しくなくて」
「だったら公園まで案内しますよ。すぐ近くですから一緒に行きましょう。立てますか?」
「ええ、何とか」
男性は苦痛に顔を歪めながら立ち上がった。身長は未来とほぼ同じ位で苦痛で顔を歪めてなければ、爽やかな好青年といった感じだろう。
「大丈夫ですか歩けますか?」
「はい、歩けます」
「公園はこっちです。行きましょう」
未来と男性は公園に向かって歩き出した。公園まで少しでも痛さを紛らわしてあげようと思い未来は男性に話しかけた。
「怪我ですか」
「ええ、前に左腕を大怪我しましてね、今はもう完治してるのですが、たまにこうやって痛む時がありまして医者が言うには怪我が治っているので痛む事はなくこの痛みは錯覚だと言うのですけど……実際痛いので俺には錯覚だと思えなくて」
「まあ、痛いものは痛いですからね。でも座って休めば治まるんですよね?」
「はい、そうですね。ところでその箱に入ってるのはチョコケーキですか?」
「はい、チョコケーキも入ってますけど……よくわかりましたね」
「すいません、俺甘い物が好きなので結構甘い匂いには敏感なんですよ」
「妹がチョコケーキ食べたいって言いだして……みんなでケーキ食べたいからお兄ちゃん買ってきてって言われたので」
「そうだったんですか。あっ、そうだ俺は焔火って言います。失礼ですが名前聞いてもいいですか?」
「俺は未来っていいます二十歳です」
「あっ俺も二十歳です。未来さんと同い年ですね」
「同い年ならさん付けしなくて未来でいいよ。そのかわり俺も焔火って呼ぶけど」
「そうだね同い年で敬語使ってるのもおかしいし」
「ほら公園についたよ焔火、あそこにベンチがあるから行こう」
「ありがとう未来ここまででいいよ。早くケーキを家族に持っていかないといけないんだろ」
「大丈夫だよ焔火、そんなに急いでないからほら、行くぞ」
未来と焔火は公園のベンチまで行くと焔火が少し顔を歪めながらベンチに腰を降ろした。未来は引っ張っていた自転車を停めると焔火に話しかけた。
「焔火大丈夫かまだ痛むのか」
「ああ、でもこうして休んでいればそのうち治まるよ。ありがとう未来」
「いいよ、それに俺達はもう友達だろ、宜しくな焔火」
「こちらこそ宜しく未来」
「あっそうだ」
そう言うと未来は自転車のカゴの中のケーキの箱を開けてチョコケーキを1つ取り出し焔火に差し出した。
「甘い物好きなんだろ、これ食べてれば少しは痛みが紛れるだろうからやるよ」
「いいのかい未来?」
「ああ、1つぐらい大丈夫だよ。妹が何個食べるかわからないから結構多めに買ったからな」
「ありがとう未来。だったらお返しに」
焔火は右手でポケットから名刺を出して未来に渡した。
「その名刺に俺の携帯番号書いてるから、今度どっかに遊びに行こうかお礼もしたいし」
「ごめん焔火、今スマホを部屋に置いてきて持ってないんだ」
「いいよ未来、後で電話してくれれば」
「わかった後で必ず電話するから、それじゃあこれ」
未来は焔火の右手にチョコケーキを渡した。
「ありがとう未来、それじゃあ遠慮なくいただくよ」
「じゃあ俺そろそろ行くから、またな焔火」
「うん、またな未来」
未来は公園の出口へと自転車を漕いでいった。焔火は未来の後ろ姿を見送るとチョコケーキを一口食べた。
「確かにこの時系列の世界の食べ物は美味いな」
そう言うと今度は残りのチョコケーキを全部口の中に入れて一気に食べてしまった。
