「190」MARBLE & IRON of FORTRESS Ⅳ
実は、CRY.STi⟬A⟭LLIZATIONの創生期は声優として活動していた人が多かった。なれなかったメンバーでも、インフルエンサーとして声を使った仕事をして………結果として声の仕事を得て、そこから声優へと転身する準備を進めているのも居た。
つまり、設立当初から声を使った仕事については本物のエリート集団が揃っていたのがCRY.STi⟬A⟭LLIZATIONの特徴でもあった。
世間には公表されていないだけで、新人VTuberという………新人という化けの皮を被ったプロフェッショナルの集まりだった。
プロフェッショナルを集めた結果………では、全くの素人を集めてきたらどうなるのだろうということを試すために、2期生の私達が集められたのだ。
0,1,2期生は3種類のプロトタイプと言えるのだ。3期生からそれらを踏まえたメンツをしっかりと固めていく運営の方針だった。
たまたま、私達が運良くバズったので、そのバズった私達の型をモデルとして育成していき、そこから少しずつ事業を拡大したのがCRY.STi⟬A⟭LLIZATIONという事務所。
棚ぼたでプロトタイプとして活動出来るというのを研修でも遠回しに言われたほどだ。なので、バズる前までは先輩達とも仲は良かった。
何も分からない私達に配信のノウハウを叩き込んでくれたのは、紛れもない先輩方だったから。
新人VTuberとしての頃からプロとしての力量があったので、その技術を誰よりも早くという意識で頭に詰め込んでいたのが、デビュー前の研修時代………デビューしてからも、最初は0、1期生のやることを全て真似ることから初めて…………そこから段々と自分の配信スタイルを確率していったというもの。
初期配信から「個性を付けるために何かやれ」と言われて、頭のおかしい新人というキャラを定着させる切っ掛けになったアドバイスも、色々と教わって………それを自分なりに消化した事で生まれたものだ。
色々とトラブルがあった関係であっても、ちゃんと先輩後輩の間柄だった時もあった。人間関係の軋轢も、そういうところでしっかりと学べたのが…………今の私を形作っている。
そういった意味では、色々と感謝しているところもある。やっぱり………本場のプロは違うなっていうのを、自分の人生の中に経験として染み込ませることが出来たのは、大きな財産だ。
冷静状態になるレベルまで関係が悪化しても、2期生勢の直近の師匠であったことには変わりはない。
有難みも恨みの両方があったからこその今………今となってはもう、美化されているのもあってか、感謝の気持ちが強くなっている。
もしかしたら、過去の思い出にもなれば………[̲̅N̲̅][̲̅E̲̅][̲̅V̲̅][̲̅E̲̅][̲̅R̲̅][̲̅L̲̅][̲̅A̲̅][̲̅N̲̅][̲̅D̲̅]の社長の存在も同じように美化されるのかも。
·························それは、無いか。
しばらくエゴサを堪能した後、楓夏依達に声を掛けて、さっきまで話していた"大理石と鋼の森"に向かうことを促す。
吸っていたタバコの吸殻を捨てて、受付から出ようとした時に、後ろから受付の人が駆け寄ってきた。
依頼書に書かれていない注意事項があるらしくて、「特殊な罠が仕掛けられている可能性が高いので、そちらもご了承ください」と言われた。
特殊な罠…………か。
工場制圧の時にあった、DOOORSモドキの謎解きギミックみたいなものがあったりするのかもしれない。
謎解きギミック、とは限らないが…………今までの死亡率を見る限り、一筋縄ではいかないギミックがあってもおかしくはない。
実際に、この目で見てみて……何があるかを細かく調べていこう。
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____ヒュォォォォンッ………パキパキパキ………カシャァァァンッ!!!!
「うおっ、本当に鉄の葉っぱが落ちてきやがった………てか、本当に鋼じゃねぇか。誰かの手で加工されたのかと思うくらいの…………天然でここまでの綺麗な鋼を作れるのか?」
「やばっ、こんなん日本刀と変わらないよ………私達の使っている武器と大して斬れ味とかも変わらないかも」
「···································どう思う?この《《貴金属》》」
「······························コレ、新種の金属だよ。鋼に近い性質があるだけの、全く別の金属………確かに、見た目も鉄で、鉄でしか見られないはずの磁力による反応もあるから、鉄だと間違われても仕方無いけど………」
「ん?どうしたの?この落ち葉が何か変なの?」
「……………もう、既に腐食が始まっている。………落葉してから、大気に触れて数分足らずで腐食が始まる………しかし、強度等は未知数、磁力による反応…………この時点で未知の金属なのは確定か」




