『19』 ラークさんとユーリさんの家に行こう
「アヤヒ、今から俺達の家に向かうからお前もついてこい。拒否権は無いからな?」
「えっ?こんな幼い女の子を家に連れて行くなんて………何かイケないコトでも始める気なのかな?」
「しねぇよ!!多分………」
「そこはハッキリとしないって言ってほしかったよ!!」
「多分……絶対大丈夫!!」
「だからどっちなんだってば!!」
家に案内するとか言い始めたよ、この人。言葉だけ聞いたら犯罪だよ。堂々と誘拐宣言をしているようなものだよ。どうなっても知らないよ?捕まってもしらないよ?
しかも、割と大きな声で言っていたから、人の目をそこそこ集めている。その中で、何人かが小さいグループを作って、こっちを見てコソコソと話していた。
ほぅら、言わんこっちゃないよ。高校生くらいの男の人が小学生の女の子を家に連れて行く発言は、誰がどう聞いてもアウトだったんだよ。
そういうことを私だけが気にしても、ね………言った本人が全然気にしないっていうのも考えものだよ。ユーリさんも特に気にしている様子も無い。
こんな人達の家に行くなんて、もう悪い予感しかしないんですけど。
…………うん?“達“?そう言えばラークさん、“俺達“の家って言っていたよね?言葉の意味的にどう考えても一緒に住んでいるとしか言いようが無いよね。
一応、確認してみよう。
「あのぉ~、もしかして………ラークさんとユーリさんって一緒に暮らしているんですか?」
「そうだぞ。家事も分担してやってる。まぁ、料理は基本的にユーリが作ってくれているんだけどな。お料理スキルを底上げしたユーリの料理はマジで美味いぞ?」
「ラーク、あまり褒められると照れちゃうぜよ?」
「無駄に夫婦みたいなことをしているんだね…………」
「それはよく言われるよな。そうだよねぇ~」
「ねぇ~」
(夫婦の微笑ましいやり取りが、この2人に置き換わった途端に物凄く気持ち悪いんだけど。男同士で何本当にイチャコラしているんだろう)
何て言うか、その、触れてはいけないナニカに触れてしまった気がしてならない。知りたくもないことを知って、頭を抱えて溜め息をつく。
こんな光景を見せられたら、溜め息の1つくらいつきたくなるってものだよ。
色々と悩んでいると、後ろからラークさんが私の肩を掴んできた。いきなり捕まれたので、本気でビビって飛び跳ねてしまった。その時に私の頭がラークさんの顎に激突した。
ラークさんは無言で顎をおさえて痛がっている。顎に頭突きは、痛いよね………私も顎の骨が頭に突き刺さったので結構痛い。ラークさんに関しては自分が悪いんだからね。
痛い………本当に痛い。人の顎に頭突きするってこんなにも痛いものなんだね。2人して痛がっている様子をずっと見ていたユーリさんはお腹を抱えて笑っていた。
そんなに面白いことなのかなって思う。笑いすぎてヒーヒー言いながら泣いているし。流石に笑いすぎだって。こっちは笑えないくらいに痛いんだからね。
「あぁ………痛ぇ………顎が砕けるかと思った………」
「アッヒャヒャ!!ヒィィ………ふぅ………ちょー面白いものを見れた。多分、最近で一番笑ったんじゃねぇか?」
(だから………笑いすぎなんだって、どんだけ周りの人達の目を集めれば気が済むの?こんな人達の家、もう行く気が全くないよ)
このまま2人に気付かれないように離れようかな。こんな何をするのか、ナニをしてくるのかが分からない2人の家に行くくらいなら、近くの普通の人の家に泊まらせてもらった方が良い。
とりあえず、女の人が暮らしていそうな家を探してみようかな。男の人は基本的に地雷だと思うし。だって、この世界の人達は“ろりこん“が多いんですもの。
私は静かに2人から離れていった。
しかし、離れようと一歩を踏み出した瞬間、後ろから異様な気配を感じ取った。気付いたときには遅かった。襟の少し下辺りをラークさんに掴まれて、逃げられなくなってしまった。
さっきまで顎おさえて痛がっていたのに………何てスピードだ。行動が早過ぎて引くよ。
それと、女の子の襟を掴んで引きずって運ぶというのは何とかならないの?