「でも俺はもっと美味しい物を知っている………フッ……未来か……結構肉付きがいいなぁ」
焔火は舌舐めずりをして左腕で口を拭った。
-午後15時-
全員がミーティングルームに集まっていた。ミーティングルームには横田と米田が用意したホワイトボードが置かれており少し感覚を開けて長机が並べてあり人数分の椅子が設置してあった。全員が椅子に座っていた。
「未来君ケーキの差し入れありがとう。美味しかったよ」
「オコメさん、喜んでもらえてなによりです」
未来の右隣に座っている秋人が未来に声をかけた。
「結構な量合ったけど大丈夫なのか未来?」
「あまり大丈夫じゃないですよ秋人さん、あのくらい買ってこないと多分なちょが納得しないと思ったので……おかげでサイフの中にいた稲造さんが消えました……ハァー」
未来はうなだれてため息をついた。未来の左隣に座っていたヘイゼルはその様子を見て未来に向かって口を開いた。
「まぁあれは、未来の自業自得やさかいに、しゃーないわなぁ」
「ウチは本物のケーキ食べたの初めてやなぁ~美味しかったなぁ~また食べたいんよぉ~未来君」
「闇亀ちゃん、もう勘弁してくれ。今度お店に連れていってあげるから自分で買ってくれ」
「今度案内してなぁ~未来君、ケーキ屋さん行くの初めてなんよぉ~楽しみやなぁ~」
「だったら僕も一緒に連れていって未来君、チーズケーキが美味しかったら、勿論自分で買うから」
「了解です。ちーさん」
Jam所長がパンッパンッと手を叩いてみんなの視線を集めた。
「みんな、そろそろ横ちゃんが内調の人を連れてくるから、話しをよく聞いてね。大事な事だから、わからない事があったらその場で質問してね」
「はーい」
ツバキプロジェクトのメンバーが返事するとミーティングルームのドアから、コンコンとノックする音が聞こえた。
「所長、瀬戸さんをお連れしました」
「ああ、今ドアを開けるよ」
Jam所長はいそいそとドアに向かって行き鍵をあけてドアを開いた。すると横田の隣には女性用のスーツを完璧に着こなしている女性がいた。身長が160センチくらいで小柄ながらも締まる所がしまっていて体に無駄な物が一切なくスラッとしていたが残念な事に胸もスラッとしていた。髪は肩の下まで伸ばしているが前髪は眉毛の下辺りで切り揃えてあり黒淵のメガネをかけていた。
「瀬戸さん初めまして所長のJamです。今日は宜しくお願いします」
「こちらこそ、お会いするのは初めてですよね。内調の瀬戸です」
「では瀬戸さんこちらへ」
Jam所長は瀬戸をホワイトボードの前まで案内をすると米田が口を開いた。
「もしかしてセトっち?」
瀬戸は声がした方に振り向くと。
「えっもしかしてオコメ?」
「やっぱりセトっちだ。久しぶり~」
「オコメ久しぶりー」
瀬戸は米田の側に行った。
「セトっちが内調に勤めてたなんて知らなかった」
「私もオコメが研究所に就職してたなんて知らなかったよ」
2人の様子を見ていたJam所長は米田に問いかけた。
「オコメちゃん、瀬戸さんとは知り合いなのかい?」
「はいJam所長、高校の時の同級生です」
「すごい偶然だねオコメちゃん」
「はい、吃驚しました」
「それにしてもオコメってまだ胸に脂肪を溜め込んでるの?体が重くない?」
「なっ!……セトっちこそ、相変わらずスラッとしてスタイルいいよね。あれっ?高校の時より胸がさらにスラッとしてない?」
「なっ!……オコメってお酒は呑めるわよね?」
「ええ、大好物だよセトっち」
