re.cord {one-hundred-twelve}
「………こ、ここでお話もなんなので。中の方までご案内いたします」
「「はーい」」
「リリス様も」
「うん」
「特別に取り寄せたワインもございます」
「あ、ありがとう」
「なんか……こういう部下に凄い気を遣わせた喋り方をさせる人間って、あんま好かないんだよね」
「ちょっ、優香」
「そうだよね。こんな負け犬の分際で何を調子に乗ってるんだっていう話だよね」
「ほらー、落ち込んじゃったじゃん」
「自分の立場をアピールしていないと自分を維持できないとか、そんなしょーもない人間がこの先生きていけるとは思えないよ。フェアな立場で話すということが出来ないのかなって」
「言い過ぎだってば」
「ははは………何も言えない……」
「優香様。確かにおっしゃることは分かりますが……相手への敬意を示すというのも、一つの作法でございます。なんでも対等であるから正解というわけではございませんよ?」
「初対面の相手となれば話は別なのは理解しております。しかし、ある程度の関係値が築かれている状態で主従関係のような仰々しい関係が続いているとなると、それはそれで反乱の元となります。現に、それで祐は異界貴族九刃に殺されそうになっていたわけですから」
「よく見てるな………」
「否めないから、何にも言えない………」
「ただ、自分達はリリス様に個人的に払いたいという忠誠を持っています。そんな雑に扱うなんていうことはできません」
「ちょっとディスっていた癖に」
「リリス様もいちいち言葉の一つで一喜一憂しないでください。ここまで自分の意見が強いお二方とは思わなかったのですから。ある程度は大人しくさせるというのもリリス様のお仕事ですよ」
「無理だったんだよ。そもそも、命の恩人にそんな余計なこと言いたくないし」
「はぁ………全く。昔からですよね。リリス様は。考え方が子供っぽいですよ。その分、損得勘定で動くということをしないので。だからこそ、安心して私達も心を許せるというものですが」
「ごめん……気を遣わせちゃって」
「おい、優香。お前が余計なことを言うから雰囲気悪くなっただろ。故意に空気を読まない行動で周りを乱すなっつってんじゃん。何回言わせたら気が済むの?」
「うるせぇな。こういうので痛い目見てきたし、ろくな目に遭わなかった連中しか居なかったからな。それで何か遭ってからじゃ遅ぇんだよ」
「そのための私達じゃん。万が一のことに備えての私達っていうのも忘れたの!?」
「なんなんだよ。万が一って。万が一もなにも、私はこの世界が崩壊しようがどうだっていいんだよ。確かに、さっきのような親子が暮らせる平和な世界って言っても、そこまで面倒見れないって言ったじゃん。犠牲を厭わないでって祐も言ってたんだから。それだけ今回の戦いにおいては、犠牲を多く払わないといけないっていうこと。既に殺されたりしている一般人だって居るんだ。それで一回一回落ち込んでいたらどうしようもないじゃん」
「チッ………」
「あらあら………険悪な雰囲気に……」
「仲が良いからこそ、本音でぶつかり合えるんだよ。羨ましいよ。2人の間柄は」




