「608」 BATTLE FOR L'ARC DE TRIOMPHE ⅩⅩⅩⅩⅢ
馬主になりたい。
1年くらい前から思っていたことではあった。馬と関わる機会が多かったことと、前世の時から競馬というものはゲームを通じて好きになっていたこと。
賭け事として楽しまなくとも、重賞を勝ち続けるサラブレッドの歴史や特徴、レースを見ているだけでも十分に面白い。
騎手とのエピソードを動画で見るだけでも笑えたりすることもあれば、実際に現地で自由席の入場料200円ほど払えば、中で美味しいご飯を別途料金で食べることが出来たり、普通にレースも見ることが出来る。
指定席だとランクによって追加料金だけで5000円以上もするということもあるが、ただ単にレースを楽しみたいだけならば、自由席数百円で全然事足りる。
天皇賞や有馬記念などのGIレース開催では、入場料が若干変動するが、それ以外のレースならば基本的に200円程度で競馬場には入れる。
あくまで日本の競馬場の話だが。ヴァルドヘイムだと、入場料は一律無料。総督府が絡んでいるため、総督府が出資することで入場料自体は抑えられている。
入場を抑えただけでも、馬券代だけでも十分過ぎる黒字を出し続けることを知っているので、競馬業界は馬主以外は結構金を稼げるような仕事ではある。
というよりも、馬主は搾取されているようなもの。金持ちの趣味で片付けられることも出来るが、なかなかの金額が徴収されていくことにはなるので、金持ちという社会的強者の趣向を利用しての搾取ビジネスとも言えるかもしれない。
馬主やっている法人の人は、搾取しながら搾取されるという………たまに、レースでお気持ち程度に返ってくる。
金持ちがやる、ほぼ負け確のマネーゲームかつ、マネーロンダリングを合法的に行っているようなもの。
事業所得にすれば、更には節税にも繋がってしまう。そもそも、サラブレッドそのもの扱いの区分としては消耗品ではなく、減価償却が出来る立派な資産として扱われる。
減価償却は、あるものを買った時の購入費を経費として扱う場合、それをその年度に一括で経費として計算するのではなく、定められた一定の年数の間の中で分割して経費として計算していくもの。
例えば、1000万のものをその年度に一括で経費1000万で計算するのではなく、減価償却出来る耐用年数(購入した物が持つ、その用途における効果を生み出せる期間。経年劣化が確定しているものに付けられる)が4年間という期間が設けられていた場合は、4年間の間で、経費となった1000万を計算していくということを減価償却という。
この4年間に支払う金額は1000万÷4=250万という金額で計算することも、初年度分は500万、2年目は250万、3年目は200万、4年目は50万という形にも出来る。
まぁ、やるなら毎年同じ金額の方が計算しやすいというのもあって、その年ごとの損益分の申告の手間もある程度は省ける。
簡単に言えば、経費の分割だね。減価償却=経費の分割計算って考えばいいと思う。経年劣化を見越しているもの、高額な消耗品への保証も含めた制度とも言える。
要は機材一つの経費1000万のまま一括で計算した場合に、その年の売上が経費よりも少なかった場合は、銀行などの判断によっては「あそこは赤字出たから融資を打ち切ろう」ということにもなりかねないため、なるべく黒字として形を保つために、その時の経費を抑える。
その年が売上600万、経費1000万の場合は400万円の赤字としてが、その年の経費を250万に抑えて計算すれば、書類上では350万の黒字にすることが出来る。




