第7話 決意
ジルバが工房を覗き込むと工房内では大勢の人がめぐるましく働いている。
「おい、オメーら。ちゃっちゃっと働け。
おい、新入りぃ。そこは後でいいっつったろうが」
そんな中、テラトは檄を飛ばす。
「よぉーし。これなら何とか3日後には終わんだろ」
「テラト。無理言って悪いわね」
ジルバが中に入ってテラトに声をかける。
「なぁに。俺とお前の仲だろーが。
遠慮するこたねぇよ」
その言葉にジルバは表情を緩める。
「そういやぁ。後の二人はどうした?」
思い出したかのようにテラトが言うとジルバはため息交じりに答えた。
「あの二人なら街にデートに行ったわよ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「じゃあ次の店に行こうか」
変装のために眼鏡をつけ帽子をかぶったアルトはスバルの手を引きながら次々と店に入っていく。
「わっちょっと待ってよアルトさん」
そんなスバルの声を無視してアルトは次々に店に入って行く。
「だ、誰か助けて〜」
スバルの悲鳴はだれにも届かず。スバルはそのままアルトに引きずられて行った。
その後、日が落ちる直前になってようやくアルトが満足して買い物は終わった。
「それにしても今日は楽しかったなぁ」
アルトは満足気に言う。
「……そうですね」
足取りの軽いアルトとは対象的にスバルはすっかり焦燥しきった様子で歩いている。
「自分で歩いて買い物をするなんて久しぶりだったな。ほら、いつもはろくに外にも行けないからな」
アルトが呟くように言う。
「やっぱり王族は大変なんですね……」
「まぁね、でももう慣れたよ」
アルトは横を歩いていたスバルが立ち止まった事に気がつき後ろを振り向く。
「どうかしたかい?」
「貴方は王族に生まれた事に後悔した事はありますか?」
そう言ったスバルはいつもののほほんとした笑顔では無く、厳しい顔をしていた。
アルトはスバルを見て驚いたような顔をするが、ゆっくりと言葉を選ぶように話し始めた。
「……昔は確かに、憎んでいた、簡単に他者を貶めるこの国を。そして、そんな国を治める事になる自分自身を」
しかし、気付いたから、そんな国を変える力を自分がもっていることに、だから胸を張って言おう。
「だが、今は感謝している。王族としての力を。その力を持てたこの生まれを」
「そうですか」
スバルは頷いてアルトの手を取り祈った。彼と彼の妹に祝福があるようにと
「スバル?どうかした?」
「じゃあ帰りましょうか?」
アルトの不思議そうな声にスバルは顔をあげ何時もの笑顔を浮かべた。