「ほう、今度飲み比べで決着つけようじゃないの」
「のぞむところよ、受けてたちましょうセトっち」
2人の間にはバチバチと火花が散っていた。Jam所長は、恐る恐る問いかけた。
「あのう~………瀬戸さん……そろそろみんなに自己紹介と任務の話しをしてほしいんだけど………」
「あぁーすいませんJam所長、つい懐かしくて話しこんでしまいました。それでは本題に入りましょう」
瀬戸はホワイトボードの所に戻ると自己紹介を始めた。
「改めまして内閣調査室S級エージェントの瀬戸希望です。担当は皆さんが知ってのとおりツバキプロジェクトの為の情報収集をしています。皆さんの事は送られてきた顔写真と資料を暗記しているで今回は皆さんの自己紹介は不要です。これからは皆さんとも会う機会が増えていくと思うので、その時にでも聞かせてください。ではさっそく本題に入らせてもらいます。今から渡す資料をご覧ください。横田さんお願いします。」
横田はみんなに資料を配った。
「この資料のグラフは何を表しているかというと、去年と今年の先月までの行方不明者数のグラフです。見比べて見てもらえばわかると思いますが今年まだ5ヵ月ほどしか経っていないのにすでに去年1年間と同じ数字くらいになっています。これは明らかに以上な数字です。私が調べた結果この数字の7割ほどが我々の敵である異世界人によるものだとわかりました。未だに何故人間を誘拐するのか、彼らの目的は不明ですが、誘拐のやり方はわかっています。それは彼らは殺さずに薬で眠らせたり気絶させた状態で人間をさらっていきます。関連性がなく無差別にです」
ここでJam所長が手を挙げた。
「瀬戸さん、ちょっといいかい。その目的の事なんけど、我々の施設には異世界人を1人、捕らえていてね、そいつの知恵を借りようと思って3日前位に聞きに行ったんだ。その事について私からも少し話したいのだけどいいかな?」
「ええ、どうぞ」
「みんな、アフパは知っているだろう。アイツに聞きに行った時の事を話そう」
-3日前-
Jam所長はリュックを背負いアフパの牢獄の前にいた。
「何しに来た?Jam」
「アフパの知恵を借りようと思ってね」
「何だぁ、閉じ込めてるうえに、タダ働きまでさせるつもりかぁ?このクソ野郎は」
「ちゃんと報酬は持ってきてあるからさ」
Jam所長はリュックを下ろし中から日本酒を一本取り出した。
「アフパはこの世界の酒が好きだったよな、知恵を貸してくれたら、この日本酒をやろうと思ってね。この日本酒は結構いいやつで私が飲みたいくらいだよ」
「チッ、だったらほら早くよこせ、どうせ見なきゃならない資料とかあるんだろ?」
アフパは鉄格子の隙間から手を出した。Jam所長はリュックから資料をだしアフパに渡した。
「チッ、結構ありやがる。ちゃんとツマミも持ってきてるんだろうな?」
「ああ、だからリュックを背負ってきたんだよ」
アフパは鉄格子の隙間に顔を近づけ大きな声で叫んだ。
「おい、ミコス!Jamに座椅子か座布団、あと灰皿2つ持ってこい!Jam、さっさと終わらせて早く飲みたいからな。集中するからタバコくれ」
「ああ、いいよ」
Jam所長はタバコ一箱とライターをアフパに渡した。タバコとライターを受け取ると再び大きな声で叫んだ。
「おい、ミコス!早く持ってこい!」
ミコスが座椅子と灰皿を抱えながら駆け足で牢獄の前に来た。
「Jam所長座椅子と灰皿をどうぞ」
「ありがとうミコス」
「アフパ、ほらよ」
