re.cord {two-hundred-sixteen}
「ありゃりゃ。ここも終いか。巻き込まれる前にとっとと行った方がいいか」
「窓越しからでも鮮明に伝わる存在感よ」
「オリジナルは意外と影薄いけどね。キャラ濃いのに存在感薄いっていう謎」
「それは本当に謎だな」
「早く移動しよう。巻き込まれたら溜まったもんじゃないし」
「ういー」
私達は修道院から、メイサさんに会った広場の方に転移した。普通に歩いてとかの移動だと私達まで追撃されるかもしれない。要らないリスクは背負いたくない。
広場に転移した直後に、休憩がてら一服しようと思い、優香からラッキーストライクを1本貰った。色々とストレス溜まりすぎて久し振りに紙タバコを吸いたくなった。
口に咥え、ライターで火を付けようとした途端……修道院の方から轟音が聞こえてきた。家に居た住民も中からゾロゾロと音を聞き付けて外に出てきてはザワザワと騒ぎ始めていた。
広場に人が集まり始めたので、とりあえずは人気の無い路地裏に隠れて騒ぎが落ち着くのを待った。
あの破壊音は………完全に更地にされた音だろうな。
地下室ごと、吹っ飛ばされている可能性もある。上の建物だけ更地にして、仮に地下室が無事だったとしても、綾音さんの人格が反映されているクローンなら、間違いなく地下室を見つけ出してメイサさんも殺しにいくだろう。
適当なところが目立つけど、戦闘や重要な仕事に関しては一切手を抜かないっていうストイックな性格も持ち合わせている。
兄である美紅さんが「母親に似ていて、母親よりも冷酷な一面がある。年を重ねる度に顕著になっている気がする」と言わせるくらいの人間だ。
高校時代の人格が反映されているのかもしれないが………年齢が若い分、思い切りがありすぎるせいで、力の加減をするなんて頭は無いだろうから。
1回目の凄まじい破壊音から数分後、再び同様の音が辺りに響き渡った………ふと、その方向を見ると、天高く漆黒の渦が昇っていた。黒い、巨大な龍が上空に昇っているかのような光景だった。
破壊音が咆哮にも思えなくないような、そんな状況………メイサさんを含め、修道院に居た全員の命は消えてしまっただろうね。
戦闘力を一切兼ね備えていない人間が、綾音さんに本気で殺意を向けられて生き残っていられるはずがない。
クローンとは言え、あれだけのことをやっているのだから。あんなのを食らって生きていられる人間なんて、同じ総督府の最前線組という立場の人間だけだ。
私でもマトモに食らったら、重傷で済めば運が良いと思えるくらいの威力だ。あんなん、歩く殺戮兵器だもんね……
「おいおい、修道院の方で何が起こってるんだ!?」
「あの黒い渦は………何?」
「龍………?第三次世界大戦の時、滅びた国々の中に、あれと同じものを見たという人間を聞いたことがある。まさか………それと同じことが………!?」
(住民が………結構騒いでるな………まぁ、一応は重要な施設が破壊されてるんだから、当たり前の反応か)
「あー、綾音さん。クエストで国潰しやったもんね。派手にやっちゃったってから変に噂立ってたんだよね~。まさか、未だに言われるなんてね~」
「あの人、本当に昔っから荒っぽいみたいね~」




