『34』 竜の棲む森
「ここか、竜が棲むっていう森は」
「みたいだな。多分、見たところ入り口ってところだな。情報によると、竜は森の奥地に巣を作っているらしいぞ」
「となると、ここから少し歩かないといけない感じですか?」
「嫌、そうとは限らねぇみてぇだぞ。巣は奥にあっても、森全体が縄張りみたいなもんだろうから、入った瞬間からいつ来てもおかしくないと思った方が良いな」
「分かった。気を抜かずにゆっくり進むよ」
森の入り口について、森の様子を少し見た後に中へと入っていった。風が全く吹いていなくて、月の光で照らされている木が何となく不気味だったりする。
怖いけど、テンションが上がるね。暗いところって1人だと怖いだけど、何人かで居ると何故かテンションが上がるんだよね。何でだかは自分でも分からない。分からないのにテンションは上がる。
これから戦うって言うんだから、テンションが低いよりも少し高い方が良いと思う。萎えている状態で戦うとか絶対に危ない気がする。
ラークさんも、この暗い感じでテンションが上がるタイプの人みたいで、近くの大きめの木に近付いて座って根っこを辺りをいじくったと思ったら、変なキノコをみたいのを持ってきていた。
ユーリさんが保っていた灯りで照らして見てみると、いかにも毒キノコ感が漂うキノコだった。
何のキノコか誰も分からないけど、ラークさんは「使えるかもしれない」って言って、ポケットから小さめの折り畳まれた紙袋を取り出して、そこに毒かもしれないキノコを入れた。
「おいおい、俺達はキノコ採集に来たわけじゃねぇからな?」
「分かってるって。何か面白いカラーリングしていたから、ついつい取りたくなっちゃって」
(薄暗いのによく色がどんなだか分かったよね。これも経験のうちなのかな?どうなんだろ………?)
____ザァァァァ…………オォォォ………____
「………………………?何か生温かい風が…………」
「オォンとか聞こえたぞ?まさか………!!幽霊………!?」
「何だと!?幽霊ならば強制成仏!!ハッ!!」
「絶対に違うと思う。絶対に違うと思う」
____アァァァァ…………ゴォォォォ…………____
「森が…………喘いでいるだと!?」
「やっぱり、森も生きているんだな。自然は大切にしなきゃな」
「ちょっと何を言ってるか分からないです。もう、ちょっとどころの話じゃない気もするけどね」
ラークさんがキノコを見つけてしばらく歩いたところで、今までとは明らかに違う何かを感じた。生温かい変な風が吹いてくるし、変な音が聞こえてくる。
その変な音について、ラークさんが馬鹿みたいなことを言っているけどね。これはもうフラグとした言いようが無いね。ゲームとかの影響で、この言葉だけは何故か頭に入っている。死亡フラグとか、そんな感じで。
今は……死亡フラグじゃないけど、何かのフラグが立っている。多分、というか絶対かもしれないけど、何かが出てくるかもしれない。
その何かかは、竜のはず………
剣を構えて、いつでも戦える状態にしておこうかと思ったけど、まだちょっと待ってみようかなって思った。後ろから攻撃されない限り、多分剣を構えてなくても何とか防げるはず。
一応、いつでも抜けるように心の準備はしておこう。