ミコスはアフパに向かって灰皿を投げつけた。
「何だその違いは!お前にぜってぇー酒分けてやんねぇからな」
「アフパの酒なんかいらないよ!」
アフパに捨て台詞を吐くとミコスは帰っていった。
「チッ、あの野郎。Jamっ少し時間もらうぞ」
アフパは床に座りタバコに火をつけると資料を読み始めた。
-30分後-
「終わったぞ。Jamお前の聞きたい事は何だ?」
「その異世界人はアフパの世界の住人かい?」
「違うと断言できるな。俺の世界の住人は、この世界の物に興味はあるが、この世界の人間には興味がない。作り方を知りたければ擬態して教わった方がリスクがないからな」
「やっぱりそうか……この異世界人の目的は何だと思う?」
「行方不明者数が約2倍になってるな。強制労働かとも思ったが月々の増加の数が多すぎる。そうすると……あと考えつくのは1つしかない……最悪なパターンだけどな……食料さ……コイツらにとってはこの世界の人間は食べ物にしか見えないってことさ。例えばJam、お前が魚を釣ってきて、釣った魚を調理して食べるそれと同じ事なんだコイツらにとってはな、人間をさらっているということは何らかの加工や調理をするんだろうけどな。ホラー映画みたいに生きたまま食うわけではないだろう」
「ということは、人間をさらって自分たちの時系列の世界に連れて行ってそこから飼育場や養殖場もしくは加工する工場に連れて行くって事かい?」
「多分そうだろうな。殺さずに気絶や眠らせたりして、さらっていくということは」
「それで、この異世界人の時系列に心当たりはあるかい?」
「ああ、1つだけある。フォビアという時系列世界だ。この世界は、お前らと同じ猿人から進化した人間もいるが、その人間を捕食する生物がいる。それがコイツらさ、奴らの祖先は恐竜だ。恐竜が人型に進化したんだ」
-現在-
「ということなんだ」
Jam所長の話を聞いた瀬戸は確信を得た表情をした。
「やはりその可能性が高いですかJam所長。そう考えるといろいろと辻褄が合うんですよね」
「それで瀬戸さんツバキプロジェクトのメンバーは何をすればいいのかな?」
瀬戸はスーツのポケットから手紙を出した。
「4日前にこの手紙が内調に届きました。内容はこうです。『脆弱なる人間諸君、我々とゲームをしよう。我らの戦士たちを倒せたなら、我々はこの世界から手を退こう。まずは小手調べに我らの三戦士、炎基、伝雷、氷姫の3人と戦って倒せたのなら、三竜様たちへの挑戦権をあたえよう。脆弱な人間供の為にハンデをやろう。お前らの人数は何人でも良い事とし、どんな武器でも使用を認める。戦車だろうがミサイルだろうが何でも良い。特に期限も設定はしない。場所は色紙町にある倉庫地帯の51番~53番倉庫だ。いつでもお待ちしておりますよ脆弱な人間供、来れるものならな!フォビアの民より』となっています。まずはツバキプロジェクトの皆さんに三戦士を倒してもらいたいのです。その為のバックアップは私達内調がします」
椿が手を挙げた。
「はい、瀬戸さん」
「何ですか椿さん?」
「手紙なら送り先の住所に、話し合いで解決できませんかって返信してみたらどうでしょう?」
秋人が椿に話し始めた。
「椿ちゃん、こういう手紙は、大体送り先住所不明で送られてくるでしょう。相手の住所なんて書いてるわけないよ。そうですよね瀬戸さん?」
瀬戸は封筒の裏をみんなに見せて答えた。
「いえ、ここにちゃんと住所が書いてます」
ドンガラガッシャン!!
