「618」STAY GOLD
迷いが残っているうちは、実力差などを考慮しても、確実に殺せる相手ではない。仮に、一人や二人殺せたとしても、相手は10人前後の人数が居る。
こちらは主力は3人……組織からの増援を依頼したところで、その構成員の実力が奴等を足止めする程度にも及ばない可能性の方が高い。
元々は敵の立ち位置におり、構成員とも本気の殺し合いを続けていたからこそ分かる。主力以外の構成員の戦力は、主力一人相手取って全員で攻撃を畳み掛けたところで瞬殺される程度のもの。
確実に死に至らせたはずなのに、いつの間にか蘇生して、尚且つ私の閃光スキルの速度にも初見で対応するほどの実力者。
戦闘中は光の速度までの移動は行わないにしても、1秒あたりに地球を半周から一周するほどの速度では移動している。
秒速3万kmの移動速度を持つ物体の動きを捉えられているだけでも、構成員が束になったところで噛ませ犬にもならないような存在であることは分かる。
まぁ、死体を燃やしてまでも復活するというのは、全員が全員とも確定しているわけではないが………不沈艦と呼ばれているゴールドシップ、今浪さんならではの特異性のある能力なのかもしれない。
優里が色々とステイゴールド一族については調べてもらっているが、個別の名前や一族を構成する人数が明らかとなっているだけであって、それ以上の事は分からない。
戦闘能力についての情報は殆ど分からないままに時間が流れているので、大聖堂の戦いの時と比べても、これといった進展というのはない。
それだけしかない情報の中で気になったことと言えば、ステイゴールドとその産駒が精霊化しており、一つの組織として形作られていると思いきや、唯一………ステイゴールドの孫にあたる存在があったという。
"ウシュバテソーロ"という、オルフェーヴルの子供………ステイゴールドの孫にあたる存在の精霊化が確認されたこと。
他にもステイゴールドの血統の孫や産駒はあったが、何故か孫の中ではウシュバテソーロだけが精霊化しているという事態も起きている。
それについては優里の判断で掘り下げることを止めている。戦闘における勝ち負けに関わらないことを細かく調べている余裕はない、 終わった後にでもゆっくり調べられる内容を、危機的状況とも言える現状の中で深掘りなんてできるわけが無いと話していた。
その判断は当然である。私も何も言わなかった。そこで何か押し問答があったわけではなく、何故オルフェーヴルの産駒であるウシュバテソーロのみが精霊化している?という素朴な疑問があっただけだ。
優里も苛立って、私に当たるように言ったことでもない。飯を食っている時の雑談の流れで漏らしていたことなので、そこまで深く思い詰めた状態での話し合いにはなっていない。
ウシュバテソーロの存在そのものよりも、私達が危険視しないといけないのは、一族全体の特殊な能力だ。
仮に、今浪さんのように蘇生能力が全員に備わっていたとするならば…………こちらの勝機はほぼ消えると言ってもいい。




