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第十四話『相棒? 下僕? 敵? 仲間?』

「ゴーレムの格闘家って、木製(ウッド)ゴーレムですか? 石製(ストーン)ゴーレムですか?」リカルダスは質問した。

「何製だったか、忘れたね」シントリスタは取り合わなかった。

【シントリスタの回想】身長が3mもありそうな巨体だった。ボロボロのマントは、姿を隠すためで、寒さをしのぐものではなかった。マントを脱ぐと、右半身は赤色の光を放つ金属に見えた。左半身は溶け落ちている茶色い液体に見えた。溶け落ちている左目がギョロリに睨まれて、シントリスタは身震いした。

「? ゴーレム? 液体? 金属? あんたは、何ものですか?」シントリスタは、質問せずにはいられなかった。

「ふふっ。俺は、ただの()()ゴーレムだよ。ただし、俺の身体を作る物質は、この世界には存在しない。俺は、失われた物質文明の生き残りだ。そんなことよりも、早く始めてくれ」

試練の開始と同時に、神殿内が峡谷に変わった。ゴーレムの前に現れたのは、サイクロプスだった。がっぷり四つで取っ組み合い、殴る蹴る頭突くどつく叩きのめすという原始的な戦いが始まった。そして、まったくバカバカしい戦いが続いた。サイクロプスの攻撃は、ゴーレムが液体化して受けたので全く有効打にならなかった。しかし、ゴーレムは金属化した攻撃を浴びせたので、悉く有効打になった。

「(・・・何というバカバカしい戦いじゃ! サイクロプスにとっては相性が悪すぎる)」飲まず食わず寝ず休まずの戦いは二日間に及んだ。ゴーレムはサイクロプスが新しい攻撃を仕掛けてくるのを楽しんでいた。そして、疲れの溜まったサイクロプスはゴーレムに撃退された。いや、いつでも撃退された筈だが、ゴーレムが飽きるまで付き合わされたのだった。