全員が盛大にコケた。未来が机に捕まりながら起き上がり。
「天然なのかフォビアの民って……」
瀬戸はJam所長の方を向き
「Jam所長、私からは以上です」
「ありがとう瀬戸さん。では任務に向かうメンバーを発表しようか、秋人、未来、なちょ、この3人に現場に行ってもらう。秋人は伝雷を、未来は炎基を、なちょは氷姫と対峙するようにしてくれ、他のみんなはコントロールルームだ」
「了解しました」
全員が一斉に返事をした。
「瀬戸さんは5日後の任務時は、どうされますか?」
「私は任務に行くメンバーを近くまで車で送って行き、そこで待機しています。Jam所長そろそろ私はこれで」
「そうですか、今日はありがとうございました。みんなもお礼して」
「ありがとうございました」
「あっ、オコメちゃん」
「はい、Jam所長」
「瀬戸さんを玄関ホールまで案内してあげて」
「わかりました。行こうセトっち」
「よろしくねオコメ」
瀬戸と米田はミーティングルームを出ていった。
「みんな今日はこれで終わりだ。後は自由にしてくれ」
ツバキプロジェクトのメンバーはそれぞれの自室に戻っていった。自室に戻った未来はポケットから名刺を取り出して書かれている携帯番号に電話をかけた。2、3回コールした後に相手が電話に出た。
「はい、もしもし」
「もしもし、焔火か未来だ」
「未来か、よく掛けてきてくれたな」
「電話遅くなって悪い、この番号俺のだから登録宜しくな焔火」
「わかった」
「焔火も気軽に連絡してくれよ」
「OKだ、未来」
「じゃあ、またな焔火」
「またな未来」
未来は電話を切るとベットに寝転がり1人言を呟いた。
「友達かぁ」
~開戦~
瀬戸の説明から5日後の午後20時全員がコントロールルームに集まっていた。
「みんな集まったね。これから初任務だ。実働メンバーにはこれを渡しておこう」
Jam所長は3つの耳かけタイプのワイヤレスイヤホンを取り出した。それぞれ色分けされており、赤、黄、水色の3つだった。
「これはそれぞれ専用のイヤホン型通信機ってとこかな。赤は未来、黄は秋人、水色はなちょのだ。着けたまま異能力を発動しても壊れないようにしてあるから安心してくれ」
3人はそれぞれ自分のイヤホンを耳に着け始めた。着けながら未来が、なちょに聞いた。
「で、なちょはその服で行くの?」
なちょの服装は白いふわふわのスカートのロリータファッションだった。
「カワイイでしょ、お兄ちゃん?」
なちょは、くるっと回ってみせた。
「Jam所長これいいんですか?」
「特に服装は自由だし任務に支障がなければ問題ないよ未来。なちょ似合ってるよ」
「Jam所長ありがとー、なちょも絶対似合うって思ってたんだぁー」
未来がヘイゼルに助け舟を求めた。
「ヘイゼル~どう思う」
「Jam所長もいい言うてはるし、別にええんとちゃうか未来」
「そうなのか………」
Jam所長は任務の話しを続けた。
「あとは3台の飛行型最小小型カメラはすでに飛ばしてある。モニターを見てくれ」
Jam所長はモニターにカメラの映像を映した。モニターは3分割されていて、それぞれに未来、秋人、なちょの後ろ姿が映し出された。
「これで3人の様子を見ながら指示が出せる。それじゃあ3人は瀬戸さんの車に乗って現場に向かってくれ。瀬戸さんお願いします」
「では、未来君、秋人君、なちょさん行きましょう」
唯がなちょに話しかけた。
「な~ちょ~ちゃん~がん~ばっ~て~ね~」
「唯ちゃん、頑張ってくるね」
「あっくん、ファイト」
「おう、任せろ、ちぃー!」
「未来お兄ちゃん、気をつけてね」
「ありがとー、椿ちゃん」
「ウチも応援しとるよぉ~頑張ってなぁ~みんなぁ~」
「未来、秋人、なちょ、頑張りやあ~」
みんなの声援を受け3人と瀬戸はコントロールルームを後にした。
-30分後-
