『7』 異世界について
「あ、アヤヒ殿。他には何か食べたい物はござらぬか?」
「もうお腹いっぱいだから良いよ。本当にお金に余裕があるんだね。結構がっついたつもりだったんだけど」
「うーん、そんなことは無ぇと思うけどな」
ラークさんにお腹いっぱいになるまで奢ってもらっちゃった。ふぃ~、もうお腹は満足だね。満足したお腹をポンポンと軽く叩いて、気分良く街を歩いている。
もう食べ物は良いかな~?飲み物も買ってもらったジュースが余っているし。
後、ずっと奢られっぱなしなので、流石にそろそろ抑えないとと思ってね。
ラークさんの財布自体は、そこまでダメージを受けている様子も無く、まだ私に奢ろうとするくらいの余裕はあるみたいだけど。
これ以上奢ってもらうと、本人が良くても私が良くないから。
だから、もう奢らせないようにするために、いかにも満足というところをアピールしているんだ。アピールというか、本音なんだけどね。
「…………あっ、ちょっと前にした異世界の話について聞きたいことがあるんですけど」
「おう、気になることがあるんなら聞いてくれよ?お兄さん、何でも答えちゃうぜ?」
「あぅぅ…………そ、そうね?」
「………………引いてる?」
「引いてる」
そりゃ引きますよ。いきなりキメ顔をしてくるんだもん。何て反応すれば良かったのか分からなくなっちゃったんだよ。
まぁ、引いていたんじゃ話も進まないので聞きたいことを聞いていこうと思う。まずは、異世界の行ったり来たりについてだね。
そのことに関して詳しく知りたいなって思った。もしかしたら、私が元の世界に帰れるヒントが見つかるかもしれない。多分、可能性的には低いかもしれないけど、何かしら行動はしないと何も始まらないからね。
どれだけ小さい手がかりみたいなものでも、立派な情報なわけだしね。それじゃ早速、質問タイムですね。
「えっとですね、ラークさんが言っている別の世界というのは、何処の世界なのかなって思って」
「日本ってところだな。俺と同じく異世界を行ったり来たりできる奴も日本以外に行ったって言うのは聞かねぇな。多分、スキルの都合上、そこしか行けないみたいなんだよ」
「に、日本!?」
思わず大声を出してしまった。私の大声でラークさんはビクッと身体を震わせた。無意識に出してしまったので、ハッと気づいて慌てて」両手で口を塞いだ。ふ、ふぇ~、恥ずかしい…………絶対に顔真っ赤だよ。だて、すごい熱持ってるもん。
でも、日本にラークさんが来ていたってことに正直言って、驚きを隠すことなんてできないと思う。それだけ衝撃的なことであって…………
ラークさんは、日本に行ったという証として、運転免許証を私に見せてきた。免許証を持っているてことは、日本にも住んでいる場所があるってことだよね。行ってるどころの話じゃないみたいだね。
名前のところには、『茅野禎丞』と書かれていた。
え、え~っと………なんて読むんだろ。小6の知識じゃ全然読めない漢字が並んでいる。読めるの、”野”くらいしかない。”茅”と”禎丞”って何て読むんだろう。
「ラークさん。名前、何て読むんですか?」
「茅野禎丞って読むんだ。”禎丞”は、初めて見る人は読めないからな。俺も日本に転移する時に自動的に与えられた名前がこれだったから、初見じゃ読めなくて大変だったよ。結構勉強していたつもりだったんだけどな」
(ま、また難しい話が………)
ラークさんが日本の名前を得た流れの話は置いといて、名前の読み方が分かったので、私はそれだけで十分だった。