『1』 帰る途中で
少し駆け足気味で帰っていた。はぁ~、何で自転車使って来なかったんだろうって思う。
運動がてらに良いかなって考えてしまった自分が駄目だったみたいだね。行きはそこまでダルくはなかったのに、帰りが何となくダルいって感じている。
支払いついでにジュース買ってくれば良かったかな。もう、汗が止まらなくなっちゃったよ。
「でも、友達もこんな暑い中待っているんだから、これくらい我慢しないとね」
コンビニの敷地内から出て5分くらい。私の住むアパートが姿を現した。
ふへぇ~、そこまで時間経っていないのに、何か30分くらい歩いていた気分だよ。
これからは、コンビニとか行くときは自転車で行こう。特に夏場はそうしないと倒れちゃいそうだ。
アパートの敷地内に入ろうとしたとき、私は一軒家と一軒家の間に不思議な物を見つけた。口で説明するのが少し難しいなぁ………何か、こう、黒っぽいものがフワフワ~って浮いている感じ。
私って語り下手くそだなぁ~、まだ小学生の文章力なので、そこら辺は大目に見てくれると嬉しいです。
それにしても、何なのかな?ちょっと、近付いてみようかな。危ないかもしれないけど、やっぱり何でも気になって近付きたくなっちゃう年頃な訳ですから………てへへ。
「よいしょ、んしょっと。うん、胸とか引っ掛かるものが無いからスルスル行けるね」
____ゴォォォォ………シュゥゥゥ………____
(ひゃあ!?な、ななな何か………想像以上にキモいね………何か音鳴ってるみたいだし)
「さ、触っても大丈夫かな?嫌、明らかに大丈夫じゃない見た目をしているんだけどね」
(う~ん、でも、折角来たんだし………少しくらいなら問題ないよね?)
私は、そのフワフワと浮かぶ黒い物にゆっくりと距離を詰めて、触れるほどの距離になると、そこからまた、ゆっくりと手を伸ばして触ろうと試みた。
うへぇ~、何て言うか………この”ごぉぉぉぉ”とか”しゅぅぅぅ”って音が聞こえてくるのが、見た目の気持ち悪さのレベルを引き上げてるよ。
そして、私は黒い物に触れてしまった。う、うん?うーん、ん?冷たい………?うん、冷たい金属のような何かかな?今の季節には持って来いの冷たさだね。
____ゴォォ……ゴゥン!!ゴゥン!!____
「ひぎっ!?お、おおおお音が変わっちゃった……!!」
(洗濯物入れすぎた時に洗濯機を回したような音がしてるよ。はっ!!これはもしかして……新しい洗濯機!?)
そんな訳ない。常に音が鳴って、フワフワ浮いている、見た目はマトモに説明できないくらいに得体の知れない気持ち悪さを放っている。
売れるわけがない。どんなに物好きな人でも、こんな感じの洗濯機は絶対に買わないだろうね。置いたら呪われそうな気がする。
って、何で私は洗濯機の話をしているんだろう。何かマズいことをしちゃったみたいだから、ここは何もしていない風を装ってアパートに帰ろう。
友達には軽く寄り道していたって言い訳をしよう。うんうん、それが良い。何かマズいことを起こっても、私のせいにはならない、と思う。
何も起こらないことを祈るしかないね。何かも~、何か起こりそうな気しかしないんだけどさ。
「離れれば問題ない。そう、離れていれば問題ないんだよ」
(我ながら、なんていう滅茶苦茶な自己正当化って思うな。でも、あんなの浮いていたら子供は気になるよ。気になっちゃうよ。触りたくなっちゃうんだよ?)
___ゴォォォォォン!!___
(音がアカンことになりはじめてるよぉぉ!?)
「家入れば大丈夫!!私の部屋は聖域だもんね」
ーーー触れたな?私に触れたのは、貴様か?
(そ、空耳かなぁ…………?あははは………そうだよ、空耳空耳。たまに起こる耳のバグってヤツだよね)
自分でも、何を頭の中で考えているのか分からない。耳のバグって何かな?耳がバグるって表現したの、初めてだよ。
もしかして、人類でも初めての表現かもしれないね。
そんな訳分からないことを考えてしまうほど、私は混乱しちゃっている訳で。
ーーー沢城彩陽。触れたのは、お前だな?
(ひぃぃ!?低いオッサンの声でフルネームで呼ばれるって怖すぎ!!)
(焦るな、焦るな彩陽。ここは冷静に対応するんだ)
「沢城ですが、何か?」
ーーー転移、『ヴァルドヘイム』
「____________!!」
ーーーようこそ、我が世界へ!!アヤヒ………