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「556」 優里「面倒臭いことにならないといいが」ゆみり「( ՞ڼ՞ )」優里「ナメてんのか、お前」

鼻の穴に屯していた臭いがほぼゼロになったところで、改めて周辺の気配を探る。


優里の言う通り、精霊化している何かの気配がする。精霊化というのは人間の魂でも一定の確率で起こり得ること。


魂の精霊化の基本的なメカニズムとしては、地縛霊となった魂が、異能などによる高次元の力に干渉されることで、その魂そのものが異能という存在になり、更に長い年月を経て何らかの要因で受肉を果たす。


それが2度目の生と肉体を授かって精霊化した生物の基本的な流れである。


受肉については、本人達も意図しないところによるものが大きく、肉体の基礎となるタンパク質を構成するためのアミノ酸や、骨を形成するためのカルシウムなどといった成分が何処から現出するのかまでは、現段階では解明されていない。


齏懿蕐も「精霊化しているという自覚はあっても、今の体を流石ることになった受肉の経緯は殆ど覚えていない」と話している。


体の大部分は、ヒト科の哺乳類の肉体を模しているため、遺伝子情報を調べたところで、現存する生命体の体の作りとの差異は見られない。


遺伝子レベルでも分からないような細かい違いがあるのだろうという事が確定しているだけであって、実際はどういう理屈で精霊化と受肉を獲得しているのかは不明のまま、何千年という時が経っているという。


何千年も解き明かされない謎ならば、これから先も解き明かされることが無いのでは?って思ってしまう。


解明されたところで、何かに流用することが出来るというロジックでもないだろうから、分からないままにしておいても然程問題は無いと考えている。


しかし、そのような状態でも明確に分かっていることは、索敵の術式などを使って気配を辿った時には、現存のヒト科の肉体を持っていても、現存のヒト科そのものとは全く異なる反応が出てくる。


そういった反応が現れることまでは明確になっているが、反応の違いというものが明確になる理由については不明。


こちらに関しても、仮説すらも立てられないほどに複雑怪奇な案件となっている。



まぁ、研究員やら科学者やらも自分自身の体の事を全て把握している訳でも無い。それどころか、分からない事の方が多いのが当然という見方になっているくらいだ。


肉体という存在について、どういう形態をとっているにしろ、分からないことがあるのは至極当然という認識でいる方が正しいだろう。


"肉体"という存在の謎を全て解き明かすことが出来た人が居るならば、その人は世界から祝福されながら、余命を楽しく謳歌する権利はあるだろう。


専門家からではなくとも、私のような素人が謎を解き明かしてもいいので、配信業や芸能活動が本格的に行き詰まった時には、有り余った資金を使って、自分なりに色々と自分の体を使って研究して、専門家よりも先に"肉体"の謎を解明し続けるというのも面白いだろう。


人生を懸けた最高の研究だな。夏休みの自由研究のスケールを莫大な規模にしただけと思えば、莫大な規模にしたくらいならば案外やれてしまうのでは?と思ってしまうのは私だけかもしれないが、これからの人生の選択肢としては周りがどう思うと現段階では保留にするつもりである。

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