3人を乗せた車は倉庫地帯の入り口に到着した。瀬戸は車を道路の脇によせて停車した。
「皆さん、ここから見える、あの角を右に曲がれば指定された倉庫の前に着きます。私はここで待機していますので何かあればすぐに来てください。お気をつけて」
3人は車を降り歩き始めた。角を曲がるとフードを深く被り顔を隠した男がいた。
「お前ら何処に行く?この先には使われてない倉庫しかないぞ」
3人が歩みを止めると秋人が口を開いた。
「三戦士に用があってね」
「人間の対戦者か……ついてこい」
男が後ろを向き歩きだすと秋人が声をかけた。
「おい、顔ぐらい見せたらどうだ」
「チッ、めんどくせえなぁ。大丈夫だ俺は中立だ、お前らとは戦わねぇから安心しろ」
「だったら、尚更顔を見せろよ」
「チッ、わかったよ」
男は3人の方を向いてフードを脱いだ。顔を見た3人は驚いた。
「アフパ!!」
そこには擬態を解いた時のアフパの顔があった。
「お前らには同じに見えるか、俺はアフパさんじゃねぇよ。アフパさんと同じ世界の住人だ。フォビアの民に見届け人を頼まれたんだ。だから俺は中立だどちらの味方でもない。奴らはこういうゲームが好きでな、必ず中立の審判役を立てるんだ。そうだなジャッチと呼んでくれ、行くぞついてこい」
ジャッチは振り向くとフードを被り歩き出した。3人はジャッチについていった。歩きながら未来がジャッチに聞いた。
「何でまた顔隠すんだ?」
「俺は擬態が不得意でな。この世界では、この顔は化け物だろ。ほら着いたぞ説明だ。右の51番倉庫には炎基がいる、真ん中の52番倉庫には伝雷がいる、左の53番倉庫には氷姫がいる。帰る時は俺に一声かけてくれ、俺はここにいるから。さぁ好きな所に入れ」
3人がそれぞれの倉庫に向かって歩き出した。
~炎術者未来~
未来が51番倉庫に入ると、大男が腕組みをして仁王立ちしていた。身長は190センチくらいあり、服の上からでもわかるくらいの筋肉質でガタイがかなり良かった。
「炎基ってあんたか?」
「そうだ、人間の対戦者か?」
「そうだけど」
「なら小手調べだ」
炎基は横にある巨大な鉄の棍棒を肩に担いだ。
「言っとくけど、俺に鉄は効かないよ」
「だったら試してやるよおぉぉぉ」
炎基は一瞬で間合いを詰め未来に巨大な鉄の棍棒を振り下ろした。未来は右手を挙げ瞬時に右手に炎を纏わせた。炎を纏うまでにかかった時間は僅か0.2秒だった。巨大な鉄の棍棒が未来の右手に触れた瞬間に鉄の棍棒が蒸発した。
「なにっ!」
未来は左腕を曲げボディーブローの構えをとった。
「ブーストっ!」
未来が叫んだ瞬間、超高速で炎基の腹にボディーブローが打ち込まれガタイのいい炎基が物凄い速さでフっ飛び壁に激突して凄まじい音が辺りに響いた。
ドガアァァァァァァン!!!
「だから言ったろ、俺に鉄は効かないって。あれ?もう終わりか以外に呆気なかったな」
「誰が終わりだって」
炎基が立ち上がりパンっパンっと服についた埃を払い未来の方を向いた。
「お前、炎使いか……一瞬見えたぞ、左肘の先からロケット噴射のように炎を出して超高速で俺の腹に打ち込みやがった。合格だ、お前名前は?」
「未来だ」
炎基がニヤっと笑った。
「おもしろい戦闘になりそうだな未来!!」
未来もニヤっと笑った。
「そうだな炎基!!」
~次回予告~
『秋人だ、トレーニングでかなりレベルアップしてるな未来は、それでこそオレの認めた弟分だ。これはオレもウカウカしてられないな。次回は未来VS炎基の続きからだ。オレとなちょの活躍も出るかもな?お相手は秋人でした』
第3話を読んでくださり有難うございました。そういえばヘイゼルを号泣させるのをすっかり忘れていました。すいません。次回は号泣させたいと思います。第4話をお楽しみにそれでは第4話の後書きでまたお会いしましょう。以上jamネコがお送りしました。