『31』 夕飯を頂きます
「いただまぁ~す!!もぐ………んぐっ…………んぉ!!お、美味しい~!!凄い美味しいよ!!ユーリさん!!」
「ハハハッ、喜んでくれて何より何よりだ」
ラークさんが私に蹴られた股間の痛みが無くなったところで、皆で夕飯を食べ始めた。
最初に何かのタレで煮込んだ何かのお肉を一口食べてみた。これが素で叫んでしまうほど美味しかった。今まで食べたお肉の中で一番美味しいかもしれない。
牛肉でも豚肉でも鶏肉でも無いお肉。サイコロステーキにみたいに四角くカットされていたんだけど、サイコロステーキとは違って、軟骨を食べているようなコリコリとした食感があった。
でも、ちゃんとお肉っていうのは分かる。簡単に言うと、食感がやたらとコリコリとしている鶏肉を食べているような感じ。何でお肉なのにこんなにもコリコリとしているのかな?
この世界ならではの生き物のお肉ってことだよね?ちょっと何のお肉を使っているのか気になるね、これは。
何のお肉を使っているのか、ユーリさんに聞いてみよう。食べたことない物だから、凄いワクワクしている。
「ユーリさん、これって何のお肉使っているんですか?」
「『タルボルナラのモモ肉』だ。コリコリしていて、噛めば噛むほど味が口の中に広がっていくんだよ。単価も安いし、財布に優しい絶品だぜ!!」
「た、たるぼるなら?な、何かマジで聞き覚えの無い名前出てきたんだけど………どういう生き物なの?」
「アヤヒの世界で言ったら、大きさが俺よりも一回りデカいカエルみてぇヤツだな。しかも、バッタみたいな羽生えてるし」
「え″っ!?カエルなの!?これカエルですか!?」
「ヤバい………アヤテトのリアクションウケる………」
何と、私が美味いといって食べていたお肉は、カエルのお肉でした。そもそも、羽が生えているカエルって何?相当気持ち悪くないですか?
しかも、生えている羽がバッタの羽って…………うっへぇ~、想像しなきゃ良かったと後悔するほどの気持ち悪い生き物を想像しちゃったよ。
こんなに美味しい食べ物が、まさかのデカいカエルのお肉なんて、言われなきゃ絶対に分からないよね。
世の中には、知らない方が良いことっていうのは多そうだね。これなんか特にそうだよ。
他にも美味しい食べ物が沢山あるけど、何を使っているのかは聞かないようにした。また変なの出てきたら、今度こそ食欲が無くなっちゃうかもしれないし。
………それだけカエルの衝撃が大きかったです、はい。
「うん?どうした?何か良からぬことでもあったのか?」
「嫌、何でもございません。何でもないということにしておいてください…………もう、触れないでおいてください」
「絶対に何でもないわけがない反応だな。勿体ぶらずに理由を話せてくれよ~?話せば楽になるぜぇ~?」
「そうだぞ。変な隠し事は無しにしようぜ?」
(な、何で無駄に食い付いてくるんだろ。大したことじゃないんだから、気になる必要がないと思うんだけどなぁ~)
ちょっとしたことに悩んでいる私に、無駄に絡んでくるお二人様。そこまでして私が悩んでいるわけを知りたいんですか?本当に大した理由じゃないのに。
だって、美味しかった食べ物が、説明聞いたらとんでもなく気持ちの悪いものだったってだけだもん。ただそれだけのことだもん。知る必要が無いでしょ。
というわけで、私は2人の語りかけには応えないようにして食事をすることにした。
気にしたら負け。今まさに、その言葉がピッタリと当てはまるね。