「挑戦者の勝ちー!」シントリスタは、勝ち名乗りを挙げた。目の前に会わられたのは(不死身の肉体を持つ)『アキレス』だった。

「なかなか、見込みがあるな、お前は! 今後は、俺の相棒(バディ)だ!」

「よろしく頼むぜ! 相棒(バディ)!」ゴーレムは答えた。

「(すっげ~。二日間も取っ組み合っていたのか。なんてスタミナだ!)」リカルダスは感心した。

「(世の中、広いですね。まさに化け物です)」エルピーダも驚いた。


「他に、龍の騎士っていいましたよね」

「知らねーつってっぺ!」シントリスタは激昂した。

【シントリスタの回想】全身青色の鎧に包まれた、感情表現の少ない若者だった。入り口で、十時の方角を指さした。

「そこでいい。なんでもいい」目の前に5mほどの巨大蛇が現れた。

「挑戦開始!」シントリスタが宣言した。

「一気に決めるぜ!」「一気に決めるわよ!」

「? (今、二人の声がしたが・・・)」シントリスタは不思議に思った。

龍変化(ドレーカブレイティンク)」龍の騎士は、巨大蛇の二倍もある赤色龍(レッドドラゴン)に変化した。

殲滅獄炎(トースティメント)」口から火炎を吐き、一気に蛇を焼き尽くした。

「挑戦者の勝ちー!」シントリスタは、勝ち名乗りを挙げた。目の前に現れたのは(音楽・詩・予言・太陽の神)『アポロン』だった。

「なかなかの勝ちっぷりだな。以後キミに力を貸そう。その代わり、私に力を貸してくれたまえ」

「何なりと、申しつけください」「かしこまりました」丁寧に頭を下げた。

「? (やはり、二人おるのか・・・? こちらの陣営のハズだが、何も聞いておらぬぞ・・・)」シントリスタには、竜騎士の正体が分からなかった。


「操り人形魔術師って言いましたよね?」エルピーダが質問した。

「覚えておらんわ! 最近物忘れが酷くてな!」と言いながら回想していた。

【シントリスタの回想】

一見して道化師のような風貌だった。顔に白いドーランを塗りたくっていたが、右目が星で、左目が太陽の化粧をしていた。紫色のローブを着ていたが、星と惑星のワッペンが散りばめられていた。入り口から入ってくると、何も言わずに三時の方向を指さした。すると目の前に猿剣士が現れた。サル剣士は胸当てだけの軽い装備だった。魔術師の周りを機敏に駆け回り挑発した。魔術師はローブに貼り付けてあったワッペンを一つ取ると、猿剣士に投げつけた。ワッペンは猿剣士に向かって飛んでいる最中に消えてしまい当たらなかった。

「操り人形(プーパ)」と呪文を唱えると、猿剣士を操りだした。猿剣士は何も出来ずに敗退した。

「挑戦者の勝ちー!」シントリスタは、勝ち名乗りを挙げた。目の前に現れたのは(踊りの神)『テルプシコラ』だった。

「アナタ、面白い勝ち方ですね。以後仲良くしましょう」

「悪くないですね」がっちりと握手をした。


「武闘家魔術師って、どんな奴でした?」リカルダスは質問した。

「そんな奴、おったかのう?」シントリスタはしらばっくれた。

【シントリスタの回想】東洋の武道着を着ていた、筋骨逞しい背の高い若者だった。

「お前さん、防具がないがその格好でいいのか?」シントリスタは確認した。

「誰も、俺に攻撃を当てられないから大丈夫だ!」と自信満々だった。そして九時の方向を指さした。

「そこにしよう!」語気がいちいち強かった。現れたのは、鎧を着て盾を持った騎士だった。

「(武闘家には、相性が悪いのう。ウチの陣営なんだが・・・)」

「挑戦開始!」シントリスタが宣言した。

「いざいかん! これ如何(いか)に! タコにうにかにザリガニ・・・。軟体甲殻(なんたいこうかく)拳!」

「(何じゃ、今のは? 呪文か?)」シントリスタは不思議がった。鎧の騎士が剣を大きく振りかぶり、武闘家に叩きつけた。武闘家は、左腕で剣を受けた。

「べっぎッ!」骨の砕ける音だった。

「良かろう!」直後に、右手で鎧の騎士を殴りつけた。

「ばっごッ!」鎧の騎士の兜が割れ、全身の鎧にヒビが入った。

「ぐわしゃ!」鎧の騎士の本体が現れたが、全身の骨が折れているらしく地面に這いつくばってしまった。

「うむ! 一発できまったのう!」と、シントリスタをチラリと見た。

「挑戦者の勝ちー!」シントリスタは、慌てて勝ち名乗りを挙げた。武闘家の目の前に現れたのは(狩り・月・貞潔の女神)『アルテミス』だった。

「豪快な勝ち方ですね。骨は大丈夫ですか?」アルテミスは聞いた。

「骨が折れるくらい、かすり傷です!」

「以後、アナタの力になりましょう。私を助けてください」

「畏まりました」と頭を下げた。


「個性的ですね。自惚れ邪悪司祭って、自分で名乗っているのですか?」エルピーダが質問した。

「欲しがるのう。知らんわ!」シントリスタはしらばっくれた。

【シントリスタの回想】細い眼鏡をかけた、オールバックの司祭だった。司祭らしからぬ群青色の服装だった。入り口から入ってきて、薔薇を一本投げ上げると、茎が八時の方向を指した。

