『35』 ついに出てきた竜
「クンクン…………おい、何か臭ぇぞ?」
「あぁ、これは………火薬の臭いか?俺が嫌いな臭いじゃない」
「確かに、ちょっと臭いですね」
《我が縄張りに足を踏み入れし愚か者よ。我が怒りの矛先の目標となるべし》
「おい、喘いだと思ったら喋ったぞ。マジで生きてんのか?この森は。ウッハハ~、ちょ~ウケる」
「何にも面白くないから」
「誰が喋ってんだよ。森の中に棲む生き物で喋るヤツとか居るのかよ。なぁ?教えてくれよ、アヤテト」
「わ、私に振らないでくださいよ!!」
《出ていかぬというのなら………殺すまでだ!!お主等も、今まで来た愚かな連中と共に骨も残らず消え去るがいい!!》
(えっ………さっきからイタイタしい台詞を言ってるのって………まさか!?)
____ゴォォォォォ!!!!____
「…………………………………ッ!!??」
何処からか聞こえてくる声に戸惑っているところに、私達のすぐ側で熱風がいきなり吹き付けてきた。咄嗟に剣を引き抜いて熱風を防ぐように構えてみる。
たまたま、火の方のスキルが発動してくれて、それが壁となって私達を熱風から守ってくれた。何とタイミングが良いのでしょうか。2人も熱風から守られている間に臨戦態勢に入っていた。
熱風………というか、炎の津波だよ。炎の壁を出していなかったら、本当に丸焦げになっていたところだよ。
防いでいても少し熱いくらいだからね。どんだけ高火力を出してくるのかな…………後、地味に長いし。
「ねぇ………お二方。そろそろツラくなってきたんですけど………」
「おう、そうか。頑張りたまえ」
「そろそろ相手の燃料切れの頃だろうから、踏ん張れ!!」
(手伝う気さらさら無いじゃん!!)
結構ツラいんだから勘弁してよ~っと思っていたら、ピタッと熱風がおさまった。急に止まってビックリした。でも、それに加えての安心感があった。
炎の壁をして、敵の様子を見てみる。
うん………敵の様子の前に、周りにあった沢山の木が綺麗に無くなって平地になっているんですけど。縄張りとか言ってた癖に普通に燃やすんだね。
そして、平地になった森だったところに竜が空から翼を羽ばたかせながら降りてきた。蛇みたいに細長いタイプの竜じゃなくて、いわゆるドラゴンっていう感じの竜。
その竜は、口から炎を溢れ出させながら私達の方を睨み付けている。口から火を出すって、ゲームの中じゃ割とベタな竜だね。でも、これはあくまでゲームじゃないから、口だけから火を出すとは限らない。
本当に謎が多いんだよな………何処から手を付けたら良いのか分からないんだよな。今はまだ、敵の出方を見た方が良いね。
《お主等、そんなちゃちな剣で我が体を斬ることなど出来るわけがなかろう!!人間風情が出しゃば_____》
「口よりも体を動かしてよ!!いつになっても先に進まないじゃん!!」
「アヤテト………アヤテト………めっちゃ唾飛んでる…………」
「うぅん…………とりあえず!!早くしてよ!!」
《…………………………………………………》
「何か、機嫌悪ぃみてぇだな………どうしたんだ?」
もう、我慢できないよ。
口では大きいこと言ってるのに全然体を動かさないんだもん、この人。嫌、人じゃないんだけどさ。普通?に会話していたから人だと思っちゃっていたんだよ。
そもそも、何で喋ってんの?意味分からないんだけど!!
ちょっと考えてみてよ?飛んで火を体から出してくる大きめのトカゲが喋っているんだよ?しかも、自分がまるで神様のように上から目線で話し掛けてくる。
ウザいったらありゃしないよ。この際だから、もう言っちゃうね。あまりこういうことって言っちゃ駄目なんだろうけど、相手が相手だし、許してくださいね。
私は竜に対して溜め込んでいた不満を、今から言う一言に全てを込めてぶちかまそう。
「と、トカゲが喋ってじゃねぇぇぇよぉぉぉ!!!!!!」
《えぇぇぇぇ!!??何故キレられたのだ!?》
「く、口調が………凄い荒くなっていますよ………?アヤテトさん………」
「はぁ…………はぁ…………喉潰れそ………」
《此奴………何者だ………?》
「人ってやっぱ、キレたりなんなりすると人変わるんだな………」