『52』 シルエルと先生
「………シルエルは、僕に戦いのことで色々と教えてくれた人だ。簡単に言えば……師匠みたいな人だった。でも、憧れの存在じゃなかった。僕のことを自分の目的のための道具としてしか見てなかった………その道具にならせるために………僕に戦いの技術を学ばせた………!!」
(い、いきなり重い話で始まっちゃったな………ここは、黙って聞いておくだけにしよう)
「すまないね。君みたいな幼い女の子に愚痴るようなないようじゃなかったね。それじゃ、僕が君に……君達に伝えたかったことを伝えるよ。アヤヒちゃん………今度、シルエルに会ったときには、必ず勝つんだ!!」
「あっ………えっ………そんなお願い………何で………」
「2度、アイツに負けて命があった人は居ない。1度は見逃しても、2度目は無いからね。だから………次に会うまでには、今よりも強くならなくちゃいけない………分かったね?」
「は、はい………何とか、します」
先生から愚痴っぽいのを聞かされた後、今度シルエルに会うまでに強くなることを言われた。それを言われた後に、ズボンのポケットから小さな紙を取り出し、白衣の胸ポケットからペンを取り出した。
そして、何を書いていた。紙の大きさからして、長々と何かを書けるって感じじゃないよね?何を書いていると考えているうちに、先生から紙を手渡された。
その紙に書かれていたものは………名前と電話番号だった。しかも、カタカタの名前と漢字の名前も。
書かれていた名前は、カタカナの方が″サージェス・メルトクリア″。漢字の方が″子安大輔″。ご丁寧に振り仮名を振ってくれたので読めた。
何で日本語を知っているのかなっ~て一瞬思ったけど、この世界の人って日本に行っている人が多いみたいだから、日本語が書ける人が居たって不思議なことじゃないよねって切り替えた。
サージェスさん………こうやって名前を教えてくれたってことは、これからも何かしらの形で関わっていくってことでいいのかな?私は紙からサージェスさんの方に視線を移した。
それと同時に、サージェスさんが私の頭を撫でてきた。
急に撫でられたからビックリして変な声を出してしまった。サージェスさんが私の頭から手を離すと、私は撫でられた辺りを両手でおさえていた。
そして、屋上の出入口の扉の鍵を開けて、私の横を通って階段を降りていった。その時の表情は優しい笑みを浮かべていた。こういうのって、ピュアな女の子はキュンって来ちゃうよね………別に、好きになっちゃったとかじゃないと思うけど。
「それじゃぁ、そういうことだから。あの2人にも分からないことがあって、自分じゃどうしようもなくなったときに連絡してくれれば、僕もわかる範囲で答えてあげられるから。あまり変に悩まないで気軽に掛けてくれていいからね」
「は、はい。わざわざありがとうございます!!」
「ハハッ、じゃあまたね。体にも気を付けるんだよ。退院の許可の手続きとかは僕が済ませてくるから、その間は、2人と適当な話をして時間を潰しておいていいよ」
そう言って、サージェスさんは下の階まで降りて行った。サージェスさんも、色々と大変な人生を歩んできたみたい。暗殺を仕事とする人に育てられたお医者さん…………人を殺すための技を教えてもらって人が、人の命を助ける仕事をしている。
サージェスさん、今もこの複雑な自分自身について悩んでいるみたいだよね。もしかして、人を殺すために生まれてしまったような自分自身と別れるために、逆に人の命を助けることができるお医者さんになったのかもしれない。
(サージェスさん…………)
サージェスさんの話したことを頭の中でリピートするように残っている。今の私は、少し暗い顔になっちゃっているかもしれない。ううん、そうだよね。私が暗い顔をしている時じゃないよね。
サージェスさんにも、2人にも、また心配をかけさせちゃう。それじゃ駄目なんだよね。ちゃんと、いつも通りに元気な戦う最強二刀流の女の子・沢城彩陽でいかなくちゃね!!
私は、両手で自分の顔を軽く叩いて深呼吸をしてから、屋上の出入り口の扉を開けて、また屋上へと出て行った。