「なるほど、それでは三時の方向にしましょう」

「(薔薇を投げたのは、意味があるのか?)」シントリスタは疑問に思った。司祭の目の前に現れたのは、ブリキの騎士だった。

「ふむふむ。銅板にスズのメッキですね。生命体(リビング)でしょうか? 死体(アンデッド)でしょうか?」

「挑戦開始!」シントリスタが宣言した。

「(司祭では、剣術には勝てないだろう・・・。我が陣営じゃが、残念だのぅ・・・)」と、シントリスタは思った。司祭は、黄色い桜の花びらを空中に舞わせた。

「生命あるものに祝福を! 生命なきものに安楽を!」花びらが、ブリキ騎士の周りを舞うと、

「ぎこ、ギッコ、ぎこ、ぎっぎっぎぎっぎ~。バタリ!」ブリキ騎士は崩れ落ちた。

「死体判定が当たりましたか・・・」と言いながら、司祭は眼鏡を右手の中指でおさえた。

「(ナルシストじゃの~)戦者の勝ちー!」シントリスタは、勝ち名乗りを挙げた。司祭の目の前に現れたのは(愛・美・豊穣の女神)『アフロディーテ』だった。

「きれいな勝ち方ですわね。今後わたしを助けて下さるかしら?」アフロディーテがたずねた。

「美しきものに祝福を、汚らわしきものに災いを。喜んでお手伝いいたします」アフロディーテが差し出した手にキスをした。

「まぁ、嬉しいわ!」

「(何なんじゃ、コイツは?)」シントリスタは、虫唾(むしず)が走った。

エルデムがシントリスタの脳裏の記憶を映像で二人に送り込んだことは分かっていた。しかし、それをシントリスタに悟られないようにした。


「へ~、ゾンビなのに武闘家なのですか。どのような戦い方をしましたか?」エルピーダが質問した。

「ゾンビなのに戦えるわけがなかろう。夢じゃ!」シントリスタはすっとぼけた。

【シントリスタの回想】全身傷だらけの見るからにゾンビだった。右腕と左足に包帯を巻き、左の目玉が溶け落ちそうだった。ボロボロの衣装は、体中の傷を覆い隠すことにしか役に立たなかった。

「(くっせー! 早く神殿から出て行って欲しいわ)」シントリスタは、すぐに挑戦を開始した。

「待てよ、準備が出来ていねえぇえぇえー」語尾が小さくなっていった。おまけにエコーがきいていた。開始と同時に、蜥蜴騎士(リザードナイト)が飛び掛かってきた。

「ぐわっぎゃー!」リザードナイトの剣でゾンビは斬り付けられた。

「ボロッ」あっけなく包帯が巻きつけられた右腕を斬り落とされた。

「ふっふーふふ・・・斬ったねーねね・・・」語尾が小さくなり、エコーが響いた。

「俺は、寿命でしんだんじゃねぇええぇぇ・・呪いだだだ・・・」独特の(しゃべ)り方だった。

「呪いが何でぇ!」リザードナイトが吐き捨てた。

「呪いのお裾分けだだだ・・・礼はいらねぇえぇえぇ・・・」ゾンビの斬り捨てられた右腕と同じ、リザードナイトの右腕が斬り落とされた。

「? いってぇー! 誰が斬りやがった!」ゾンビはその腕を拾うと自分の腕に装着した。包帯の中から、骸骨の腕が出てきた。

「使い勝手が悪い腕だったんだだだ・・・、こっちの方が少しつかえるだろうううぅぅ・・・」不気味な光景にシントリスタは、吐き気を覚えた。

「(ぐっええぇ・・・)」やけくそになったリザードナイトは、ゾンビの首を斬り落としてしまった。

「すっぱり! ぼとっ」ゾンビの首が地面に落ちると、リザードナイトの首も地面に落ちた。そして、ゾンビのに拾われて装着された。

「何にもしないで、勝ってもうたわわわ・・・」シントリスタは、勝ち名乗りをあげるのを忘れた。ゾンビ武闘家の前に現れたのは(商業・旅・学問・伝令の神)『ヘルメス』だった。

「心得ておるぞよ。お主の正体は」

「ありがとうございますすす・・・。そのお言葉だけでででで・・結構でです・・」

「難儀じゃのう」

「精一杯ぃぃ・・・、働かせて頂きますっすうす・・」

「・・・」そのやり取りを、シントリスタは理解できなかった。

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