第6話 ジルバの苦悩
「ふぅ、どうやらまいたみたいね」
ジルバとスバルは追っ手を振り払いテラトの工場近くまで逃げてきた。荒い息をつきながらジルバはそれにしてもとスバルを睨み付ける。
「何であんな奴にかかわったのよ?」
「えーと、まず美味しい物を沢山食べてお金が無くて逃げ出して。気がついたらああなってた」
笑いながらスバルが答えるとジルバは頭を抱えてしゃがみこんだ。
「あ、あんたって娘はどうして厄介事を……」
「ふーん。あんたも大変そうだな」
アルトがジルバを慰めるように肩を叩く。
「全くよ。いつもいつも付き合わされるこっちの身にもなってほしいわ」
「だが退屈はしそうもないな」
「まぁね。でもその代わりに楽じゃないわよ」
「ふむ、それでこそ私の嫁に相応しい」
「あんた本気なの?」
「ああ、本気だ」
「……って何であんたがここにいるのよ」
ジルバはアルトを見て大声をあげる。
「付いてきたに決まっているだろう」
アルトは平然と言った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「……と言うわけなんだけど。完成を早められない」
テラトの自室でジルバはテラトに頭を下げていた。
「ちょっと待ってろや」
うでを組みジルバの話しを聞いていたテラトはそう言って端末を引き出して何やら操作を始めた。
「不正行為は見過ごさんぞ」
部屋の隅に座っていたアルトが口を挟む。
「あっ。こういう時は黙ってた方がいいよ。ジルバ怒ると恐いし」
同じく部屋の隅に座るスバルが声をあげる。
「なーに。私に恐ろしい物など存在しない」
「へー。凄いんだね」
スバルが賛嘆の声をあげる。
「そうだろう。では結婚しよう」
アルトは微笑みながら言うと、何故かキラリと前歯が光った。
「いや。何でそうなるのよ」
ジルバはため息をつきながらツッコム。
「何かあんたと会ってから凄い疲れるんだけど」
「気のせいだ」
言いきるアルトにもう一度ジルバがため息をついたところでテラトが声をかける。
「おいジルバ。そんな奴放り出しちまえばいいじゃねいか」
「いや、それがね」
とジルバがアルトに視線を向ける。
「そうはいかない。この娘を嫁として迎えいれるまで私は離れん」
そういってアルトはスバルに抱きつく。
スバルはハハハと渇いた笑いを溢し、ジルバはため息をつき、テラトは目を丸くした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
黒い巨大な艦が港に入ってきた。大きさからいって空母クラスなねであろう。
その中でウ゛ァールはモニターに向かい怒鳴りつけていた。
「我が部隊を人探しに使うとは何事だ」
「言葉通りの意味ですが。何か?」
画面の向こうの男は淡々とした口調で言う。
「我が部隊は現在、犯罪者の追跡中である。
その様な事にかまっている時間などない」
「これは本国からの正式な命令です。逆らうと逆賊という事になりましが?」
「くっ」
「では頼みましたよ」
次の瞬間にはモニターから男の顔は消え、ウ゛ァールは一人残された。
「くそっ。若造が」
ウ゛ァールは拳を机に叩きつけ悪態をついた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「これでキャストは全員そろったか」
消えたモニターの前で男は呟いた。
「これからは私の立ち回り次第か。
フフフハハハハハァ」
男の狂ったような笑い声は部屋に響き消えていった。
ウ゛ァール久しぶりの登場です(笑)