◈◉【第八十四帖】◉◈
そもそも、概念が江戸時代の時代背景をそのまま反映されているから、優姉ちゃんとちぃねぇは町人の格好なのに、普通に腰に刀を差している。
武士しか帯刀の許可が下りていない時代で町人が刀を差して町中をブラブラするなんて………周りから見れば、相当な強心臓に見えているだろう。
しかも、女が帯刀しているわけだから。
江戸時代なんて男尊女卑が文化みたいなところが強い時代だし。町人の女が男のように振る舞って、しかも帯刀しているってなってら、明らかに異様な光景であることは間違いない。
しばらく町をフラフラしていると、目の前から武士の集団が私達の前に駆け寄ってきた。周りがヒソヒソと話していたから、優姉ちゃんの異様な様子を誰かが通報したのだろう。
電話で警察を呼ぶというシステムが無かった時代にしては、なかなか早い対応だと思う。それか、たまたま近くに居た武士が話を聞いて、それで近くの武士の人間達に声を掛けたっていうところか。
武士に囲まれる私達。
ちぃねぇと優姉ちゃんは周りを見渡しながらも、仁王立ちでキセルを燻らせていた。ちぃねぇは真顔で眉間にシワを寄せていたが、優姉ちゃんは妖しげな笑みを浮かべていた。
優姉ちゃん………悪い癖が出ちゃっているよ。
「貴様、町人の女という分際で帯刀しているとは何事だ!!それに、そのキセル……町人には嗜好品は制限されているはずだ!!女がそんなものを吸うなんて立場を分かってるのか!?」
「はぁ?何言ってんだ?オメェ」
「口の聞き方に気を付けろ!!無礼者!!」
「それはお前らに言えることだろうがよ。そもそも、女3人相手に男10人くらいで刀向けて恥ずかしくないんかね?女を集団で斬り殺すのがお前らの武士道ってわけかい?そんなの知ったら、アンタ等のお上も恥ずかしくて表に顔出せなくなっちゃうよ?」
「優香、変な煽り方しないの。あまりこんなところで騒ぎ事起こしたくないんだから………外に出て、揉め事とか………本当に勘弁してもらいたいもんだよねぇ……」
「はいはい。それは申し訳無いことをしちゃいましたね。トラブルメーカー気質なのは勘弁してくだせぇな」
「はぁ………今に始まったことじゃないから今更どうこういうつもりも無いから良いんだけどさ」
「掛かれ!!」
「あーあ、どーなっても知らないんだからね?」
「せぇぇりゃぁぁ!!」
優姉ちゃんに一人の武士が斬りかかる……と、同時に斬りかかった武士の胴体から血が吹き出した。右から左の脇腹に掛けて深い裂傷が入ったのだ。
そのまま武士は地面に倒れた。ピクピクと動いていたが、ほぼ即死みたいなものだろう。
町人達は悲鳴を上げながら近くの建物の中に避難した。他の武士はビビりながらも優姉ちゃんに対して刀を構えたままでいた。切っ先が小刻みに震えていた。
目の前で同胞が一撃で殺されたら流石に怖いよね。しかも、優姉ちゃんは刀を抜く構えすらもしないで相手を斬り殺したわけだから。
この戦い方………綾音さんなんだよな。相手には抜刀したという認識すらも持たせずに、気付いたら斬られて致命傷を負わせられているという電光石火の居合い斬り。
元々は美紅さんが考案したらしいけど、それを完成させたのが綾音さん。よほどの実力者ではない限り、抜刀の速度が目に追えなくて簡単に斬り伏せられるというもの。
刀には一切触れている様子もなく、ただ立っている状態から繰り出されるわけだから。




