第5話 アルト
「これは一体どういう事なのよ」
いつまでも待ち合わせ場所に来ないスバルから連絡が来たのが5分前言われた場所に行くとスバルは何やら黒いスーツを着た男達に囲まれていた。
「あははは…」
乾いた笑みを溢すスバルにジルバは詰め寄って襟を掴んだ。
「いいから簡潔にせ……」
ジルバの頭に銃がつきつけられる。
「……何の真似?」
ジルバはスバルから手を離し銃をつきつけてきた男を睨みつける。
「手をお離しください。この方は将来帝国にとって大切な方になるのですから」
「はっ?」
「そこの彼女を僕の嫁にしたいといってるんだよ」
男達の陰から一人の金髪の青年が出てくる。
「……流石に王子様ともなるとそんな勝手もできるのね」
次の瞬間ジルバの口から出たのは痛烈な皮肉だった。
「なっ、無礼もの」
「この方を王子と知っての態度か!?」
護衛の男達が一斉に声をあげる。
「うるさい。
王子だからってなんだっていうのよ?」
頭にきていたジルバは男達を無視して言った。
取り囲んでいたスーツの男達は更にわきだつ。
「いや、いい。という訳で彼女には今から僕と一緒に行動してもらいたいんだがどう?
ああ何なら君も一緒に来てくれても構わなけど」
意外にも男達を止めたのは
「……私の嫌いなものを教えてあげようか。
一つ勝手に事を進める傲慢なやつ。
二つ自分の力でもないの威張りちらすやつ。三つそんなやつらが大勢いる帝国と勿論、帝国を支配している王族よっ」
ジルバは突きつけられている銃を払うと自分のホルダーから銃を抜いて王子、アルト・ジャイ・クローセルに向けた。
「動かないでよね。アンタ達が動いた瞬間に引金を引くわよ」
とっさに動こうとした男達に警告する。
「やれやれ、大変だな」
アルトは銃を突きつけられているのにもかかわらず平然と言う。
「随分と冷静なのね」
「銃を向けられるのは始めてじゃないのでね。まぁ慣れたってことさ」
「とにかく死にたく無かったら言うとおりにして」
「はいはい」
アルトの返事を聞くとジルバはスバルの方を見る。
「スバル、こんなところ直ぐに出るわよ」
「うん。分かった」
「では、皆さん。さようなら」
ジルバはそう言うとポケットから手の平サイズの玉を取り出し下に叩きつけた。すると辺り一面は煙に包まれた。